トーク * Break! NEO専門店!! 連載15回
 
インターメスティック
 
上野 照博氏
(株)インターメスティック 代表取締役社長 
聞き手/ (株)丹青社 営業開発室 SCマーケティング研究所 所長 松本 大地
 
SPA型ビジネスモデルで実現した5・7・9のスリープライスで"着替えるメガネ"を提唱。
「複数所持」の推進を図るとともに、第2のショップブランドを立ち上げ、新たな顧客層の取組みを図る。
 

 近視や遠視、老眼などの理由でメガネを使用するメガネ人口は、ここ数年増加傾向にあるが、メガネは依然として「高級品」というイメージが強い。そうしたなか価格を1万円を切る5000円、7000円、9000円のスリープライス(税別価格)に設定した「Zoff」(ゾフ)の登場は大きな話題を呼んだ。Zoffが取り扱うフレーム数は約300型で、1型につき4〜6色揃える。そのバリエーションの豊さとリーズナブルな価格設定がメガネを"ファッションアイテム"の一つとして捉える層から支持を集め、現在、店舗数は、FCも含め37店舗、年商は約45億円に達する。また大手メガネチェーンが低価格店の展開に乗り出すなど、Zoffはメガネ業界に"地殻変動"ともいえる衝撃を与えている。

出店戦略のミスで、一度は失敗。
再挑戦で実現した「行列のできるメガネ店」

―上野社長はアパレルのご出身とお聞きしていますが、なぜメガネ業界に進出されたのでしょうか。

上野氏 上野 上野 私は以前「ポロクラブ」というファッションブランドのライセンスビジネスを行っておりましたが、そのライセンシーにメガネフレームメーカーがあり、そうした関係で10年ほど前にブランド品のメガネを廉価で販売する「ガリレオクラブ」というメガネショップを開業したのがきっかけです。ガリレオクラブは、流動性の低いところでの出店が多いなど、エラーが重なり失敗しましたが、その経験をもとに2001年2月、「Zoff」1号店を下北沢にオープンしました。

―そうした苦い経験をされながら再度チャレンジした「Zoff」ですが、なぜスリープライスの発想が出てきたのですか。

上野 アパレルで紳士服の担当の方とお取引があったので、このビジネスモデルを伊勢丹に提案しました。そのときは5000円のワンプライスを考えていたのですが、ワンプライスでは"安物"というイメージがつきまとうので、3プライスくらいにしたほうがいいというヒントをいただきました。それで1万円を超えない範囲で5000円、7000円、9000円に価格設定することにしたのです。

―下北沢では、マーケットにうまくマッチしたようで、爆発的なヒットになりましたね。

上野 当初ZoffはFCでの展開を考えていたのですが、1号店の出店がなかなか決まらず、直営で展開するしかないということで、下北沢のガリレオを全面改装して第1号店を開設しました。『行列のできる店』ということでマスコミにも取り上げられたのが、かなり宣伝になったと思います。ピーク時には40坪の下北沢で月4000万円の売上げがありました。いかに多くの方がこのリーズナブルな価格に魅力を感じておられたかということだったと思います。

―メガネ業界のイノベーターとしての、ご苦労もあったのではないでしょうか。

上野 商品についていろいろ揶揄されましたね。ただ私どもはSPA方式を採っていて、レンズは韓国、フレームは中国から開発輸入しているので、中傷的なことを言われても商品の供給がストップすることはありません。国内で調達していたらビジネスの成功はなかったと思います。

 

ネクタイを替えるようにメガネを"着替える"
複数所持の推進で「メガネ1兆円市場」へ

―メガネ業界の出身ではないから思い切ってチャレンジできたということですね。御社のキャッチフレーズに「毎日ネクタイを着替えるように」というものがありますが、これもアパレルからの発想でしょうか。

上野 私は『着替えるメガネ』というものを提唱しています。たとえば、1週間同じネクタイを締めているという人はいませんよね。ですから、ネクタイを替えるような気持ちでメガネも毎日替えて下さいということです。メガネ業界は年間売上げが6000億円を超えられませんが、私は10年間で1兆円産業にしたいと思っていますが、そのためにはどうしてもメガネを複数所持してもらう必要があります。それには機能面ばかりでなく、「似合う」「格好いい」「素敵」という基準でもメガネが選ばれるようにならないといけません。
  まだ平均2・5〜2・7本しかお持ちでないので、ネクタイの本数だけ、つまり20本は持って欲しいのです。私たちのテーマは四季折々に服を買うようにメガネを買っていただきたいということです。しかし来店のサイクルはいまだ1年未満にもなっていません。それでもいままでは3〜5年に1回の来店であったお客さまが、うちの店を体験することでサイクルが非常に早くなってきています。リピーターの比率も非常に高くなっていて、この4年半強で私どもの顧客は100万人に達しています。

―その「着替えるメガネ」を支えているのがSPA方式なのですね。

上野 デザインは日本のデザイナーが考えて、それを中国側のスタッフと打ち合わせながら中国で生産しています。現在、生産サイクルは3か月かかっていますが、1年以内に2か月にしたいと考えています。

―先日リニューアルオープンされた表参道店ではカフェが併設されるなど、またイノベーションをされたなと思いましたが、手応えの方はいかがですか。

上野 表参道店は店舗面積が75坪とスペースに余裕があったので、メガネを作っている間、お待ちのお客さまにはお茶でも飲んでいただければと思ってカフェを入れましたが、実際はカフェだけを利用する人の方が多いですね。場所柄、外国人の方やご年配のお客さまも多いです。

―とてもお洒落な雰囲気なのでスリープライスのメガネに付加価値がついたように感じます。

上野 もともとZoffは、安物を売っているわけではありません。やはり値ごろ感が大事で、お客さまがお金を支払ったときにご機嫌であるのが一番良いビジネスだと思うのです。私どもも将来に向けて価格の低いところでしっかりした利益確保の構造を作っておかなければと思っています。

JR原宿駅前の歴史あるマンション「コープオリンピア」1階で展開する「Zoff表参道店」 表参道本店に併設されたカフェ「ゾファージオ」
(左)●JR原宿駅前の歴史あるマンション「コープオリンピア」1階で展開する「Zoff表参道店」
(右)●表参道本店に併設されたカフェ「ゾファージオ」

ヤングのライフスタイル専門館として2005年10月23日にリニューアルオープンした千葉そごうの「オーロラモールジュンヌ」に入る「Zoff千葉オーロラモールジュンヌ店」 「CONSOMME」の第1号店として東京・日本橋の商業施設「COREDO日本橋」2階にオープンしたCONSOMME COREDO日本橋店」
(左)●ヤングのライフスタイル専門館として2005年10月23日にリニューアルオープンした千葉そごうの「オーロラモールジュンヌ」に入る「Zoff千葉オーロラモールジュンヌ店」
(右)●「CONSOMME」の第1号店として東京・日本橋の商業施設「COREDO日本橋」2階にオープンしたCONSOMME COREDO日本橋店」

 

100万円でも満足していただける
メガネを実現してみたい

―お客様の満足ということでは、Zoffの接客には「一期一会」を大切にした独特の空気感があり、とても心地良いものがありますね。

上野 やはり若い人たちにファンになってもらわなければなりません。口コミ情報で来店するお客さまが非常に多いのです。その代表がファミリー。まず息子さんや娘さんが買いに来て、お父さんやお母さんを連れてくるというケースが多いです。

―「Zoff」に続くショップブランドとして「CONSOMME」を立ち上げられましたね。

上野 第2のブランドは、Zoffをより進化させ、女性を意識したファッション性のより高いものを立ち上げたいと考えました。そこで、六本木ヒルズに開業のときにアプローチしたのですが、そのときは残念ながら出店はかないませんでした。その後も機会をうかがっていたところ「コレド日本橋」さんからお話をいただき、実現したわけです。価格帯は1万2000〜2万4000円にしています。

―斬新な店づくりには度肝を抜かれましたが、設計にあたっては何か注文を出されましたか。

上野 店づくりはすべて下の息子の常務に任せましたが、新しい発想でしたね。やはり感性が大事で、若くなければ駄目だなと思いました。

―最後に、今後の事業展開についてお聞かせ下さい。

上野 これからはセレブもターゲットにしていきたいと思っています。そのときのビジネスの方法は180度変えざるを得ないと思います。しかし底辺に流れるものはやはりお客さまの満足度だと思います。たとえば、メガネの価格が100万円でも満足していただくにはどうしたらよいか。そういうことを考えたりもしています。
  また、できるだけ早く株式の公開を果たしたいと考えていて、それができた暁には再び新しいことへのトライをと考えています。そのときは、私が旗振り役ではなく、若い人たちの希望や夢がかなえられるような形で、新しい事業の仕組みを考えたいと思っています。

―お忙しいなか、本日はありがとうございました。

関連サイト : Zoff 

対談後記 
松本  高齢化社会における専門店マーケティングを考えるとき、メガネ業界を解析すると次世代の在りようが窺える。成熟化先進国であるヨーロッパの中・大型SCの多くには、メガネ店は3〜4店舗出店しており、生活者志向での色々な業態が揃っている。私共研究所ではメガネ店を、プレステージ型、総合品揃え型、セレクトショップ型、低価格志向型に分類した。それぞれの業態でのリーダー企業は、他社との差別化戦略が明快である。Zoffはスリープライスショップとして低価格志向型で君臨するトップリーダーであるが、何故Zoffに追従した同業他社が次々とこの市場から去っていったのだろうか。おそらく生活者が、価格訴求だけでなく、デザインやアフターフォーローといった要素まで求めてきたからであろう。上野社長が唱えるメガネの複数所持論は納得できる。先日、Zoff原宿店にて気に入ったデザインのメガネを購入、素敵なメガネケース付で5250円は、ネクタイ一本の消費感覚である。今後、年齢を問わず生活空間、オフィス空間の中で顔のオシャレを楽しむ志向は急増していくであろう。
 

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