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■トーク * 対談 変貌する商業施設開発の潮流
まちづくりの発想と 九州の地方百貨店の雄トキハは、昨年12月、大分市郊外に単独開発では九州最大級の商業施設「トキハわさだタウン」をオープンさせたが、以来、予想以上の動員と売上げを記録している。周辺の景観とマッチするよう英国コロニアル調をモチーフにデザインされた同施設は、カテゴリー別に9つのブロックに分類、それぞれのカテゴリーに3つの業態を混在させるなど、随所に新しい試みが施されている。商業施設をひとつの街として整え、脱・百貨店の新業態として展開している。 そこで今回は、事業主体である(株)トキハ取締役社長の下川明氏、同施設をトータルプロデュースした(株)アルテリア代表取締役の羽田良美氏に、地域に根ざす地方百貨店の21世紀の生き方と今回の新業態構築の狙い、地域密着策のポイントを語っていただいた。
百貨店の“創造的破壊”で辿りついた
下川 わさだタウンをみていただければわかると思いますが、われわれはここで、「百貨店」、「スーパー」、「専門店」の境界を取り払い、商品やサービスをゾーンごとに提案して、ひとつの空間のなかに業態を混在させる「クロスバリューショッピングセンター」を作り上げました。さらにタウンづくりに当たっては、“カジュアル”“ファミリー”“デイリー”“ロープライス”をキーワードに構築し、8kmしか離れていない本店と棲み分けしました。従って、トキハ本店の方はファッション、高級ブランド中心の店づくりに切り替え、差異化を図りました。
ひとつは、ショッピングセンターというのは基本的に非日常的なものであるべきで、新しい体験ができる空間であること。2番目にここで新しい街をつくるんだということ。そこで英国コロニアル調の建物に、素朴な自然と人間が融合しているような空間を提案しました。この地域の人々は本物志向、伝統志向という、ニューイングランドのもつポリシーと似通う面をもっていると感じています。また、このところ日本のショッピングセンターは派手な色調のデザインが主流ですが、もっとしっとりとしたあたたかみのあるものがあってしかるべきではないかと思っていました。 最後に問題となったのは、都心と郊外という立地の問題です。郊外店の主要客層であるニューファミリー層のニーズを百貨店がどうつかまえるか。百貨店がこれまで取りこぼしてきた層を取り込むためにどうするか。さらにもうひとつは経営の問題がありました。本店の人員を再配分しながらの効率経営を実現するということ、その意味で、実はわさだタウン開発は本店の強化策だったのです。本店が強くならなければ郊外店にもパワーは生まれません。
下川 中心商店街から離れていては、従来型の百貨店が成立するはずはありません。脱百貨店でないとできない。わさだタウンではトキハがこれまでやってきたもの、考え方をある意味ですべて否定してかかる必要がありました。サービスでもディスプレイでもMDでも、本店と違ったものでなければならない。羽田さんには品揃えやMDも含め、いっさい頭を空にしてやってもらうようにお願いしました。“創造的破壊”です。既存の百貨店で取りこぼしていた需要を取り込むことで中心商店街の百貨店がよりファッションに特化でき、福岡などの商業施設と競争していくことができるのです。
街環境と業態の混在で 羽田 業態混在型というのは、たとえば食品街のなかにスーパーマーケットのゾーンもあれば、百貨店的な対面販売やギフトのゾーンなどもある。そのゾーンに行けばそのカテゴリーのすべてがわかりますね。こうしたスタイルは日本ではじめての試みです。また買い物の利便性に加え、業態混在型はビジュアルに変化を与え、空間を楽しいものにできるという利点もあります。 下川 「混在型」とはいっても、おもちゃ箱をひっくり返したようなものではなく、各フロアを3つのカテゴリーに分けて構成し、9つの街区のなかで混在させている。1つの街区が本店の1フロアと同じ面積をもっていますので、本店の3つのフロアをわさだタウンでは、1フロアに展開しているような感じですね。
下川 そのなかに多種の業態が混在して配置され、まさに街のようになっている。メイン通路にしても、まっすぐ単調ではなく、広場で曲線を描くようにしている。タイルも遊歩道みたいなものになっている。また、充分に天井高を確保しているから吹抜けも迫力があります。歩くことの楽しさが充分に感じていただけると思います。そうしたことも含めて、お客様に従来のショッピングセンターとは違うという印象を与えているのではないでしょうか。
羽田 しかしテナント誘致、設営は大変でした。はじめてのことなので、みなさん、業態混在型商業施設は何かがわからない。そこでまずデザインをしっかり決め、量販店がつくるショッピングセンターとトキハのつくるショッピングセンターとの違いをまず鮮明にしたわけです。英国コロニアル調の建築デザインが新しい。店舗デザインは白を基調にMDの色と内装の色を差しこんでいく。それは量販店がつくるデザインとは、根本的には違い、感度の高いものです。照明デザインもサインデザインも最新の先端技術を取り入れました。これらをトータルに見ると、ローコストであっても量販店とは質が違うことがわかると思います。 下川 今後の商業施設が機械的なハードな感じというのはよくない。時間消費型とはいえ、あとは、歩いて楽しんでもらうだけではなくて、お買物もしてもらいたい(笑)。飲食店の数も増やしていきたいと思っています。
予想を超える集客力
下川 ショッピングゾーンだけの数字ですが、昨年12月の来店者数は120万人、今年1月が80万人、2月が60万人です。平日は1万4000人〜1万5000人、休日は4万2000人〜4万3000人のお客様がいらっしゃいます。来店者は年間700万人とみていましたが、このペースだと900万人〜1000万人が見込めそうです。車社会に対応して、3200台の駐車スペースを用意しました。それでも土曜日や休日には足りなくなってしまう。近く1000台の駐車能力をもつ立体駐車場を敷地内につくる計画です。 羽田 集客のためにはイベントが重要だと考えています。わさだタウンではフェスタ広場を有効的に活用したいと思っています。 下川 つねに新しいものが何かあって施設の魅力を維持していかないと、限られた商圏人口のなかでリピーターを獲得していくことがむずかしくなるでしょうから。 羽田 これまで百貨店には入らなかったようなテナントにも注目されていますので、新しいカテゴリーを誘致できる可能性はあります。今後、増築して街を大きくして展開していくことも考えられます。
下川 課題となっているカテゴリーのMDは少し修正しなければならないでしょうが、駐車場増設である程度解決できるかもしれません。ショッピングカートは充分に用意していますが、現在では車のあるところまで500〜600m引いていかなければならない。すると、日常的な買い物は控え目にしてしまう。新しい立体駐車場ができれば、そうした煩わしさが解消され食品の売れ方が変わっていくでしょう。また飲食店も来街者数に対して少ないのですが、今年5月に和食と焼肉の2店舗を開業する予定です。全体としては初年度240億円の売上げを見込んでいます。平米効率でいうと、年間50万〜60万円程度となります。
今後ますます、福岡ブロックと比べても遜色のないようにしていかなければならない。地方百貨店トキハとしての軸足と、地方のローカルスーパーとしてのトキハインダストリー、それから、わさだタウンで示した第三の業態です。先ほど申し上げたように、もし大分の商圏に百貨店が2軒あったら足下をすくわれてしまう。ですから新しい業態を模索した。これは私どもの戦略であって普遍性はありません。地域に根ざした戦略というのはそういうことです。 羽田 わさだタウンの成功は少しオーバー気味に言うと、日本の百貨店にとっても朗報ではないでしょうか。現在、百貨店が逆風にある中で、21世紀型のあり方を地方の一百貨店がチャレンジしているのですから。
地域のローカル百貨店としての課題は、お客様の福岡への流出防止です。地元ではモノが揃わないので福岡まで足を延ばすとなっては困るのです。大分の地域の百貨店として福岡に負けない品揃えやサービスをお客様に提供していかなければなりません。大分では福岡のように百貨店を見て回ることはできません。しかし、地元商店街と協力し、マーケティングを行なって地域のニーズを吸い上げ、商品などのモノやサービスにそれを反映させていけば、県内のお客様も満足して地元で消費していただける。地域の活性化にもつながると思います。 さらに、これからの消費というのはモノが充足している状態の中での消費となりますので、お客様の消費をわれわれがつくり出していくことも必要になってきます。少なくとも買い物で過ごす時間が楽しくなければならない。今後、楽しさということがより以上にクローズアップされてくるでしょう。
(2001年3月)
データ 2000年12月現在
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