■トーク * インタビュー山口 泉氏/チェルシージャパン株式会社 代表取締役専務
高級・有名ブランドの集積により
昨年7月、静岡県御殿場市にわが国最大のアウトレットセンター「御殿場プレミアム・アウトレット」がオープンした。豊かな自然環境と敷 地を活かして欧米の歴史ある街並みをイメージさせる建物を配し、そこに高級・有名ブランドやメーカーに特化して集積を図る同施設には、 開業と同時に広域から多数の利用客が来場、大きな話題を集めた。 その後、大阪・りんくうタウンに第2号施設を開業し、こちらも順調な推移をみせるなど、わが国における昨今のアウトレット隆盛のなかで も、ひときわ目を引く存在といえる。 ここではチェルシージャパン(株)代表取締役専務の山口 泉氏に、日本におけるアウトレット市場の現状と可能性について伺った。
多様な条件面を満たす御殿場に第1号店を出店
チェルシープロパティグループは、米国最大級のアウトレットセンター「ウッドベリーコモン」(ニューヨーク郊外)をはじめ、全米各地に20 以上の「プレミアム・アウトレット」を展開するアウトレット専業デベロッパーですが、かねてより日本市場に対しては興味を抱いていました。その理由はひとつには、米国のチェルシーのアウトレットに日本人観光客が多数訪れていたこと。2つめは、バブル崩壊以降、わが国の地価の下落が進み不動産としての投資環境が整ってきたこと、さらに3つめとして日本国内でも女性層を中心に海外ブランドに対する人気が高く、根強いこと、こうした理由がありました。 とはいえチェルシー社としては、米国とは異なる日本市場に参入するには、日本のマーケットを知る企業とのパートナーシップが不可欠と考え、 3社により新会社の立上げとなったのです。しかし、会社を立ち上げるにしても、事業としての具体性をベースにする必要があったため、まず出店先の土地を確定する作業を行なうのに並行して、事業計画の構築を進め、土地の手当てとそこでの事業収支の見込みが実際に立った段階で正 式な会社設立となりました。
ある程度の距離が必要となると、電車よりも車でのアクセスに優れた場所が都合がよいので、高速道路のインターチェンジ(IC )から至近の 立地で、かつ高速道路から施設を目にすることができるという視認性や、IC を降りた後の道路状況なども重視しました。 しかし日本の高速道路は米国と異なり有料なので、高速料金を払ってでも来場してもらうためには、買い物以外の付加価値も重要な要素です。その意味で周辺に観光地があれば、来場動機を高めるうえで、なおいいと判断しました。
これらの条件を勘案すると、関東圏では御殿場が立地としてぴったり該当したわけです。
御殿場の場合、東京を含む半径100キロ圏(時間距離にして90分以内)を想定していましたが、実際のところほぼ予想どおりで、さらに遠方からの来場もあります。西は名古屋、北は長野、群馬、東は茨城あたりまでです。
施設イメージに配慮しつつ人気ブランドを誘致
たとえば現状で名古屋からかなり来場されているといっても、絶対数は圧倒的に少ないわけで、名古屋には出店しなくてもいい、というレベル ではありません。当社としては、テナント側のアウトレットに対する出店意欲があれば、あくまでもそれに応えていくことが大前提です。御殿場 に続いて大阪のりんくうタウンに第2号施設を開設しましたが、この2店で日本のマーケットをカバーしきれるとは考えていません。 そもそも日本市場のアウトレットに対する認識が育ってきたのはここ2、3年のことで、まだまだ成長期であり、今後ますます伸びて行くと思います。というのも、これまではテナント側もアウトレットというのはブランドイメージを損なうものという認識も強く、後ろ向きの姿勢がみられがちでした。それがここ数年でアウトレットに対する市場の認知の広まりや受けとめ方などをみると、ブランドイメージについては傷つかない、と判断する方向に向かっているようです。
われわれの方でも、宣伝などのプロモーション手法においても、テナントに対しては、きめ細かく配慮して、ブランドイメージを損なうことのな いように対応しています。具体的には個々の商品の安さ、ということ以上に、「プレミアム」という価値を重視したイメージの訴求を基本としています。これは宣伝手法のみならず、施設の建物デザインなど快適性に富んだ環境づくりからサービスなど運営面まで含め、一貫して重要な部分 と位置づけています。
まず大前提として、日本で流行っているブランドを入れるということ。次いで商品構成については、衣料品だけに偏ってもだめ、また婦人服ばか りでもだめで、商品のバラエティを持たせる必要があります。 海外ブランドに魅力を感じるという日本人の性向を重視してテナント誘致を行なっていますが、もちろん国内ブランドでも人気のあるものは入 れていくなど、基本的に今の日本で多くの人が欲しがるブランドは何か、という視点をベースに選んでいます。
たしかに御殿場では6200坪の店舗面積において飲食は700坪弱ですから、少ないと思われるかもしれません。しかし、一方で地元との協調を考えると、すべて自施設内部でお客様のニーズの吸収を完結してしまっていいのか、という面もあります。地域に根ざしていくうえで、こうした地元への波及効果についても考慮すべきでしょう。
集客面ではすでにかなり早い段階で目標を超えており、また売上げについても集客数に見合った実績をあげています。
ありがたい話ですが、これには課題も生まれました。御殿場の場合、高速のIC を降りてからの道路があまり広くないため、結果的にピーク 時には渋滞を引き起こしてしまったのです。そこで対応策として、現在の施設内外の約3500 台という駐車場の拡充を検討しています。極力ICのそばに駐車場を確保することで、渋滞の緩和につなげようと。問題解消には道路の拡幅が最良ですが、現状では、こうした駐車場の増設を 考えています。
女性層を中心に団体客など幅広い客層に訴求
テナントさんに向けては、オープン時に当方のマーケティングデータを開示し、それに基づいたプロモーション戦略について、オープニング時、 さらに年間でどのように展開して行くのか、冊子をつくって配布、説明するなどして十分理解をいただいています。 基本的には、広告についても先に申し上げたプレミアムという施設全体のイメージの訴求を前面に打ちだし、個々のブランド名などはあえて露出させない方向で進めています。集客効果が高いのはマスメディアでの露出ですが、とくにテレビについてはオープン時のみならず現在でも取材が引き続いてありますね。こうした対応も定期的に継続していくつもりです。 イベントについては、当社の考えるイベントは集客ではなく、あくまでもセールスキャンペーン中心で、さまざまな企業との協賛企画にも積極 的に取り組んでいます。 リピーター対策としては、パスポートの発行を行なっています。これは4万5000円以上の購入者を対象に、2年間有効のパスポートをお渡しするのですが、これでさまざまな各テナントさんで割引やサービスが受けられるクーポンブックがもらえる仕組みです。このクーポンは3か月という有効期限を設けているため、リピートの促進につながっています。また施設周辺のレジャー施設のディスカウント利用が可能という特典をつけ、これらとの相乗効果も図っています。
メインターゲットとして設定したのは20〜30歳代の女性、つまりブランドを理解しこよなく愛する層ですが、実際には若者から高齢者まで非 常に幅広いお客様に来場いただいています。 とくに週末はファミリーでの来場が多いのが特徴です。平日は女性、とくに主婦層のグループ客が目立ちます。またカップル客もおしなべて多い ですね。
現状では駐車場の面から団体客については事前申し込みをいただいていますが、平日でバスが30〜40台、週末で60〜70台、多い日では100台に達する時もあります。とくに平日の集客対策としてこれは大きいですね。1台40人で40台としても1600人が確実にショッピングやグルメを楽しんでいかれるわけですから。 一方、りんくうタウンの場合はこれに比較すると少ないですが、今後は「ユニバーサル・スタジオ・ジャパン」もオープンしますから、こうしたツアー客の取り込みも積極的に検討したいですね。とくに、大阪は台湾、韓国、香港などアジアからの海外客を見込めると思います。
当社のオペレーションの範囲内でエンターテインメント機能を取り込むつもりはありませんが、たとえば広大な敷地があった場合など、当社利 用以外の敷地の活用策としてこうした事業を別の企業でやりたいというケースがあれば、シナジー効果の創出をベースとして検討したいですね。
需給双方において成長期にあるアウトレット
成長期にあるこの業態の今後は非常に有望だとみています。その理由として、ひとつにはまだアウトレットに出店の経験がなく、思案中のブラ ンドが非常にたくさんある。つまり供給サイドからみると、まだまだ新しいブランドが出てくる可能性が大きいということです。 ブランド側にしても正規店で製品をいくら売ったとしてもすべての商品が在庫ゼロになるというわけにはいかないわけですから、それをうま く消化してくれる機能は必要で、アウトレットの存在意義はけっして小さくないでしょう。 一方、消費者サイドからみても、海外旅行が一般化するなかで、外国のアウトレットや免税店でのショッピング経験が増したことから、この業 態に対する認知も高まってきた。もとより、われわれの展開しているファクトリーアウトレットという業態は、ブランド直営だから偽物がないということで安心感も高い。 さらにディスカウンターのように商品を山積みしたり、隣に日用品が安売りしているような環境ではなく、施設イメージや環境も優れている、となれば集客動機としても大きい。 多少の季節遅れということにさえ目をつぶれば、質の高いものが安く手に入る、という感覚が利用者のなかに定着すれば、アウトレットは今後 の日本でますます伸びていくと思います。 米国では小売り全体額の2%が上限と言われていますが、日本ではまだ1%にも達していませんから、まだ伸びると思いますが、どこまで伸びるかの予想は難しいですね。
米国の百貨店はすべて買取りですが、日本では委託販売が中心など、流通形態が異なるため、そうした展開はみられないのではないでしょう か。今後、日本の百貨店も買取りとなった場合はわかりませんが。 正規店との関係については、現実問題として百貨店などではバーゲンという形がとられていますが、これにも参加するブランド、しないブラン ドがあります。ブランドにとっては、イメージの点でもやはり正規の値段で売れる場所が必要です。正規店で人気があって売れるところが多けれ ば多いほど、またアウトレットも繁盛します。つまり新製品は百貨店など正規店で、季節落ちはアウトレットで、という棲み分けをうまく行なう ことによって、双方が繁栄していくことになるでしょう。 当社のこれからの戦略としては、北海道から九州まで主要大都市圏内のマーケットには進出していきたい。とくに関東圏は巨大市場ですから、もう1か所くらいあってもいい。 りんくうタウンについては来年春に向けて増床する計画を進行中ですが、御殿場についても交通問題をクリアできれば積極的に増床を行なっていくつもりです。合わせて第3、第4のサイトの開発についても早々に着手していきたいですね。
(2001年3月)
データ 2001年3月現在
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