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■トーク * 新世代百貨店 21世紀の提言 連載第8回 “全方位型新ターミナル百貨店”の創造 増床・全館改装計画でヤングアダルト層取込みへ 地域一番店として地歩固める“商圏深耕策”
株式会社東武百貨店 常務取締役 船橋店店長 長 武男氏 聞き手/(株)丹青社 営業開発室 専門役 齋藤 秀樹
専門店街を統合し、増床 開店以来の大規模リニューアルで 商圏内顧客層の拡大を狙う
長 予想を上回る好調さでスタートを切ることができました。まず、入店客数について申し上げますと、1日当たりの入店客数が昨年に比べ2倍近くふえました。従前は、平日が約3万5000人、日祝日が5万5000人くらいだったのですが、現在は平日約5万人、日祝日は9万人近くのお客さまにお見えいただいております。顧客の反応ぶりは、さまざまです。従来からのお客さまは、「たいへん売場がきれいになり、明るくなった」という評価を沢山いただいておりますが、その半面、「売場がわからなくなった」といった苦情もございます。また、一部リニューアルの積み残し部分もあります。たとえば今回はトイレを全部直せなかったので、そこのところを突かれまして「トイレが汚いわよ。トイレはいつ直すの?」といったご批判も受けております。
長 そうですね。しかし、どちらかといえば「商圏拡大」というより「商圏内深耕」による客数増加ですね。特に目立ちますのは、ベビーカーにお子さまを乗せたお客さまが非常にふえたことです。これは今回、私どもが「戦略顧客」として設定し、狙った客層です。その方々が予測通りにお見えになってくださっている、という感じがします。
長 売上げの伸び率で判断しますと、改装オープン前の10月13日から3日間内覧会を行ないまして、16日にグランド・オープンしましたのですが、10月13〜31日までの売上伸張率は前年比169.7%です。 売場別で見ますと、食品143%、ギフト・サービス293.0%、婦人服飾雑貨157%、婦人服第1部(ヤング・アダルト)367.5%、婦人服第2部(ミセス)192.4%、子供・宝飾・呉服133.2%、スポーツ・紳士服179.5%、リビング135.6%という数字です。 10月13日以前の数字を加えた10月トータルは、対前年比125%です。 今回、リニューアルに伴い約2割増床していますので、そこまで売上数字も付いて出ている点では、まあ好調なスタートが切れたと思っています。
長 当店は、今年開店してから26年になるのですが、開業以来、百貨店と専門店街という2つの小売形態を1つの建物の中で展開してきました。今回の全館リニューアルを契機に、これを改めて百貨店の括りに1本化したということです。 したがって、双方の売場面積は、百貨店ゾーンが2万9000m2、専門店街が7000m2だったのですが、今回、専門店街をなくしてオール百貨店の運営にしました。これによって百貨店の売場面積は、3万6000m2になり、全方位型のターミナル百貨店を目指すことになったのです。これが最大のポイントでしょう。 船橋地区の地域一番店として “新ターミナル百貨店”を創造へ その具現化として“MDと客層”拡大
長 私どもの専門店街は、26年前の開店後、ご承知のように新しい商業施設が周辺にたくさんできてきました。それらの競合施設と比較した場合、専門店街は、1店舗当たりの店舗面積も小さく、テナントさんも、いまの時流から判断するとやや古いと感じられるところも少なくありませんでした。 そこで今回のリニューアルにあたって、思い切って専門店街をクローズしようと決断したわけです。成績のよい、百貨店と一緒に今後も取り組んでいただけるテナントさんには残っていただきましたが、大部分のテナントさんには退店していただきました。 百貨店としては、大幅な増床ができましたので、お客さまに対する新しいMDの構築が可能になったわけです。
長 改善ポイントは、4つほどあります。 1つは食品の強化です。2つめが婦人ファッションの強化です。もともと私どもの店は、ミドルシニア(50歳以上の婦人)の方のファッションは非常に強かったのですが、今回のリニューアルでは、25〜26歳前後のヤングアダルトの客層を戦略顧客として位置付け、MDの強化と見直しを図りました。 3つめは、買い回り性の改善です。具体的にいえば、リニューアル前は、地下1階に家庭用品、5階に寝具、7階に家具と、リビング関連商品が3フロアに分かれていました。これを、同一フロアにすることで買い回り性の高い売場にしていこうということです。 それから、当店は東武野田線船橋駅の駅ビルに入っているため、2階部分の百貨店と専門店街の中間に駅施設の一部があり、行き来するのに、いったん外のペデストリアンデッキに出ないとなりませんでした。そこで、その施設を別の場所に移設してもらい、館内に通路をつくることができました。この結果、2階のファッション・フロアの買い回り性が非常によくなりました。 また7階は、百貨店ゾーンは家具売場、専門店街はレストランゾーンで構成され、その間の一部が屋上になっていました。今回、この屋上部分に屋根をかけて、増床し、分断されないフロアになったのです。 4つめのポイントは、新しいレストラン街の構築です。リニューアル以前は、専門店街の6階と7階にあったのですが、今回のリニューアルで先ほど申し上げましたように増床した7階のワンフロアに集中させ、通路幅も5mにするなど、お好みの飲食を選びやすく、楽しく回遊できるレストラン街にしております。また、旧8階屋上部分にゆったりとした120坪のスペースに湯葉と豆腐の店「梅の花」を展開いたしました。 ハード面の改善では 高齢の顧客にも利用しやすい 百貨店の売場づくりに注力
さらに、婦人服売場には車椅子やベビーカーでも気軽に入れるような「大きなフィッティングルーム」を設置し、随所にバリアフリー化に対応しております。
長 これまでのお客さまから「東武さん、きれいになっていいわね。でも、何だか私たちには入りにくくなったわ」とか、「何よ、私の利用していた売場がなくなっちゃったじゃない」といった声が出ないようにすることに留意したことでした。そんなことで大事なお客さまをなくしてしまったのでは、リニューアルをした意味がなくなってしまいます。 増床したぶん、婦人服売場などは広くなったわけですから、既存のお客さまに店がわからなくなるような売場づくりは絶対にやめようという点に気を使いました。
長 明らかに「業者にお任せだな」というリニューアルはやめよう、という方針を立て、貫きました。 開店して26年目の建物ですから、たとえば給排水や空調など諸設備の老朽化もずいぶん進んでいました。そこで、1階の天井高を上げたり、2階に通路を設けたりとか、構造を改修する大幅なリニューアルになりました。ですから、投資額も64億円に増えました。シビアにいかないと、施工費がどんどんかさみますので、今回お手伝いいただいた施工業者さんには、ずいぶんご無理なお願いをしてしまいました。 それから、これはリニューアルの際によく感じることなんですが、デザイン会社には、デザインに対する1つのポリシーがあります。ですから、私どももいろいろ提案を出していただくわけですし、施工をお願いするわけです。 これもよくあることですけれど、プレゼンで聞いているときには、頭で納得できていても、いざできてみると、これはおかしいぞということがままあります。デザイン会社からご提案いただいた内装や什器・備品などが、見栄えはよくても、実際にお客さまにとって商品が見やすかったり、選びやすかったりするかどうかは、疑問なケースも少なくありません。 今回のリニューアルでも、駅から続く1階正面入口の照明の位置が、デザイン会社の提案だと、あと30cm下げなければいけない仕上がりでした。しかし、1階は売場が入口から下がっていますので、そこまで下げると見通しが非常に悪くなってしまいます。そこで、手直しをしてもらいました。デザイン会社は「作品」をつくりたいのかもしれませんが、私どもは「作品」をつくってもらうためにリニューアルをしているわけではありません。 基本的な部分は、一度つくってしまうと、なかなか直せませんから、納得のいくものにしていただくしかありません。そういう意味では施工業者には、ご苦労をおかけしたと思います。
マーケットの成熟度に合わせ 店づくりやMDの見直しに 今後、引き続き取り組んでいく
長 私どもの店の商圏は、船橋市を中心とした第1次商圏が約200万人、それと近隣地域(市川市・鎌ヶ谷市・習志野市・佐倉市・白井市・千葉市の一部)の人口を合わせた約200万人が第2次商圏という捉え方をしています。 戦略的には、先ほど触れましたが、この商圏を広げるというより、商圏内のお客さまで、これまで都心の百貨店に行かれていた方の何割かが、私どもの店に来ていただければと期待しています。その意味で“商圏の深耕策”です。 実際にそういう傾向は出てきているようで、消費者相談室から上がって来る資料を見ますと、「いままで日本橋の三越へ買い物に出かけていましたけど、新装オープンした東武さんなら、わざわざ向こうまで行かなくてすむ」というお声を頂戴しています。 魅力ある船橋駅前を目指し 西武百貨店と協同戦線も
長 船橋の中心街は、駅を挟んだ海岸側が古くからの市街地でした。ところが、船橋駅周辺に私どもの店や西武百貨店さん、イトーヨーカ堂さんができたため、商店街は衰退してきました。 けれども、その商店街が昨今、商店を廃業してマンション街に変わりつつあるんですね。 ここは、都心に通勤するには便利な場所ですから、そういうマンションにニューファミリー層がどんどん流入して増えてくるのです。
長 マクロ的には減少していますが、船橋地区は増加していますので、私たちもお子さま向けの売場についても再考しなければならないと思っています。その点で新しくなった津田沼ジャスコさんのキッズ対応は、怖いですね。
長 大々的にやりたかったのですが、イートインというのはご存知の通り効率が悪いので、もっとスペースがあればふやしてもよいのですが、今回は見送りました。 そのぶん、新装したレストラン街には、人気の飲食店を17店舗集めました。いずれも好評で、日祝日などはお客さまが多すぎて捌ききれない状態です。
長 ぜひ設けていただきたいですね。といいますのは、船橋に来られお買いものされた後、せっかく当店のレストラン街に見えられても満員で百貨店でお食事ができないなんてことではお客さまに申し訳ない。ですから自分の店だけお客が入ればいいといった考え方では街そのものに魅力がなくなってしまいます。 魅力ある競合店がたくさんあったほうが、船橋は、魅力のある街になりますから。
長 1992年、先行していた船橋西武さんに逆転して1番店になりましたから、今年で11年になります。
長 そうですね。今回のリニューアルで立てた初年度売上目標の500億円(前年比108%)を達成すると、一番に躍り出るかもしれません。でも、あんまり売上競争ばかりしていても仕方がありません。それより地域の中で確実に支持され、最終的にはつぶれないで経営が成り立てばよいかなと思っています。
長 今回、オープン以来26年ぶりにリニューアルを果たし、新しいスタートを切れたわけですから、お客さまのニーズに応えウォンツを的確に捉え対応することです。また、マーケットの成熟度に合わせて積極的に、店づくりやMDの見直しを行なっていくことだと思っています。
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