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The Museum Report in New York City 第11回 (2002.9) 

American Museum of the Moving Image
(アメリカン・ミュージアム・オブ・ムービング・イメージ)
35 Avenue at 36th Street Astoria, NY 11106
http://www.ammi.org
 
ムービング・イメージ博物館外観 アメリカン・ミュージアム・ムーヴィング・イメージはクイーンズに位置する動画に関する博物館。外観が新しいので最近設立されたものかと思いきや、その誕生は意外に古く、1920年にロンドンやハリウッドにあるフィルム・プロダクションの一部としてマンハッタンに建てられた。その後、1942年にアメリカ軍が買収し、アストリア(クイーンズ)に移転、71年まで、兵隊のスピードに関する軍事訓練に使用された。
 
1977年にはthe Astoria Motion Picture and Television Center Foundation, Inc.が買収し、1985年に再び、国家機関であるニューヨーク市のジェネラルサービス・アドミニストレーションによって教育目的の博物館に生まれ代わった。実際にオープンしたのは1988年。名前の通りムーヴィング(移動)の多い博物館となった。
 
ビルは3階建てで、設立に2億円投じただけあって最新の画像処理用のソフトウェアや映画の編集機材が充実している。3階では、それらの機材を実際に使って体験学習ができる。例えば、吹き替えのコーナーでは、有名な映画のセリフを自分の声で録音する事ができる。今回、私はマイ・フェアレディのヘップバーンのセリフ、雨は平野に降る云々を自分の声で録音してみた。
 
他にも、コンピューターで音声を編集するソフトがあり、タイタニックの船が沈むシーンの音声(海の波だけの音、逃げ惑う人々の声、主役のセリフなど)やジェラシック・パークの恐竜の声などを録音・再生することができた。また、架空の背景をスクリーンに投影して、来館者と合成するブースや、来館者がモチーフを動かして、コンピューターでコマ撮りができるアニメーション製作のブースなどがあり、映画製作の過程を遊びながら体験できる。
 
 
背景を選択して、スクリーン上で人物と合体。今回、通常あまりない背景(走っている馬とUFO)を組み合わせてみた。 コンピュータに付属しているカメラからコマ撮りができ、簡単なアニメーションができる 歴代の機材なども展示
(左)●背景を選択して、スクリーン上で人物と合体。今回、通常あまりない背景(走っている馬とUFO)を組み合わせてみた
(中)●コンピュータに付属しているカメラからコマ撮りができ、簡単なアニメーションができる
(右)●歴代の機材なども展示

 
2階には、俳優の舞台衣装、写真、特殊メイクに使われた人形などが展示されている。今回はロバート・デニーロの1970年代から現代までの30年に及ぶ衣装を展示していた。
 
過去から現代までの映画スターの写真 特殊撮影・メイクのコーナーより。映画「エレファント・マン」の1シーンに使われた人形 ロバート・デ・ニーロの衣装展
(左)●過去から現代までの映画スターの写真
(中)●特殊撮影・メイクのコーナーより。映画「エレファント・マン」の1シーンに使われた人形
(右)●ロバート・デ・ニーロの衣装展

 
また、2階には、何故かエジプト趣味で装飾された映画館が、にせピラミッドの中に設置されており、懐かしの映画を上映している。今回は、スパイダーマンのヒットに合わせてか、1938年の初期スパイダーマンのフィルムを上映していた。他にも当館は別室で映画を2〜3本上映しており、映画鑑賞を目的する来館者も多そうだ。
 
 
オールド・ムービーを上映する映画館 その内観
オールド・ムービーを上映する映画館 (左)とその内観 (右)

 
1階は、Expanded Entertainment と題して過去から現代までのテレビゲームを展示。懐かしのインベーダー・ゲームからスーパー・マリオ、ストリート・ファイターや最新のゲームまであり、アメリカ人が父子2代で遊ぶ姿が見られた。
当館はお年寄りから子供まで、楽しんで学習できる展示が盛り沢山なので、映画ファンならずとも一度は訪れたい博物館だ。
 
 
 
 
 
MoMA QNS (モマ・クィーンズ, The Museum of Modern Art in Queens)
33 Street at Queens Boulevard, Long Island City, NY 11101

http://www.moma.org
 
ミュージアム・オブ・モダンアート(モマ)がマンハッタンからクィーンズに引越して、6月末にオープンした。初日の6月29日と30日は入館料タダとあって、暑い最中にも関わらず館外にニューヨーカーの行列ができた。建築はMichael Maltzanが担当。しかし元工業用地を改造しただけあって、その外観は倉庫のようだ。2005年にはまた元の場所に移転することが決まっているので、あえてそんなに手をかけなかったという事だろうか。中に入ると緩やかなスロープが続き、入館受付けとクローク、インフォメーションデスクなどが設置されている他、映像を使った作品が壁に映し出されていた。
 
 
新しく出来たモマ・クィーンズの外観 モマの内観、ロビー ロビーの廊下に映し出された画像。天井にカメラが仕込まれているのか、来館者の姿も作品の一部として映るようになっている
(左)●新しく出来たモマ・クィーンズの外観
(中)●モマの内観、ロビー
(右)●ロビーの廊下に映し出された画像。天井にカメラが仕込まれているのか、来館者の姿も作品の一部として映るようになっている

 
入り口を通過して最初の展示室には、車が展示。
美術館に何故車が?と思う来館者も多いかもしれない。実はこれはもともとモマの中庭に設置されていたもの。本館の中庭が改装中のため、「AUTObodies: speed, sport, transport」と題して、展示する事となった。車のデザインもアートの一環といった所だろうか。
モマの収蔵品である車のコレクション。今回は新たに購入した3台を追加・展示。手前の車は「E-type Roadster」1963年
モマの収蔵品である車のコレクション。今回は新たに購入した3台を追加・展示。手前の車は「E-type Roadster」1963年

 
他の企画展として、「テンポ」を開催。流れゆく時間を「壊れた時間」「変化してゆく身体」「液体時間」「変遷する歴史」「可動性・不可動性」の5つのテーマに分け、現代作家の作品を紹介していた。例えば、「崩壊した時間」のセクションでは、Andrea Zittel が72時間で針が一周する3日間時計や168時間で一周する1週間時計をつくった。またCildo Meirelesは3時から6時までの間が時計の半周を占め、6時から9時までの間が12分の1の円周しかない不均衡割付の時計を制作した。現代では従来の時間の流れは崩壊し、一様には計り知れない。人によっては、3日間単位で働く人や、夕方(もしくは朝)6時から9時が無茶苦茶忙しい人も居るのかもしれない。
 
 
新しい企画展「テンポ」の入り口。開催期間は9月初順まで Andrea Zittel ,「A-Z Time Trial」, 1999年。左から3日間時計、1週間時計、3週間時計
(左)●新しい企画展「テンポ」の入り口。開催期間は9月初旬まで
(右)●Andrea Zittel ,「A-Z Time Trial」, 1999年。左から3日間時計、1週間時計、3週間時計

 
また「液体時間」では、後ろ姿のKim Soojaがインドの河の前で立ちつくすビデオ・プロジェクトを放映。このビデオではKimは微動だにせず、河だけが緩やかに流れ、時間の経過を見る側に伝える。人の動きに合わせて背景が流れてゆくという感覚を逆手に取った作品。忙しい現代人に自然のゆったりした流れを思い起こさせてくれる。 Kim Sooja ,「A Laundry Woman」, 2000年。インドの川の流れからゆったりした時間を感じることが出来る
Kim Sooja ,「A Laundry Woman」, 2000年。インドの川の流れからゆったりした時間を感じることが出来る

今回の企画展、「テンポ」は、ビルが古く手狭になり補修・拡張することになったMoMAの時間の流れも反映しているのかもしれない。
 
 常設展では、従来のモマのコレクションである20世紀の美術作品を展示。
中でも29日には、メキシコのアーティストのFrancis Alys がモマの収蔵品であるピカソの油絵「アヴィニオンの娘たち」とデュシャンの「自転車の車輪」の復製品を担いでモマからもモマ・クィーンズにかけてパレードを行った。
「アヴィニオンの娘たち」は多角的な視点を用い、キュビズムと呼ばれる従来の遠近法を超えた画期的な作品で、「自転車の車輪」は既製品が実はアートであったという、既成概念を突破した記念碑的作品。第二次大戦から2002年までマンハッタンに君臨し、モダン・アートを展示し続けたモマの引越しにふさわしいパレードと言えるだろう。
Marcel Duchamp 「Bicycle Wheel」。この作品は常設展で展示された他、Francis Alys のパレードにも使われた
Marcel Duchamp 「Bicycle Wheel」。この作品は常設展で展示された他、Francis Alys のパレードにも使われた
 
しかし、当時革新的だったアイデアも今は歴史化して久しく、今は少々停滞気味の感がある現代美術。ワールド・トレードセンターが倒壊して1年が過ぎようとしているニューヨークで新しいスタートを切ったモマだが、果たして今後はいかに? 今後の展覧会に期待したい。
 

 
 
(2002年9月 スミ・ヒロコ)

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