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■トーク * THE SC エンターテインメントをキーワードとした 創造性溢れる空間づくりを追求する 住商アーバン開発(株) 取締役社長 藤山 正道氏 聞き手/ (株)ウエルウエスト代表取締役 大西 直良氏 商業施設のマネジメントには 創造性が不可欠
藤山 昨年4月、大阪の住商アーバンディベロップメント(株)と仙台の住商エステート(株)が所管するショッピングセンター運営管理事業を統合し、新たなスタートを切りました。大阪では「岸和田カンカン」と「ユニバーサル・シティウォーク大阪」、「千島ガーデンモール」の、仙台では「セルバ」の運営管理業務の営業譲渡と、人の転籍が行なわれました。 そこで、まずは新たなスタートを切るにあたって、人と企業文化がひとつにまとまることが大切と、会社としてのビジョンとミッション、経営理念を改めて明確にしました。と同時に、社会に向けて当社の姿勢をアピールしようと、従業員から経営理念に基づくキャッチフレーズを募集しました。163件の応募のなかから選ばれたのは、「この街を、また来たくなる空間に」というものです。「来てもらえる」ではなく「来たくなる」としたのは、お客さまが主体的に、繰り返し来てくださる空間にしようという思いがあるからです。
藤山 実はそれが、運営をしていくうえで最初の悩みだったのですが、いまではこれを当社の強みにしなければならないと考えています。 ポジショニングをイメージするために、「日常―非日常」を横軸に、「広域―地域密着」を縦軸にして各施設を位置づけてみると、松戸の「プラーレ松戸」と仙台の「セルバ」は“日常・地域密着型”です。「晴海」は、当初はオフィスサポートをコンセプトとした機能とターゲットを設定してきましたが、営業していくなかで、実はオフィスはサブターゲットであり、メインは地域だったことがわかりました。つまり、“やや非日常寄りの地域密着型”ということになります。 岸和田カンカンは、イズミヤをキーテナントとした地域密着型ですが、「ベイサイドモール」という非日常空間としての側面もあり、“バランス型”と名づけています。一方、デックス東京ビーチとシティウォークは“広域・非日常”空間と位置づけられます。 ただ、各施設のポジショニングがあまりに違いすぎると運営はむずかしくなりますので、統一化を図っていくために「エンターテインメント」をキーワードとして掲げています。地域密着型施設も含めて、今後はその方向を志向していくことになります。
藤山 ベースにある施設管理や売上管理という、やや労働集約的な業務を効率化すべきはもちろんですが、それに加えてもっと知識集約的な要素を高めていかないと世の中から取り残されてしまいます。常に創造性をもっていないと生き残れないのです。 たとえば、オフィスビルというのはテナントさえしっかりしていれば、安定収入が確保できます。しかし商業施設は専門店の集合体で、生き物のように千変万化するものですから、常に入れ替えをしてリフレッシュしなければなりません。魚にたとえれば、オフィスビルはマンボウ型、商業施設はマグロ型ということになるでしょうか。マグロというのは、泳ぎ続けていないと死んでしまうらしいですからね。
藤山 はい、考えています。現在、どこの企業もオフバランスを進めており、所有と経営が分離されつつあります。アセットはアセット、プロパティはプロパティとして、それぞれが独立した業務であり、プロパティのキャッシュフローを生み出す力が、ひいてはアセットに影響する。その点では、それぞれポジショニングの違うバラエティに富んだ施設を運営している当社としては、PMの分野で強みを発揮できるのではないかと考えています。 AM(アセットマネジメント)についても、安定収益型とハイリスク・ハイリターン型の割合は6対4くらいを基準に置いている会社が多いようですが、私どもの会社の売上高は逆転している。たとえばキーテナントの大手スーパーを安定収益型、それ以外をハイリスク・ハイリターン型とすると、全体売上高約1100億円のなかで、6割の660億円くらいはハイリスク・ハイリターン型です。ということは、テナントさんとのネットワークを大事にする、あるいはお台場のようにテーマ性の高いアトラクションゾーンをつくるなどして、出店していただく環境づくりをしていく必要があります。店舗は商品の鮮度が大切ですが、ショッピングセンターにとってはテナントさんが商品といえますから、その商品を入れ替えて鮮度を保つ仕組みを構築しなければなりません。
藤山 現在は新しい商業施設開発が少なくなっていますが、今後はREITを意識したPMの分野にも参入する会社が多くなるでしょう。業界地図はこの1、2年で相当変わるのではないでしょうか。 全体を貫くストーリー構築と 人的資産の活用が生命線
藤山 当初はメインターゲットとして想定したオフィスワーカーのサポート機能を重視したテナント構成をしたのですが、実は逆で、土日と平日の夕方は近隣の方々が多く、地域密着型だったわけです。そこで商業施設の内容をリフレッシュして、地域住民のニーズに合うようなテナントに入れ替えています。
藤山 ここでのイベントは、オフィスと商業施設の所有者共益費を活用して街区全体で発信していこうという趣旨で行なわれているもので、商業施設の運営にあたっては、そのイベント活動に連動した販促を行なっています。ですから、単独で販促費をかけて行なう以上の恩恵を受けているという点で、ほかの商業施設とは大きく違います。 今後は、タウンマネジメントの視点から、街区や都市全体でいかにアピールしていくかが重要になります。商業施設は、そのなかの集客機能の中核を担っていく位置づけになるのではないかと思います。
藤山 私は、東京ベイエリア全体を、「みなとみらい」「台場」「青海」「舞浜」の4つのテーマゾーンと見立てています。「台場エリア」にはいくつかのテーマ施設があり、さらにデックス東京ビーチのなかにも「台場小香港」や、今秋オープンする「台場一丁目商店街」などのテーマ施設があります。 これをエンターテインメントの連続性として見ると、まずミクロの世界として商品があります。次に店舗があって人がいる。そしてゾーン、SC、街区、都市と広がっていくわけですが、そのすべてが有機的に連動していればいるほど魅力度が増していきます。また、そうでなければ、来られた人にすぐに飽きられてしまいます。全体をつなぐストーリーを構築することが必要なのです。 また、商業施設のなかには商品と店舗および人という膨大な資産があります。リピートしていただくためには、これらの資産を最大限に活かさなければなりません。 私は、テディベアという商品がなぜ100年も人気を保っているのかということに興味をもちまして、最近、ユニバーサル・シティウォーク大阪に入店していただいていたオーナーにお話をうかがったことがあります。そこで得たヒントの一つが、商品を製作する数量の“限定”、販売する場所の“限定”、そして期間の“限定”です。それはつまり、商品をアトラクティブにするという意味で、台場一丁目商店街に入っていただくテナントさんにはできるだけ多くの限定商品を提供していただこうと考えています。
藤山 また、せっかく「台場一丁目商店街」なのですから、全国の商店街と提携したい、とも考えています。地元で人気のある商品や自慢の商品を、お台場でテストマーケティングしていただき、全国1300万世帯に24時間放送しているジュピター・ショップチャンネルで全国発信していくのです。 商店街に活気があった昭和30年代は、日本人はワン・トゥ・ワン・マーケティングをしていたと思います。ところが、ヒューマンな部分がモノに置き換わり、大量生産・大量消費のなかで、モノ中心のマーケティングに変わってしまいました。 いま再びワン・トゥ・ワン・マーケティングの方向に動きつつあるということは、当時の商店街が新しい姿で蘇ることになるといえるのではないでしょうか。私どもの施設も、そういう良き時代の商店街を見せるショーケースにしたいと考え、昭和30年代の街並みを再現したデザイン演出をしていこうというわけです。
藤山 テーマパークとかミュージアムというのは、遊びや展示からモノへとつながっていくものです。一方商業施設は、モノを売ることから遊びや学ぶことに近づいていく、という気がしますね。 まだこれからですが、遊びの要素を生み出していくために、たとえばコマ回しや折り紙、あやとりの名人といった、人を活かしたイベントをやりたいと考えています。そこから店舗の商品につながっていくような仕掛けをしていけばいいですし、そういう人を地域から集められれば地域密着にもつながるでしょう。 きめ細かいサービスや商品でエンターテインメントを演出し、日本ならではのエンターテインメントを提供したいですね。
藤山 労働集約的なところは徹底的に合理化し、知識集約的な能力を発揮してもらえるようにしなければなりません。日常の仕事に追われていると、外気に触れる機会も少なくなりますから、外部から講師をお招きして刺激的なお話をしていただくなど、徹底した教育投資をしていく考えです。
運営管理という地道な業務を 夢の描けるものに飛躍させたい
藤山 そうです。
藤山 私どもからすれば図書館もホールも資産ですから、それを活かしながら、シャワー効果を生み出せるわけです。
藤山 私もずっと再開発に携わってきましたが、再開発というのはそういう制約がありますね。駅前ですからどうしても市のシンボルにしたいと、都市のデザインから入っていく。また、少し古い再開発事業ですと区画割の区分所有の形態になっていますので、商業者からみると自由度がありません。
藤山 大きい開発ほどそうなりがちですが、コンセプトから運営まで一貫した思想がないと、お客さまには何も伝わりません。そこに、デベロッパーの存在意義も見出せるはずです。 エンターテインメントをひとつのテーマにするというときも、エンターテインメントそのものが一種のベンチャーのようなものですので、基本軸を崩さない範囲でいろいろ実験してみなければわからないところがあります。お笑いの世界でも、百回のギャグで受けるのはほんのわずかでしょう。市場に出してみて反応が高いかどうかで判断するしかない。そういう市場反応型のマーケティングをやっていかないと、エンターテインメントはつくり出せないと思います。 商業施設の基本機能は安全・安心ですが、エンターテインメントは付加機能なのです。基本機能は良し悪しを客観評価できますが、付加機能は好きか嫌いかです。要するに“受ける人”をどうやって見つけてくるかということですから、マーケティングのあり方も違ってくる。つまり、商業施設ではベンチャー型・市場反応型のマーケティングが成功のカギになると思いますね。 商業施設の運営は地味な仕事ですけど、それに没頭していると創造力がなくなってしまう。ですから、“楽しさ”を視線の先に据えて、仕事を着実に進化させていく必要があると考えています。
藤山 こんなに創造的なことがあったのかと驚きますね。それは人を対象にしているからです。 台場一丁目商店街では、「出会い」と「再会」をコンセプトにしています。昭和30年代当時の遊びを知らない若い世代には、その時代の街や生活との新鮮な出会いを演出し、またその時代を知る世代には、当時の自分との懐かしい再会を提供したいと考えています。そしてそこにさまざまな遊び心を盛り込んで、われわれ日本人は豊かな創造性をもっていた、ということを表現したいですね。
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