トーク * THE SC [連載第9回]
「商業」の枠を超え、生活者が望まれる、
多様なライフスタイルを実現する生活創造の拠点

 
logo.gif (株)ダイヤモンドシティ
専務取締役
 山中 千敏氏
聞き手/ (株)ウエルウエスト代表取締役 大西 直良氏

生活に必要なヒト・モノ・情報・
サービス・空間・環境のすべてを用意できる
ショッピングセンターを目指す

 
 今年に入り大規模なショッピングセンター(SC)を全国に5施設開設するなど、(株)ダイヤモンドシティの快進撃が続いている。ジャスコ(株)(現・イオン(株))と三菱商事(株)の折半出資により1969年に設立された同社は、ショッピングセンター専業デベロッパーとして、日本のショッピングセンター開発において、常に一歩先の時代を見据えたショッピングセンター開発を行ない、業界を牽引し続けてきた実績をもつが、常に変化する生活者のライフスタイルに訴求する施設を開発していくため、引き続き「一歩先の時代を見据えた」SCづくりに取り組んでいる。


 
SCの展開は
規模と運営のノウハウが
非常に重要な時代に

 
−御社は、イオンと三菱商事の合弁会社ですが、その沿革からお話いただけますでしょうか。
 
山中 当社は、岡田卓也・現イオン名誉会長がアメリカの流通事情を見て、これからは日本でも大型SCの時代が到来すると予想されたことがはじまりです。会社設立の翌年には、大阪の東住吉に1号店、名古屋に2号店をオープンしましたが、当時とすれば非常に巨大な店舗でした。それから年ほどになりますが、現在店舗になります。特に今年はすでに5店舗をオープンし、10月下旬に6店舗目をオープンさせて全体の床面積が倍増し、いよいよこれからが本番だと考えております。
 
日本では、大店法が制定された昭和48年ごろから、小売の主力であるGMS(総合スーパー)の大型化が進みました。ただ、どうしてもビル型になります。アメリカのショッピングセンターのようなモール形態が、日本でも展開されるようになったのは最近のことです。アメリカの商業施設の歴史を見ると、最近はモールの開発は少なくなっていて、いわゆるワンボックス型が多くなっていますが、日本ではまだモールという業態、ビジネスモデルは成長の余地があるだろうということです。
 
規模だけを追求してはいけませんが、やはり小売業は、MD力と規模は重要なファクターになると思います。テナントの業種揃えがたくさんできるからです。規模と運営のノウハウが非常に重要な時代になってくると考えています。
 
−いわゆるモール型SCというのはアメリカでは当り前になりましたが、日本ではまだまだ魅力のある形だと思います。ただ、日本で本当にモール型SCを全国的に展開されているのはイオングループさんくらいですね。ところで、御社は今年6店舗オープンするなど、出店のピッチを急に上げられましたが、なにか特別な戦略変更がおありなのですか。
 
山中 戦略変更というより、いまがタイミング的には良いチャンスだということです。バブルで物価が高騰したときに、ジャスコは名誉会長の一声で新規出店をぴたっと止めましたが、そうした経験を経て、いまが最大の投資チャンスだと判断したわけです。投資コストが下がったこと、製造業の海外シフトに伴って出店の立地が出てきたということがあげられます。特に私どもは、三菱商事さんからの情報もあり、かつて一世を風靡した大企業さんの工場跡地をお借りできたことが大きいと思います。
 
また、テナントさんがデベロッパーを選ぶ時代がきて、儲かるところ、立地の優位性のあるところを選ばれるようになり、数多くのテナントさんが手を上げてくださったということもあります。
いままでの日本の小売は、メーカーから問屋、そして小売店という流れでしたが、最近はSPA(製造小売業)という新しい業態が力をつけてきました。特にファッションの分野でSPAが伸びていて、リーズナブルな価格でターゲット層を絞った商品づくりをされています。これが私どものコンセプトと合致して、良い方向にいったのではないかと思っています。
 
 
左●広島県府中町のキリンビール広島工場跡地「キリンビアパーク広島」に今年3月24日オープンした「ダイヤモンドシティソレイユ」。ソレイユはフランス語で"(温かみのある)太陽"
中●キリンビールがキリンビアパーク広島のバックストーリーとして「ジャクリーンとあたらしいお友だち」を設定。敷地内にストーリーに登場する場所が点在
右●「ソレイユ」では、3層吹抜けのモールをカーブ部分で窮屈さを感じさせないように上層階をセットバックさせている

 
 
デベロッパーとテナントが
責任を共有するため
完全売上歩合に切り替える

 
−工場の跡地は、まとまった土地を一括取得できるというメリットだけではなく、インフラが整備されているので投資コストが安くなるというメリットもありますね。モールということだと専門店が多くなるので、商業専門デベロッパーとしての資質が必要になります。そういう意味で御社に本当の商業デベロッパーとして資質を感じます。やはりモノを売るところからスタートしているためでしょうか。
 
山中 テナントリーシングのあり方がグローバル化し、変化したということだと思います。いままでは、売れようが売れまいが固定家賃でした。デベロッパーは一度つくってテナントを入れれば間違いなく数字が上がったわけです。
 
ところがアメリカでは売上歩合となるので、デベロッパーにとっても小売業者にとってもハイリスク・ハイリターンです。ですからデベロッパーの責務として立地を見る目が必要ですし、テナントは売れなければ退店しなければなりませんから、小売のプロに徹しないとやっていけません。そのアメリカの賃貸借のシステムが日本にも完全に入ってきたということです。
 
私どもも、2002年にオープンした「ダイヤモンドシティテラス」からは完全売上歩合にしました。テナント・デベロッパー両者がハッピーになるために、お互いの責務をどう果たすかということが重要です。私どもとしても責任が重くなりますが、最低売上保証制度をとり、これが達成できない場合は退店していただくという契約を交わしています。
 
テナントさんに対するサービスとして、売れ筋の商品などの、商品を介在した小売の情報交換を毎日、店で社員にやらせています。テナントさんからは家賃だけとればいいという不動産の思想から小売の思想への転換です。小売専業のイオンさんと比較しますと、まだまだ小売に対する物の見方は足りない面があると思いますが、他のデベロッパーさんの少し先を行っているのかなという思いはあります。社員には、もっともっと小売の勉強をしろと言っています。
 
−いま御社では、工場跡地を中心に郊外型の先駆的なモールをつくられていますが、規模が大きくなればなるほど、一つの商品に対する品揃えの幅が広くなり、それぞれ地域の特色を出す必要性があるのではないかと思います。そうした場合のテナントミックスとか地域性については、どのようにお考えですか。
 
山中 小売にとって地域性は非常に重要です。地域性が最も表われるのは食品です。またアパレル関係ですと、地域のテナントさんの割合をどうするかという問題があります。すべてをナショナルテナントというわけにはいきません。たとえば福岡の「ルクル」などは、約25%が地域のテナントさんです。伊丹の「テラス」では大阪・兵庫の地元テナントが約20%です。
 
小売はフェイス・トゥ・フェイスの人的産業です。地元のテナントさんというのはお客さまをお持ちです。歴史があり今の時代に隆盛されているというのは、要するに痒いところに手の届くサービスが行なわれているということです。サービスレベルがナショナルテナントとはまったく違います。そういうテナントさんがお持ちのお客さまに来ていただけるわけです。
 
口コミや新聞記事のようなパブリシティも重要です。そうしたことを考えると、やはり地元のお店は店舗数で3割は欲しいところです。といっても5割を超えると、非常にローカルで垢抜けないショッピングセンターになってしまいます。バランスが大事だと思います。
 
 
(左)●キリンビアパーク広島のメインテーマは「ビールの香りが残る活気と賑わいのある街」
(中)●兵庫県伊丹市の東洋ゴム工業伊丹工場跡地に2002年10月10日開業した「ダイヤモンドシティテラス」
(右)●「テラス」の緩やかな曲線を描くモールは3層吹抜けで開放的なイメージを演出

 
 
百貨店さんには
もっと元気になっていただきたい

 
−今年オープンしたSCには、施設名の「ダイヤモンドシティ」の後に、「ソレイユ」や「ルクル」など個々に名前が付いていますが、どのようないわれがあるのですか。
 
山中 たとえば広島の「ソレイユ」は太陽という意味です。ここはキリンビールさんの工場跡地なのですが、キリンビールさんが工場跡地の再開発をされるにあたって、コンセプトとされたのが「レジェンド・オブ・サンビレッジ」という物語だったのです。「ソレイユ」はこのタイトルの「サンビレッジ」から考えました。これは販促のためのもので、ジャスコではなくダイヤモンドシティということを強調し、モールとしてのダイヤモンドシティのブランド力を高める目的で、お客さまが親しみやすく呼びやすい名前を店舗ごとに付けるようにしています。今後も同じ方針でいくのか、たとえば「ダイヤモンドシティソレイユ」ではなく「広島ショッピングセンター」というようにするのかは、そろそろ再検討しなければいけないと思っています。
 
現在、関東エリアはまだ2店舗ですが、これからの出店は関東が中心になると思います。そこである程度「ダイヤモンドシティ」の知名度を上げられれば、あとは地名でもよいのかなという感じはしています。
 
−モールにおける核店舗のあり方は、どのようにお考えですか。2核・3核のモールや百貨店との共同といったことは考えられますか。
 
山中 結論からいえば3核もありうると思います。少なくともSCとして成立するのに、2核はないと駄目です。一つはGMSで、これは毎日お客さまがお見えになる商品を販売する店舗。もう一つは、百貨店のような少しよそ行き感のあるものを買う、あるいは普段とは少し違うものを食べるというような日常的ではない体験ができる店舗。3核の場合は、これに百貨店とGMSの間に位置するものを加えることになります。
 
たとえばファッションや食、情報などが、新しい業態として成立しないかということです。私どもも実験的には挑戦していますが、現状ではむずかしい感があります。ただ手応えがないわけではありませんので、これを進化させたいという考えはあります。日本には、2核構成のモールもほとんどないのが現状で、百貨店さんにはもっと元気になっていただかないといけないと思います。
 
−イオングループには、デベロッパー企業としてイオンモールさん、さらにイオンさんもありますが、ダイヤモンドシティさんが目指しているSCというのは、他のグループ企業2社とどこに違いがあるのですか。
 
山中 本質的には変わらないと思います。私どもの出店の条件は、半径5kmで商圏人口は最低40万人、できれば50万人ですが、イオンモールさんは、それほどは見てはおられないと思います。ただイオンモールさんの店舗を見てみますと、たとえば最近出店された太田市は人口10万人強ですが、周辺の市町を足すと40万〜50万人になり、なるほどと思う立地選定なのです。私どもは、これまで工場跡地でやってきましたが、区画整理事業なども含め、もう少し遠くへ出ていこうかと思っています。特に関東圏では、首都圏近郊に適当な土地はありませんから、千葉・埼玉・神奈川あたりを考えています。
 
−ダイヤモンドシティさんの店づくりにはお洒落感がありますね。
 
山中 規模だけでなく店舗デザインや内部環境もお客さまを引きつける大きな要因だと思います。滞在型のショッピングセンターでは"異次元"の体験がないと面白くありません。買い物をするだけでなく、来てよかったと思えるような空間が必要です。それがリピートにつながっていくのではないかと思います。
 
−長期的にはどのくらいの出店をお考えですか。
 
山中 40万〜50万人の商圏人口ということでいきますと、全国でまだ200か所くらいは出店の余地があるのではないかと思います。そのうちの40〜50店舗は、当社で手がけられるのではないかと考えております。
 
 
(左)●4層吹抜けのエンターテインメントコートはストレートとカーブのラインが交差する魅力ある空間を創出(「テラス」)
(右)●700席の規模を誇る「テラス」のフードコート「スカイグルメ」

 
 
いまやショッピングそのものが娯楽になる時代
ハードよりソフトが重要に

 
−超巨大SCのチェーン展開を成し遂げられたご感想はいかがですか。
 
山中 もっとお客さまの視点に立った店づくりをすべきだと感じています。ハードはどうしても"男の感性"でつくってしまっているところがあります。たとえば床をカーペットにしたためにカートが押しにくいとか、誘導表示がわかりにくいといった問題が起きています。駐車場への動線にしても、男性の運転と女性の運転では違います。お客さま本意と言いながら、実際はそうではなかったのではないかと反省しております。
 
テナント構成も、ターゲットを若い層に絞り過ぎたということがあります。せっかく年配の方が来られても、買うものがないという現象が起きています。男性客の場合も同様です。本当にお金をもっていて使うのは団塊の世代なのです。ウエイトをどのくらいにするかは別として、そうしたお客さまにも提供できる場をつくらなければいけないと思っています。
 
−これからの抱負についてお聞かせください。
 
山中 当社のSCの中で欠落しているのは、スポーツ施設です。しかし事業採算性の面から言うと、仮にプールをつくったら採算が取れなくなると思いますから、先へ進めない状態です。あとは組合せ方をいろいろ模索しています。たとえば、化粧品・ドラッグ・健康関係を一つの塊として構成できないか、といったことです。
 
京都の「ハナ」に開設したクリニックモールなどは、規模は小さいのですが、地元の人たちに喜ばれているのではないでしょうか。日曜日にも診療してもらえるなど、利用する人のことを考えた施設にもう少し取り組んでいきたいと思います。採算性ばかりにこだわらず、お客さまのサービスになることを積極的に採り入れていくことが、集客につながるのではないかと思いますので、そうしたことをやっていきたいと考えています。
 
また、顧客の囲込みや販促に有効な手段となるIT化を一段と進め、店舗情報をよりきめ細かく出していかなければと思っています。
 
−お客さまが商業施設にエンターテインメントを求める時代になってきていますね。
 
山中 ショッピングそのものがエンターテインメントを求める時代になっていますね。ですから、お客さまに満足していただくために、デベロッパーとして何をやるかですが、やはりハードよりソフトが重要になるということだと思います。
 
−本日はお忙しいところを、ありがとうございました。
 
 

 
関連サイト: DIAMOND CITY
 
 
山中氏 山中 千敏氏
やまなか ちとし●1970年3月ジャスコ(株)入社、96年5月ジャスコ(株)取締役、同年5月(株)ダイヤモンドシティ専務取締役就任、同年6月専務取締役開発・営業担当役員兼営業担当、2000年5月専務取締役開発・営業担当役員兼開発部長、01年5月専務取締役開発本部長(現任)

大西 直良氏
おおにし なおよし●SCおよび不動産実務に関するコンサルタント会社、(株)ウエルウエスト代表取締役。日本ショッピングセンター(SC)協会の理事・事業開発委員長。亀戸の「サンストリート」の開発・運営会社、タイムクリエイトの前・代表取締役
大西氏

 
 

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