トーク * Break! NEO専門店!! 連載14回
 
ダイナック
 
高原 洋氏
(株)ダイナック 代表取締役社長 
聞き手/ (株)丹青社 営業開発室 SCマーケティング研究所 所長 松本 大地
 
社名の由来となった「食の楽しさをダイナミックにクリエイトする」を理念に掲げる同社は、効率のみを追求することなく、常にクオリティの高い店舗づくりを展開し続け、マーケットから高い支持を得ている  

 (株)ダイナックはサントリーグループの外食部門の中核を担う企業であり、かつグループ企業では唯一の上場企業でもある。
 同社の特徴は、カジュアルからフォーマルユースまで幅広いニーズに対応する84業態を展開するとともに、同一業態であっても個々の店舗が異なるメニューを選択できるという自由度の高いオーペレーションを展開していることだろう。もちろんこれは、同社高原社長が"技術者集団"と呼ぶ高いスキルをもった数多くのスタッフがあってのことだろう。
 ファストフードからスローフードへ消費者の志向がシフトする現在、同社の取り組みは業界内外から大きな注目を集めている。

 

スローフードの時代といわれる今こそ
当社の役割は高まっていくでしょう

―高原さんがダイナックの社長になられたのは、4年前でしたね。

高原氏 高原 そうです。サントリーに入社してビール関連の仕事をしたのは1年だけで、あとはいろいろと関連会社を渡り歩きました。20年くらいは世界中にレストランをつくる仕事をしていました。昭和40年頃からウイスキーを海外で売ろうということで、日本でつくった原酒を海外に持っていき現地でボトリングして、その国のナショナルブランドとして売ることを始めました。昭和45年にメキシコシティの真ん中に約6億円程かけてウイスキーを飲むための大きなバーや錦鯉が泳ぐ池、日本庭園を備えたレストランをつくりました(レストラン燦鳥1号店)。ここは、時の大統領をはじめとするメキシコのハイソサエティの方々に連日多数来店していただき大ヒットしました。そこで、こうした店を世界各地につくろうということになり、その後、ヨーロッパ、北米、南米、アジア、オーストラリアなどに17店舗つくりました。

―こうした経験が現在の店舗開発に活かされているのですね。では、貴社の沿革と概要についてお聞かせください。

高原 はじめはサントリーのパイロットショップを出店するための会社としてスタートしています。親会社が元々、元気のよい会社ということもあり、収益ということよりも、むしろ新しいことにチャレンジするということが大きなミッションでした。一時期は108業態の店がありました。しかし2000年に株式公開をするにあたって収益性と成長性を重んじることが大変重要な課題となりました。そこで業態を絞り込み、出店戦略も首都圏と近畿の都市部に集中することにしました。今年6月段階で、84業態、274店舗、社員数は1016名となっています。今期の売上見込みは385億円です。日本の外食で株式公開しているのは89社ですが、ほとんどがマニュアル化したチェーンビジネスの会社です。私どもはブランドがたくさんあるという点で非常にユニークな会社です。しかも従業員の半分以上が調理師、バーテンダー、ソムリエなどの技術者というのが特徴です。

 当社のような多業態は非効率です。同じものを大量につくるところには勝てません。しかし、当社のような業態を必要とするお客様は着実に増えてきていると思います。早さ、安さだけでは世の中は回っていきません。スローフードの時代と言われるこれからはまさにわれわれの出番だと思っています。

―量の拡大から質の拡充という時代の流れにフィットしているという気がします。特に女性スタッフが活躍しているようですね。いまは「おひとりさま」マーケットというのがありますが、こうした層に支持されるには店の雰囲気、スタッフの対応が大事です。そういう部分でも女性が活躍することが多くなっています。

高原 この世界はいままで男社会でした。最近は女性ががんばっていますから、古い体質を変えていくようにしたいと思っています。

 

マニュアルにとらわれることなく
自由度の高い運営を心がけています

―最近、秋葉原の駅前に開店された新業態の「焼匠 karaku」におじゃましましたが、素晴らしい眺望でお酒やシズル感のある料理を楽しめるのもうれしいのですが、働いている人の応対も非常に小気味のいいもので感心しました。

高原 チェーンビジネスではマニュアルに沿ってやるのが一般的ですが、私どもはそれをやると味も素っ気もなくなります。個人の色合いを出せることを得意とする会社ですので、最低限守ることだけはきちんと守って、あとは出来るだけ自由にやってもらうという考えです。ですから店によって色合いに違いが出てきます。ワンパターンにはしたくないですね。

 私どもの店では購買システムにおいても、仕入れ全体をABCという3つのランクに分けています。A群はダイナックのバッジをつけているかぎり使わなければいけない商品、B群は個々の店で自由にチョイスしてよい商品、C群はそれぞれの店の自由選択です。この3つの枠の中で各店が営業するための調達をすればよいということになっています。そういう仕組みで自由度を大きくしているわけです。

―84業態もあると社員教育も大変ですね。

高原 基本的な入社研修以外はパターンにはめた接客対応ではなく、オン・ザ・ジョブということでそれぞれの店で育てていくやり方です。それから店長、調理長、エリア長など課長クラスをそれぞれ10人くらいの小グループで集めて、毎月社長懇話会を開き、私が"商いの心"について直に話をしています。社員教育というより寺子屋みたいなものですが。

―皆さん仕事をしていていろいろ迷われるでしょうし、また広い社会的な視野も必要となります。指針となる話があるということは非常に大切だと思います。
 ところで都市型で土日が休みになるオフィス立地の場合、平日との格差をどのように埋めていこうとお考えですか。

高原 以前は日本全国に多く出店すればよいという拡大主義でしたが、5年前から物流戦略や効率的なスーパーバイジング活動を考えて、首都圏と近畿圏の都市に集中させたわけです。確かに都市型出店では土日をどうするかという課題があります。平日の5日間で事業の採算がとれればよいのですが、そうでない場合は土日には結婚式などに利用していただくというようなことを考えていきたいと思っています。

秋葉原駅前にオープンした新業態「焼匠 karaku」 英国の香り漂う落ち着いた雰囲気の内装が施された「VICTORIAN PUB THE ROSE & CROWN」(秋葉原店)
(左)●秋葉原駅前にオープンした新業態「焼匠 karaku」
(右)●英国の香り漂う落ち着いた雰囲気の内装が施された「VICTORIAN PUB THE ROSE & CROWN」(秋葉原店)

バーラウンジや天麩羅カウンターも付帯する「響風亭」。中庭からメインダイニングを臨む 水に癒されるラグジュアリーな空間をコンセプトにした「水響亭」
(左)●バーラウンジや天麩羅カウンターも付帯する「響風亭」。中庭からメインダイニングを臨む
(右)●水に癒されるラグジュアリーな空間をコンセプトにした「水響亭」

 

スタッフの魅力や技術を高め
いきいきと働ける環境づくりが重要です

―メニュー開発などの商品戦略についてはいかがですか。

高原 当社は社員の半分以上が調理師、バーテンダー、ソムリエという会社ですから、社内で一番ウエイトをおいているのが商品開発です。最近、グルナビさんの上場記念の料理コンテストがあり、そこで当社の調理師が全国で2位に入賞しました。カクテルコンテストでは毎年少なくても本選20人の中に2人は残るという実績を残しています。多いときは3、4人入ることもあります。技術者集団で互いに競い合い、そこから新しい商品が出てくるということです。

―株式公開をされ順調に推移しているようですが、なにか課題があればお聞かせください。

高原 課題はたくさんあります。技術者集団を抱えて独自な路線で事業化しようとしていますから、日本の外食企業では特異な会社といえます。そういう新しいスタイルの企業化に向けて足を踏み出したという意味では、課題は常に人の部分にあります。しかし、それをやっていくとこんな面白いものはありません。

―まさに人間産業ということですね。最後に今後の夢について聞かせてください。

高原 酒を介した楽しい食空間の中、「味」と「サービス」でしっかりと高い評価をお客様からいただくという意味において、日本を代表する外食企業になりたいと思っています。それから、たくさんの若者を預かっていますから、彼らが嬉々として働ける職場づくりをするのが私の夢です。入社当時、一国一城の主を夢見て目を輝かせていても組織になじんでくると夢がなくなってしまうケースがあります。それをみるのは寂しい。彼らが夢を実現できるように精神的にも応援したいと思っています。

―お忙しい中、ありがとうございました。

 

故佐治敬三会長のユーモラスな似顔絵の前でインタビュー
故佐治敬三会長のユーモラスな似顔絵の前でインタビュー

関連サイト : 株式会社ダイナック 

対談後記 
松本  高原社長とは、3年前のレイクウッドゴルフクラブでのコンペでご一緒にラウンドした間柄。今年、そのクラブハウス改装を当社が設計し、レストラン運営をダイナックが業務委託という巡り合わせとなった。ゴルフ場レストラン店舗だけで全国74店を展開、美味しい食事と確かなサービスはゴルフ場の質の拡充に貢献している。その他、「響」や「鳥どり」など84業態も展開している大企業ながら、接客のきめ細かさは高いレベルで変らない。先月の日経MJでの「ダイナックにカリスマ女性店長 就任2ヶ月で売上高22%増」の記事は、「礼儀をわきまえた上でのフレンドリーさ」を心がけた接客が好評で、常連客が増えているとの内容であった。そもそもお酒市場の裾野を広げる目的で設立されたが、事業性よりも楽しい場づくりを志向したことが今日のダイナックの土台を築いているのだろう。そこにはサントリーのDNAが大動脈で流れ、故佐治会長から受けた思考が高原社長のエンジンの一部になっているようだ。私の持論である"チェーン店は顧客を感動させる哲学が現場で浸透すれば、その規模ゆえ大きなパワーとなる"を確信できた対談であった。
 

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