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■トーク * トップインタビュー 梅野 重俊 氏 /株式会社 梅の花 代表取締役社長
「感謝の気持ち」を大切に ライフスタイルの多様化に伴い「食」のあり方も様変わりが進むなか、今日の外食産業も大きな変革期を迎えている。そのなかで、地方都市を出発点としながら独自の魅力を打ち出して大都市圏へ出店、ひいては全国区で成功を収める外食企業も少なくない。 とりわけ「梅の花」は、九州・福岡を拠点に<湯葉と豆腐の専門店>としてスタートして以来、10数年で50余の店舗を展開。昨今は首都圏にも進出を果たすなど、その急成長が各方面から注目を集めている。 「梅の花」発展の背景にある事業哲学から、「今、人を集める店づくりはどうあるべきか」を考える (聞き手: 株式会社 丹青社 代表取締役社長 渡辺 亮)。
−−「人に感謝、物に感謝」の精神を忘れずに事業に臨む−−
渡辺 貴社は福岡を拠点として「湯葉と豆腐の懐石料理店 梅の花」を開発され、九州はもとより、関西、中京、さらに首都圏へと積極的に多店舗展開を進めて業績を伸ばされる一方、99年4月には株式も店頭公開されるなど、今、飲食業のみならず多方面から大きな注目を集めていらっしゃいます。
渡辺 そうしたなかで、「人に感謝、物に感謝」という言葉に出会われて、今日の「梅の花」が生まれてくるわけですが。
梅野 当時を振り返ると、私自身の事業に対する取り組み方が以前とは一変していますね。それまでは、何か失敗するとつねに原因は自分以外の他人やモノにある、とみなしてきたのですが、あるお寺で「人に感謝、物に感謝」という言葉に偶然出会い、これがそれまでの自分自身の姿を見直すきっかけとなったのです。 渡辺 それが今日の梅の花の基本をなすコンセプトになっていると。 梅野 そうです。梅の花では「お客様から学んだことを形にする」ということを仕事の基本にしています。これは「お客様のための店」をつくることに他ならず、お客様の喜びが自分の喜びにもつながるという気持ちが大切だと思うのです。
梅野 丹青社さんとは梅の花神戸元町店以来の長いお付き合いとなりますが、その仕事をみていると非常に「夢」を感じますね。 渡辺 感動をつくる仕事を行なううえで、「夢」や「遊び心」というのはとても大切な部分だと思います。 そうしたなかで最近も、ある複合商業施設で子どもが遊びながら学んでいけるような遊び心に富んだ託児施設を手がけたのですが、梅野社長もこれと似たような発想をお持ちのようですね。
梅野 はい。そもそも梅の花の場合、お客様にゆったりとした時間を楽しんでいただきたいと思っております。とはいえ、なかには小さなお子さん連れもいらっしゃる。そうすると、ときには店内の廊下などを走り回るお子さんも出てくる。他のお客様に迷惑がかかるから注意しようとすると親御さんに怒られる、どうしたらいいか、という声が従業員からあがってきました。
−−成功する飲食店のポイントは「感動」を与える店づくり−− 渡辺 それは興味深い試みですね。ところで店舗の建築的な部分では、数寄屋造りへのこだわりが伺えますが、こうしたコンセプトはどのようにして生まれたのでしょうか。 梅野 私個人として、この事業を通じて日本ならではの文化の掘り起こしを図りたい、との意思が強くありました。そこで建物についてはわが国固有の文化の象徴である数寄屋造りにしようと。しかし、どの施設も同じつくりではなく、つねに前よりも優れたものをつくっていきたいとの思いもあります。 渡辺 そのため、チェーン展開をなさりながらも、すべての店舗を同一形態で展開するのではなく、個性を付与されているわけですね。
梅野 そうです。店にとって建物というのはいわば着物と同じですから、どれも同じというのはおかしいでしょう。それぞれの格好はそれぞれに変えてあげるべきだと思うのです。
渡辺 ありがとうございます。現在当社でお手伝いさせていただいている吉祥寺店(東京)の場合は、「江戸の粋」というテーマに基づき、千代紙などをモチーフにしてインテリアに取り込むことを提案して進めさせていただいております。
梅野 かつては70〜80坪程度の店舗が中心だったのですが、やはり昨今はゆとり重視の傾向に伴い、200坪程度にまで拡大してきています。 渡辺 飲食店の場合、こうしたハード面と同様に、ソフト面の充実が非常に重要になりますね。
渡辺 快適な空間のなかで、お客様にゆったりと時間を過ごしていただくこともそのひとつですね。 梅野 ええ。1コース平均約15品程度をお出しするので、食事だけで約1時間半。その後、ゆっくり歓談されたりして、お店でお過ごしいただくのは平均して約2時間です。 渡辺 食事を運ぶタイミングなどにもむずかしいものがおありでしょうね。 梅野 女性のお客様の場合は食事が主目的なので比較的タイミングは読みやすいのですが、男性の場合はお酒を飲まれたり商談などが利用目的の中心となるため、そのタイミングを的確に見計らうのがサービスのポイントになります。 渡辺 メニュー面でも実に手の込んだ料理を多品種用意される一方で、低価格で提供されているところにたいへん感心するのですが…。
梅野 現在のメニューのアイテム数は約100点ほどですが、原材料を仕入れてそれを加工するなどの工夫をしています。たとえば豆腐自体を仕入れるのではなく、大豆を仕入れて自社で豆腐をつくりますので、食材の原価率は低くなっています。その反面、人件費にコストを厚くしていますのでF/L(飲食原価率+人件費率)では平均約58%というところでしょうか。 渡辺 なるほど。そのなかでメニュー開発については、どのようにして行なわれるのでしょうか。
梅野 メニューの開発から実際の味付けに至るまで、社内外いろいろな方々のご意見を伺いながら、すべて私が納得するまで徹底してやります。しかも、お客様に飽きが来ないように、季節ごとの季節懐石が年に5回変わります。 渡辺 調理人や接客係など現場のスタッフを含めて、人材の育成に関してはどのようになさっているのでしょう。
梅野 調理人の育成については九州、関西、関東に各1か所ずつ「道場」(調理研修センター)を設置しています。そこで従来のいわゆる職人制度とはまったく異なる発想で、いわば素人を梅の花独自の調理のプロにまで育成しています。
−−料理やもてなしを通して「癒し」の提供を図りたい−− 渡辺 さて、貴社では全国100店舗展開を目標に掲げていらっしゃいますが、今後の出店ペースはいかがでしょうか。
梅野 年間5店舗程度がベストでしょう。しかし先に申したとおり、条件に見合う物件が少ないことから計画通りにはいきませんし、逆にいい物件があれば出店していますから、年間5店舗目標といいながら、リニューアルを入れると7〜8店舗になっているのが現状です。 渡辺 海外への出店についてはいかがですか。 梅野 ひとくちに海外といってもアメリカやヨーロッパ、それぞれに文化や風土が違います。こうした部分をうまく採り入れた形にしなければ、成功しないでしょう。いくら現在、和食が欧米でブームといっても、それはあくまで一部の動きであり、ビジネスとして広く根づかせ成功を収めるには形だけの出店では無理です。取り組むとすれば、現在の国内店舗の内容・形態とは異なる形で、それぞれの現地の文化・風土にフィットする開発を行ない多店舗展開していけるような体制を整えて臨みたいですね。 渡辺 それは楽しみです。もちろん国内では今後も湯葉と豆腐にこだわっていかれるわけですね。
梅野 もちろんそうです。ただ、伝統と革新の融合はつねに目標として掲げて進めていくつもりです。そのためにはお客様の声や市場のトレンドを見極めていくことがとても重要だと思います。 渡辺 現状を維持するだけではなく、市場を見極めつつ新規事業についても意欲的に取り組んでいかれる。 梅野 はい。すでに和風中華の「チャイナ梅の花」という第二の業態を開発、展開しつつあります。これは、いわば梅の花流の中華料理の提案で、店内は個室中心で、小皿によるコース料理を主とし、その中身は油を少なくヘルシーをテーマにしたものです。またお客様のお席の目の前で豆腐をつくったり、点心を蒸したりするなど、この業態ならではの特徴も採り入れており、おかげさまで大変好評を得ていることから今後、各地域で展開を図っていく方針です。 渡辺 最後に今後の事業について、梅野社長の夢をお聞かせ下さい。
梅野 そうですね、具体的な事業内容面では、今、世の中全体で食生活が大きく変化しています。女性の社会進出などが進み、家庭で料理をしない、いわば「包丁のない家庭」もあるとか。そうした時代にこそ安心して利用できる店が求められると思います。たとえば添加物を一切使用しない自然素材のメニューをテイクアウトできるような業態もひとつでしょう。そうしたニーズにも積極的に応えていきたいですね。
渡辺 梅野社長のお話を伺ってきて、梅の花さんは非常に強い企業だなと思いました。というのも、湯葉と豆腐の専門店として明確に特化されている。今は何でもある時代であるだけに、逆にこうした専門化、特化した店というのは強い。他社が真似したり、異業種参入してもできないだけの、高いオリジナリティを確立されていると思います。 (2000年12月)
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企業データ 2000年10月現在
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