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■海外情報 * overseas network The Museum Report in New York City 第7回 (2002.2)
1階には48点のアフリカの仮面や彫刻、2階には現代美術作品も含めて36点が展示されている。 彼の祖父がジャズ・ピアニストだっただけあって、夜にはジャズ・コンサートがしばしば開かれている。アフリカの仮面に囲まれながらのコンサートはなかなか。ハーレムの奥地は観光客には足を踏み入れずらい所ではあるが、最近はかなり安全になってきているので、隠れたナイトスポットを探訪するのも面白いだろう。
ウィリアムズバーグ・アート・アンド・ヒストリカルセンター(通称 ワーセンター) はマンハッタンの対岸、ブルックリンの橋のすぐ近くに建っている。オーナーの二居祐子さんは、1996年にもと銀行だった由緒あるビルを購入して、アートセンターを開いた。この銀行(Kings Court Saving Bank)はもともと1860年に建てられ、2階は結婚式や表彰式、3階はダンスホールとして使われるなど紳士・淑女の社交場であった。ところが1903年にマンハッタンとブルックリンを結ぶ橋(ウィリアムズバーグ・ブリッジ)が出来ると、マンハッタン側から貧しい移民たちが新しい場所を求めて大量にやって来た。そして1920年〜30年の経済危機には、ウィリアムズバーグの人口は一気に増え、街はスラムと化した。この頃は1ブロックに5000人がひしめき合っていたという。祐子さんが、ウィリアムズバーグに移り住んだのは1965年。プラット・インテチュートの修士課程を卒業後、アーティストとしてウィリアムズバーグに残る事を決意する。当時のウィリアムズバーグの治安は決して良いものではなかったが、マンハッタンに比べて、地価も安くアーティストが活動するには良い場所であるように祐子さんには思えた。高校の美術教師をする傍ら、1986年には古ビルのリフォームの趣味を生かしてアパートを購入し、アーティストたちに部屋を貸した。そして1996年には、売りに出されていたこのビルを購入・リフォームし、アートセンターすることを決意する。名前もウィリアムズバーグの歴史を考慮してアート・アンド・ヒストリカルセンターとし、橋のすぐ近くに建っていることから、ブリッジ・コンセプト(人と人、人と芸術、人と歴史などをつなぐ架け橋)をテーマとした。WAHとは日本語で「和・調和」を意味する。
そんな努力もあってか、最近ではマンハッタンのソーホやチェルシーの住居費の高騰で、そこに住みきれなくなったアーティストが押し寄せ、ウィリアムズバーグにはお洒落なコーヒーショップや本屋、ギャラリーが立ち並び、新たなアート・スポットとして脚光を浴び始めている。 人とアートをつなぎ、ウィリアムズバーグをアートの本拠地にしようという祐子さんの草分け的な活動の一端が実を結んだといえよう。
ミュージアムではないが、ニューヨークで行われた大きなイベントとして、アーモリー・ショウを今回番外編として紹介することにした。 アーモリー・ショウは1913年にニューヨークで始まった国際現代美術展で、マティスやピカソ、デュシャンなどのヨーロッパのアートを紹介した他、アバンギャルドの作品を数多く展示し、アメリカのモダンアート・ブームに火をつけた。 毎年1回開催され、今年はマンハッタンにある巨大イベント会場Piers(ピアーズ)で行われた。会場内には各ブースが設置され、170あまりのアート・ギャラリーが出展、アート好きのニューヨーカーが所狭しと押し寄せた。 観ていて面白かったのは、子連れや犬を連れた観客が居たことだ。現代美術を観ながら、犬たちや飼い主どうしがコミュニケーションしていたり、(これは日本では散歩の途中に公園などで見る風景)、結構グロテスクでセクシャルなアートを、冗談で笑い飛ばしながら子供と観ていたりする。(教育上の問題がありそうだが、そうは思わないのがニューヨーカー。)ニューヨークではアートが生活の一部になっているので、赤ん坊を連れてきたり犬を連れてきたりするのが当たり前なのだろう。 またパンクな格好で鼻にピアスをしている若者たちや、床に座り込みながらサンドイッチを頬張る観客がいる一方、ドレスやスーツを着た紳士・淑女もしくはビジネスマンが横で何百万もする絵を買ってたりする。本当に自由なスタイルで色々な人たちがアートを楽しんでいた。
日本では、現代美術がわからないなどの声をよく聞くが、アメリカではアートは、暮らしの移り変わりや人々の感情を代弁するとても身近なものなのだ。さすが90年近くも、ショウを開催しているだけあって、現代美術が市民に浸透しているのを肌で感じた。
(2002年2月 スミ・ヒロコ)
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