トーク * Break! NEO専門店!!
 
松山氏 ビッグバンスポーツクラブ 
 
松山 昌功氏ビッグバンスポーツ(株) 代表取締役社長 
 聞き手/ NEO専門店研究会主宰 松本 大地
 
地域密着型のクラブ運営で
オンリーワンの企業を目指す


 
 第2次成長期を迎えたといわれるフィットネス業界。その一方で大手企業によるM&Aや事業提携など、業界再編の動きも活発化している。生き残りのためにますますクラブの独自性が問われる昨今の状況だが、いち早く“地域密着”をコンセプトに掲げ、いわゆる勝ち組になっているのが、ビッグバンスポーツクラブである。大手ではできない個性的な取組みで着実に支持者を広げている同社の松山社長に、フィットネスクラブ事業での成功要因と、今後を展望していただいた。 
 
「エンジョイ・ライフスポーツ」を
目指したクラブづくり

 
―『レジャー白書2002』によると、余暇関連サービス業全体の業況はまだ厳しいなかで、フィットネスクラブは好調に推移しているようです。その要因はどういったところにあるとお考えですか。
 
松山 3つの要因が挙げられると思います。第一に、マイナスイオン発生器や健康食品のヒットにみられるような、ここ数年来の健康ブーム。第二に、国民医療費の増大を背景とした、体に関する意識の高まり。そして第三に、サービス業としての質の向上です。1980年代にスポーツクラブの第1次成長期があり、ノウハウのない企業も数多く参入してきたのですが、それがバブル崩壊後に淘汰され、堅実な運営をしているところが生き残ってきたのです。
 
―全体の市場規模はどのくらいあるのでしょうか。
 
松山 現在、いわゆるフィットネスクラブといわれているところは約2000か所あり、市場規模は3000億円です。  業界としては現在、第2次成長期といわれています。1989年にスポーツクラブの新規開設が年間200か所に上り、これをピークに90年代は年間20〜30か所という状況が続いていました。それがここへきて、年間60か所前後と再び増えてきています。
 
―第1次成長期と第2次成長期を比較して、変化したのはどういうところですか。
 
松山 第1次成長期にはエアロビクスブームがあり、在籍会員数に対する1日の来館者数=来館率は約10%でした。若い人が中心で、スポーツクラブに入会することにファッション性があった時代です。しかし現在は、中高年を中心に実需が増えていて、来館率は20%を超えるクラブがほとんどです。
 
―スポーツ用品市場を見ても、ゴルフやスキー、釣りなどのレジャー系カテゴリーの市場規模が縮小している半面、健康志向やライフスタイル型カテゴリー、スイムウェアやエクストリーム系のスポーツウェア・グッズは伸びています。つまり、ハードの質だけでなく、楽しみ方とかスポーツとの接点が大きく変わったという気がしますね。
 
松山 まさしくそういうスポーツ観を反映しているのが、私どもの創業時のテーマ、「エンジョイ・ライフスポーツ」です。日本人は欧米人に比べて、「スポーツを生涯楽しむ」という考え方が希薄です。これは、「富国強兵」にはじまる日本の体育教育のあり方にも問題がありました。
 
 たとえばかつての日本のスイミングスクールには、素質のある選手を見出してオリンピック選手を育成することを最終目標としていた部分があります。しかし、これでは「エンジョイ・ライフスポーツ」にはなりません。私どもは、選手の育成をするのではなく、主婦の方がサンダル履きで気軽に立ち寄れるようなスポーツクラブをつくりたいと考えています。
 
 
(左)●クラブ受付。“地域密着”を志向するだけあり、会員とスタッフとのコミュニケーションにも親しみが感じられる
(中)●エアロビクス、マシン、フリーウエイトなどのトレーニングが行なえるトレーニングジム
(右)●マイナスイオン水を使用した温水プールでは、水中歩行やアクアエアロビクスなどの教室が開かれる。また、リラクセーションニーズに応えるために大型のジャグジーも設置された

 
 
「一専多能」を経営哲学に
責任とやりがいを育てる

 
―1987年に第1号店を千葉県旭市で開業されたわけですが、そこに至る経緯をお話しいただけますか。
 
松山 私が入社したのは87年1月で、以前は製薬会社に勤めていました。ただ、もともと運動が好きで、レジャー関係の仕事に非常に魅力を感じていたことから、会社を辞めて小さな会社を興し、レジャー施設にコインロッカーなどを入れる仕事をしていました。そんななかで、ドゥ・スポーツクラブに勤務していた現在の森一格会長と知り合い、「直営店を出すので一緒にやらないか」と誘われたのです。
 
 それで、第1号店を出す旭市に行ったのですが、ここは人口が3万5000人しかありませんでした。当時、スポーツクラブは人口が30万人いなければ成り立たないといわれていましたから、正直言ってカルチャーショックを受けましたね。しかし、地域に密着したスポーツクラブをつくりたいという理想と、デベロッパーさんの情熱を支えに、チャンスを与えてもらったのです。
 
 問題は、どうやって会員を集めるか、でした。私どもは、住民一人ひとりにフェイス・トゥ・フェイスで話をしようということで、インストラクター全員で戸別訪問をはじめました。何度も足を運び、「とにかく一度遊びに来てください」と。それが結果的にはスタッフ教育にもなりましたし、来ていただくことへの喜びにもつながったと思います。
 
―外回りは営業の仕事で、インストラクターは教えていればいい、と分業するのではなく、全員が同じ目標を持ってやっていくというのは、大きな責任とやりがいがありますし、何よりも愛着が湧きます。そこから「一専多能」という経営哲学も出てくるわけですね。
 
松山 ええ。一専多能には3つの利点があります。一つはお客さまにとっての利点。たとえばフロントが混雑したときに、ほかのセクションからどんどん応援に来られるわけです。2つめは経営者にとっての利点。少ない人数でクラブを運営することができます。そして3つめは、働く本人にとっての利点です。スポーツクラブのインストラクターを専業でやっていますと、身体能力が落ちたときには辞めざるを得ない。ところが、いろんな仕事をすることでクラブの運営そのものを覚えていれば、ほかにできる仕事はたくさんあるのです。
 
 
(左)●エアロビクスからヒップホップ、クラシックバレー、気功など、多彩なプログラムが用意されている
(中)●エクササイズの前のウォームアップなどに使用される大型の多目的マット。
(右)●受付脇に設けられたラウンジ。このほか託児室やクイックマッサージ、手荷物預かり処など、設備とサービスの充実が目を引く(以上、ビッグバンスポーツクラブ町田)

 
 
健康づくりを目指しながらも
“楽しさ”を提供することがカギ

 

 
―現在の売上げ、店舗数、会員数をお聞かせください。
 
松山 売上げが17億円で、店舗数は直営店が6店とFCが1店、運営受託店が1店の合計8店になります。総会員数は約2万人です。
 
 
―会員に支持される理由をどうみていらっしゃいますか。
 
松山 かつてのスポーツクラブは体を鍛える場所という認識が強く、インストラクターの指導も筋力アップやシェイプアップを目的とするものが中心でした。しかしいまでは、とにかく来て汗を流して、ビールを1杯飲んで帰るだけでも、精神的な意味において大きな効果があるといわれます。結局、健康のためという目的があっても、その場に楽しさがなければ続かないのです。その楽しさを、クラブのなかでどれだけ生み出せるかが重要になります。
 
 それから、われわれは「予想外価値」と呼んでいますが、会員が予想もしていない、感動を与えるようなサービスをどれだけ提供できるかということ。たとえば町田では、大きい冷蔵庫を設置して、買い物帰りの方の生鮮食料品をお預かりすることなど、他のスポーツクラブにはないサービスを数多く生み出しています。
 
―フィットネスクラブ業界の課題としてどんなことが考えられますか。
 
松山 ここ数年、クラブの質よりも料金に目が向いてしまい、値引き合戦になっていることが問題だと思います。時間を切り売りするような設定の安い会員制度をつくったり、入会金をなくしたりするよりも、クラブの価値を競うべきなのです。 
 
―最後に、この事業に対する松山社長の夢をお聞かせください。
 
松山 私は創業当時から、本当の大衆向けのクラブをつくり、スポーツクラブに革命を起こしたいと考えていました。これからも地域密着型クラブとして、オンリーワン企業でありたいと思います。規模的には大手にかなわなくても、その地域では絶対ビッグバンだといわれるような店づくりを今後もしていきたい。それが地域の文化を高めていくことにつながっていけば、というのが私どもの目標です。
 
―どうもありがとうございました。
 
 
主宰の一言 
matsumoto.jpg  単なるスポーツクラブではなく、地域コミュニティーを重視した職場と家庭を結ぶサードプレイスの役割を果たし、結果として見事に出店エリアの地域文化を育てている。そこに見えるのは、「一専多能」の哲学に支えられた接客サービスに対する熱意とこだわりを持ったホスピタリティー集団の姿である。「楽しくなければスポーツは続かない」の言葉はとても印象に残った。体が鍛えられるよりも、心が元気になっていくスポーツクラブとして、これからも業界に良い刺激を投げ掛けて欲しい。
 
(NEO専門店研究会主宰:(株)丹青社 営業開発室プランニング&プロデュース部 部長
 /チーフディレクター 松本大地)
 

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