トーク * ブレーク! NEO専門店
 
「NEO専門店研究会」とは、21世紀をリードするであろう新進気鋭の専門店代表メンバーの交流組織であり、その独自の経営哲学や商品開発、店舗戦略、運営等から現在、市場において注目を浴びている異業種専門店20社ほどで構成している。年4回の各メンバーによる講演を中心に、相互のコミュニケーション向上を図っている。
今回は、この研究会メンバーであるお二方にインタビューさせていただいた。

 

 
岡田氏 サンクスネイチャー 
 
岡田 清氏(株)サンクスネイチャー 代表取締役社長 

 
「自然を取り入れた暮らし」という
ライフスタイルを提案する新業態店

 

 
 東京都目黒区の自由が丘に、建物の随所に植栽が施されたガーデニングショップがある。「サンクスネイチャー」と名づけられた店舗には、花苗やファニチャー、雑貨などガーデニングライフを楽しむアイテムが豊富に揃い、ガーデニングスクールも併設、さらにハーブティ等を楽しめるカフェまでもが複合する。「自然を取り入れた暮らし」を提案する(株)サンクスネイチャーには、ショッピングセンター(SC)からの出店依頼や大企業とのコラボレーション要請が相次いでいるという。その独自な店舗コンセプトと事業の展望を、同社の岡田清社長におうかがいした。
 
街に広がりをみせる
サンクスネイチャー文化

 
―まず、貴社の事業内容と企業理念からお聞かせください。
 
岡田 当社の設立は1994年5月で、同年9月に自由が丘に「サンクスネイチャー自由が丘店」をオープンしました。設立当初から、ガーデニングを中心にしたショップとスクール、造園の設計・施工という3本柱で運営しており、昨年10月に「自然を取り入れた暮らし」をテーマとする生活提案型の企業理念に転換し、自由が丘店もリニューアルして「サンクスネイチャー」と名称変更し、第2次創業という形で事業展開を拡大しているところです。
 現在は自由が丘店、たまプラーザ店(横浜市青葉区)、取手店(茨城県取手市)の3店舗で、今年中に4店めをオープンする予定です。現状の年商は5億円程度ですが、5年後には年商50億円を目指したい。そういうチェーンオペレーションができる小売業に向けて、事業構築している段階です。
 
―「自然を取り入れた暮らし」の具体的なイメージは。
 
岡田 簡単に言えば「都会生活のなかに植物を中心とした自然のものをめ取り入れ、それを育て・愛でることで暮らしの豊かさを実感するライフスタイル」のことです。それを実現するうえでのさまざまなサポートを当社が行なっていくわけです。それは、花苗やファニチャー、ガーデニンググッズ、雑貨・衣料品などの販売を中心に、ガーデニングスクールや料理教室の開講、造園の設計・施工など多彩な分野に及んでいます。
 私はかつて「無印良品」の良品計画に身をおいていましたが、現在の小売業をみると価格訴求型とライフスタイル提案型に二極化している。当社は後者を目指しており、都会の生活がハイテクの方向に進めば進むほど自然を愛でる心が強くなりますので、事業としては今後ますます有望だと確信しております。
 
―ショップとしての展開だけでなく、自由が丘ではいくつかの店やプレイスポットを巡る「サンクスネイチャーバス」を独自に運行し、これも全国から注目されていますね。
 
岡田 自由が丘の駅前から目黒通りをグルッと回る乗車賃無料のマイクロバスですが、その特徴は天ぷら油の廃油で走らせていることです。環境に優しい、自然に感謝するというサンクスネイチャーの理念に共鳴いただき、いくつかの企業に協賛していただいて実現しました。
 
―ひとつのショップが街の文化にまで広がりをもっているのは、たいへん素晴らしいことですね。ところで、最近はSCへの出店も目立ちますが、手応えはいかがですか。
 
岡田 たまプラーザ店と取手店はいずれもSC内での展開です。特に取手店では、開業直後からたいへんな数のお客さまで「こんな素敵なお店ができてうれしい」との声が相次いでおります。植物の好きなお客さまがこんなに大勢いらっしゃるのかと、今後の出店にも自信を深めているところです。やはり、地元に密着した形でサンクスネイチャーの文化を発信していきたいですね。
 
大手企業からの
提携依頼も相次ぐ

 
―SCのテナントとして出店依頼が相次ぐとともに、大企業からコラボレーションの要請も多いとか。
 
岡田 すでに東京電力さんと提携して、同社が三鷹市で賃貸している住宅展示場に、ガーデニング用品を販売するショップとカフェテリアからなる「ネイチャー・クラフトガーデン」をオープンしています。
 またファンケルさんからは、健康・美容によい業種を組み合わせた「ファンケルガーデン・インフォレスト」とのテーマで、一緒に商品開発・業態開発してくれないかとの依頼がきております。
 
―新しい融合型の商品スタイルですね。物を売るといっても、そこに哲学や暮らし、環境といったストーリーをもたせることが重要です。その意味で、貴社のようなしっかりした理念をもつ企業とのコラボレーションを求める動きは、今後さらに活発化してくることでしょう。生活に必要な商品は価格競争で値は下がってきますが、暮らしに楽しさを与える商品は安く売る必要はない。それ自体に付加価値があるからです。その意味で、サンクスネイチャーさんのような独自の提案能力に評価は高まるのですが、事業戦略はいかがですか。
 
岡田 当社の出発はガーデニングショップですが、それだけであればマーケットが限られます。そこで植物や自然をテーマとした雑貨・衣料品にまで商品の幅を広げ、これらの小売りによって安定成長と確実な収益を確保することが大事です。それも単に物を売るだけでなく、ライフスタイル周辺の需要にも対応できることが当社の強みになってきます。そのためにも当面は、ショップ事業の拡大とサービス事業の収益化をテーマにしていきます。
 
―最後に、岡田社長の夢を。
 
岡田 サンクスネイチャー(自然さん、ありがとう)というコンセプトからいえば利潤追求がむずかしい面もありますが、物販を通じて収益の軸を確立し、そのうえでNPO動を展開することで地域貢献できればと思っています。夢としては、欧米では自然に感謝する気持ちがあまり強くないのですが、海外にサンクスネイチャー業態が成り立つかどうかチャレンジしたいですね。
 
―ありがとうございました。
 
 
自由が丘「サンクスネイチャー」の外観。
手前が天ぷら油の廃油で走る乗車賃無料の
「サンクスネイチャーバス」
入口にも鉢植えが所狭しと
並べられている
屋内とは思えないほど緑豊かな
ショップ風景
オーガニックコットンの衣料品や雑貨、化粧品、食品など
"自然に優しい"商品を多彩に品揃え
ランチやハーブティを楽しめるカフェも
付帯する

 
 
 


 
丸山氏 浪漫館横浜 
 
丸山 佳伸氏(株)するがや 代表取締役社長 

 
新業態の手づくりカツサンド店で
新たな中食文化の創造を目指す


 
 百貨店やショッピングセンター(SC)内のわずか6坪のスペースで月商500万円を売り上げる驚異的な新業態が、テイクアウト専門の本格的カツサンド店「浪漫館横浜」である。国内8店舗のほか、2001年9月にはシンガポールへ海外初出店を果たしている。同店を展開する(株)するがやの丸山佳伸社長に、新業態開発の狙いと中食市場に対する事業の展望をおうかがいした。
 
百貨店やSC内のわずか6坪のスペースで
シニアのためのファーストフード

 
―まず、貴社のプロフィールと事業内容からお聞かせください。
 
丸山 当社は、私の父である現会長が1981年に創業し、とんかつ惣菜専門店を総合スーパーのインショップとして全国に60店舗ほど出店しています。私が入社したのは97年で、99年に社長に就任し、昨年から新業態として取り組んでいる手づくりカツサンド専門店「浪漫館横浜」のチェーン展開を積極的に進めています。今年8月期決算では売上高23億円、3年後に60億円を目指しています。経営理念は「新しい中食文化の創造と育成を通じて社会に貢献する」ことです。
 
―新業態の「浪漫館横浜」がたいへん注目されていますが、どのような発想から生まれたのですか。
 
丸山 もともと、とんかつ屋ですからメニューのひとつにカツサンドがあり、その売上構成比がけっこう高かったのです。当社としては、とんかつ惣浪漫館横浜菜専門店として百貨店や総合スーパーにどんどん出店したいのですが、すでに老舗のとんかつ屋さんが入居しており、なかなか出店のチャンスが回ってこない。そこで、何か新しい業態開発に取り組まないとインショップでの展開はむずかしいと気づき、テイクアウトのカツサンドに特化して、たこ焼きや大判焼きのような実演販売でシズル感を出すことにしました。
 また、カツサンドは和洋折衷の食べ物でハイカラなイメージがあることから横浜のイメージに合致させ、昭和初期の浪漫を感じさせるノスタルジックな雰囲気を店づくりや従業員のユニフォーム、看板などにデザインしました。メインターゲットは団塊世代から上の中高齢者層で、“シニアが気軽に楽しめるファーストフード”をコンセプトにしています。
 
―すでに首都圏に8店舗オープンし、シンガポールにも海外初出店されたとのことですが。
 
丸山 オーチャードロードという目抜き通りに島屋さんが運営する東洋一のSCがあり、改装に際して「浪漫館横浜Cafe」を出店しました。シンガポールでは外食比率が非常に高いことから10席ほどのカウンターを設け、カツサンドだけでなくカツカレーやとんかつ定食も提供しています。日本人の駐在員、特に奥さま方にたいへん喜ばれています。
 
―丸山社長は2代目ですが、先代が築かれた伝統の味を残しながらも、時代に合った業態開発・商品開発をなされていることは素晴らしいですね。ところで社長は、アメリカ・シリコンバレーのIT業界に身をおかれていたとのことですが、カツサンドをファーストフードとしてアメリカナイズしたのは、やはりアメリカ文化の影響があったからですか。
 
丸山 アメリカのSCには必ずフードコートがあり、いつもファミリー客でにぎわっていました。したがって、フードコートに展開できる業態を開発したいとの思いが「浪漫館横浜」のヒントになったことは確かですね。事実、あるSCデベロッパーからはフードコートへの出店要請もいただいており、少しバージョンを変えて展開する予定です。
 
 
ヒューマンタッチな
サービス・商品

 
―新しい中食文化の創造を目指されるうえで、今後の事業戦略は。
 
丸山 日本の外食市場は23兆円程度で頭打ちであるのに対し、弁当や惣菜といった中食市場は7兆円くらいで、まだまだ伸びていきます。そのなかで、家業として創業したとんかつ屋からワンステップ脱却していかなければならないとの思いは強いのですが、どういう事業展開をするかは正直言って試行錯誤の段階です。
 しかし、中食を利用されるお客さまのニーズは、有職主婦の時間節約志向を筆頭に個食化傾向や高齢社会の進展と、きわめて根強くなっています。そういうニーズに対して、どのようなソリューションが提供できるかが当社最大のテーマであることは間違いありません。しかも、そのような個々のニーズを掘り下げていけば、まだまだ中食マーケットでのビジネスチャンスは膨大にあります。たとえばデリバリーでも、ピザ以外にも成り立つ要素は十分にありますよね。私は「家で食事をすることに、もっと豊かさをもってもらいたい」との提案をしていきたいのです。「浪漫館横浜」でも、単にカツサンドを売るだけであれば平台に並べておけばよいのですが、そうはしたくなかった。「1個ずつ手でつくった“温かさ”を伝える」―これがメッセージなのです。 
 従来、効率ばかりを追求してセルフ化が進んできたわけですが、これからはヒューマンタッチな商品・サービスが小売業でも求められてくるのではないでしょうか。私自身も、かつては惣菜屋はおいしさが勝負だと思っていたのですが、それに加えて、おいしさをお客さまにアピールするため対面販売の重要性に気づき、そのプロトタイプが「浪漫館横浜」でもあるわけです。
 
―最後に、今後の夢を。
 
丸山 私が海外勤務で得た経験で言えば、海外から日本を見ることがとても勉強になりました。そこで、「浪漫館横浜」の海外出店を強化して、そこに当社の社員を海外研修で送り込み、日本文化を伝えるとともに海外文化も吸収してほしい。フードサービス業界で海外に目を向ける人はあまりいないのですが、若者にそのようなチャンスを与えてあげることが私の夢ですね。
 
―素晴らしいお話をありがとうございました。

 
都筑阪急の地下1階にオープンした
「浪漫館横浜」の店舗風景。
平日の昼前にも行列ができる人気ぶり
わずか6坪のスペースで月商500万円を売り上げる
 
目の前でカツサンドの製造工程
を見ることができる
手づくりに加え、揚げたての
カツを使用するので“温かさ”
があふれる
従業員のユニフォームにもどこか
ノスタルジーが感じられる

 
 
主宰の評 
小が大に勝つ。個性化・差別化が重視される時代だからこそ、NEO専門店が注目される。両社に共通するのは、豊かさのパラダイム変化に対して、時代の先取性と事業創造性に優れていることである。
 さらなる発展成長のなかで、どのように専門店としての「感性と科学の共有バランス」を舵取りしていくかが、今後の課題であろう。
 
(NEO専門店研究会主宰:(株)丹青社 営業開発室プランニング&プロデュース部 部長
 /チーフディレクター 松本大地)
 

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