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The Museum Report in New York City 第7回 (2002.2) 

Museum of Art and Origins (芸術と起源の美術館)
430 West 162 Street New York, NY 10032

今回は、ニューヨーク市で頑張っているプライベート・ミュージアムを紹介。
ミュージアム・オブ・アート・ アンド・ オリジンズは、マンハッタンのハーレム北部に位置する個人美術館。オーナーのジョージ・ネルソン・プレストン氏はニューヨーク市立大学の教授でアフリカ美術を教えている。教職の傍ら、1966年から26年わたって、アフリカの彫刻や仮面を収集し、2000年に自宅を開放して、美術館を開いた。電話で予約すると秘蔵のコレクションを見せてくれる。
 
芸術と起源の美術館外観 オーナーのプレストン氏
 芸術と起源の美術館外観  オーナーのプレストン氏
 
アフリカ美術蒐集のきっかけを尋ねたところ、「アフリカ彫刻の散在を防ぎ、アフリカの文化を保存する事が私のdestiny(運命)なのだ。」と笑顔で語った。彼の別名はナナ・アナクゥワというので、てっきりアフリカから渡米したのかと思っていたら、なんと生っ粋のニューヨーカー。彼の父方の6代前の祖先が1776年に、イギリス人のプレストン大佐に仕えていたのがプレストン家の始まり。彼の曾祖母は1888年に渡米してきた。日本人の感覚だと、「自分がどこからやってきたのか」というルーツを問題にする事は少ないが、移民の国・アメリカ、とりわけ人種のルツボ・ニューヨークでは、自分のオリジンと歴史の関わりは重要なようだ。プレストン氏が、自分のミュージアムに芸術と起源と名づけ、アフリカの美術を収集しているのもそういった理由によるのだろう。
 
 
美術館2階には沢山の彫刻がある 5世紀に作られたアフリカの素焼きの彫刻。「ハニワ」に似ているだろうと言って見せてくれた 夜にはジャズコンサートが開かれている
(左):美術館2階には沢山の彫刻がある
(中):5世紀に作られたアフリカの素焼きの彫刻。「ハニワ」に似ているだろうと言って見せてくれた
(右):夜にはジャズコンサートが開かれている

 
1階には48点のアフリカの仮面や彫刻、2階には現代美術作品も含めて36点が展示されている。
彼の祖父がジャズ・ピアニストだっただけあって、夜にはジャズ・コンサートがしばしば開かれている。アフリカの仮面に囲まれながらのコンサートはなかなか。ハーレムの奥地は観光客には足を踏み入れずらい所ではあるが、最近はかなり安全になってきているので、隠れたナイトスポットを探訪するのも面白いだろう。
 
 
 
 
 
Williamsburg Art and Historical Center (WAH: ワーセンター)
135 Broadway Brooklyn, NY 11211

http://www.wahcenter.org
 
ワーセンター外観 ウィリアムズバーグ・アート・アンド・ヒストリカルセンター(通称 ワーセンター) はマンハッタンの対岸、ブルックリンの橋のすぐ近くに建っている。オーナーの二居祐子さんは、1996年にもと銀行だった由緒あるビルを購入して、アートセンターを開いた。この銀行(Kings Court Saving Bank)はもともと1860年に建てられ、2階は結婚式や表彰式、3階はダンスホールとして使われるなど紳士・淑女の社交場であった。ところが1903年にマンハッタンとブルックリンを結ぶ橋(ウィリアムズバーグ・ブリッジ)が出来ると、マンハッタン側から貧しい移民たちが新しい場所を求めて大量にやって来た。そして1920年〜30年の経済危機には、ウィリアムズバーグの人口は一気に増え、街はスラムと化した。この頃は1ブロックに5000人がひしめき合っていたという。
 
祐子さんが、ウィリアムズバーグに移り住んだのは1965年。プラット・インテチュートの修士課程を卒業後、アーティストとしてウィリアムズバーグに残る事を決意する。当時のウィリアムズバーグの治安は決して良いものではなかったが、マンハッタンに比べて、地価も安くアーティストが活動するには良い場所であるように祐子さんには思えた。高校の美術教師をする傍ら、1986年には古ビルのリフォームの趣味を生かしてアパートを購入し、アーティストたちに部屋を貸した。そして1996年には、売りに出されていたこのビルを購入・リフォームし、アートセンターすることを決意する。名前もウィリアムズバーグの歴史を考慮してアート・アンド・ヒストリカルセンターとし、橋のすぐ近くに建っていることから、ブリッジ・コンセプト(人と人、人と芸術、人と歴史などをつなぐ架け橋)をテーマとした。WAHとは日本語で「和・調和」を意味する。
 
 
オーナーの二居祐子さん ワーセンター1階:もと銀行だけあってクラッシックなつくり 今回はスロベニアの企画展。国際展では、発表の機会の少ない国の作家たちに場所を提供している
(左):オーナーの二居祐子さん
(中):ワーセンター1階:もと銀行だけあってクラッシックなつくり
(右):今回はスロベニアの企画展。国際展では、発表の機会の少ない国の作家たちに場所を提供している

 
企画展はイタリアやスロベニア、ロシアなどの国際展やアメリカ他州のアーティストの展示、地元のウィリアムズバーグの作家の展示など、幅広い企画展を展開している。また毎年3月には障害者のための展示、6月にはゲイ・レズビアンのための展覧会もあり、色々な立場の人たちのために作品の発表の場を提供している。祐子さんによれば、アートは作品だけではなく、それを愛する人たちと発表の場が揃って初めて成り立つという。1998年にはその年に活躍した女性を表彰するWomen of the Year を州知事から受賞した。
 
そんな努力もあってか、最近ではマンハッタンのソーホやチェルシーの住居費の高騰で、そこに住みきれなくなったアーティストが押し寄せ、ウィリアムズバーグにはお洒落なコーヒーショップや本屋、ギャラリーが立ち並び、新たなアート・スポットとして脚光を浴び始めている。 人とアートをつなぎ、ウィリアムズバーグをアートの本拠地にしようという祐子さんの草分け的な活動の一端が実を結んだといえよう。
 
 
 
 
 
番外編 -Report of Armory Show 2002- アーモリー・ショウ
Piers 88&90 Twelfth Avenue at 78th&50th St. 会期:2月22日〜25日
http://www.thearmoryshow.com
 
ミュージアムではないが、ニューヨークで行われた大きなイベントとして、アーモリー・ショウを今回番外編として紹介することにした。
 
アーモリー・ショウは1913年にニューヨークで始まった国際現代美術展で、マティスやピカソ、デュシャンなどのヨーロッパのアートを紹介した他、アバンギャルドの作品を数多く展示し、アメリカのモダンアート・ブームに火をつけた。
毎年1回開催され、今年はマンハッタンにある巨大イベント会場Piers(ピアーズ)で行われた。会場内には各ブースが設置され、170あまりのアート・ギャラリーが出展、アート好きのニューヨーカーが所狭しと押し寄せた。
 
観ていて面白かったのは、子連れや犬を連れた観客が居たことだ。現代美術を観ながら、犬たちや飼い主どうしがコミュニケーションしていたり、(これは日本では散歩の途中に公園などで見る風景)、結構グロテスクでセクシャルなアートを、冗談で笑い飛ばしながら子供と観ていたりする。(教育上の問題がありそうだが、そうは思わないのがニューヨーカー。)ニューヨークではアートが生活の一部になっているので、赤ん坊を連れてきたり犬を連れてきたりするのが当たり前なのだろう。 
またパンクな格好で鼻にピアスをしている若者たちや、床に座り込みながらサンドイッチを頬張る観客がいる一方、ドレスやスーツを着た紳士・淑女もしくはビジネスマンが横で何百万もする絵を買ってたりする。本当に自由なスタイルで色々な人たちがアートを楽しんでいた。
 
 
アーモリー・ショウの会場 床に座り込んで作品を鑑賞する観客 子供や犬も一緒になってアートを鑑賞?
(左):アーモリー・ショウの会場
(中):床に座り込んで作品を鑑賞する観客
(右):子供や犬も一緒になってアートを鑑賞?

 
アート作品にも色々なものがあり、白熊とヤギとペンギンが一緒になった動物(?)や階段とガスレンジが一緒になったもの、巨大なハイビスカスのような塊があったりして奇妙奇天烈の見本市であった。作品のテーマは単に美しいものだけではなくて、幻想や皮肉、ジョークを扱ったものや麻薬・暴力などを表現したものもあって、現代社会が反映されているように思えた。
日本では、現代美術がわからないなどの声をよく聞くが、アメリカではアートは、暮らしの移り変わりや人々の感情を代弁するとても身近なものなのだ。さすが90年近くも、ショウを開催しているだけあって、現代美術が市民に浸透しているのを肌で感じた。
 
ペンギンとヤギ(?)が混ざった奇妙な動物 ガスレンジと階段が一緒になったオブジェ。実際に点火したら、熱くて上を歩けない? 巨大なエイかハイビスカスのようなオブジェ
(左):ペンギンとヤギ(?)が混ざった奇妙な動物
(中):ガスレンジと階段が一緒になったオブジェ。実際に点火したら、熱くて上を歩けない?
(右):巨大なエイかハイビスカスのようなオブジェ

 
(2002年2月 スミ・ヒロコ)

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