| ■海外情報 * overseas network 留学生から見たミラノ 第11回 (2005.1)
今回のレポートは、Domus Academyの卒業制作について説明します。 毎年夏休み明けぐらいには、卒業制作のプロジェクトリーダーが決まり、そして、学生から希望を募り、抽選の結果、おのおののプロジェクトリーダーが決定し、その後にプロジェクトが始まります。 そして例年では、イタリア国内外の企業が学生と共同し、プロジェクトをまとめていくのですが、今年はDomusuの方針が変わったようで企業による卒業制作への参加は有りませんでした。 これを目当てにくる学生も少なからずいるので、少々残念な思いではありますが、その代わりと言っては何ですが、例年に比べて著名なデザイナーをプロジェクトリーダーとして招聘していました。 今年のプロジェクトリーダーは、大御所のAndrea Branzi、Massimo Morozzi、そしてGiudo Venturini、Dante Donegani & Giovanni Lauda、Piergiorgio Robin、Giovanni Levantiとそうそうたるメンバーでした。 また、各プロジェクトリーダーによって出題される内容も異なります。 例えば、BranziのチームはGiardino(公園)のデザイン、MorozziのチームはSensoriality(感覚、知覚)を誘発するデザイン、Ventriniは純粋な家具のデザイン、といったように様々です。 私は、Domusに来た理由として、プロダクトデザインを学びたいと思っていたので、迷うことなく、Massimo Morozziのチームを選び、運良く彼のチームに入ることが出来ました。 さて、実際のプロジェクトの進行過程というのは、なかなか大変なものでありました。 私のデザインをする上での性格として、常に頭で必死にコンセプトを練って、その過程や思考の後にデザインを導く、といった手法を取っていたのですが、 彼はこの私の方法を真っ先に否定し、私は路頭に迷うことも多々ありました。 彼の課題であるSensorialityとは、「どんな時やどんなことに対して感覚を使う?そしてその時気持ちいいと思うか?」ということであり、 いつもより、より感覚的に思考をしなければなりませんでした。 各学生には若干異なることを言っていたようです。 つまり、プロダクトの形がかっこよかろうと、美しい色であろうと、そのプロダクトを触ったときや使ったときに「気持ちよく」なければならないということです。 確かに、その感覚は私にはあまり考えたことのない問題だったので、とても新鮮な気持ちで取り組むことが出来ました。 プロジェクトリーダーとの打ち合わせを経て、実際にデザインが決まった後、待っているのが、提出用のデータの作成やプレゼンテーションの準備です。 まず、Flashというアニメーションソフトを使用して、毎回のように制作していたアニメーションを制作します。 そして、コンセプト文章をまとめたレジュメ、そして20枚程度のレポートと模型。 今までの作業では、グループワークだったので分担作業が可能でしたが、今回はそうもいきません。 すべてを個人ワークで行わなければならないので、アプリケーションが得意でなかったり、模型制作が得意でないと、相当な試練となること必至です。 学生の中には、毎晩寝ることが出来ない状況に追い込まれた友人も多数いました。 そして、プレゼンテーションは、これらのツールを駆使し、他の学生や他のプロジェクトリーダーの前で行います。 私は、今までの人生でこれほどまで緊張した経験はない、といっても過言でないほどの体験をしました。 英語かイタリア語でのプレゼンテーションが可能ですが、私はあえてどちらかといえば得意な英語で行ったのですが、明らかに経験値が少ないため、滑舌よく話すことが出来ず、私の説明が果たして通じるのかが不安で仕方ありませんでした。 しかし、プレゼンの後にプロジェクトリーダーや外国の友達に私のプレゼンの感想を聞いたところ、理解してくれていたのでほっとしましたが。 そして、プレゼンテーションが終了したら、待っているのは卒業式と展覧会です。卒業式までの一週間で展覧会用に学校内部が設営を行い、卒業式の日から数日の間、展覧会は一般公開されました。 さて、卒業式当日、みな普段とは違っておめかしをして式に臨み、担当教官のDante Doneganiから直々に卒業証書を渡されました。 渡された後は、学校内がクラブ状態になります。いつの間にか作られたDJブースからは、大音量の音楽が流され、その音に合わせて踊る人がいたり、一方では自分の作品を来館者に説明したり、友達同士で卒業の喜びを分かち合ったりと、それは大賑わいの一日でした。 しかし、卒業式の賑わいと反して、学生達の心境は複雑なものだったかと思います。この一年偶然にも世界中から学生達が集まり、結友人になることができたのは奇跡です。 しかし、卒業式が終われば、母国にかえって仕事をする人もいれば、他の国に仕事に行く人やミラノに残る人、学生達の今後の進路はバラバラです。 いつまた会えるのか誰も確信が持てないのです。 卒業式 展覧会会場 模型たち Domusの学生生活を通して様々なことを学び、体験しました。 むしろ何かを学び取ると言うよりは、体験したことが一番貴重なことだったかも知れません。 もしも日本にいたら同じような体験はまずもって出来ないでしょう。 そして、充実した一年間の中で、太い絆で結ばれた友達も持つことができました。 彼らとは、きっとこの先も良い友達としていられるでしょう。 また将来一緒に仕事をすることができるかもしれません。 そんな淡く甘酸っぱい思い出を胸に帰国の準備を行うこととします。 今回でDomus Academyの学生生活のレポートを終了します。 来月は、特別付録として、人生最後の卒業旅行編をお送りします。 イナガキマコトHP : border (2005年1月 イナガキマコト)
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