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つくばエクスプレス 建築散歩

 

第6回 関東平野の農村住宅 −八潮市−

 「酒は現金でお買い上げ下さい」という昭和初期の看板を見て、僕は「金も持たずに飲みに来るのかよ。酒飲みはしょうがないなぁ。」と独り言で言いました。それを横で聞いていた資料館の学芸員さんは「この頃は、年に2回の掛取りでモノを都合していたからでしょう。」と言いました。それを聞いていた太田屋の先代の奥様は、「いえいえ、その頃は春に肥料を買って、秋には米で支払うというように物々交換が多かったので、現金なんて見たことがなかったのよ。そのためじゃないかしら。」・・数十年前とは思えない、なんとものんびりしていた農村生活の風景が偲ばれます。

 八潮市域は、平安末期・鎌倉時代からの御厨(みくりや)だったという記録があります。その後今に至るまで農村地帯でした。
また、八潮市八條地区には日光道中の脇往還の下妻道が通り、「八條の渡し」場がありました。太田屋はそこで河岸問屋、旅籠などをやっていた太田家の屋号です。

その関東平野の典型的な農村が、つくばエクスプレス開通(2005年8月)以降、変わりつつあります。人口も4年で5,000人も増えてます。八潮駅前にはマンションも増えてきました。

何しろ秋葉原駅まで最短17分ですから、通勤に最適な街になりました。これからもどんどんと人口は増えていくのでしょう。それだけに、1000年以上も続いてきた関東平野の農村文化がなくなることが懸念されます。資料館=八潮市文化財保護課は「近郊都市としての利便性と八潮市の歴史的文化を活かした景観づくりをどう協調していくかが課題」と言っています。

 このようなことは、東京近郊の街ではよくあることです。たとえば、千葉県浦安市はディズニーランド開園以来、新住民が多くなり、山本周五郎の「青べか物語」にあるような漁村の雰囲気がなくなりそうです。そのため、市は浦安市立郷土博物館を作り、漁村生活を経験体験できるような仕組みを作りました。

 八潮市立資料館は、曳き家・移築された「旧藤波家住宅」を併設しています。それ以外にも国指定重要文化財である名住宅「和井田家住宅」や、唯一残っている町屋住宅である「太田家住宅」も住民の方々の努力で守られています。

太田家(おおたけ)住宅・蔵
八潮市指定有形文化財(建造物)
酒は現金でお買い上げ下さい」の琺瑯看板
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1●酒は現金でお買い上げ下さい」の琺瑯看板
2●太田家は、江戸時代中期より続く河岸(かし)問屋で、二合半領や八條領から買い集めた米を各地の米問屋などに販売していた。日光道中の脇往還である下妻道と八條の渡しの接点にあったことから、往来する人々の休憩や宿泊などの施設として旅(はた)籠(ご)も兼ねていた。

現在の主屋は、寄棟造の木造二階建て瓦葺き、出(で)桁(げた)構造で、八潮では珍しい町屋建築の建物である。
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現在の主屋は、寄棟造の木造二階建て瓦葺き、出(で)桁(げた)構造で、八潮では珍しい町屋建築の建物である。
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現在の主屋は、寄棟造の木造二階建て瓦葺き、出(で)桁(げた)構造で、八潮では珍しい町屋建築の建物である。
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現在の主屋は、寄棟造の木造二階建て瓦葺き、出(で)桁(げた)構造で、八潮では珍しい町屋建築の建物である。
(3・4は内部)

蔵には往時の八潮地方の河岸問屋・茶屋(酒屋)の商い店、蔵の意匠がよく遺され、市域では稀有(けう)な商家の間取りと河岸場の問屋の性格も有する建造物になっている
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蔵には往時の八潮地方の河岸問屋・茶屋(酒屋)の商い店、蔵の意匠がよく遺され、市域では稀有(けう)な商家の間取りと河岸場の問屋の性格も有する建造物になっている
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6・7●蔵には往時の八潮地方の河岸問屋・茶屋(酒屋)の商い店、蔵の意匠がよく遺され、市域では稀有(けう)な商家の間取りと河岸場の問屋の性格も有する建造物になっている(6は内部)

 

和井田家(わいだけ)住宅
国指定重要文化財(建造物)
和井田家は、江戸時代中期から八條村の世襲名主や八條領35か村の触(ふれ)継役(つぎやく)も勤めた家で、建築様式や間取形式、技法、細部意匠(いしょう)、構造などから、17世紀末ごろの創建と推定されている。
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和井田家は、江戸時代中期から八條村の世襲名主や八條領35か村の触(ふれ)継役(つぎやく)も勤めた家で、建築様式や間取形式、技法、細部意匠(いしょう)、構造などから、17世紀末ごろの創建と推定されている。
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8●和井田家は、江戸時代中期から八條村の世襲名主や八條領35か村の触(ふれ)継役(つぎやく)も勤めた家で、建築様式や間取形式、技法、細部意匠(いしょう)、構造などから、17世紀末ごろの創建と推定されている。

当日は茅葺きの部分張替えをやっていた。
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屋敷周辺には、中世居館の面影を残す溝堀が廻らされている。
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10●当日は茅葺きの部分張替えをやっていた。
11●屋敷周辺には、中世居館の面影を残す溝堀が廻らされている。

 

旧藤波家(きゅうふじなみけ)住宅
八潮市指定有形文化財(建造物)
藤波家は後谷(うしろや)村の開発名主で、近世初期に土着したと伝える家であり江戸時代をとおして後谷村の名主を勤めてきた家である。昭和63年に曳家(ひきや)され、現在は資料館の付属施設として、本建(ほんだて)のみ建築当初に復元して、保存、公開されている。
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建築当初より瓦葺きであり、外壁を黒(くろ)漆喰(しっくい)仕上げとしたり、江戸市中の土蔵造りの町屋意匠を模している。
13
江戸風の欄間など、明治期の粋さが感じられる客間。
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12●藤波家は後谷(うしろや)村の開発名主で、近世初期に土着したと伝える家であり江戸時代をとおして後谷村の名主を勤めてきた家である。昭和63年に曳家(ひきや)され、現在は資料館の付属施設として、本建(ほんだて)のみ建築当初に復元して、保存、公開されている。
13●建築当初より瓦葺きであり、外壁を黒(くろ)漆喰(しっくい)仕上げとしたり、江戸市中の土蔵造りの町屋意匠を模している。
14●江戸風の欄間など、明治期の粋さが感じられる客間。

 

取材協力・資料協力:八潮市立資料館 取材協力・資料協力:八潮市立資料館
(旧藤波家住宅と同一敷地内にあります)
なお、和井田家、太田家ともに見学については、資料館にお問合せ下さい。




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