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■トーク * THE SC [連載第4回] マーケットに向け常に新しい消費バリューを提供する
(株) ららぽーと 代表取締役社長 前田 昌男氏聞き手/ (株)ウエルウエスト代表取締役 大西 直良氏
多様化し細分化する 顧客ニーズを捉え ニューファミリーから アクティブシニアまで マーケットに合わせて施設も変化
前田 21年前というのは、車型社会が進行するなかで、アメリカ型のショッピングセンター(SC)がマーケットに入ってきていた時期です。それ以前の日本の商業施設は、駅ビルや地下街など、駅近の商業施設が主流で、百貨店も比較的都心に集中していました。それがだんだん車型社会になってくると、車を停めやすい商業施設のニーズが高まるとともに、買い物だけではなく食事も楽しみたいというニーズが出てきました。 本格的な郊外型SCの第1号は東神開発さんの玉川高島屋SCですが、駅には近い施設です。私どもの場合は、まだJR京葉線も通っておらず、京成船橋競馬場前から歩いて10分かかりました。そういう立地で思い切ってスタートしたのです。 当時のターゲットは30代のニューファミリーでしたが、20年経った現在、彼らは50代になっています。いわゆる団塊の世代ですね。
前田 はい。21年前にできた施設を私どもは「ららぽーと1」と呼んでいるのですが、そのあと1988年に「ららぽーと2」、2000年に「ららぽーと3」、2001年に「ららぽーとウエスト」がオープンしています。 21年前にはそごうさんとダイエーさんという、まさに当時の商業の雄を核にした専門店街としてスタートしました。その後、そごうさんが経営破綻し、ダイエーさんが経営再建を図るなかで、「核のない大型商業施設」に大きく転換したわけです。 核のない商業施設というのは、常にいろいろと変化をもたせていかなければなりません。さまざまなリニューアルを行ない、客層に幅をもたせながら、あるいは商品やテナントさんを変えながら進化してきたのです。 商業の変遷をみれば、その原点は専門店です。魚屋さんや八百屋さんにしても専門店ですね。それが昭和30年代、40年代頃から、専門店業態の総合化がはじまりました。
前田 ええ。ところが最近では、どちらかというと総合化業態が苦戦をしていて、専門店業態が高い評価を受けています。現在のららぽーとも、全体としては専門店の集積になっています。それぞれの個店が強ければ、お客さまの評価は得られるのではないでしょうか。
前田 現在、ららぽーと1の大規模リニューアルを手がけていまして、一部を除き今年11月にオープンし、来年3月にグランドオープンの予定です。これにより、40代や50代、あるいはもっと上の世代にも来店していただこうと考えています。現在は20代と30代の女性のウエイトが高いのですが、人口構成からいっても団塊の世代は間違いなくボリュームがありますので、いわゆるアクティブシニアに的を絞った展開も今後は行なっていきたいと思います。 ただ、同じアクティブシニアでも、女性のニーズはなんとか読むことができるのですが、男性は非常にむずかしい。消費の主導権を握っているのは男性ではなく、選ぶのは奥さまということが多いですから。
商品鮮度の向上と楽しさの演出で 好業績をあげるアウトレット事業
前田 私どもは現在6か所のアウトレットモールを運営していますが、いずれも非常に順調といえると思います。私自身も「鶴見はなぽ〜と」と「マリンピア神戸」にデベロッパーの立場で関わっていたのですが、その頃に比べると、「アウトレット」という言葉がだいぶ認知されてきたのではないでしょうか。とくに「鶴見」がオープンした当時は、アウトレットとディスカウントの違いもよく理解されておらず、ただ「値段が安い」という認識だったと思います。その後、「横浜ベイサイドマリーナ」や「軽井沢・プリンスショッピングプラザ」、「プレミアム・アウトレット」などの開発もあって、マスコミでも取り上げられることが多くなり、アウトレットがだいぶ認知されてきました。これが現在の好調の理由のひとつだと思います。 もうひとつの理由としては、プロパー店に出る商品のライフサイクルが非常に短くなったということがあります。売れ残ったり、定番からはずれたりした商品がアウトレットに回ってきますので、プロパー店に並ぶ期間が短くなるということは、それだけアウトレットに並ぶ時期が早くなるわけです。つまり、アウトレットの商品鮮度が非常に良くなっていることが評価されているのだろうと思います。
前田 いわゆる“スーパーブランド”ばかりを揃えるということは、日本では非常にむずかしいところがあるのですが、基本的にはアウトレットはブランドの集積でなければいけないと思います。アウトレットの商品には、定番落ちであったり、少し傷があったり、サンプルであったり、という基準がありますので、サイズがすべて揃っているということはありません。それが、たまたま自分のサイズにぴたっと合えば、「この商品がこんな値段で買えるなんて」という感動が生まれます。そういうときに、お客さまは「また来よう」と思うわけです。 しかし、アウトレットはプロパーと違って、自分のサイズがないこともありますし、色が揃っていないこともあります。そういうときにも、「また今度来てみよう」と思わせるための工夫は必要になります。具体的には、売り場をどう表現するか、と接客が重要ということです。 また、アウトレットには観光の要素も必要です。もちろんベースには買い物があるのですが、その延長線上、あるいは周辺に観光施設があれば下支え効果になります。もともと、プロパーとの関係もあって、都心の真ん中にアウトレットはつくれませんから、そういうロケーションの選定は大切な要素です。
前田 そうですね。全体としては小さな商店街とか街づくりをコンセプトにしていますので、そういう楽しさは感じていただいていると思います。街としての回遊性や楽しさは、オープンモールのほうが演出しやすいと思いますが、雨が多いという日本の気象条件の問題や立地条件に合わせた工夫をすることが必要です。 たとえばマリンピア神戸は海に非常に近く、風が強いため、一方はインモールにして、もう一方はオープンモールにしています。同時に、インモールであっても楽しさや回遊性が演出できるような、いろいろな仕掛けをつくっています。
テナント、顧客との トライアングル・アライアンス の確立が重要
前田 アルカキット錦糸町は三井不動産(株)がマスターリースをし、私どもが運営する形をとっています。既存の建物を利用し、しかも既存のテナントさんもいらっしゃるなかで店舗構成を考えていくというのは、いろいろむずかしい点がありました。 アルカキットには、大型専門店と通常規模の専門店があります。百貨店の場合にはシャワー効果や噴水効果など、上階・下階のお客さまに回遊していただく仕組みをつくっているところがあるのですが、専門店あるいは大型専門店の集合体の場合は、お客さまを回遊させるのはむずかしいといえます。お客さまに、「あの店に行こう」という目的来店性が高いからです。これが平面ですと、街のなかを歩く感覚で回遊性を生み出せるのですが、下から上に、あるいは上から下にお客さまを回遊させるのは非常にむずかしいのです。 ただ、そういった制約と限られた時間のなかでも、元気の良い専門店を集めることができましたので、いまのところは順調です。重要なのは、お客さまの声を聞きながら常に変化していくということです。私は、新しく商業施設をつくった場合でも、オープンしたそのときから陳腐化がはじまると考えています。ですから、絶えず変えていくということを考えなければなりません。
前田 「株式会社ららぽーと」は運営会社であるという認識を私はもっています。デベロッパーの部分がないわけではありませんが、基本的にはデベロッパー機能は三井不動産(株)が担い、運営は私どもが担うという大きな役割分担をしています。ただ、社内にはデベロッパー感覚に優れた人材もいますし、小売業出身の人もいます。いろいろな経験をもつ人材がいることは非常に大事なことだと考えています。 運営の役割についてお話しすれば、TOKYO-BAYららぽーとにしてもアウトレットにしても、そのほかの商業施設にしても、テナントと運営者とお客さまのトライアングルのアライアンスをどうつくっていけるか。これが運営会社の最も重要なテーマだと思います。お互いに対話をし、確かなリレーションシップをつくっていかなければなりません。この三者のトライアングル・アライアンスが確立できれば勝ち組になるでしょうし、つくれなければ負け組になるのだろうと思います。
前田 テナント会や懇親会もありますが、おそらくテナントさんとしては顧客情報とか、他の商業施設やテナントがやっていることについての情報がほしいのではないでしょうか。 そこで、私どものなかでCRM(Customer Relationship Management)を構築していまして、その顧客情報をテナントさんにお知らせしています。あるいは、私どもの提供したパソコンをテナントさんが活用して、そういった情報を取り出せるようになっています。まだスタートして間もないので、一部モニター店の方々に試用していただいているところです。
前田 お客さまを知ることは私どもにとっても非常に大切なことですから、買い回り調査やモニター調査などを行なっています。 買い回り調査をいたしますと、たとえば、あの店で買物をする方はこの店にもよく行かれる、というようにお客さまの買物の特徴もキャッチできますので、そういうデータに基づいたお買物情報、サービスなどを私どもからお客さまに提供するということもしています。方法としてはDMもあれば、お電話の場合もあります。
前田 積極的に手がけていきたいと考えています。開発物件の量とも関係してきますが、基本的には他社の施設も運営していきたいですね。
開発よりも運営に重点を置いた 商業施設づくりの考え方が必要
前田 現在、生活者はたいへんな勢いで変わってきています。生活様式や行動様式が多様化していますし、とくに30代・40代の女性は、“私流”の生き方を重視しています。そういう生活者の変化に、私どもも、もっとスピーディーに対応していかなければなりません。価値観の軸で捉えればそういうことがいえます。 また時間の軸で捉えますと、買い物にゆっくりと時間をかけたいというお客さまと、あまり時間をかけたくない、時間を節約したいというお客さまがいらっしゃいます。時間消費型の方に対してはエンターテインメントの要素が必要になりますし、時間節約型の方にとっては、自分の欲しいものを短時間に購入できるのが一番いいわけです。 ただ、時間消費型の人でも、いつもそうだというわけではありません。あるときは時間をかけてゆっくりとお買物を楽しみたいと思われるときもあるでしょうし、時間をかけずにお買物を済ませたいという場合もある。一人の方がそのときによっていろいろな要求をもつということです。そうしますと、TOKYO-BAYららぽーとのように大規模であるということは、必ずしも強みにならないこともあります。 ですから、時間がかかってもそれほど苦痛にならないような工夫、目的の場所に行くまでの時間をなるべく感じさせないような空間演出の工夫も必要だと思います。ひとつの試みとして、入口に近いところにお停めいただいた車を移動するサービス(バレットパーキング)を試験的に行ない、ご好評をいただきました。時間節約型のお客さまへの対応はこれからも考えていかなければならない課題ですが、いろいろな工夫の成果もあって、お客さまの数は確実に増えてきています。
前田 どういう商業施設をつくるかということよりも、それをどう運営するのかということに重点を移すべきだと思います。 最近はオフィスビルなどでも、そこで働いている人たちに視線を向けて、彼らにどういうサービスを提供できるかを配慮した運営をするところが出てきています。商業施設も同様に、テナントさんあるいはお客さまだけではなく、お店で働いている従業員の方たちも快適でなければいけません。その施設で働くことに満足感が得られないと、いい接客ができないと思うからです。 これからは、そこまで配慮した運営を考えていかなければなりません。
前田 そうですね。運営上重要なポイントやマーケットの動向を、開発する時点できちんと把握していなければなりません。その連携が不可欠だと思います。
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