■トーク * インタビュー
天貝 佐登史 氏 ソニー株式会社 エンタテインメントロボット(ER)カンパニープレジデント
「エンターテインメントロボット「AIBO」にみる
セールスプロモーション展開の実際
ソニーの生んだエンターテインメントロボット「AIBO」ERS−110は、99年6月にインターネット上で5000体(日本3000体、米国2000体)を限定販売したところわずか20分(米国は4日間)で売り切れ、大きな話題を集めた。以来、スペシャルエディションERS−111の販売も加え国内外で累計4万5000体を販売。さらに2000年11月には音声認識や学習・成長機能などの点で進化した第2世代「2nd GENERATION」ERS−210が登場、こちらも好調に推移してきている。
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Copyright2000 Sony Corporation
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従来にない自律型のロボットとしての新奇性が多方面から注目を浴びる一方、第2世代ではネット販売と並行してショップなどリアルな販売・告知のチャネルも採用され、新たなプロモーション展開がとられている。
ここでは、AIBOの販売促進手法とその戦略を中心に同社ERカンパニー プレジデントの天貝佐登史氏にお話を伺った。
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“ハイテク+ハイタッチ”で新しいダイレクトマーケティングを体現する
| AIBOの第1世代は最終的に4万5000体を販売されたということですが、第2世代に対する反応についてはいかがですか。 |
AIBOに対してはみなさんから依然として強い関心をもっていただいており、トータルの販売数ですでに第1世代の規模を超えることができました。とはいえ、第1世代での「限定品」「なかなか買えない」といったイメージが予想以上に根強く、第2世代からは販売台数や期間を限定せずに供給しているのですが「まだ買えるのか」というお問い合わせをたくさんいただきます。第1世代AIBOによる強い「インプリント(刷り込み)効果」とでもいうようなものを感じています。
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| この3月には「AIBOカラーコレクションSpring2001」と題し、オレンジとホワイトの2色のAIBOを限定商品として打ち出されましたね。 |
受注期間を3月20日までに限定するという形で展開し、申込み特典として“お楽しみソフト”も用意しました。実はこのキャンペーンにも、第2世代AIBOの新性能やソフトの拡張性を周知することとあわせ、今も買うことができますということを広く知っていただきたいという背景があります。いわば、AIBOに対する潜在的な興味・関心を、最終的な購買行動にまでつなげる“トリガー”としての意味ももたせてあるのです。また同時に、外部ディベロッパーが制作したAIBOと一緒に楽しめるアプリケーションソフト(AIBO −ware)の新作2本も投入して市場の活性化・拡大を図っています。
| 第2世代へと進化し、買いやすくもなったことで、購入者層や楽しみ方などは変化してきているのでしょうか。 |
第2世代ではユーザー層がやや高年齢層側に拡大するとともに、「癒し」的な要素に期待してご購入いただく方が初代より増えたかな、という感じはあります。
実はAIBOについての受けとめ方、意味づけというものには、「かわいいペット」として感情移入し大切にしてくださるオーナーの方から、「先端技術の集合体」であるロボットとしてハード志向で楽しまれる方まで、非常にさまざまなのです。あまりわれわれの方で性格を固定して押しつけたくないとは思っています。ただいずれにしても、人間が接するインターフェイス部分はあくまでフレンドリーで使いやすく、中身の機能は高性能でスゴい、というパッケージングがポイントになっているでしょうね。「ハイテク」を「ハイタッチ」で包むということ、私は“羊の皮をかぶった狼”にも例えるのですが、社会の高齢化なども踏まえて考えると21世紀の先端商品にはこの方向が求められていくでしょう。AIBOはそのひとつの典型かもしれません。
| 「エンターテインメントロボット」とタイトルされているのもその辺りに絡むことですね。 |
はい。開発段階から「何か世の中にないおもしろいものを作ろう」というソニーの企業文化を反映して育ってきた商品ですから、「ウォークマン」や「プレイステーション」同様に、“消費者に夢と感動、驚きを提供する”という一貫した流れの中にあります。そういう意味で、介護とか実用本位の用途を追及するのではなく、「エンターテインメント」という指向性をもたせているのがたいへん“ソニー的”だと思っています。高い機能や技術の結集でありながら、あくまで親しみやすい形で提供する。それを通じてメンタルな面でのリッチ化であるとか社会貢献といったものにつながっていくような、AIBOでもこのイメージを大切にしたいと思いますね。
| さてそうしたAIBOについて、販売方法の特色を伺っていきたいのですが。 |
まず商品自体、お客様が一緒に過ごされていく中でいろいろと新しい動きなど未知の機能を発揮するようにできていますし、先ほど申し上げたようにご購入後の使い方や思い入れも様々です。したがって販売面でも“売りっぱなし”ではなく、お買い上げいただいた時からお客様と一緒の歩みがスタートする、という特質があります。つまり、ある種本当の生き物を仲立ちとするような形でご意見やご相談を受け、それにお応えしていくという関係の構築が不可欠になるわけで、顧客直結型のダイレクトマーケティングの色彩が強いものとなっています。ビジネスのコアとしてのカスタマーリレーションの重要性を体現しているともいえますね。
| 第1世代はオンライン販売というチャネルに限定されたわけですが。 |
ご購入者の声などからすると、第1世代での方法は正しかったという手ごたえを感じています。ご購入者からダイレクトにいろいろなご意見・ご要望をいただいたので第2世代の開発に生かせましたし、情報に敏感な層を主要ターゲットにして直接訴求し、AIBOというブランドのイメージを短期間に作り上げ、高めることにもつながりました。
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ネットとリアルの相互補完で客層の拡大を実現
| それでは、第2世代で店舗という“リアル”な販売チャネルを加えられたのはどんな戦略によるものでしょうか。 |
第2世代では、インターネットや電話による注文受付に加え、全国の百貨店やイー・ソニーショップの一部などの「AIBOショップ」店頭でもお申し込みいただけるようになりました。これらは、AIBOを直接見てその動きなどに接していただける場として展開されています。類似の商品も出ましたので、それらとの差異を明確に実感していただくためにも、実際に見て、触れて、納得したうえで購入していただける販路を作りたいという考えで導入しました。もちろん、店頭でご注文いただく際も、購入情報は直接われわれに入ってくる仕組みを作っていますので、お客様とのダイレクトな関係については第1世代の時と変わりません。
結果的にオンライン販売と店頭販売で相互補完的な普及も図れたと思いますし、顧客層の拡大につながっています。インターネットでの購買層は新しい情報に敏感でレスポンスが早いですが、一方で「冷めやすい」という特性も持っています。その点、マルチな販売チャネルをもつことはコンスタントに商品を販売していくためには不可欠ですね。
| ネットだけに頼らない販売チャネルも必要だったということですね。 |
eコマースだけに偏る販売方法は、少なくとも今は限界があると思いますね。在庫をもたないため固定費が少なくて済むというのは一面的で、webサイトの魅力を保ち続けるためのコンテンツの更新や注文が殺到した場合などに備えたコールセンターの体制など、やはり相応の備えが必要になります。その辺を見誤るとインターネットでの商売はたいへん苦労するでしょう。この点からもAIBOの展開においてはマルチにチャネルを広げることが求められました。
| 2000年11月の第2世代発売時には、全国の30を超す百貨店で一斉に告知・体験のコーナーを展開されるなど、今回の販売活動では「百貨店」という業態を活用されているように見受けられますが。 |
たとえば大手量販店などがもつ大量販売のパワーには確かにすごいものがあると感じるんです。ただ、個々のお客様へのワン・トゥ・ワンでの商品説明をきっちり行い、アフターケアも十分に尽くすというAIBOのダイレクトマーケティングに求められるあり方も考慮し、よりふさわしい販売形態がとれる業態として今回は百貨店を選びました。また、AIBO購入のポテンシャルをもつ客層と百貨店のお客様の合致なども含め、総合的に検討して選択した結果です。
| 百貨店ではAIBOショップによる販売とは別に「AIBO WORLD」などの企画展も行なわれていますが、その意図はどこにあるのでしょうか。 |
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店頭のショップだとどうしても通りがかり的な、落ち着いて見ることができない環境にもなりがちです。加えて、AIBOという新しい商品から膨らんでいく「世界観」とか「雰囲気」にも触れていただきたい。それらをひとつの環境として創出し、実際にAIBOに接しながらゆっくり体感してもらうことを目的として企画展を開催しました。こうした展示会には、AIBOに興味があったり、これから購入を考えられている方だけでなく、既にご購入いただいたお客様がご自分のAIBOを連れて来場されるケースも非常に多い。いわばオーナー同士のコミュニケーションの場としても利用していただいているようで、そうした集客効果は想像以上と驚いています。ご購入いただいた方による周囲へのポジティブな意見というのは購買に対してかなり影響があるようです。
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ソニーを代表するブランドとしての育成図る
| 最後に、今後のAIBOの展開についてお聞かせ願えますか。 |
私たち供給する側でも予想しなかったようなお客様のご要望や感想を一つ一つ検証・検討しながら、我々の技術の仕込みと照らし合わせていろいろと次の一手を模索しているところです。
IT分野などでは技術革新が急ですが、AIBOに対してもそれらの技術をどう取り込めば機能の充実が図れるのか、さらにソニーの他製品とのイメージの整合性や相乗効果をどうとっていくか、なども総合的に勘案しながら次の商品企画に活かしていきたいですね。
技術的な改良や発展だけでなく、AIBOの世界をどうやって作り、維持していくかという点も重要です。高級志向を目指しリッチな感覚を打ち出す方向もあれば、性能や機能を抑えたリーズナブルな価格で一気に普及を図る方向など、ビジネスとしてはいくつかの選択肢がありうるでしょう。お客様の意見や反応などに耳を傾けながら方向性を決めていこうと思います。
しかしどういった展開をとるにせよ、これまでに培ってきたAIBOのイメージとお客様のハートは大切にしたいと思います。それを裏切らない範囲でビジネスの拡充を図っていきたいですね。短期レベルの収益性や拡販よりも、企業のブランドイメージの向上といった後々まで長く反映し評価される部分を確実に伸ばしていきたい。将来的に“(エンターテインメント)ロボットといえばAIBO”というのはもちろんのこと、“ソニーといえばAIBO”というイメージももっていただけるまでに育てられればというのが夢ですね。
欧米ではロボットと人間がある状況で「対立」するというシチュエーションがよく設定されますが、日本では「ドラえもん」や「鉄腕アトム」などのように、人間とロボットの協調的な関係という点で欧米とまた違ったポジティブな独自のイメージが一般化しているように感じます。私も「鉄腕アトム」を現実のものにしたくて勉強したような部分があるのですが、日本はロボットと人間がフレンドリーにつきあうことが自然に受容され、市場を牽引するマーケットとしていい環境にあると思いますね。21世紀最初の年である今年は「ロボットエンターテインメント」という新しい文化にとっても「元年」だと感じますし、新たな商品として市場に定着を目指すタイミングの点でも、さらなる飛躍を2001年に成し遂げたいです。
| ありがとうございました。今後もAIBOの夢のある展開を楽しみにしております。 |
(2001年3月)
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2000年11月の第2世代AIBO発売と同時に、全国の百貨店でAIBOを実際に見て体験できるコーナーが同時展開された。モジュール式の展示ボックスがさまざまなレイアウトや広さに柔軟に対応しながら、商品プロモーションに統一感ある環境を提供。専用のアプリケーションソフトやキャリングバッグなど周辺商品の展示でイメージがふくらむ。
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 新宿タカシマヤ(11/16〜11/21)
 島屋大阪店(11/29〜12/25―移設後―) |
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AIBOのプロモーション展開では、インテリアとの組み合わせやイメージ写真などで"AIBOのある生活""AIBOの世界観"を構築する企画展も開催された。ブランドイメージに広がりとステイタスをもたせるとともに、ファン層へのアピールにもつながった。
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  池袋西武「AIBO EXPO 2001 in Tokyo」(1/2〜1/14)
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"AIBO"および"AIBOロゴ"はソニー株式会社の商標または登録商標です
関連サイト
AIBO Homepage
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