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■トーク * 新世代百貨店 21世紀の提言 連載第7回 京王百貨店の“中高年戦略”いまなお健在 '96新宿戦争で“独自のミセス戦略”として構築 来期、創業40周年契機に全館改装、さらに強化・本物へ 土居 英保氏 聞き手/(株)丹青社 営業開発室 専門役 齋 藤 秀樹
「地域3番店」が選択した新戦略 “自店の既存顧客”分析から、第3の道(すき間戦略)は こうして生まれた
土居 いいえ、不本意なことはありません。創業時から高島屋さんと資本・業務提携をしておりましたので、当時、“高島屋ナイズされた店づくり”をしようという考えもありました。また、他店と同様、伊勢丹さんなどをモデルとしてやっていれば成果が上がるのでは…といった錯覚もありました。バブル経済当時には、自分たちの足元を見ずに、価格は高くても華やかであることが、百貨店の進むべき道、方向性だと考えてしまったように、百貨店人は業績のよいところに学び、追随してしまう安易さがあるように思います。 私は、もともと4階ミセスフロアの出身で再配属されたのですが、当時セーター、ブラウス、ドレス、コートの平場は、時代遅れだという議論の真っ最中で、売上も落ちに落ちていました。私自身、元の売場に戻ったことで、以前は欠点と思ったところが長所に見えたり、長所と思っていたところが実は欠点だったとわかったりと、これまでと違う目で物事が見られるようになっていました。 4階の売上が下降線なのは、「高齢のお客さまばかりだからで、うちももっと若い人たちに焦点を当てなければいけない」といった見方が強かったのです。 実際、4階を歩いてみると、確かに中高年のお客さまばかりです。しかし、このお客さまを無視して若い人にターゲットをシフトするのは、本当に良いことなのか。迷いましたが、私としては、間違いではないか、という思いを強くしていました。 逆に、こうした従来からのお客さまに、さらにご支持いただけるような売場づくりをしなければいけないのではないか、と考えるようになりました。 社員の多くは、「百貨店はこういうものだ」という固定観念がありますから、なかなか理解してもらえることではありませんでした。価格帯の見直しをしたこともあって、「量販店にするつもりか!」とも言われました。 しかし、当時の社長の理解もあり、熟年層の顧客をいままで以上に大切にする路線を推し進めたところ、バブル崩壊後下降線を辿っていた売上が上昇するようになりました。その実績から4階に来られるお客さまと連動するように1階のウォーキングシューズ売場を拡充したところ、これが大きな反響を呼びました。 これで4階と1階に戦略核となる売場ができ、中高年路線が急速に他の部門からも認知されるようになりました。 また、長引く不況のなかで、熟年層をターゲットに売上を伸ばしている百貨店という観点から、マスコミにも取り上げられるようになり、徐々に中高年戦略が当社のアイデンティテイとなっていったわけです。 これからのテーマは、「日本一のシニア百貨店をつくろう」という目標を高く掲げていきます。これらは、考え抜いた新しい戦略というよりは、もっている長所を強みとして徹底していくことの延長にあると思います。 ヤング・キャリア偏重のMD政策は、今後の人口構成の変化を考えても道理に合いません。 京王百貨店に学べ “百貨店の生き残り策”“独自路線”をいかに 打ち出せるかで決まる!
土居 恐縮です。大事なのは、やはり現場感覚でしょうね。夢は大事ですが、分不相応なことを一生懸命やってもだめです。 百貨店がこれから生き残るためには、他店とは違った方向性を模索する必要があります。しかもその土壌は、すでにあるものですから、それを生かす戦略をとるべき、というのが、私の考えです。
土居 私たちは、お客さまの支持を数字という結果に出さなければ、役割を果たしたことになりません。
土居 いま思えば、「他店は若い人たちをお客さまにしているのに、なぜうちは中高年なのか。だから評判がよくならないのだ」という気持ちが社員の中にあったのも偽らざる事実です。 売場の大きな改装・改編より、 店が大きく変化したと意識されない 小さな工夫の積上げが成果に
土居 今後の改装は、来年の創業40周年をも踏まえて、「経営3ヵ年計画」に基づいて取り組んでいるものです。 昨今の百貨店業界で、大規模なリニューアルを行ない成功した例はあまりありません。大枚を投じても売上を落としてしまうケースもあります。そのこともきちんと分析する必要があります。 時代は変わり、お客さまのニーズ、顧客満足の中身も変わってきています。しかし私どものお客さまが、大きく変わることを望んではいないこともあります。たとえばレイアウト。お客さまが商品を探すときに戸惑ってしまうからです。
土居 そういうことです。私たちの体力で、3年間でどこまでできるかわかりませんが、大きなリニューアルを考える前に日々改めていかなくてはいけない。地道な積み重ねこそが変革の基本だと思っています。 市場からの新規顧客開拓ではなく “既存顧客の満足度”の追求が 今後の最優先テーマであり、使命
土居 データを見ると、私どもでは化粧品売上の約13%が40代以上のお客さまが購買している。これは想像していなかったことでした。売場を見ますと、メイクアップの「ボビイブラウン」の売場をはじめ、ヤング向けの化粧品売場にも中高年の方がたくさんいらっしゃいます。 また、化粧品に限らず、ヤング・キャリア向けの婦人服ブランドでも50代の方が購入しています。われわれが考えるより、はるかに若い人向けの商品をお買いになっている。 ですから私は、「うちにいらっしゃる熟年層の方は、それだけ若々しさを求める感性の高いお客さまなのだ」といっています。しかし現状では、まだそのお客さまに十分に対応しきれたとはいえませんが…。 今年10月からは、顧客データをさらに細かく分析できるシステムを稼動させます。実際にどういう顧客像なのか。そして固定顧客といわれるお客さまが実際に何を購入し、どのようなことを店にお求めになっているのか。また、どのような不満をおもちなのか。 そういったお客さまの実態がより把握できるようになると思います。京王の強み・弱みを明確にして、その欲求を満たせるようになれば、他の追従を許さないようなシニア百貨店に変貌できるという予感がします。 おそらくキーワードは“上質感”でしょう。いくつかの他のキーワードも見えています。こうした要素をバランスよく配置すれば“日本一のシニア百貨店”になる。この徹底によって、うちは、本当に強くなるのではないでしょうか。 高齢化の進行の中でシニアにターゲットを据える企業も増えていますが、当社にはこの10年間失敗を重ねながら培ってきた蓄積があります。私どもはすごい金脈をもっているということになるのです。それを生かすため、意識改革や体制の硬直化の是正など、改革に取り組んでいるところです。
土居 ようやく形が整ったという段階です。それでも毎日、たくさんのお客さまにいらしていただいているので、「これでいいのでは」という甘えが生まれる可能性があります。お客さまの声を深く分析していくと、「これだけ言っているのにまだわからないのね」という厳しい意見を述べてくださる熱狂的なファンもいらっしゃいます。 そうした要望に対しても応えきれていないわけですから、どうすればご満足いただける百貨店になれるか、日々、模索しているところです。
土居 そうだと思います。他店の真似などしないで、いま、来ていただいている自店のお客さまに満足していただけるようにしなければだめです。 「前年比が落ちているから新規顧客を開拓する必要がある」などと言いますが、これは間違いですね。 「既存のお客さまをきちんと捉えていないから売上が落ちている」のですから、お客さまが一人たりとも店離れしないような仕組みづくりや配慮をすることだと思っています。もっとお客さまが抱えている問題を解決してくれる店になれば、自ずとロイヤリティは高くなり、1%、2%の売上は上がっていくはずです。そうでなければ困ると売場のスタッフには、いつも言っているのですが、まだ十分とはいえません。
土居 もちろん、ヤングのお客さまにたくさん来ていただいていますが、ただ、他店と比べて私どもの商品はトレンド追求型の品揃えではありません。新宿西口で勤務しているOLの方々を対象にした通勤着や普段着が主体です。流行を追うのではなく、本来の意味でのコンサバティブな、ベーシックかつトレンドも配慮した、安心できる服を提供しています。 中心年齢は、仕事をもっている20代、30代の方々で、将来を考えたときに最も獲得したい客層でもあります。実際に業績も上がっていて売場面積は小さいのですが、ブランド別単位の売上は非常に高いですね。 “売る側の論理”ではなく お客さまの気持ちのわかる 百貨店であるべき
土居 来年が新宿店の創業40周年ですので、本当はそれに合わせて改装計画を完成させたいところですが、先ほども申したように「まず、リニューアルありき」ではなくて、日々やり残したことに気づいたら、一つひとつ対応していくことを優先しています。 ですから、3年で完結する計画ということではなく、何年かかってもいいから、当社のお客さまが求める商品展開を実現できる基礎づくりをするということです。創業40周年を機に新しい考え方でスタートしようという気持ちでいいと思っているのです。 ただ、従来とはスタンスを変えた部分として、どこでも縮小傾向にあるリビング関連をこれまで以上に充実し、違う切り口でチャレンジしたいと思っています。 私どものお客さまは、どちらかというと服飾品よりも生活空間における豊かさを重視されており、そうした志向性を後押しするためにリビング用品を軸にした新しい生活提案をしていくべきではないかと考えています。 最初の計画では、6階リビングフロアは最後に多少手を加えればいいと思っていたのです。が、今回は逆に最重要優先フロアとして品揃え内容を大胆に変え、改装スケジュールも早めていくつもりです。
土居 その通りです。レストラン街の充実は、私どもの大きな課題で、前回に拡大し改装しましたが、私どものお客さまがどのようにレストランで過ごされたいのかを考えたとき、十分に役割を果たしているとは考えていません。 ですから、やらなければならないことはたくさんあります。お客さまの思いを実現できるように、これからも努めていきたいですね。
土居 やはり、週1回は京王に行かないと落ち着かないというくらいに、お客さまの気持ちがわかる百貨店に早くなりたいですね。 それは、真剣に努力すればできると思っています。そのためには、まず売る側の論理を押し付けたり、売る側が都合のいいことばかりを考えていてはだめです。 バブル崩壊後、百貨店という運営側の論理に立って改革してきた反動が、いまの百貨店業界不振の要因ではないでしょうか。私どもにしても、なぜ、これだけのお客さまが支持してくださっているのかが本当に見えてくれば、21世紀に通用する新しい戦略が構築できるはずです。 これは、絶対に実現させたい。他店には真似できないものを、自ら手でつくり上げなければいけない。それが、この3ヵ年の私の最大の課題であり、目標です。
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