■海外情報 * overseas network
柳原さん、こんにちは。お元気ですか?高原@少し時差ぼけです。 1月下旬、日本からNYに戻って来ましたが、いやはや、寒すぎる…。摂氏0度なら御の字で、氷点下15度〜氷点下3,4度(摂氏)の日々が続いています。ここまでくると、痛い感じです。ホームレスの人達も、あちこちの教会やシェルターで夜を凌いでいます。 さて、今回のレポートですが、NY市の老人ホームについて書いてみたいと思います。老人介護/保護に関しては、1970年代から本格的に取り組み始めた、北欧諸国、80年代から徐々に問題視され、現在では大きな社会問題となっている、日本に比べ、アメリカはそれほど進んでいません。65歳以上の人の割合が未だ14%未満である(前者の国々は既に超えています)というのが、これまで楽観視されてきたもっとも大きな理由と言えるでしょう。とは言え、アメリカもベビーブーマーの世代が高齢化を迎え、あっという間に高齢者の人口密度は20%に達すると予想されています。必然的に、無視出来ない大きな課題となっています。 アメリカと言えば、年をとっても夫婦仲良しで、早めに現役から引退して、田舎に引越し、毎日二人で手をつないで散歩したり、ガーデニングをしたり、釣りをしたり、ゴルフをしたり…、といった、夫婦二人で老後はのんびり、楽しく過ごしている、ちょっとうらやましいようなイメージもあります。一つのアメリカンドリームとも言えるでしょう。確かに、子供はいつか巣立っていくもの、夫婦の絆が一番大切という考えは強く(少なくとも今の50歳以上の世代では)、生活レベルの違いはあれ、二人で仲良く暮らしている姿は多く見られます。それ故に、どちらか片方を亡くし、一人になった時(平均寿命からして、圧倒的に女性が残る場合が多いのですが)の喪失感、脱力感、恐怖は大きく、次第に社会から遠ざかっていくことも問題の一つです。先進国で、少子化、核家族化が進んでいる中、高齢者の社会からの孤立は、異なった文化の中でも最大の問題と言えるかも知れません。 訪問看護、グループホーム(アルツハイマーの人達が約6人〜8人と、世話をするスタッフが共同生活をする家)などを充実させているスウェーデンを始め、身の回りの事は、出来るだけ自分でする、また出来るようにする、という方向に進んでいる北欧諸国に比べ、NY市の老人ホームは、炊事、洗濯、掃除等は、施設側が基本的に全て行うスタイルがほとんどです。もともと、あまり家事をしないNY市の人にとっては、日常の仕事をさせてもらえないというよりは、ただ便利だと捕らえられているようです。また、決まった時間に皆で一緒に食事をすることによって、住人同士またスタッフとのコミュニケーションを促進する、誰がどういう健康/精神状態なのか目が行き届く、ということに優先権を置いているのが伺われます。とにかく、住人同士の交流を大切にし、孤独にさせない、常に誰かと何かをしている、という事が最重要であるようです。 日本の老人ホームと同じように、NYの老人ホームにも介護の重さによってレベルがあります。 一番重いのが、Nursing Homeと呼ばれ、恐らく日本では、特別養護老人ホームにあたり、24時間の介護を必要とする高齢者が住んでいます(勿論24時間体制のスタッフ、看護士が滞在)。 次ぎに、Assisted Livingと呼ばれるスタイルで、特に介護を必要とするわけではないけれど、健康管理や日常生活に少しサポートが必要な人が住んでおり、施設で介護人が働いていなければいけない。看護士は24時間ずっとは滞在せず、スタッフはセキュリティーの為、24時間受付には誰かがいる(スタッフ全員が住人の緊急事態には基本的な対処が出来るよう教育を受ける)。 最後に、Independent Livingで、文字どおりお互いが独立して生活出来る状態(キッチンはあっても最小限、食事は食堂で食べる)。高齢者専用のアパート(マンション)で、施設で介護人は雇われていない(施設での介護はしてくれない)が、セキュリティーや、運営、管理、イベント等を企画するスタッフはいて、医者と看護婦が訪れ健康チェックをすることが出来る。炊事、洗濯、掃除はしてくれる。介護人が必要な人は、個人で雇う。中度以上のアルツハイマーを煩う人は、Nursing Homeに入るか、アルツハイマーの人専用の施設があります。 また、法的なレベルに関係なく老人ホームを一般的に、Senior Residence、Elderly Residence、Retirement Village/Communityなどと呼んでいます(少しずつ意味は違います)。 経済的な面では、Private(私立施設)と、State(州)もしくはCity(市)のInstitute(公的福祉施設?)に区別され、前者は管理運営を、経営者または組織が負担、住人は居住費を全て個人(や家族)が払う。後者は、州または市の運営する施設で、住人も州または市から援助を受けることができます。 今回はマンハッタンにある(老人ホームはマンハッタンよりも少し郊外の方が圧倒的に多いのですが)、典型的なInstitutional Assisted Living Residenceと、Private Independent Living Residenceの二つのアパートを御紹介します。 1.Institutional Assisted Living Residence
ビルの構造上、レセプションは狭くなっており、経費も限られているので、とても豪華とは言えませんが、手作りのWelcome Boardとレセプショニストのフレンドリーな雰囲気が、家族的な温かさをかもし出しています(町の小さなお医者さんに入った時の感じ?)。 エレベーターまたは階段を使って2階へ。2階にはダイニングルーム、キッチン、リビングルーム、スタッフのオフィス、Beauty Salon、バスルームがあり、皆が集まるフロア−です。殆どのイベントがダイニングルームまたはリビングルームで行われます。イベントはビンゴ(一番人気)、絵画教室、詩、ペットの訪問、体操、映画、ボーリング(ダイニングのテーブルを隅に寄せてレーンを作り、ピンを自分達で並べて行われるらしい)、パーティー、ダンス、お茶会、等など、殆ど毎日何かあり、月に一度、住人の投票でスケジュールが決められるそうです(イベント実行委員会みたいなのがあるらしい)。ダイニングにはピアノがあって、近所の音大生達がボランティアで弾きに来てくれるそう。昼食前に伺ったのですが、ちょうど体操が始まる時間で、インストラクターのお姉さんと共にPopsにあわせて踊っている人や、ソファーに座って、うつらうつらお昼寝(?)しているおばあさん(なんと100歳)、トランプをしている人など、皆さん様々楽しんでおられる御様子でした。体操の後は、テレビを見たり、おしゃべりしたりで和気藹々。スタッフ、住人の方々皆おっしゃられていた通り、ここの人たちはHappy Lifeを送っているのだと感じました。
3階から上は、ベッドルーム。全て個室で、バス・トイレがある部屋と、ついていない部屋(ドアから出て直ぐのバス・トイレを2人で共有)がある。予算が許す限り、全ての部屋にバス・トイレを備え付けたいとスタッフの人は言っていましたが、住人は、共有するのも特に問題ないと思っているようです。部屋の大きさは約6〜8畳位で小さなクローゼットが備え付けられています。ベッドを含めた家具は全て持ち込み可で、持っていない人は、ここで貸してくれます。広くはない部屋ですが、毎日24時間部屋に閉じこもっていない事を考慮すれば、まあまあだと思います。
大体こんな感じなのですが、どうでしょう?家具も天井も床も、けっしてファンシーとは言えない内装ですが、住んでいる人達と、その人たちを大切にするスタッフ達が作り上げた、とても家庭的な、すてきな住居だと思いました。ちなみに、規定(コード)の関係で、このビルでは車椅子を使う事は出来ず、皆さん、杖、手押し車、またはスタッフに手伝ってもらったりして、自分の足であるいていらっしゃいました。車椅子も無ければないで何とかなるんですよ、と言う事です。 2. Private Independent Living Residence 閑静なアパートが立ち並ぶ、West End Avenueに位置するIndependent Living Residence。1の老人ホームと打って変わってホテル並の豪華な住まいです。約120人の住人とスタッフ達(介護人は含まれない)が居ます。驚いたことに、住人の90%が女性だそう(最高年令103歳!)。ビル全体が高齢者の為のアパートで、2,3階はアルツハイマーの人専用の住居で別の組織の運営になるそうです。 エントランスの自動ドアから入って正面がレセプション。常に2〜3人働いている、高級アパート並の素晴らしさで、勿論、デスクや照明もデザインされています。入って右手に大きなダイニングルームとキッチン、左手に、レクチャーやイベント(ほぼ毎日何かしら行われる)の為のホール、その手前にライブラリーがあります。ホールの奥に、別の部屋が設けられており、自分自身で食事が出来なくなった人(スプーンやフォークが持てなかったり、手が震えたりするので)の為の、別のダイニングルームになっていて、希望者はそちらのほうで食事が出来るようです。住人の人数が多い事と、食事の時間などもフリーな為、住人同士の交流は全員でというより、それぞれ仲の良い友達を作っていく感じだそうです(なんとなく、女子校を思わせるような…)。
エレベーターで上の階へ。1階以外は、ベッドルームかオフィス。全ての部屋にバス・トイレがついていて、1部屋か2部屋がある。ちなみに、一月の1部屋の居住費は、一人で住む場合$3750、二人だと$4600(食費や、光熱費も全て含まれる)、2部屋では、一人$4750、二人だと$5600、補助金なしで全額支払わなければいけないので結構な額だと思います。バスは基本的にはバスタブがついていますが、取り除くことも希望次第で可能です。部屋は広く、クローゼット、ミニキッチンがついていて、ドア−は鍵がかかります。殆ど普通のアパートと同じですね。また、部屋の内装に関しては、絨毯や壁、照明など、ビルの構造に及ばない限り、住人の希望で行われます(勿論、許可が必要ですが)。
いやはや、きらびやかですね(もっと豪華な所もたくさんあるのでしょうけど…)。普通のアパートに近い、より独立した生活が出来るようなタイプで、住人の方達もあまり干渉されないライフスタイルを望んでいる方が多いようです。全員で使えるようなリビングルームも無いし。 老後の生活、さすがに今はピンときませんが、様々な人生を送ってきた人達が全く知らない者同士、新しいコミュニティーを作っていく老人ホームの取材をして、そこに住む人達と接して、正直こういうのもいいかも、と思いました。訪問には、友人も一緒に行ったのですが、思わず皆口をそろえて、"悪くないかもね…"と言っていました。年を取れば考え方も変わり、家族と一緒に居たいと思ったりするかも知れませんが、幾つになっても、安心して楽しく人と接することが出来る場所が、老人ホームという形に限らず、たくさんあれば良いなと思います。 おまけ:NY市ならではの老人ホームの悩み 1. 色んな人種が集まる:文化、食事、言葉(英語を全く喋れない人、また年をとって自国語に戻ってしまう人等)の問題 2. ゲイやレズビアンに対する偏見やトラブル 年をとってもこの二つだけはさすがに変わらないようですね…。 (2003年2月 タカハラ・アイコ)
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