トーク * 新世代百貨店 21世紀の提言
専門性で勝負! “売場のブランド化戦略”軸に復活劇
“SOGO”再生は営業強化の第2ステージへ
改装3か年計画11店舗改装計画に託されたソリューション戦略とは
 
(株)十合 代表取締役副社長 米谷 浩氏
聞き手/(株)丹青社 営業開発室 専門役 齋藤 秀樹


 
 経営再建中の大手百貨店・(株)十合は、新会社として2001年2月に設立され、和田社長をはじめ役員幹部の多くを西武百貨店から迎え入れ、“SOGO再生(計画呼称は「十合リバイバルプラン」)”の闘いが始まった。
 
 初年度の昨年は、チェーン発想による構造改革やダウンサイジングなど大胆な外科的手術が施され、放漫経営からも脱却してきた。2年目の今年は、100億円の改装資金を捻出し横浜店、神戸店、西神店、広島店、呉店、柏店の改装計画に取り組み、本業強化に入っている。その改装第1弾ともいうべき横浜店食品売場は、現在も好調に推移し、全改装に弾みをつけている。入店客数は、99年実績を超える水準にまで回復、それを受けて改装スケジュールを前倒しで実施することとなった。そこで本号では、今回11店舗の改装計画で陣頭指揮を執っている代表取締役副社長・米谷浩氏にインタビューし、そごう横浜店を軸にした改装計画の全容および新生SOGOが目指す新たな百貨店像に迫ってみた。

 
 
〈変革300日の闘い1〉 
 地に落ちた「そごう」再生は、“顧客支持”の復活劇から着手された。この1年間、表層的には“財務的危機回避の日々”であったが、併行して行なわれたのがネットを使っての「そごうを叱る会」の発足だ。同HP(ホームページ)で用意したコンテンツは、お客さまから小言、クレーム、要望、提案などをダイレクトに受け付け、改革のヒントにするというもの。その間、受信したお叱りメールは延べ3万8000件に及び、トップ自身が目を通してすべてに返信し、即対応できる事はすぐ実行に移してきた。

 
 
横浜店“新・食品フロア”は
テーマを設定し
「買いやすさ」と「専門性」を追求

 
−改装3か年計画の先鞭をつける形で行なわれたそごう横浜店食品フロアの改装は、効果的にはたらき、新生SOGOのイメージをアップし、かなりの顧客が戻ってきている。今回の改装で狙ったポイントは、何でしょうか。
 
米谷 広大な横浜店食品フロア(2400坪)をまず、5つの専門ブロックに分け、“わかりやすく”“買いやすい”売場構成にしたことです。
 
 従来の売場は「どこに何の食品があるのか」が大変わかりにくかった。そこで今回の改装では、「わかりやすさ」と“和”“洋”“アジア”といったテーマ性を設けてグルーピングし、専門店的に対応をしたことです。
 西武百貨店が開発した食品高級スーパー「ザ・ガーデン」の導入、毎日の食卓を飾る生鮮3品が揃う「日本の市場」、人の心を動かす伝統の技・匠に支えられた和菓子や日本料理などの「日本の粋」、世界各地からこだわりをもって集めた洋菓子や洋惣菜、ベーカリー、ワイン&チーズなどの「ヨーロピアングルメ」、そして中華・ベトナム・インドネシアなど豊かな食材と瑞々しいエネルギーに満ちた「アジアンダイニング」と5分割し、“買い回りやすさ”に挑戦したことです。
 お客さまが「今日は和食にしよう」と思ったら日本の粋ゾーンに行けばよいというように、わかりやすくした。また、顧客導線のあり方も再検討して、いかに回遊してもらえるかに配慮したつもりです。
 従来、導線からはずれた売場や商品はどうしても売れなかったが、隅々まで回遊してもらえる導線のあり方を検討し、“和”のルートや“洋”のルートといった「完結性」「つながり」をもたせることで乗り越えたのです。
 また、現在のお客さまのショッピングスタイルをみると、短時間で買い物ができる“ショートタイム・ショッピング”のニーズが高いので、それにも百貨店は応えなければならない。「ザ・ガーデン」の導入は、そこにあります。
 一方で“買い物の楽しさ”を味わってもらうため“こだわり”の専門店をグルーピングし、たとえば和菓子売場では「試食してもらい、おいしかったらお買い上げください」と、専門店の販売手法を導入しました。
 そして、フロア全体は、大食品館「エブリデイ」と名づけ、気に入ったら毎日来店されて、楽しんでもらう“食のアミューズメントスペース”を狙ったのです。
 
−副社長は、機会あるごとに今回の改装は”SOGOのブランド化“ではなく”売場のブランド化“とおっしゃっていますが、なぜでしょうか。
 
米谷  倒産後、横浜駅西口に流れていたお客さまが12月から「エブリデイに行こう」ということで大変な数の方が戻っている。前年対比で108%の入店客数増です。
 その際、お客さまが必ずしもSOGOというストアブランドに付かなくてもよく、食品館「エブリデイ」を気に入ってもらえばよい。そして、ついでに他のフロアに足を運んでいただく。その結果、「あっ、SOGOなのか」と思っていただいてよいのです。
 ひとたび傷ついたブランドを回復する手段として、まずストアのブランド化より売場のブランド化を積極的に進めていきたいと思っています。
 
〈変革300日の闘い2〉 
 十合リバイバルプランのなかで社員に課せられた挑戦課題は、11項目。10か月経過した段階で、合格ラインの○を与えられたのが4項目((1)経費構造の改善、(2)新しい労使関係の確立、(3)情報システムの統一、(4)政策の見直し、新プログラムの開発)のみであった。反対に改革未達の落第(×)は3項目(1社員の意識改革、(2)ブランドイメージの修復と革新、(3)大阪新店プロジェクトの推進)。改革途上の進行形(△)は4項目((1)人事制度の改革と能力開発の推進、(2)ストアオペレーションの革新、(3)外商ビジネスの抜本的見直し、(4)差益構造の改善と新取引先政策)と、和田社長自らの厳しい採点であった。
 したがって、この間、旧SOGO時代の“経営構造改革”だけで利益水準が大幅に改善、今期から黒字化を果たす勢いだ。また、新顧客カード「ミレニアムメンバーズシステム」が導入され、募集10か月間で会員240万人を獲得(ロイヤルメンバーは9万人)、“新生SOGO復活”に対する顧客の期待がここでも証明された。

 
 
新生SOGOの
営業強化策は
専門性強化による
ライフスタイル提案

 
−今春の改装第2、第3弾でも“売場のブランド化”が貫かれ、改装の軸になっていくのでしようか。
 
米谷氏 米谷 現在のお客さまは、商品情報をたくさんもち、レベルの高い接客を望んでいます。売る側も豊富な商品知識をもっていなければ対応できません。また、商品MDの幅広さと奥行き・深さをもった専門店的対応がいま最も求められています。
 一つひとつの商品分野で大型専門店化するとともに、たとえば「ロフト」や「無印良品」といった西武系専門店のほかにも大型専門店を導入して、その集合体が新生SOGOが目指す百貨店の姿ということになります。それを“ポスト百貨店”と命名してもよいですが、あくまで、お客さまのニーズに応えられる小売業のあり方を追求した結果です。
 
−旗艦店の改装手法は、だいぶクリアになりました。次に比較的小さい店舗の「標準店」は、どのような改装になるのですか。
 
米谷 神戸店、広島店などの大規模店舗は、横浜店のようにフルラインで臨みますが、標準店規模では、そのマーケットに合った戦略的MDの展開へもっていくことになります。横浜店のミニ版をつくる気は、ありません。
 変革期の百貨店がいま急がねばならないことが、いくつかあります。最も大切な点は、「従来の中途半端なサービスやMDでは生き延びられない」ということです。差別化策でも、すぐには“真似できない仕組みづくり”から入らないといけない。
 ですから当社では、「同質化できない、まったくディファレントなものをつくりたい」ということが根底にあります。そのため、従来の延長線上にあるものを否定し、大型専門店の統合体に活路を見出しているところです。
 
 
大食品館「エブリデイ」(地下2階)の「日本市場」ゾーンに 京都錦小路市場が出店した 4階婦人服(ミッシー・ミセス)のフロアに全17ブランドの モアサイズショップがオープン 5階紳士服・スポーツのフロア。現代のビジネスマンを装った12体のマネキンが出迎える

 
ソリューションの提供が
小売業復活の
カギを握る

 
−新生SOGOが目指す店舗戦略は、一方で「高質生活専門館」と発表されています。具体的にはどういう内容になるのでしようか。
 
米谷  バブル崩壊後、「自分のサイズに合った生活をしたい」と願う消費者が多くなりました。それを叶えてさしあげることが、まず大切です。質が高いとか低い、あるいは価格が高いとか安いではなく、「自分にとって、この商品がよいな」と思える商品とソフトをいかに揃えるか。また、来店された方には最も心地よい状態を提供したい。  そのように“自分モード”は多様化していますから、百貨店の強みである規模の大きさ、立地のよさを利用して、他の業態にはできない、お客さまの好みで選べるだけの品揃えの豊富さを絞り込んだ商品分野で揃え、そして専門店的対応がなければダメです。
 このように、お客さまの求める生活に最もふさわしいモノがあって、それを解決してくれる“ソリューションの提供”こそ、今後の百貨店には最も必要なことではないでしょうか。
 
−流通業界では、業態間競争が激化しています。新生SOGOは、どの業態と最も競合すると位置づけているのでしょうか。
 
米谷 業態間競合は、関係ないと見ています。私は、百貨店はこういう商品を売り、量販店はこういう商品を売るといった業態論を語っているうちは、真の意味で顧客へのソリューションを提供ができないと思っています。百貨店でもショッピングセンターでも、「お客さまにとって一番いい状態でソリューションを提供して買い物していただくこと」が大事です。
 昨今の論調として、長期低迷する量販店に対して百貨店復権の気配は「消費者の上昇志向の現われだ」という分析があります。が、それは間違っています。上昇志向といった視点ではなく、「その店にお客さまが期待されている品揃えや販売のニーズに応えられているかどうかだ」と見るべきです。
 
 たとえば、ユニクロと量販店を比べてみると、「品質」と「価格」が同じ商品を並べていても、人々はユニクロで買うでしょう。それはなぜかというと、売り方と接客態度が決定的に違ったからです。
 ユニクロでは、アルバイト店員であってもちゃんと商品がわかって懇切丁寧に売っている。それに対して量販店は、カジュアルウエアの買い方、お客さまのニーズに応えていないことにあるのではないでしょうか。それでは消費者がモノを買わなくなると私は思います。
 
−最近、もう一つの調査で「ユニクロのカジュアルウエアが売れれば売れるほど、百貨店にお客が戻ってきている」との報告もありますが……。
 
米谷 その分析も正しくない。ユニクロのウエアに飽きたから百貨店に来るのではなく、「自分にふさわしいものを求めていったら、それが百貨店にはあった」と見るべきでしょう。
 私が思うソリューション型の売場というのは、たとえば「子供服売場」であったら、子供服だけを売るのではなく「育児を売る」といった発想です。その売場に行けば、核家族のファミリーが子育てに関して持っている悩み・問題点が解決される。
 そして、納得して帰っていただくようにすれば、必ずベビーウエア・子供服は買っていただけます。ソリューションを前面に打ち出して、その結果的にモノが売れればよいというスタイルです。
 そういうソリューション型のコンテンツを店として、いかに多く持てるかが大事です。その内容で差をつけ、違う生き物に生まれ変わろうというのが、新生SOGOの目指す新たな百貨店像です。
 
 
オープンカフェ&レストスペース「ミレニアムコート」(3階)は2層吹抜けの開放的な空間 センスのいい大人のスタイルを提案するブランドが揃う(エポカ) 日本最大級の婦人靴フロア「シューズモール ビーワン」 (地下1階)

 
3階婦人服(ヤング・キャリア)フロアに
出店した
「バーバリーブルーレーベル」
700坪の売場面積に35ブランド・ショップ、
11か所のトリートメントキャビンを配した
1階の化粧品売場(コスメディア)

 
 
西武百貨店と十合の
アライアンス戦略
両社の商品部を統合し
体質強化へ拍車

 
〈再生第2ステージ、SSMGが発足〉 
 昨年両社は、SSAC(西武・十合・アライアンス・コミッティ)を発足させ、両社の役員が月1回、将来の同盟型合併(通常、フェデレット型合併)へ向け研究、話し合いの場をもってきた。そして、今年2月13日、「SSMG」(西武・十合マーチャンダイジンググループ)の新呼称で、統合商品部が事業を開始した。スケールとオリジナル商品づくりに挑戦する。とりあえず、西武百貨店のノウハウを容易に取得できる十合に歩があるが、両社合わせて1兆円の売上げを“質に転化する厳しい課題”が横たわっている。

 
−新世紀の百貨店のキーワードとして、「ソリューション」ともう一つ忘れてはならないのは「エンターテインメント」でしよう。百貨店にとって「エンターテインメント」をどう捉え、対応していくのですか。
 
米谷 それは、「祭り」と「市」です。フェスティバルマーケットプレイスと言い換えてもよいでしょう。なぜ必要なのかというと、店舗として器のもつ価値を高めるためにデベロッパーは「いかに人を集めるか」が重要な仕事になります。個々の売場では、ソリューションを通して顧客とのパーソナルな関係を深めることが必要ですが、それだけでは売上げに限度がある。それを増幅してあげるのがデベロッパーの役目で、そのためには祭りと市を企画して動員力を強めなければいけません。
 季節ごとのバーゲンも市としては重要ですが、それ以外にも人を集めるための祭りをいかに企画できるか。そういう仕掛けができるか否かが、明確に成績となって表われてくるでしょう。
 
−さて、改装後に控える2年後の“SOGO改革の第3ステージ”は、西武百貨店とのアライアンス戦略です。百貨店業界にとって初の試みです。将来は、両社の合併も視野に入れているのですか。
 
米谷 合併は、現在考えておりません。それぞれが独立したマネジメントをしていきながら同盟的戦略で共通化できるところは共通化し、コストも下げ、36店舗(西武25店、十合11店)のスケールメリットを追求し、利益も拡大できるようにする。
 百貨店というのは、営業利益率が売上げの2%未満という業態です。そのままでは百貨店の復権はありえません。そこで両社で新たなスキームをつくり、アライアンス戦略で営業利益率が5〜8%を狙える企業体質をつくっていきます。
 具体的には、すでに商品コードを両社で統一して販売実績をいち早く把握できるようにしました。今年2月からは、商品部も池袋本社に一本化しました。このような同盟的提携は、これからの流通業の行き方として新しいビジネスモデルになるでしょう。
 
−最後に“新生SOGO”への抱負をお聞かせください。
 
米谷 十合に転籍して社内変革10か月の闘い。そして再生リニューアルへの着手と、わずか1年の間で、よくここまで来たなと思っているところです。
 今年は、いよいよ横浜店の全面改装、さらに当面、競合の激しい地域にある店舗から順次改装を実施していきます。そして、一刻も早く新生SOGOを再生させたい。ですから、ここ3〜4年は新生SOGOの店づくりに最大限のエネルギーを注いでいくつもりです。 
 幸いなことに、そごうの若手社員、特に30歳代の係長クラスは理解力もあり、本気になって意識改革をしています。彼らが中心になって活躍してくれれば、新生SOGOの再建も遠い日ではありません。
 
齋藤秀樹の提言
 
 SOGO再生のシナリオで特徴的なことは、改革第1ステージ(財務的改革)と同第2ステージ(営業改革)、そして同第3ステージ(アライアンス戦略の新展開)と、明確なストーリーを描きながら推進している点にある。今年は改革第2ステージに取り組む正念場の年で、本業強化をどれだけできるかが問われる。
 
 今回のインタビューで、“次世代百貨店の条件”として「顧客の想いを叶えることのできる小売り(ソリューション型=問題解決型小売り)だけが生き残れる」と断言している。百貨店の活路について、これだけ明確に言明したトップは、米谷副社長以外、寡聞にして知らない。それだけ、勝ち組への移行に自信を深めているのだろう。販売力を左右する3大要素(「商品」「環境」「接客サービス」)のうち、百貨店の最終的差別化の決め手を“専門性の高いサービス提供とこだわりMD”においていることも示唆的である。
 
 そして近い将来、新ビジネスモデルとして、“アナログの顔をしたデジタル企業”を目標に掲げることになろう。“合併”を選ばず、“持ち株会社”方式を選択する理由は、合併による肥大化を避け、デジタル部分を共有化し、各店のアナログは“競わせる”という新しい経営手法を目指しているからだ。そのためにも今回の改装計画は、何としても成功に導いておく必要がある。

 

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