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The Museum Report in New York City 第6回 (2002.1) 

The Cloisters クロイスターズ
Fort Tryon Park New York, NY 10040
http://www.metmuseum.org

 クロイスターズは、メトロポリタン美術館の別館として1938年に建てられた。慈善家であるジョン・D・ロックフェラーJr.が中世ヨーロッパ美術のコレクションをジョージ・グレイ・バーナードから買い取り、マンハッタン北部の緑に囲まれた静かな丘に設立した。中世のロマネスク(1000−1150年頃)からゴシック時代(1150-1520年頃)の教会建築をそのまま再現し、来館者はまるでタイムスリップしたような感覚に陥る。館内には各時代の3つの回廊が再現され、(2階:キュクサの回廊12世紀、1階:ボンヌフォンの回廊13世紀後半〜14世紀前半、トリーの回廊15世紀)当時生えていた薬草や花々が室内から鑑賞できる。特にキュクサの回廊は、冬季には、防寒のため窓枠にガラスが嵌められ、鉢植えの植物が回廊の内側に並べられる。他にも、12月半ばから1月初旬にかけてはクリスマスデコレーションとしてヒイラギや蔦、りんごなどのフルーツが飾られており、館内には季節感が感じられる。
 
クロイスターズ外観 キュクサの回廊、左:夏期 キュクサの回廊、右:冬期
 クロイスターズ外観 キュクサの回廊、:夏期 :冬期
 
 2階は、ロベール・カンパンの祭壇画(1425年頃製作)やユニコーン捕獲の物語を描写したタペストリー(1500年頃)などが展示されている。ユニコーンのタペストリーは、ユニコーンが兵士たちによって槍で突付かれ、血を流して抗いながら、ついには城内の檻に捕まってしまう様子を描いている。この一連のタペストリーを見ていると、実際の場面を描写したのではないかと思うほど、細やかにその捕獲の過程が織り込まれている。ルネッサンスの伸びやかで煌びやかな表現と違い、中世の暗黒の森を思わせる神秘的で鬱蒼とした表現のロマネスクやゴシックのアートは、妖怪や幻獣などが主題として出てきても違和感が生じない。当館の礼拝堂にある木や石でできたマリア像やキリスト像も素朴でありながら、荘厳で神秘的な趣がある。
 

 

 
2階、:ロベール・カンパンの部屋:ロベール・カンパンの「受胎告知」、
中央:フエンティドウニャの礼拝堂、:入口の近くにある後期ゴシックホール

 
 1階には、ステンドグラスで装飾されたギャラリーのほか、9〜16世紀の貴重な小芸術品を収集した宝物館がある。七宝や宝石をあしらった礼拝用の小物やアクセサリー、金器・銀器の他、象牙でできた小像などが展示されている。
本館であるメトロポリタン美術館は何時も観光客で賑わっているが、クロイスターズにはお年寄りや学生、地元のニューヨーカーが多い。都会の喧騒を離れて、静かにアート鑑賞をするのにも良い場所である。

1階、宝物館
 
 
 
 
The Metropolitan Museum of Art メトロポリタン美術館
1000 fifth Avenue, New York, NY 10028-0198

http://www.metmuseum.org
 
 メットの愛称で親しまれているメトロポリタン美術館は1870年に建設された。セントラルパークのすぐ近くの5番街と85丁目付近に位置し、観光客を含めて数多くの来館者が訪れる。ルーブル美術館やエルミタージュ美術館に並ぶ大手の美術館で、約2万点のアート作品と3500点のオブジェクトを収集している。 メトロポリタン美術館外観
 メトロポリタン美術館外観
 
生粋のニューヨーカーは、小学生の頃から連れてこられて、大人になるまでに100回以上は来館するという。内部には、3つの入り口があり、左手にギリシャ・ローマ美術、中央にヨーロッパ・アメリカ美術、右手にエジプトやアジア・イスラム美術のセクションとなっている。中は一つにつながっていて、2階立てというシンプルな作りにも関わらず、その広大な敷地の中で迷子になる来館者が後をたたない。エジプト美術のセクションでは、ピラミッドの一部が再現されていたり、アジア美術のセクションではオリエンタル調の庭園があったりと、大きな建造物が丸ごと室内に展示されており、美術館のスケールの大きさが感じられる。
 
エジプト美術のセクション ギリシャ・ローマ美術のセクション
エジプト美術のセクション ギリシャ・ローマ美術のセクション
 
エジプトのピラミッドの一部を再現 アジア美術のセクションにあるオリエンタル調の庭園
エジプトのピラミッドの一部を
再現
アジア美術のセクションにある
オリエンタル調の庭園
 
 オセアニアやアフリカのアートからヨーロッパのキリスト教美術、アメリカの現代アートなど、5000年間におよぶ各地域のアートがメット1館で体感でき、美術史を系統的に網羅した学習できる。そのコレクションは1日8時間かけても見尽きない。好きな時に、好きなセクションをゆっくり見て回れるニューヨーカーは文化・教育的に恵まれていると言えるだろう。
 
 メットでは常設展だけでなく3・4ヶ月ごとに大規模の展覧会を3〜4本と小企画展を約15本前後開催している。去年(2001年)はフェルメールとデルフトの画家展やジャクリーン・ケネディ大統領夫人の衣装展が話題を呼んだ。
12月の企画展では、煌びやかな宝石をあしらったムガール帝国時代の秘宝展と、印象派の画家であるポール・シニャク展、コルセットや纏足、首長族の首輪など、究極の美と体の変形を追求した衣装展が開催されていた。
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美を追求するために体のラインを誇張したドレス
「Extreme Beauty The Body Transformed」展より

 
 また、メットでは1つの企画展に関して、ガイドツアーやオーディオガイド、詩の朗読会や講演会、ワークショップなど数々のイベントも開催しており、美術のことを良く知らないビギナーでも、コレクションをすべて暗記してしまった熱烈なメットファンにも楽しめるよう趣向をこらしている。予備知識ではあるが、メットでは、幼い来館者や定年後のお年寄り、貧乏なアート学生が気軽に何回も来館できるようにドネーション・システムを採用している。実際の入館料は大人10ドル(1200円前後)、学生5ドルであるが、「ドネーション(寄付)をしたいのですが」と言うと任意の額・最低25セント(日本円で30円前後)で入館できる。このシステムは館内の看板や小冊子には公式に記述されていないが、ニューヨークの幾つかの博物館はこのシステムを採用している。
 
 他にもメットは視聴覚に障害のある来館者や家族向けのプログラムなど来館者のニーズに合わせた企画・展示を行っている。この細やかさが、観光客だけでなくリピーター増加の要因だと思われる。ニューヨークを訪れた際には是非立ち寄ってほしい美術館だ。
 
(2002年1月 スミ・ヒロコ)

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