トーク * Break! NEO専門店!! 連載9回
 
私の部屋 
キャトル・セゾン ミュゼ・イマジネール
 
前川 睦夫氏(株)私の部屋リビング 代表取締役社長 
聞き手/ 営業開発室 SCC2部 部長 松本 大地
 
"私らしくいられる空間を創造する喜び"を伝えたい。
歴史に培われた生活の道具と新しい感性が同居する、
"懐かしくて新鮮な暮らし"を提案する生活用品店


 
 「日本もヨーロッパのような""成熟した暮らし"を考えるようになってほしい」との考えから1972(昭和47)年1月に創刊された雑誌「私の部屋」は、誌上に掲載された商品のメイルオーダーのページを設け、商品の通信販売を実施。その発展した形としてオープンしたのが生活用品専門店「私の部屋」である。品揃えの豊富さは群を抜いており、シックな店内に、テーブルウェアやステーショナリー、ホームファニシングなど、使い勝手、デザインともに優れた生活雑貨・生活調度品を多数揃え、高い支持を得ている。また87年には、フランスのキャトル・セゾンと契約し、日本国内でのキャトル・セゾンの店舗の展開を開始。さらに、東京・六本木に昨年4月オープンした「六本木ヒルズ」に「ミュゼ・イマジネール」を出店するなど、新業態開発にも意欲的に取り組んでいる。
 
 
雑誌に掲載した "成熟した暮らし"を
「リアルな部屋」として提示するため誕生

 
―まず「私の部屋」というお店が生まれた経緯からお聞かせください。
 
前川氏 前川 父が創業者でして、その父の個性からはじまった店といえます。父はフランス文学の研究者であり、また商人でもありました。出版社で新しい雑誌の企画を出して採用され、1972年1月に「私の部屋」という雑誌が誕生しました。当時は、高度成長でどんどんお店ができ、モノが増え、みんなが車で出かけようとした時代ですが、そのような外へ外へと向かっていた日本人の意識もやがて変わり、もっと内面を大事にしたり、家の中を心地よくしたりするような成熟したものになっていくだろうと父は考えました。
 
 ちょうどそのころ、イギリスではテレス・コンラン氏が店をはじめていましたし、フランスではメゾン系と呼ばれる雑誌がいくつも生まれていました。日本もヨーロッパのような"成熟した暮らし" を考えるようになってほしいということで、「私の部屋」という雑誌はスタートしたということです。雑誌は大変人気を集め、毎号すぐに売り切れるという状態が続きました。同時に、雑誌に載っている器や家具をぜひ欲しいという読者の声がたくさんあったので、お店をつくり「リアルな部屋」として読者の方に見ていただこうということで、雑誌創刊と同じ年の12月に新潟市に「私の部屋」の第1号ショップが誕生したわけです。
 
―最初の店を新潟市にオープンされたのは、どういう理由ですか。
 
前川 新潟市は、人口や年代分布、書店の状況などから考えて、雑誌が最も平均的な売行きを見せていた都市でした。そこでお店をテストして良ければ、他の都市でもつくっていけるだろうと考えたわけです。そこで新潟市が1号店の出店地に選ばれました。
 
―後発の「キャトル・セゾン」のスタートはどういうきっかけですか。
 
前川 「キャトル・セゾン」は1968年に、パリで「私の部屋」とまったく同じような考えで生まれたお店です。父がパリ出張の折に「キャトル・セゾン」のオーナーと知り合い、意気投合したことがきっかけで、1987年に自由が丘に日本1号店をオープンしました。
 
―昨年4月には、オンリーショップが集積された六本木ヒルズに新業態のショップ「ミュゼ・イマジネール」もオープンされました。このコンセプトはどういうものでしょう。
 
前川 「ミュゼ」は美術館や博物館、「イマジネール」は想像的という意味です。想像上の美術館はどこにでもできる。あなたの家の中にもできるし、心の中にもできる。雲の上にもできる、というフランスの文学者アンドレ・マルローの発想からヒントを得て、店名やコンセプトが生まれました。もっと自由に美しいものや価値のあるものに触れたり、感動したりしてもいいのではないかという考え方から、私もあなたも心の中に想像上の博物館、美術館をつくってみませんかという提案を込めて「ミュゼ・イマジネール」と命名しました。
 
 六本木ヒルズという新しい街の中で、既存の店づくりの枠組みにとらわれずに、自由に美しいものや価値のあるものを集めてみようという発想の店です。「私の部屋」や「キャトル・セゾン」は歴史があるので、お客さまはまず安心ということを期待されますが、「ミュゼ・イマジネール」は商品やサービス、お店の空間を含めて、既存の業態ではできないことを試していきたいと考えています。
 
 
(左)●国内第一号店となる「キャトル・セゾン・トキオ」。1987年に「私の部屋 自由が丘店」の隣りにオープン。店内の一角ではいつも小さな美術館のように企画展が催されている
(右)●新業態店「ミュゼ・イマジネール六本木ヒルズ店」

 
 
1人の顧客の苦言の向こうに
何百人という顧客の不満が

 
―現在、展開店舗数は、それぞれどれくらいでしょうか。
 
前川 「私の部屋」が39店舗で、そのうち31店舗がフランチャイズです。「キャトル・セゾン」は14店舗、それからカフェが1店舗あります。それに新業態の「ミュゼ・イマジネール」の1店舗を加えて、全部で55店舗あります。
 
 
―店づくりではどのようなことを大切にされていますか。
 
前川 自分の家や部屋と同様に、お店でも古いものや昔から使われているものが大事にされなければならないと思います。実際の生活では、お祖父さんのときから使っているテーブルや食器棚があったり、お祖母さんが大事にしていた茶器があったりします。そこに若い世代の人たちのものや季節を感じるものが加わり、変わるものと変わらないものが同居していますが、だから安心して暮らせるわけです。
 
 お店では新商品やシーズンに売れるものが中心になりがちですが、昔から使われている器や家具をできるだけ尊重した商品類を置き、そこに新しいものを加えていくという考え方をしています。「キャトル・セゾン」もフランスで昔から手作業でつくられてきた柳のバスケットや食器があり、そこに新しいヨーロッパの感覚の商品が加えられています。懐かしくて新鮮な感覚がするというのが一番いいのではないでしょうか。
 
 全国にお店があるわけですが、その町の文化とか風土とか気質とかを勉強しながら、その町に一番ふさわしい暮らしを考え、提案できるようなお店づくりが目標です。
 
―店頭での接客にコンシェルジュのようなホスピタリティを感じます。スタッフ教育はどうされていますか。
 
前川 なるべく私が直接お店に行ってスタッフと話すことを心がけています。大事なのはシステムではなく、気持ちです。お客さまがわれわれに望んでいるのは、自分がどんな暮らしをしたいかを察してサポートしてほしいということです。
 
 ですから、暮らしに何を望んでいるか、どんな時間を過ごしたいかというお客さまの気持ちをスタッフがまず受け止めるようになろうということを話しています。そのうえで「私はこれがいいと思います」ということを上手に伝えていこうということです。実際には、至らないところもまだまだ多いと思っています。
 
―顧客満足度は調べることができますが、顧客不満足度というのは把握しにくいものです。知らず知らずの間に、お客さまの間に貯まってしまった不平や不満を知るマーケティングということがこれからは大事でしょうね。
 
前川 おっしゃる通りです。褒めていただく言葉だけでなく、好きだからこそ苦言を言ってくださる方を大事にしないといけません。1人の方の苦言の向こうに、何百人というお客さまの不満があるということです。
 
 
(左)●旗艦店舗となる「私の部屋 自由が丘店」。毎月第一水曜日に、季節のテーマに沿って売場替えを行なう
(右)●「私の部屋」では、その町の文化や風土、気質を考慮した生活提案型の店づくりが目指される。古くからの商品から新しい商品まで、実際の家庭と同様に世代感のある商品が並ぶ
 
 
当り前のことがきちんとできるようなお店に
 
―今度、新宿マイシティの地下2階が食品売場からファッションストリートにリニューアルしますが、御社も新しいショップを出店される予定とうかがいました。新宿出店の狙いについてお聞かせください。
 
前川 新宿にどうしてお店がないのかという声は以前から多かったのですが、新宿にどんなお店を出せるのか非常に悩んできました。いろいろ考えた結果、新宿に合わせるということをせずに、あえて自由が丘をそのまま持っていった方がいいのではないか、それがお客さまの望んでいることなのではないかと思ったわけです。そこで、あまり新宿らしくない住宅地にあるというイメージのお店にしようと考えています。
 
―店舗の規模は、どれくらいになるのですか。
 
前川 最終確定しておりませんが、65坪を考えています。「ザ・ガーデン自由が丘」さんとご一緒する予定ですので、衣食住がまとまった一つの世界をつくれたらいいなと思っています。
 
―最後に、今後の事業の方向性についてうかがいたいと思います。
 
前川 あまり話題性がある話ではないのですが、いまは基本を大事にしようということを全社に呼びかけています。当り前のことがきちんとできるようなお店にしようということです。幸いにも業績が良かったこと、いい出店先に恵まれたということがあって、最近お店の数も社員数もかなり増えました。いったんここで原点に返って、スタッフ一人ひとりが、「『私の部屋』、『キャトル・セゾン』らしい人」になるために勉強、研鑚しておかなければいけないと考えています。近年、「スローフード」「スローライフ」という言葉が使われていますが、質にこだわったスローカンパニー、という考え方も大切なのではないかと思います。
 
―本日は、どうもありがとうございました。
 
関連サイト : Watashi no Heya 
 
 
対談後記 
matsumoto.jpg  お客さまから要求されたことを行なうのはサービス、お客さまの潜在する欲求を察知し進んで行なうことはホスピタリティの言葉に変化する。創業者のお父様と前川社長のポリシーが重なり、店頭でホスピタリティに拡がり開花している。だからこそ、デベロッパーが最も誘致したいテナントの一つなのだろうと感得した。「今日よりも少しだけ豊かな暮らし―私の部屋」のフレーズがとても似合う。今度はゆっくりお互いの好きな音楽の話でもしましょうか。
 
(株)丹青社 営業開発室SCC2部 部長 松本大地
 

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