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■トーク * Design対談 アメリカンデザインビジネスの潮流
建築家 (株)プランテック総合計画事務所 代表取締役
大江 匡氏 ネットワークと規模を もたないと建築事務所は 生き残れない 牛建 元ソニーの黒木靖夫さん(ウォークマンを世に出し、つくば科学万博のジャンボトロンを製作するなど、ソニー文化の立役者とまでいわれていた人物)、JEXTの伊藤順二さん(美術評論家)、そして大江さんと私の4人で、前橋市で講演会をしたとき、出番が回ってくるまで一生懸命パソコンをやっていましたよね。まるで人の話を聞いていないように見えましたが、あれは話をメモしていたんですね。あの当時から大江さんのパソコンのスピードは速かった。今日はまずパソコンの話から聞かせてください。パソコンによって何が変わったか。 大江 いま、4大自由業といわれる建築家、医者、弁護士、公認会計士といった人たちの職のあり方が、コンピュータによってずいぶん変わってきていると思います。いままでは設計事務所というのは4、5人いればやっていけましたが、これからはある程度人数がいないと成り立ちません。必要最少人数が、次第に増えてきています。 たとえば公認会計士は、大企業の会計を担当するのであれば、巨大なコンピュータとある程度の人数がいないとだめです。弁護士も同じです。企業訴訟のような場合、世界中の判例が検索できて、弁護団が組めてということになると、小さい事務所では無理です。医者も同じです。デジタルメスなどは数億円しますから、最新の技術を使おうとすればとても個人レベルでは不可能です。 つまりコンピュータシステムを維持するための最低人数が必要になるわけです。私の事務所では光ファイバーの1か月の経費は15万円くらいです。個人事務所でこの出費をするのは無理でしょう。うちの事務所はいま50人いますから、1人当たり3000円になります。これだと普通に個人で使う場合とほぼ同じ額です。 もうひとつは、個々が蓄積したデータを共有することができるということです。設計はデータの蓄積量の勝負になる部分もありますから、これも強みです。3日もあればすごいプレゼンテーションの準備ができます。 牛建 いままでの日本の建築家と違ってずいぶんグローバルな考え方をなさいますね。専門分野である建築だけでなく経済的な視野をおもちです。アメリカの場合は基準が厳しいために、それなりの人数は必要になりますが、たしかに大人数で大きな仕事をこなすと情報を蓄積できるということがありますね。 ただ、アメリカの場合はすべてが専門特化されていて、僕のいた会社でもデザイン部門はデザインしかやりませんでした。1人の人間が打合せをして、プランをつくって、図面まで描いてというのはすごく非効率的ですから。アメリカには特化した思想を認める土壌があって、効率を追求するところがあるからそうなるんですけどね。 大江 かつて建築事務所の最適人数は20〜30人といわれていましたが、いまや50人体制でないとやっていけない時代になっています。専門性も高まっていますから、SCを担当するにしても相当なノウハウの蓄積がないとできないんです。ですから、大きさが必要といっても、ネットワークを前提とした大きさでないと意味がありません。人数が多いだけではだめです。 その一方で、この5年くらいで経営者の質も相当変わってきたという印象を受けます。ひとつには景気が悪いということがよい方向に働いて、経営者の交代が早まっていること。それと同時に、部下に任せきりという昔風の経営者が減って、コーポレートガバナンスが相当強化されています。そういう意味で仕事のチャンスは増えていると思います。 資材の調達にしても、設計の発注などをみても既存のルートにこだわらなくなってきています。 牛建 キャナルシティでジョン・ジャーディの名が一躍有名になった頃ですけど、高島屋をどのデザイナーに頼もうかという話が出ていました。後から、大江さんに決まったと聞いてよかったと思いました。当時、日本の建築家は商業施設を軽視する傾向にありましたが、アメリカでは商業施設もきちんとカテゴライズされているんです。 ところで、来年オープンする玉川高島屋の南館はどのようなものになるのですか。 大江 これまでの百貨店というのは外部が壁に囲まれていて、その内部に店舗があるという形です。しかし私どもは、半外部空間――雨に濡れない外部空間――をつくり、そこにも通路を設けるという構造をとりました。既存の建物の周りに通路があることで、空間の多様性が生まれるのです。 以前、近くに完成したマロニエコートを設計したときにも、外部空間を中庭的に取り込むという提案をしていたので、今回の外部空間を使うというプランも非常によく理解していただけました。ここが、いままでの百貨店と決定的に違う部分です。完成したら驚かれると思いますよ。 牛建 外部空間を中に組み込んでいくという手法以外には、どんな特徴がありますか。 大江 「時感」と「外感」という概念を使ったことです。文字通り、時を感じ、外を感じるということです。SCというのは一般に内部は人工照明だけで、外光を取り入れることはありません。そこでまず、外光を取り込むための吹抜けをつくりました。 牛建 内部と外部をはっきり分けずに融合させて、内部にいても外部を感じることができる空間ということですね。 大江 その吹抜けもちょっと変わっています。ツイスト構造になっていまして、すごくアクティブに見えるんです。各フロアで1店舗だけが吹抜空間の内側に張り出しているのですが、その方向がフロアごとにずらしてあるので、空間が捩じれているように見えます。真上から見ると非常に小さな吹抜けに見えるのですが、各フロアからはずっと広く感じられます。吹抜け効率を小さくしながらも、実際の吹抜けはそれよりずっと大きく感じられるという工夫です。そこに上から光がスパイラルに落ちてくるようにしています。
クライアントの要請に システムとして応えうる 設計が必要 牛建 プレゼンテーションではコンピュータによるCG画像を使われるのですか。クライアントによっては、手描きのパースのほうがいいという人もいるようですが、デジタルで処理したほうが、いろいろなパターンを試せるという利点がありますね。 大江 そうです。エレベータひとつとってもどんどん案を出してCG化し検証していくわけです。外観も内部空間もさまざまな視点から詳細に検証できますから、顧客満足度も高いわけです。プレゼンテーションになったら負けることはありません。 牛建 最近、海外の建築家が参入してきており、発注者側も海外に目を向けるようになっていますが、そのことに対してはどう思われますか。 大江 海外でも状況は日本と同じで、ネットワーク型のプレゼンテーションをつくれるところは少ないです。ですから、本当に能力のあるところはどこかということがわかってきています。要するに、フラットに競争させてもらえれば間違いなく勝てるということです。 牛建 大江さんのやり方は、どちらかというとアメリカ流ですか。アメリカではアトリエ系の事務所でも多くの人数を抱えていますが。 大江 違うと思います。私どもは専門化しませんから。専門的な知識はありますが、仕事は専門化しないのです。コンピュータによって個々人の機能が拡張され、扱える知識の量が増えていますから、単機能な専門家の集合体になるのではなく、コンピュータで武装した多機能者が集まって一つのプロジェクトを完成させていくというイメージです。そこに大きさが必要になるのは、ネットワークの基幹の部分で必要になるからです。 牛建 50人体制で臨めば、デザイン前のコンセプトのレベルで、十分に時間がかけられますね。 大江 そうですね。たとえばオフィスのデザインを依頼された場合でも、まずこれからのオフィス戦略について考えます。その場合、重要になるのは、テクノロジーによって変革を迫られたビジネスプロセスに対応したオフィスとはどうあるべきなのか、という問題意識です。それに対して、システムとして応えられる設計でないとだめなのです。 つまるところ、私どもが目指しているのはコンサルティング会社なのです。オフィスの設計に関わるときも、その企業のすべてに関わるというスタンスで取り組んでいます。 牛建 いろいろなプロフェッショナルがいて、コンサルティングからすべてをパッケージで請けるということですね。 大江 そうしないと玉川高島屋のようなプロジェクトは実現しません。高島屋を見れば私どものやろうとしていることを理解していただけるかもしれません。いままでの既成概念では理解できないと思います。 牛建 建築家として、これから何が必要だと思いますか。 大江 やはり、国家的な再生プロジェクトをやらないといけないと思います。それも、いままでのように既存のシステムに従うようなやり方ではなく、システム自体をどうするかというところから議論を深め、コンサルティングを行ない、そのうえで設計に入るというようにしていかないといけないと思います。 空港をつくるにしても、まず、これからの空港のあり方を議論して、だからこのようにつくるべきだというプロセスになっていかなければいけない。それをやらないから「ハコもの」などといわれるのです。 牛建 建物をつくっても運営ができないということがありますからね。 大江 そういうことが起きないためにも、建築家自身が発言していかなければいけない時代だと思います。 牛建 本日はお忙しいなか、ありがとうございました。 ![]()
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