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■トーク * THE SC [連載第5回] 「脱遊園地」を掲げ、街づくりの視点で多様な魅力を発信
(株) 東京ドーム 代表取締役社長 林 有厚氏 聞き手/ (株)ウエルウエスト代表取締役 大西 直良氏
複合施設LaQuaの開業で 消費のリーダーである 女性をメインターゲットに 複合型商業施設を発想
林 都市型遊園地の先駆けとして、1955年以来営業してきた「後楽園ゆうえんち」ですが、83年の東京ディズニーランド誕生の影響で入場者数が落ち込みました。90年代になり景気の低迷が続くなかで、日本中のテーマパーク・遊園地が衰退を余儀なくされてきた状況があります。そこで、遊園地という形に対して根本的な手を打たなくてはという思いがありました。 私どもは、東京ドームの完成以来、ドームを核とするひとつの街として「東京ドームシティ」というコンセプトを打ち出してきました。街を標榜するには多彩な機能と同時に、24時間型の賑わいが必要です。そこで社内に20〜30歳代の女性を中心にしたプロジェクトチームを立ち上げ、脱遊園地をテーマとした新たな施設のあり方の提案を行なうよう指示したのです。
林 私どもはこれまで、主に男性を対象にした事業が多かったと思います。野球にしても、その隣りの場外馬券売場にしても然りです。その後、アイススケートやボウリング事業に取り組むなどして、次第に女性のお客さまも増えてきましたが、男性主体というイメージや構造はなかなか変わりませんでした。しかし、いままでのように男性主体の街ですと、昼間のお客さまは期待できません。街として昼の時間帯にも賑わいがほしいということになれば、いまや消費のリーダー的存在である若い女性に多く来ていただかなければなりません。これまで取り込めていなかった、そうした女性層を取り込むということが、今回の再開発の基本方針でもあったわけです。
林 そうです。ショッピングは女性にとって大きな楽しみです。女性の集客を考えるには、その楽しみをいかに提供するかが重要だと思います。 私どもがここに物販店舗を出したのは、野球や音楽コンサートにおいておみやげや軽食を提供する付帯施設のようなものでした。これは行政のいうところの 便益施設というものです。それというのも、この場所が都市計画公園の指定を受けていまして、遊園地やスポーツ施設はつくってもいいけれど、デパートやショッピングモールのようなものはつくってはいけないという規制があったからです。 したがって、ここでは本格的な物販業務はできませんでした。あくまで野球を観戦する方々がサインボールを買ったり、空腹のときに食事をしたりといったサービス施設をつくるという範囲内のことなのです。ですから、店のつくりもいままではスポーティな感じのものばかりでした。それを今回は大きく変えたわけです。
林 ここは敷地が約4万坪あるのですが、そのなかで1000坪だけ都市計画公園の中に入っていない部分があります。その1000坪は地下鉄の路線に沿った幅10mくらいの区画で、これまではそんな細長い土地では何もできないだろうと思っていました。しかし、今回はこれを見逃す手はないということで発想の転換を行ない、そこに集約して物販などの商業施設を建設したわけです。 当社は、物販としては「SHOP IN」という店を直営してきておりまして、若い女性層をターゲットにしたマーチャンダイジングにはそれなりの実績があります。そこで、ここに「SHOP IN」のようなものをぜひ入れようと考えました。今回のプロジェクトチームには、そうした経験をもつスタッフも入れて、企画からリーシングまでを担当させました。 しかし、小さい店舗を1つつくったところで大きな集客は期待できません。やるのであれば、多様な店を最低でも50店舗は揃える必要があるということで、飲食19店舗と物販51店舗、合わせて70店舗という規模になりました。
消費意欲を向上させるため 良質で安価なものを 気軽に購入できる店舗構成に
林 ターゲットである若い女性がいま何を求めているかということを知るために、外部の機関に依頼して女性の意識調査を行ないました。その結果のなかで、「温泉に入りたい」「世界のお風呂を楽しみたい」という声が多かったのです。 日本にはたくさんの温泉があり、どこも女性客が主な顧客になっています。しかし、いま数多くある温浴施設と似たようなものでは訴求力はありませんし、といって、いまさら、かつてのヘルスセンターのような施設をつくるわけにもいきませんから、若い社員を世界各地の温泉施設の視察に行かせ、新しい魅力をもつ本格的な温泉づくりに取り組もうということになったわけです。
林 かつて温泉が出ない立地といわれていた大分県の城島後楽園で掘削して湧出したという経験があったものですから、ここでも掘ってみようということでやりましたら、すばらしい温泉に突き当たったということです。 今回の「Spa LaQua」は世界各地の温泉・温浴のいいところを学んで構成されています。たとえば「ヒーリング バーデ」は、バリ島のイメージで全体を演出すると同時に、内容的には、韓国で人気のチムジルハンという低温サウナを採り入れるなど、従来の日本にない温浴の形を提案することにしました。
林 そうです。温泉で女性のお客さまがたくさん集まるのですから、ショッピングモールも入れた複合施設にしようという考え方です。
林 新宿、銀座、池袋に囲まれたこの立地では、特別高級なブランドを揃えるより、ここに集まる若い人たちにとってのブランドといえるような品揃えのほうが、お客さまの支持が得られるだろうと考えました。つまり一点豪華主義の買物をされるときは銀座に行っていただいて、ここでは日常的に使うもののなかで最も良いものを扱っているお店を集めようというスタンスをとりました。 たとえばユニクロさんがそうです。銀座で高価なものを買って一生使うという方もいらっしゃるでしょうが、ファッションは日々変化するものですから、ここではそれよりも、良質で安価なものをいろいろ買い揃えて、毎日違ったコーディネートを楽しんだりできるように、新しいものを気軽にどんどん買っていただけるようにしたかったのです。 かつてアメリカ経済が伸び、日本が昭和30年代に経済成長を遂げたのは、旺盛な個人消費に負うところが大きい。いまもアメリカ経済は個人消費に支えられています。いまの日本は消費不況でみんなが慎ましくなってしまい、少しでも安いものを探してそれを大事に使っているようですが、それでは経済は伸びません。大いに消費することで、結果的にみんなが潤うという消費経済をどこかに忘れてしまっています。日本や、われわれが取り組むべきことは、消費を振興することなのです。そのために私どもは、買いやすい商品と入りやすい店づくりに取り組んだわけです。 利便性の追求が 地元のみならず 周辺地域からも利用者を呼ぶ
林 ご指摘の通りです。温泉をつくりましたが、都心の施設ですから、基本的には宿泊せずに温泉を利用できるわけです。地域の方を中心にSPA感覚で気軽に楽しんでいただき、多くの方にリピーターになっていただきたいと思っています。野球観戦や音楽鑑賞では、ウィークデーの日中の賑わいはあまり期待できません。ですから、温泉でリピーターを創出して常に賑わいのある施設にしていきたい。また、それと合わせてスーパーマーケットを入れたかったのです。候補の店はいくつかありましたが、実際にお店を視察しながら検討した結果、成城石井さんに出店をお願いしました。 都心部で200台の駐車スペースをもつスーパーマーケットというのは珍しいと思います。それだけに、周辺の方々に便利な施設として利用していただけると思います。
林 そうですね。文京区には8万7000世帯あるそうですが、企画の段階で、私どもはそうした文京区にお住まいの方々を対象として考えておりました。しかし実際にオープンしてみますと、隣りの千代田区からのお客さまが意外に多く、驚いています。千代田区には高額なマンションに住まわれるような裕福な層が多いようですが、日常的な買い物をするのに適当なお店が少ないのではないでしょうか。
林 非常に好調のようです。成城石井さんの目前にエーエム・ピーエムさんがあるので、競合する要素もあるのではないかと少し心配もしましたが、商品の内容面で競合することはないようですので安心しました。
林 いまは物販の営業時間は午前11時から午後9時まで、飲食は午前11時から午後11時までとなっています。成城石井さんは、今後、午後10時や11時までの営業が実現可能かどうか研究なさっているようです。
林 商業施設と同様、日常的に気軽に使っていただけるようにということで、ファストフード的な店を中心に考えていました。そこに非日常性の感じられるテーマレストランを配して、活気を生み出すという配慮をしました。
街として常に変わり続けることで 新たな魅力を生み出す努力を継続する
林 そうですね。オープン1か月を過ぎ、5月の来場者が175万人でした。このペースですと年間1000万人は軽く超えるのではないかと思っています。
林 いまのような不況下では、みなさんは先行きの不安から貯金をなさって、あまりお金を使わないという現状があります。また、リゾートというのは基本的に土・日祝日にしか出かけませんから、ますます消費から遠のくわけです。ですから、リゾートという部分についてはあまり過剰な打ち出しをしないようにしながら、「東京ドームシティ」を中心にした事業展開をするという方向でやっております。 一昨年、東京ドームホテルをオープンしましたが、それについても建設許可をとるのに長い時間がかかりました。ちょうど中曽根内閣のときでして、経済の復活は民活しかないということで出た許可です。都市公園の中のホテルとして、これも第1号でした。そして、今回の再開発施設LaQuaが完成したことで、スポーツ施設、アミューズメント、ホテル、温泉、商業施設が揃い、街として形が整ってきたといえます。こうした、この街を形成するいろいろな要素が渾然一体となって魅力を発揮するように、これからの事業を進めていきたいと思っています。
林 水道橋駅側の角地に未利用地が残っていますから、今後その部分の開発も検討していきたいと考えています。この“街”は常に変わり続けることで魅力を生み出していく、このことが何より大事だからです。 また、私は“日に新た”をモットーとしております。東京ドームシティにいらっしゃるお客さまを日々新たなる気持ちをもってお迎えし、ご満足していただきたいと思っております。
関連サイト : TOKYO DOME CITY WEB SITE
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