トーク * THE SC [連載第11回]
家の近くで買い物がしたいというお客さまのニーズに対応してSCを開設

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代表取締役社長
 川戸 義晴氏
聞き手/ (株)丹青社 営業開発室 SCC1部 部長 長谷川吉男

SCというのは「人工の街」。
三世代が楽しく集まれるところでなければなりません

 イオン(株)を中核に国内外157の企業で構成するわが国最大級の小売企業グループ「イオン」にあって、日本におけるショッピングセンター(SC)開発をリードするデベロッパー企業として展開するイオンモール(株)は、「車を利用して便利に快適にショッピングをしたい」「いくつものお店をじっくりと比較しながら買い物をしたい」「家族揃って1日楽しく過ごしたい」といったニーズが生活者の間で高まるなか、大規模複合型ショッピングセンターを全国各地で開発・運営し、多様な生活者ニーズに応えてきた。また、環境保全活動や社会貢献活動を推進するなど、未来に向けた活動にも積極的に取り組んでいる。

「LAZONA川崎」完成予想図 「(仮称)豊洲プロジェクト」完成予想図
左●九州最大級のSCとして2005年5月19日グランドオープンした「イオン宮崎ショッピングセンター」
右●"光の街宮崎で、イオンはじまる。"をコンセプトに地域のお客さまに「楽しく」「美しく」「親切な」SCを目指す

本格的モール型SCは まだ歴史が浅く
これから切り拓いていく部分が多い

−イオンでは、御社のほかにも、イオン(株)、(株)ダイヤモンドシティ、ロック開発(株)がデベロッパーとして、それぞれSCを展開されています。イオンのSC戦略における御社のポジショニングと御社の出店戦略についてお聞かせください。

川戸 SC先進国のアメリカには、マーケットに応じてNSC(ネイバーフッドショッピングセンター)、CSC(コミュニティショッピングセンター)、RSC(リージョナルショッピングセンター)、SRSC(スーパーリージョナルショッピングセンター)と、さまざまなSCの形態がありますが、日本はまだそこまで到達していません。

 アメリカでは、フリーウエイを下りた、周囲に住宅がほとんどないところにRSCやSRSCが立地し、住宅地の周辺に近付くにつれて、それがCSCやNSCになってきます。つまり、非日常型商品を販売するSCがインターチェンジ周辺にあって、日常品を販売するSCは住宅地の近くにあるわけです。

 ところが日本の場合は、高速道路のインターチェンジを下りるとすぐに住宅地が広がります。しかもアメリカのように所得層による住み分けがほとんどありません。ですから、アメリカのようにSCの業態をはっきりさせることは難しいと言えます。  そのため日本では、生鮮食品などの日常品を販売する店舗とファッションなどの非日常品を販売する店舗が混在したSCにならざるをえないのです。

 イオンでは、ファッションの専門店などを入れたエンクローズドモール型SCに取り組んでいるのが私どもイオンモールとダイヤモンドシティであり、近隣郊外型を中心としたSCを開発しているのがイオン(株)とロック開発です。

 本格的なモール型SCは1県で3、4施設、全国では150〜200施設が成り立つと考えられますが、現在はまだ50施設程度しかありません。本格的なモール型SCというのは歴史が浅くて、これから切り拓いていく部分がまだ多い。

 しかも、今後100〜150施設のSC開発が可能であるなら、グループ内競争もしながら開発していくほうが効率がいいのではないかということで、取り組んでいるところです。ある意味、業態としてのSCというのをどう考えるかということで開発しているというのが、イオンとしての現在の戦略であるということです。

−アメリカと違って日本では所得層による住み分けがないということですが、そういう視点でいうとモール型SCを出店する場合、百貨店的な商品があったほうが良いのではないでしょうか。

川戸 そうですね。アメリカの場合は、お客さまの所得層によって業態が分かれています。自分の所得水準にあった業態で買い物をするのです。一方、日本では、たとえば進物は百貨店で買うなど、所得水準に関係なく、お客さまは用途によって業態を使い分けているのが特徴です。ですから「SCの核店舗としての百貨店」というのは十分可能性があると思います。

 これまで百貨店は、都心部のターミナルを中心に立地してこられましたが、最近ではSCの核店舗としての出店についても、積極的にお考えになられているように感じられます。こうした傾向は、今後、さらに進んでいくのではないでしょうか。

 ただし、アメリカのSCでは、百貨店は2500坪から3000坪が一つの単位です。日本ではそれに食品を足した4000坪前後の新しい百貨店業態を構築する必要があります。現在の都市型百貨店の小型版をSCに持ってきても、お客さまにとって魅力があるかどうかは疑問です。SC内で成功する百貨店の形というものを考えていく必要があるのではないでしょうか。

 

郊外と駅前の対立で見るのではなく
お客さまの生活から考えていくことが必要

−郊外に大型のSCができて、マーケット内の多数のお客さまを集めている影響もあって、駅前地区など地方都市の中心市街地の沈滞が問題になっています。
それに歯止めを掛けるためにSCの出店を抑制する方向で、今年10月にも大店立地法が改正されようとしています。
中心市街地と郊外のSCとの関係、さらには中心市街地活性化のあるべき方向性についてのお考えをお聞かせください。

川戸 わが国の商業の歴史を遡ると、中世から近世にかけては城や宿場を中心に商業が栄えてきました。その後、開港し近代化した日本では鉄道が発達し、駅を中心に街が発達します。さらに戦後は、高度成長期から自家用車の普及が急速に進み、現在では100世帯に110台、つまり110%の普及率になっています。

 何が言いたいかと申しますと、それまで宿場や駅前を中心に栄えてきた商店街と、車の普及に見合った商店街が一致していれば問題はないのですが、多くの場合は一致していません。自動車の普及に対応して駅前商店街が何か改善されたかというと、ほとんど変わりませんでした。カラータイル舗装とかアーケードの設置といったものは整備されたかもしれませんが、自宅から商店街までのアクセス、つまり道路というインフラはほとんど改善されていないのです。

 鉄道が走るようになったから駅前商店街が自然発生的にできたように、車が普及すれば、今度は自動車が行きやすいところ、自動車で行くのに便利なところに商店街ができるというのは、歴史の流れとしては当然の帰結です。

 過去にも、そのようにして街が栄え、あるいは衰退していきました。世代交替というのは、商業に限らずどの業界にもありますが、時流を掴んだところ、お客さまの心を掴んだところが、古いものに代わって出てくるのです。いま行なわれている中心商店街活性化に関する論議の多くは、そういう歴史の流れを認めるかどうかということが不明確な気がします。

 また、お客さまの郊外化という現象は国の政策とも関係があるのではないでしょうか。中心市街地に駐車場が設けられる広さの土地を買うことができれば、誰も郊外に住む必要はありません。しかし、中心市街地は地価が高いうえに遊休地も少ないので、駐車場付きの住宅をもつことなど、ほとんどの人ができません。自家用車はもはや必需品で、駐車場は必要不可欠なものだから、みな郊外に家を建てるのです。

 つまり郊外化ということは、いわば国の政策として進めてきたことなのです。いまや自動車なしで生活を語ることはできません。地方の都市では、なおさらです。それを、駅前地区だけは別で、車に頼らないまちづくりをしようと言っても、それは難しい。郊外に多くの人が住むようになり、その方たちは、自分が住んでいる近くで買物をしたいと考えています。住んでいるところの近くで買い物をしたいというニーズがあるなら、それに対応した店が必要です。

 1974年に大店法が成立して、大型小売店が自由に出店できないという「商業暗黒の時代」に入りました。それが26年間続いて、2000年にようやく大店法が廃止され、出店規制ではなく交通問題などに主眼をおいた現在の大店立地法に、大型小売店の出店調整のスキームが変わったわけです。

 1974年は車の普及率は約45%でした。しかしいまは、先ほども申しましたように100%を超えています。それだけ状況が変わってきているのに26年前と同じニオイのする議論をしてもナンセンスだと思います。それより交通インフラの整備を進めるべきでしょう。

 郊外立地の大型SCが中心市街地を衰退させているということがよく言われますが、航空写真で地方都市をみると、「郊外」と呼ばれる地域に多くの人が住んでおり、それに応じて、そこに店ができています。逆に、中心市街地と言われる地域には人はあまり住んでいません。まずは「郊外」という言葉の定義をはっきりさせて議論しないとおかしなことになるという気がします。私どもは、周辺にお客さまが住んでいるところにSCを開設しているのです。

 地価が低く、十分な広さの土地があり、道路アクセスがよければ、私どもはどんどん駅前に出店します。しかし、地価は高いうえにアクセスが良くない。だから出店できないのです。商店街を活性化するというのは、空き店舗に店を入れるということだけでなく、アクセスを考える必要があります。そして、そのためは商店街の力ではなく、国や自治体が本気で取り組むべきことだと思います。そうすれば活性化はできます。

 私は中心市街地活性化には大賛成で、是非やるべきだと思っています。鉄道を多くの人が利用するので、駅前の商店街を活性化することはとても大事なことです。しかし、一方で自動車に便利なところが発達していくのも、時代の流れとして当然のことだと思います。ですから郊外と駅前という対立で見るのではなく、いまのお客さまの生活はどうなっているのかということから考えていく必要があります。

−マーケティングなくして、中心だ、郊外だと言っていてもナンセンスな議論になるということですね。

川戸 川戸 そうです。お客さまにお聞きしてみますと、価格が安いからとか、商品の品揃えが良いからということも来店の大きな理由となっていますが、それよりも、まず近くて便利だということが最大の来店動機となっています。

 ですから、私は中心市街地の活性化を考えるときには、駅前商店街を全体がワンフロアのショッピングセンターとして捉えて、改善するのが良いのではないかと思っています。商店街全体をコーディネートする人がいて、どうやっても、もう経営が立ち行かないような店には退出してもらい、代わりに今後、成長が期待されるような店に参入してもらうというようなことをやる必要があるのではないでしょうか。

 ワンフロアのオープンモールで、十分な駐車場が用意されていれば、鉄道利用のお客さまもおられるわけですから、駅前はむしろ郊外より強いですよ。

左●エンクローズドモールながら開放感溢れる空間づくりが施されている
中●SC内の通路は、ショッピングカートやベビーカー、車イスの利用者が余裕をもって行き来できる十分な広さを確保
右●ハンディキャップをもった方々への介添えサービスを実施するなど、ユニバーサルデザインの考えによる、すべての人が快適に利用できる施設づくりに取り組んでいる

 

SCは"人工の街"
私どもは"街づくり"を
しようと考えています

−大店立地法は環境対策も大きなポイントになっていますが、イオンは環境問題に先進的に取り組んでいますね。

川戸 資源は有限であり、次の世代までその資源を使えるようにしなければなりません。ですから、小売業、製造業の区別なく、環境問題を真剣に考えていくことが大切です。

 いま、この世に生を受けている者すべてが後世に責任をもっているので、それぞれに努力しなければなりません。私たちもできることからやっていこうということで、まずは大気をきれいにするために植樹ということをやっています。

 次に、水、電気、石油、紙などの資源の節約にも努力しています。
 具体的に申し上げますと、たとえば建材は再生されたものを可能な限り使う。水も、できるだけ再利用するということで、中水などを有効に使う。それから、排出されるゴミをなるべくなくす「ゼロエミッション」を目指しています。

 廃棄物を出さないようにするために、排出物を17分類して再利用にするようにしていて、現在、全店平均で再利用率が 63.7%になっています。最も高いイオン成田ショッピングセンターでは82.6%に達しています。当然のことながら、環境問題というのは、これだけやれば十分というものではありません。節約やリサイクルの技術も日進月歩ですので、ゼロエミッションの実現に向け、引き続き取り組んでいきたいと思います。

 また、エコロジーやリサイクル、リユース、リデュースということは、突き詰めて考えていくと、収益につながることもたくさんあります。たとえば、電気代も石油代も上昇していますが、それを節約すれば収益に好影響を及ぼすわけです。環境問題に取り組むことはただお金がかかるということではなく、それによって収益につながることが一杯あるわけです。目先のことでなく、長いスパンで考えていく必要があります。

−長いスパンということでは、いよいよ今年から、日本は人口減少に向かうと言われています。また、団塊世代がリタイアする2007年問題ということも話題になっています。これからの少子高齢化という問題については、どのように対応を図っていくお考えですか。
 

川戸 少子高齢化はどの業界にとっても大きな問題ですが、私どもも、この問題につきましては真剣に考えています。

 高齢化の問題での具体的な取組みとしましては、青森県下田町の「イオン下田ショッピングセンター」にNPO法人が運営するデイサービスセンターを導入しています。下田ではSC全体をデイサービスセンターとして捉え、SCの中を散歩したり、買い物もしたりすることで、高齢者の方が健康を取り戻しています。

 高齢者にとって、自宅に引きこもるのではなく、SCまで出てくるだけで刺激になります。青森は雪深いところですが、イオン下田SCはエンクローズドモールで通路も広いですから、天候に関係なく館内を歩き回ることができます。

 ベンチも随所に設置してありますので、少し歩いたらベンチで休憩するなど自分のペースで散歩することができます。

 また同SCには、物販や飲食だけでなく、映画館もあればボウリング場もあります。毎週のように映画をご覧になられている高齢者の方もいらっしゃいますし、デイサービスセンターにお越しになられた方同士でボウリングを楽しまれたりもしています。そうした刺激が健康の回復をもたらすのです。
 こうした取組みが、私どものすべてのSCで可能かどうかわかりませんが、これからも積極的に考えていきたいと思います。

 また、宮崎市に5月19日オープンした「イオン宮崎ショッピングセンター」では、外周に遊歩道を設け、260mのモールにはマイルストーンを置いています。

 外周の遊歩道を一周すると1.8kmになります。またSC内にも20m間隔で標識を埋め込んであり、モールの端から端まで歩くと、片道で約260m、往復すると520mになります。晴れた日は外周道路を、雨の日は店内を歩いていただくということを考えています。

 今後開設していくSCはすべて、宮崎のようにしていきたいと考えています。また、既存店についても、順次そういう形にしていこうと考えています。

 私は、SCというのは基本的には「人工の街」だと考えています。街は、お祖父さん、お祖母さん、お父さん、お母さん、そして子どもという「三世代」が、楽しく集まれるところでなければなりません。つまり、私どもは"街づくり"をしようと考えているのです。

 そこでは三世代が楽しく集えるし、高齢者の人が散歩もできる。しかも地域の方が、そこで働けるわけです。1つのSCで2000人以上の人が働いていますから、雇用創出という面でも、地域に貢献することができます。

 地方都市はいま地域の活性化ということでITや液晶など装置産業の誘致合戦をやっていますが、私どもの店舗を誘致することで活性化するということもあるわけです。出店によって雇用が生まれるし、雇用があれば当然、税収も増える。周囲に新しい店もできて、新しい活気が生まれます。そういう意味でSCは、21世紀型の産業と言えるのではないでしょうか。

−私どもも店舗空間を提案していく立場として、大変参考になりました。本日は、お忙しいところありがとうございました。

 

関連サイト: イオンモール株式会社
 
 
川戸氏 川戸 義晴 氏
かわと よしはる●1966年4月(株)岡田屋(現イオン(株))入社。86年5月(株)ジャスコ(現イオン(株))取締役、92年2月常務取締役 商品担当兼住居余暇商品本部長、95年3月常務取締役 中部駐在兼三岐事業本部長、96年4月専務取締役 人事・開発・新事業担当、98年3月専務取締役 営業担当、2000年5月イオン興産(株)(現イオンモール(株))代表取締役社長(現任)。また00年7月日本ショッピングセンター協会 理事、05年5月副会長


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