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■トーク * Design対談 アメリカンデザインビジネスの潮流
(株)みかんぐみ一級建築士事務所 ファジーな存在でありたい との思いから生まれた ユニークなネーミング 牛建 今回の対談(座談会)は、タルディッツさんと私が同じスクールで講師をしていて、知りあったことで、実現しました。「みかんぐみ」という設計事務所は、非常にユニークな組織ですね。皆さんが一緒に会社をはじめられたきっかけは、「NHK長野放送会館」のコンペと聞いていますが。 みかんぐみ そうです。それまではみんな個別に活動していました。しかし、話す相手も少なく、しかも仕事が少ないときは非常に不安なものです。考えも煮詰まってくるし、世界が自分たちと関係なく動いているような気がする。そこで、コンペがあるごとにいろいろな人たちが集まって、クラブ活動のようにやっていました。NHKのコンペのときには、その仕事が一等に入選したことで、まわりの状況から会社組織にしなければならなくなって会社にしたわけです。 当時、タルディッツと加茂は2人でセラヴィアソシエイツという事務所を、竹内も一人で事務所をやっていました。曽我部は大学の助手でした。また、いまはみかんぐみから離れていますが、そのとき参加していたもう一人も自分の事務所をやっていました。 牛建 一度聞いたら忘れない社名ですが、どういう狙いで命名されたのですか。 みかんぐみ 複数の人が集まって会社をつくるときには、よく頭文字を組み合わせて社名をつくるというようなやり方をしたりしますが。それをしなかったのは、かなりファジーなグループだという認識があったからです。そのときはたまたま5人でしたが、プロジェクトによって3人になっても10人になってもいいという考え方でしたから、個人の名前で特定するのはむずかしいので、グループ名というよりフレーム名を付けるというイメージがありました。それで「みかんぐみ」という、人の名前とは無関係な名前をつけたのです。 というと論理的に導かれた名前という感じがしますが、実際には考え抜いてつけたわけではありません。格好良さそうな名前もつけたくないし、堅い名前にもしたくない。むしろ、いい加減で、適当な名前にしたいということで、何となく決まったというのが本当のところです。 牛建 しかし印象は強いですよね。何より「なんでそういう名前をつけたのか」ということで、相手に興味をもってもらえる。 みかんぐみ 「みかんぐみ」といっても何の会社かまったくわからないでしょう。そういう意味ではメリットもデメリットもあります。デメリットとしては、まったく設計事務所と思ってもらえない。メリットとしては、可愛らしさがあって覚えやすい。両面があることは最初からわかっていました。ただ、デザイナーと、そうでない人との境界をもっとなめらかなものにしたいという思いがあって、○○設計事務所というような堅い感じのネーミングからは逃げたかった。それが大きな狙いでしたね。 牛建 オフィスの雰囲気からも、堅いものに縛られたり、決められた枠の中でやるのが嫌なタイプの人たちだなという感じを受けます。 みかんぐみ これでもだいぶオフィスらしくなったんですよ。(笑) 個性の違う4人が アイデアを出し合い議論して 一つの作品を生み出す 牛建 一つのプロジェクトに4人で取り組むということになると、クライアントとしては、4人分の知恵を決められた設計料のなかで得られるというメリットがありますね。でも、デザイナーのほうはギャラを4人で分けなくてはなりません。4倍のギャラがもらえればいいですけれど。 みかんぐみ 先日もレクチャーに2人で参加したのですが、1人で来ていた方たちのギャラと、僕たち2人のギャラは同額でしたね。(笑) 牛建 現在は4人でやられているということですが、仕事の分担はどのようになさっているのですか。 みかんぐみ 基本的に分業はしません。営業も経理もデザインもみんな同じ立場でやっています。プロジェクトごとに担当は決めますが、それはクライアントとの連絡窓口が必要だからです。ですから、担当者にデザインの権利があるわけではありません。 担当者は、社内ミーティングの司会をしたり、打合せの日を決めてみんなを招集したり、意見を言わせたりというように、決定するのではなくコーディネイトを行ないます。4人が同じ立場で意見を述べ、ディスカッションをして決めていきます。 牛建 4人のクリエーターが一つのプロジェクトについて意見を出し合うとなると、考え方もスタイルも異なっているはずですから、いろいろな要素を取り入れることができるというメリットがある半面、むずかしい面もあるのではないですか。 みかんぐみ 確かにむずかしい部分はあります。性格的な問題もありますので、あまり個性の強い人は、一緒にやること自体が不可能だと思います。担当になったとしても、デザインのすべてを仕切る権利があるわけではないので、施主からいろいろな要望を聞いて、それを持ち帰ってみんなの意見も聞き、妥当なところでまとめなければなりません。その意味では担当はむずかしいポジションだといえます。それぞれが自由に発言しても、まとめるためにはお互いに気を遣う必要もあるので、役割に慣れることも重要だと思います。 全員がまったく同じ考えなら一緒にやる意味はありませんし、反対に遠すぎると話がまとめにくくなります。ですから、議論するといっても、各自のアイデアを主張するというのではなく、どんどんアイデアを出し合い、話し合って決めていきます。アイデアが誰のものであるかは重要ではありません。 牛建 4人の共同作品みたいな感じですか。 みかんぐみ そうです。 牛建 ある意味では会社組織みたいなやり方をしているようにもみえますね。 みかんぐみ そうですか。組織ではありますが、それぞれが自分のアイデンティティをもっているわけですから、4人の考えが同じだとは誰も思っていません。ただ、お互いが理解したうえで合わせるということは確かにあると思います。 牛建 設計の過程のなかで大きな枠組みを決めて、それに向かって方向性を詰めていくわけでしょうが、ディテールの部分では、それぞれが考えていることが違うということはありませんか。 みかんぐみ それはあるでしょうね。だから誰が決めてもいいようなことは適宜誰かが決めるようにしています。デザインをするときには、絶対に譲れないという水準から、これでもいいと思える水準まで、かなり幅があるのです。「みかんぐみ」を結成して1年くらいはその幅に気付かなかったので混乱もありましたが、何回かやっているうちに、そんなにこだわらなくてもいいという水準がみんなに見えてきました。 「みかんミーティング」と呼んでいる、全員が揃って行なう話し合いで決めないといけない部分と担当者だけで決めてしまっていい部分とを分けたり、時間がなくて急いでいる場合は近くにいる人たちだけで決めて済ませたりと、そのへんのバランスはとれてきています。ですから、大きなトラブルはありません。 牛建 むずかしいところもあると思いますが、逆に面白い面もありますね。僕がクライアントで仕事を依頼すると想定した場合、4人のプレーヤーがいて総合的に良いものを出してくれるのではないかと期待しますね。 みかんぐみ そのとおりです。問題は時間です。4人で議論しながらデザインしますから、1人でデザインするよりも時間がかかるかもしれません。逆に、1人で迷うようなところでも、4人いることで早く解決策が見つかる場合もあります。 グループでやることの 良さを発揮できた NHK長野放送会館の仕事 牛建 作品についてお聞きします。会社をつくるきっかけとなった「NHK長野放送会館」ですが、コンペのときのアイデアが評価されて実際の仕事がとれたということですか。 みかんぐみ そうですね。コンペですから、アイデアが評価されて仕事につながったと思います。それには、われわれの出したアイデアがコンペで評価されやすかったということもあると思います。一人の建築家が「建築とはこうである」と主張しても、プレゼンテーションの段階で、その建築がどういう魅力をもっているのかを説明するのは難しいものです。でも4人でやっていると、お互いのコミュニケーションが必要になるので、必然的に具体的な説明を行なうようになるわけです。「こうするのはこういうメリットがあるからだ」というようなディスカッションを重ねることで、建築を情報として伝えることが容易になっていくのだと思います。 牛建 あの建物は、放送室をはじめいろいろな部分を地下に収納していますが、あのコンセプトはどのようにして決まったのですか。 みかんぐみ 地下に放送諸室を配したのは、地下だと建ぺい率に関係なく広いフロアをつくることができるからです。あのときは放送関係の室をなるべく同じフロアにまとめたいという条件があったのですが、地上だとそれをワンフロアに集められないのです。それで地下に納めるという解決方法をとりました。 また、従来のNHKの地方局の建物というのは、基本的にはただのオフィスビルでした。食堂のようなものがあっても、それは内部の人たちのためのもので、地域の人たちには関係ない。そこでわれわれは、建物を地域の人たちにも開放された公共施設のようなものにしようということをコンセプトに盛り込んだのです。社員食堂ではなく一般客も利用できるレストランやカフェにし、廊下などのスペースもなくしてエントランス部分に集め、見学コーナーをつくりました。 あの建物が建っている土地はオリンピックのために開発されたエリアで、まわりは全部住宅地です。戸建て住宅が並んでいるところに、NHKの建物とホッケー会場とショッピングセンターの入った大型の複合ビルの3つが建っているだけです。 アイスホッケー会場に面している側は、建物のファサードを大きく見せてやらないと負けてしまう。そこで、大きく見せるために、アンテナ棟はメインのファサードにもってきて、わざわざそれに表装を張って、できるだけ大きく見せるようにしました。逆に反対側は住宅地ですので、大きいと圧迫感を感じてしまいますから、建物を地下に埋めて低く抑えてあります。そういうわかりやすさをコンペのアイデアのなかに出せたのも、グループでやっていることの効果ではないかと思います。 牛建 コンペのときに出したアイデアは最後まで活かされたのですか。それとも与件などで変わってしまいましたか。 みかんぐみ コンペのときにはすでにメインアイデアはできていましたし、NHK側にも、コンペを通った案は守りましょうというポリシーがありました。もちろん細かい変更はたくさんありましたが、メインコンセプトは基本的に変わっていません。 牛建 あの作品を雑誌で見たときの印象は、スタイルとしては非常に軽くつくられていて、堅さがないということです。それは5人のアイデアを出し合ったせいなのかなと思いました。 みかんぐみ スタイルというのは自然に現われてくるものだと思います。10年後に見れば、「みかんぐみ」のスタイルというのが出ているかもしれませんが、とくにスタイルを意識する必要はないと思っています。以前から言っているのは、条件合わせということです。条件を整理したうえで出てくるプロセスの中身は、そのケースにより変わりますが、プロセスの考え方自体は変わりません。これはある意味で合理的なアプローチではないかという気がします。 われわれのやり方は一種の機能主義です。堅いイメージの機能主義ではなくて、たとえばファサードやその周辺の機能に対しては、できるだけ正しい答えを出そうという戦略があります。結果的に同じ人がつくったとは思えないような、いろいろなスタイルになる可能性はありますが、デザインに対するスタンスは変わりません。ポリシーは一緒でも、プロセスや条件が変われば当然結果も変わってくると思います。
常識に縛られないために 考え方の異なる4人が 意見を出し合うことが大切 牛建 タルディッツさんは日本人ではないから、日本人にはない味が出てくるのではないですか。 みかんぐみ タルディッツは、日本人の感覚からすると非常識ではないかということを言いますが、それは基本的に重要なことです。機能主義という言い方が正しいかどうかわかりませんが、われわれはものをつくるときに、常識に縛られたくないと思っています。それは非常識な建築をつくろうということではなくて、最も適切なものをつくりたいと思うわけです。そのときに、常識という先入観が邪魔をすることがよくあります。それを取り除くという意味で、お互いがお互いにとって非常識であるということが重要だと思います。 牛建 なるほど。ヨーロッパ文化の中で育った人が日本で仕事をする場合、デザイン的な考え方も違うのではないかと思うのですが。両方の良さが活かされるのか、それともむずかしくなってしまうのか、どうですか。 みかんぐみ 両方あるでしょうね。育った教育や文化が違いますから、考え方も自ずと違ってくると思います。しかし、それは日本人同士でも同じだと思います。教育に関してはタルディッツだけが違いますが、卒業後の何年間かの経験は一人一人違うわけですから、その経験によっても、ものの見方は違ってきます。 しかし、いまのような情報化社会では国による境界線はないともいえます。とくに建築界は常に情報が世界に発信されていますから、それぞれの違いも昔に比べたらファジーなものになっていて、かなり接近している部分もあると思います。 牛建 長野のプロジェクトを手がけられて、何か変わったことはありますか。 みかんぐみ 長野での仕事のときは、4人でやることのメリットをうまく活かしきれていなかったと思います。たとえば、サッシのマリオンをヘアラインにするか、鏡面のままにするかというような、どちらでもいいようなことを徹夜で議論したりしていました。いま思えば、そんなことはそれぞれの効果を考えて判断すればいいことなのですが、それまでの習慣から外れることへの違和感が障害になっていたのです。そうした面が、NHK長野放送会館の仕事をするプロセスのなかで解消されていったと思います。 牛建 プロジェクトを通じてお互いの連帯感が生まれたということですか。 みかんぐみ 連帯感というか、物事を決めるプロセスが効率化したのかもしれません。思い入れやこだわりに固執しない発想ができるようになったと思います。お互いの思い入れをぶつけ合うような話し合いは不毛ですから。そうならないための方法をいくつか考えています。最近は、4人は意見を言っても図面は引かないようにしています。スタッフがいろいろ出たアイデアをまとめ、それをみんなでディスカッションします。 牛建 そのほうがまとめやすいように感じますね。 みかんぐみ NHK長野放送会館は最初の共同作業だったのでプロセスは大変でしたが、非常に勉強にもなりました。いまは、全体の構成について議論して、あとはお互いに信頼して任せるという形になっています。逆に担当者が重要ポイントだと判断すれば、ディテールであっても話し合うことはあります。いまはNHK長野放送会館のときほど時間はとれませんが、重要ポイントについては基本的に担当と他の3人が話し合って決めています。
建築は変わっていくもの 使う人たちの使いやすさを 前提に考える 牛建 「みかんぐみ」をこれからどういう方向にもっていかれるわけですか。 みかんぐみ まだわかりません。いまは主に住宅をやっていますが、小さい物件が多いなかで突然大きな仕事も入ってきます。大型の公共施設をやることもあるかもしれません。 牛建 僕はインテリアデザイナーですが、住宅設計の仕事をすることもあります。先日もエコロジー的な視点からいろいろな提案を行なったのですが、オーナーが聞く耳をもっていないために、結局、自分ではやりたくない設計をやってしまいました。これは辛いですね。 みかんぐみ インテリアではそういうことはありませんか。 牛建 インテリアの場合は、この人に頼めばこういうデザインになるというふうに、形から入るところがあるので、ある程度はこちらの主張が通りますね。 みかんぐみ 建築の場合も形から入ってくる人たちというのはたくさんいます。たとえば安藤忠雄さんに頼めばこういうものになるだろうというように、依頼するほうもつくる側も、共通の幻想の上にいるから幸せなのです。われわれはそうした前提をつくらないところからはじめるので、逆に自分たちのやりたいものからズレたといった不満はありません。もとより自分たちがやりたいものというのが明確にあるわけではないのです。そこにクライアントがいて、クライアントが何を望んでいるのかを理解して、それに応えるというのがわれわれのやり方です。それは、言われた通りにやるというのではなくて、出された課題の答えを見つけるという感じで、楽しんでやっています。 牛建 たとえば、何から何まで計算しつくされた素材とフォルムと照明でデザインされた住宅に、まるでマッチしない家具が運び込まれたりすると、何のためのデザインだったのかとがっかりしてしまうようなことはありませんか。 みかんぐみ そういったことは、商業施設の場合によくあるのではないですか。 牛建 商業施設の場合は、100%コントロールできますから、そういうことにはなりませんね。 みかんぐみ それはデザイナーが牛建さんだからでしょう。(笑)普通の商業施設ではクライアントのデザインコントロールを受けることは多いですよ。100%コントロールできないにしても全体にまとまったものをつくりたいと思っても、ばらばらになってしまうことはよくあります。でも、そういうことも嫌がらないようにしようと思っています。 一昨年に保育園の仕事をしましたが、このときのテーマの一つが“使い倒せる建築iというものでした。建物というものは、できたあとに使われてどんどん変化していくものです。保育園でも、保母さんたちが手を加えるでしょうし、あるいは何十年か経ったら保育園ではなく他の機能の建物に変わるかもしれない。そうした場合に、素人の人たちが日常的にいろいろと改変しやすいようにお膳立てをしておく。それが使い倒せる建築ということです。 たとえばサッシなどは自由にパネルをはめたり外したりできるようにしてあるので、用途に応じて使い分けることができます。ほかにもいろいろ工夫していますが、そういうスタンスで建築に臨んでいってもいいのではないかと思うのです。 牛建 ぼくらデザイナーは往々にして、自分を主張しようとして機能と形に固執してしまうけれど、そういうものを前提としないで、使う人を前提として考えるというのは、なかなかできないことですね。 みかんぐみ これもグループのメンタリティかもしれませんね。4人でやっているから、そこに施主が入ってもいいし、保育園であれば保育士や子どもたちや役所の人が入ってもいいという感じで、4人で完結せずにどんどんつながっていける。 建物は寿命が長いので、わかりやすく、使いやすい建築でないとだめです。使う人が理解して使えるようでないと、建築自体が負けてしまう。建築の本の中では立派でも、実際に見るとぼろぼろになっている建物というのは山ほどあります。これは建築が現実に負けたということです。 牛建 これからも形にとらわれないで、自由にやっていくということですか。 みかんぐみ そうですね。いろいろやっていきたいと思っています。デザインに境界線を設けたくないので、建築だけにこだわらず、家具やオブジェ・・・何でもやりたいと思っています。いま上海と北京で大きな仕事をやっています。何万平方メートルのスケールですので、これまでとは違う面白さがあります。 牛建 楽しそうですね。がんばってください。本日はお忙しい中、ありがとうございました。 関連サイト : MIKAN WEBSITE
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