■トーク * インタビュー前田 和久氏/(株)ツーリズム・マーケティング研究所 代表取締役 集客コアとしての 観光系ミュージアムへの期待 旅行業最大手のJTBではこの6月、旅行と観光に関するマーケティング調査研究会社として (株)ツーリズム・マーケティング研究所を全額出資で設立した。新会社は、グループ会社だけでなく国内外のすべての観光産業に対して、基礎調査からプロモーションまで幅広く支援・サポートすることを目指している。代表取締役である前田氏に、旅行市場からみた観光系ミュージアムへの期待と展望を伺った。
97年11月から実質27ヶ月続いた取扱額の前年割れといった状況から昨年2月に脱し、2000年度は景気の回復もあり取扱人員、取扱額とも好調に推移しました。現在の旅行関係市場規模は20兆円前後だと推計されています。国内の方がより進んでいるのですが、パッケージツアーでは国内海外とも、自由時間がふえて、旅行にもより"自分らしさ"を求める傾向が強いようです。今年度はユニバーサル・スタジオ・ジャパンや東京ディズニーシーの開業などもあり国内旅行に活気があります。 また、旅行情報の入手方法として、インターネットへのアクセス件数が倍々で増加しています。旅行は現在のところ明らかに非完結型ネットビジネスで、オンラインで精算処理する方の倍以上がネットで旅行情報を探索していると推測されます。これからの旅行業務において、インターネットの重要性はますます高まると予想されます。
日帰りツアーがふえる一方で、同じ場所に2連泊、3連泊というのが近年の傾向としてあります。受け皿としての旅館やホテルでも連泊のお客さまへの対応が課題になっています。移動距離を短くして滞在を長くしようとのニーズが増加し、旅行会社でもそのようなパッケージの商品化が進んでいます。
ここ数年顕著なのは、アジアに行かれる方が増加していることです。従来のようなリゾート志向だけではなく、"まち"の魅力を訪ね都市型アジアを好む傾向が目立ちます。なかでもソウルは、飛行機以外のアクセスも豊富にあり、海外という意識もあまりなくて気軽に出かけられるようです。昨今はいずれも「食」が重要なカギになっていますね。
熟年層といっても2つに分けて考えるべきでしょう。ケアが必要な方々と、いわゆるアクティブシニアと呼ばれる方々です。特に後者は、将来設計が明快で自由になるお金を豊富に持っており、旅行マーケットとしても新たな柱となる対象です。最近の傾向としては、旅行に慣れてこられて、ひと味違うものを望むようになってきています。旅行が特別なことではなくなり、リタイアした後のライフスタイルの一環として日常的に組み込まれつつあることは確かです。 旅行形態も体験型・学習型が好まれ、博物館などの会員になって、博物館の運営をサポートしながら自分の勉強をする方も多いようです。博物館が"見る"対象としての一過性のものから、"体験し所属する"ものに変わってきているのと絡む流れでしょう。海外の博物館との人的交流の入口となることも予想され、これにはインターネットという新しい情報インフラがバックサポートシステムとして大いに寄与するだろうと思います。
観光とは「光を観る」と書きますが、結局「光」とはその国や地域の文化・伝統・芸能等の総合的な力のことだと思います。私たちはこれらの「光」をマーケティングという視点で捉える努力をしてこなかったし、自分たちの観光資源の価値を冷静に見極めるという風土も育ててきませんでした。観光施策の問題に取り組もうとするなら、その資源がグローバルスタンダードのなかでどの程度魅力あるポジションにあるのかを、客観的・第三者的な目で判断するところから始める必要があります。
地域資源として魅力あるものにするには、まずその地域に密着して、地元の人たちにとって魅力のある施設に育てることが大切です。「地元の人の想い」をキーワードに、「運動体」として機能するミュージアムが地域資源としては有効ですね。 マネジメントについても、性急な効果を期待せず長いタームで考えないと、素材を台なしにしてしまいかねません。施設だけにこだわらず、「時間」が育むものを大切にしながら周辺の資源−その土地の空気や風土−と渾然一体となったものとして捉えることが必要です。そのために必要不可欠なのが、地域の方々の協力と努力です。
旅行商品として見るなら、移動の線で結べるようなセールスポイントとか、自然資源との平面的な連携などを明快に打ち出せたら、商品化しやすいですね。地域と密着して時代の流れを把握しながら展開することで、ミュージアムは集客ビジネスの大きなコアになると思います。単に観光業という形態にとどまらず、トータルなライフスタイルにおけるコアとして求心力のあるものになることができれば理想的です。魅力のあるものが、自然発生的に人から人へのコネクションを通じて次第に認知され、それが歴史のなかに収まっていくという形態が望ましいと思います。
様々なアイデアや課題をお持ちの方の交流を仲立ちし、課題の共有と解決をお手伝いするなかから旅行市場を活性化させるのがひとつの命題です。観光資源についても、第三者としての冷静な判断を提供できればと思っています。さらに実際の施設づくりまで視野に入れて、多面的な要望やニーズに応えられる事業モデルを構築したいと考えています。
(2001年7月)
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