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■トーク * 新世代百貨店 21世紀の提言 連載第10回 産業再生機構、支援決定の百貨店・第2号 "改革の成果"は秋の改装で全開 "魅力・好感百貨店"をコンセプトに津松菱再生へ
(株)津松菱 取締役社長 中山 正勝(なかやま まさかつ)氏 聞き手/(株)丹青社 営業開発室 専門役 齋藤 秀樹
「MR18委員会」を発足させ再生作業に着手 "4つのプロジェクト"軸に構造改革を推進 まず「組織・人事改革」でモチベーションアップへ
中山 社長に就任する前の顧問のときから社内改革をはじめていまして、まず「MR18委員会」というプロジェクトを社内に発足させました。現在、この再建プロジェクトを中心に、諸改革に取り組んでいます。「MR18」のMは松菱、RはRebornのR、18は完成までの年度で平成18年度の意味です。つまりこの3年で改装を完了させるわけですが、3回に分けて行ない新生・津松菱を誕生させようという計画委員会です。 具体的には、「リニューアル」「外商の改革」「経営構造のBPR(ビジネス・プロセス・リエンジニアリング)」「組織・人事の改革」という4つのプロジェクトを立ち上げています。できるだけ幅広い人たちに参加してもらうことが肝心なので、現在、総勢約60名が関わり、今秋の第一次リボーンへ向け毎日喧喧諤諤やっています。 すでに動きだしているのが「組織・人事の改革」です。今6月からは、成果が上がれば報われるという賃金体系がスタートします。「がんばれ、がんばれ」というだけではモチベーションを高めるのはむずかしいですから、業績評価による賃金体系を導入します。 業績評価による新・賃金体系というのは、「やれば報われる賃金」ということです。働いた成果により、賃金が上がる人もいるし、下がる人も出てきます。というのは、ここ数年、賃金アップが凍結され、賃金水準も低かったので、この4年間賃上げがない状態でした。そこで、新生・津松菱をスタートさせる時点で、働き甲斐と再生へのモチベーションを上げるため早めに導入することにしました。また階級が上になれば、同じ年齢でも評価によって年間で賃金の差が大きく出るという体系になっています。 「BPRプロジェクト」で業務を見直し 秋から物流改革にも乗り出す 新クレジットカードで「顧客戦略」を強化
中山 このプロジェクトでは、業務の仕組みを見直し、経営の効率化を図る改革作業を行なっています。たとえば津松菱が持っている遊休施設や土地などを有効活用していきます。うまく使われていないビルスペースなども非常に多いので、これを戦略的に有効活用したり、売却も考えていきます。 また、各業者とのアライアンス戦略も必要と思っています。いわば、業者との関係を見直して戦略的に連携する。また効率化を図れるところは図り、改革を進めるということです。 いま取り組んでいる「配送業務」問題で言えば、従来、3つの業者さんにお願いしていますが、それぞれ単価が違うという状況でした。高いけどサービスがいいとか、サービスは少し落ちるけど料金が安いというようなことで使い分けていたようです。 それを、最も料金の安い一社の業者さんに絞り、さらに単価を下げてもらうと同時に、専用の配達員をつけてもらうという新しい条件を提示して再契約する考えです。結果的に、サービスの質も確保できるように変えていきたい。 物流にはメーカーさんから品物を入れる調達物流がありますが、今後"納品代行制度"を導入します。各メーカーさんがこれまでバラバラに納品していていたものを、代行納品業者さんに各メーカーさんから集荷して納品していただき、値札を付けて、検品をして売場までもって来ていただくという仕組みです。メーカーさんは、マージンを業者さんに支払いますが、自社の車も人手も要らないし費用も発生しません。これはもう業界の常識的な仕組みですが、まだやっていなかったわけです。 そこで、ある業者さんにこの納品代行の仕組みを研究してもらい、今年10月1日からスタートすることにしています。忙しい年末に向けて、11月初旬からフル稼働できるようにしたいと思っています。
中山 津松菱のカードの利用は素晴らしいものがありますが、一つだけ課題があります。クレジット機能をもつカードに力を入れていなかったことです。現在、ポイントカードを利用して買い物をされるお客さまが約7割おられますが、今後、これをクレジット併用のポイントカードに転換していきたい。津というところは、伝統的な町だけに、これまでクレジットカードの文化が定着していないと聞かされました。松菱でも9万人のお客さまのうち8万人が現金で買い物されています。クレジットカードで買い物をされる方は1万人と少ない状態です。 しかし、現金の場合とクレジットカードの場合ではお買上げ単価が違ってきます。クレジットカードの利用は、現金の場合の約1.3倍と単価が増えていきます。 そこで、「BPRプロジェクト」の中にも研究チームをつくり、クレジットカード導入の是非を通じて、クレジットカードのメリットの確認と導入に向けた作業を鋭意進めているところです。
中山 そうです。約1万6000m2で、1階に贈答食品・化粧品のほかに、百貨店としての顔がほしい。今回の改装を前に、地権者さんに撤退していただけることになり、その面積の180坪を使って婦人用品やアクセサリーの売場を拡大オープンさせます。この180坪は事実上の増床となり、1階全フロアが津松菱の売場となり、新生・津松菱の顔ができます。 それから、すでに利益の出ていなかった5階の家電売場を廃止し、そのスペースに「総合サービスセンター」をつくりました。これまで、全館にバラバラに展開していた商品券やポイントカード、ブライダルなどの各カウンターを、全部1か所に集め、「総合サービスセンター」としていち早く立ち上げています。 総合サービスセンター」をつくったのは、ギフトサロン(お買物相談所)を強化したいという狙いもありますが、津に一つしかない百貨店ということもあり、中元や歳暮などのギフトが強く、年間売上げの約8%を占めています。 また、これまでエブリディギフトに対応するところがないので、それへの対応強化も考慮に入れて実施しました。
再生に必要なのは、「若さ」「情熱」「スピード」 しきりに言っている"社員の意識改革!" モットーは「風通しのよい会社」にすること
中山 社員からいろいろなアイデアが出てくるのですが、問題はスピードですね。すぐ取り掛かかる、考えながら走るということが大事です。 ここは城下町、宿場町として発展してきた主要都市で、私が育った山口市もそうなのでよくわかるのですが、人も町ももの静かで落ち着いています。ですから社員もみんなおっとりしています。これは良い面でもあり、再生作業を考えるとマイナス面にもなります。 というのは、私が宿題を出してから答えが出るまでに時間がかかり過ぎる。再生作業に必要なのは、「若さ」「情熱」「スピード」です。ですから、いましきりに社員の意識改革ということを言っています。 意識改革とは何か!というと、「自分にとって都合の悪いことを計画して、それを実行することだ」ということです。それからもう一つ口癖のように言っているのは、「こと仕事に関しては上司に何を言っても不利益な取扱いを受けないようにする」ということです。その中で"風通しのいい会社"にするというのがモットーです。
中山 これまで、マーケットの把握、競争相手の分析ということも不十分でした。今回、新しいストアコンセプトをつくり上げるために、いろいろマーケットリサーチもやりましたが、私の考えでは商圏というのは距離ではなく時間です。ですから車で 分の範囲を足下商圏とし、その範囲に住んでいる方に来てもらうということがストアコンセプトを考える場合の基本になるわけです。 商圏というのはアメーバーのようなもので、距離が近くてもアクセスが悪いところは時間がかかり商圏にならない。逆に、遠方でもアクセスが良ければ商圏になりえます。社員はこれまで競争相手はGMS、つまりここではサティさんだと考えていたわけでが、新しい視点で見ればその考えは違っていた。津から30分の距離にA百貨店さん(松阪市)があります。私はA百貨店さんのほうがわれわれにとっては強力なライバルであると感じました。 サティさんには相撲の好きな方々が集まっておられます。「だから私たちはフィールドでサッカーをしよう」。なかには、相撲もサッカーも好きな方がおられますが、基本的には相撲は相撲、サッカーはサッカーファンです。土俵を変えれば競合ではなくなるということです。ところが、サッカーをしようと思ったときに、同じ 分の範囲にサッカーの試合をしているところがあったら、そちらのほうが競争相手ではないかと言い聞かせております。A百貨店とはそういう関係なので、だから競争相手を間違えてはいけないと社員に言っています。 リフレッシュ計画というのは、売場ができ上がったときに担当者が自分たちでつくったと思えるようでないと成功はしません。「上に言われたからやった」では、愛着が湧きませんし、売上げが好調なときはそれでもいいのですが、売上げが落ちてきたときには上が決めたということが言い訳になってがんばれない。しかし、自分たちがつくったとなると、なんとかしようと工夫してがんばってくれるのです。 全体のストアコンセプトを決め、方向を示すということは私の仕事ですが、その後はみんなで一緒になってわいわいやっていくことが大事だと思っています。 大事なのポイントは"DND"「誰に(D)」「何を(N)」「どのように(D)」 販売するのかを明確にすること
中山 「魅力・好感百貨店」です。魅力というのはマーチャンダイジングの魅力であり、好感は施設や社員の接客態度に関わるコンフォート部分です。 また「魅力・好感百貨店」というストアコンセプトの下に「親子3代、松菱育ち」というサブタイトルを入れました。商圏内に最も多いのは団塊の世代の方たちです。津の行政人口は50歳から60歳までが33%です。松菱のポイントカードは9万枚発行されていますが、それで見ると50歳から60歳のお客さまの売上げシェアは55%となっています。 そのジュニア世代は行政人口で30%ですが、売上げは11.8%です。ということは、団塊の世代には支持されているが、そのジュニアには気に入っていただける商品がないということです。ここを変える必要があります。 これから津松菱の店は、団塊の世代、そのジュニア、さらにはジュニアのお子さんという親子3代をターゲットに考えて、店づくりを進めたい。今後、少子化が進むと親御さんは子どもにお金をかけて、いいものを買う傾向が強くなると思います。地方百貨店といえど、そういう動きを狙うべきなのです。
中山 大事なのはDNDです。つまり「誰に(D)」、「何を(N)」、「どのように(D)」販売するのかということです。 「誰に」ということは、この商圏の団塊の世代とそのジュニアということに決まったわけです。「何を」というのはどんな商品をということで、ターゲットとするお客さまがどんな商品を望んでいるかを見極めること。「どのように」はどんな環境で、どのような付加価値をつけて、どんなサービスで販売するかを決めることです。 最初のDが決まったのだから、残りのNとDはすべて現場の仕事だよということを全社員に言ってあります。そういうことを積み上げていくと、自分たちが売場をつくったという実感をもてるわけです。 "生きた情報"に触れさせるため 激戦地の名古屋にはなるべく行かせるようにしている
中山 さすがに東京まで見に行かせる機会はバイヤーを除いて少ないのですが、名古屋にはなるべく行かせるようにしています。行ったら「どんな店に人が集まっているか見なさい」と言っています。「そこに集まっている人はどういう人か」。それを見極めれば、「当社のストアコンセプトに合っているかどうか」がわかる。また、「いいなと思うものがあったら、売場に導入することを考えなさい」というふうにです。雑誌などで情報を仕入れ、感性を磨くのも大事ですが、実際に見るということで学ぶことのほうが収穫は大きいです。 時間と交通費を考えたら地元の人が名古屋に行くのはせいぜい月に1回です。それ以外の時は松菱にしようと思える店にすることが大事です。ですから、若い社員には、いろいろ見て感性を大いに磨いてほしいですね。 地元の人は、まだ愛着をもって「松菱さん」と呼ぶ そのことを大事にしていきたい
中山 この際、名前まで変えたらという意見もありましたが、変えないことに決めました。一番大切なのは地元の方々の気持ちです。地元の人は、この店を愛着をもって「松菱さん」と呼んでくれます。そのことを大事にしたいということです。
中山 来秋改装の第2段階では、レストランゾーンのリフレッシュを重要視しています。最後の来年のリフレッシュでは、最重要となるファッションゾーンの大改装を行ないます。紳士服を上層階に上げ、三世代ファッションを4フロアで展開しますが、取引先の協力が欠かせません。いまのところ、思ったより順調に進んでいます。 また、現在、お客さまの約7割が駐車場のある裏の玄関から入って来ますので、改装を契機に裏側を店舗の表玄関のイメージに変えていこうと考えています。その第一弾として、食品が使っているビルの1階に洒落たショップを設けるなどして街づくりにも入ります。
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