tansei.net
季刊誌 tansei.net新施設情報近代建築海外情報感動マーケティング更新履歴

HOME > 海外情報 > mucking_around_london >CSM 3RD YEAR ILLUSTRATION WORK IN PROGRESS SHOW
海外情報 *
mucking_around_london
CSM 3RD YEAR ILLUSTRATION WORK IN PROGRESS SHOW
Report30_Feb.2008

 Central Saint Martinsという美術大学のイラストレーションのコースの最終学年の生徒の展示会に行ってきた。ロンドンの中心、トッテナムコートロード駅そばの小さなギャラリーで開催されていた。狭い路地を入っていったその奥に、人だかりがあったのでそこがギャラリーだとわかった。3RD YEAR ILLUSTRATION WORK IN PROGRESS SHOWと題された今回の展示会は、7月の卒業を前に進行中のプロジェクトや発展中の自分の作品のここまでの成果を発表するのが目的らしい。


写真1 : 会場の入り口

写真2 : 3RD YEAR ILLUSTRATION WORK IN PROGRESS SHOWのポスターと、フレームに反射した人だかり。

写真3 : ギャラリーに集まった沢山の来場者達

 東京と比べて、ロンドンはexhibitionが毎日のようにあちこちで開かれ、アート&デザイン作品に触れる機会が多いと思う。大きな美術館に展示されたビッグなアーティストだけでなく美術系の学生をはじめ、アートを志す様々な人種、年齢層の人が自分の作品を公に発表している。だいたいの場合、展示会の初日にオープニングパーティーがあり、ビールやワインが無料で振る舞われ、大勢の人で賑わう。道路に人だかりが出来てざわざわしている場所を見つけて、何の騒ぎだ?と中を覗くとexhibitionのオープニングパーティーで盛り上がっているケースがよくある。会場内も人でごった返していた。18時のオープンから21時のクローズまで、200人以上の人が詰めかけたらしい。


写真4 : 会場の様子

写真5 : 会場の様子


写真6 : 振る舞われたビールの空き瓶

写真7 : 会場の様子。展示された作品を見る来場者。

 「この学校は特に、コマーシャルとアートの間を狙っていると感じる。日本は、きちんと奇麗に完成されたものを好み、評価する傾向に有ると思う。特に面白いと思うのは、未完成のもの、発展段階にあるもののその経過(プロセス)を楽しみ、面白がり、評価する点だと思う。見た目の美しさももちろんすごく大切にするが、その奥にあるコンセプト、物語り方、発展の経過をそれ以上に重視する傾向が強い気がする。自分の経験や置かれた環境によって、考え方に変化があるのと同じ様にドローイング、色使い、スタイルも変わっていく。」と、自らの作品を前に最終学年の日本人学生、山田タカスケさんが語ってくれた。国籍によってジョークの種類、笑うつぼが違うのと同じ様に、挨拶の仕方が違う様に、アート作品の見方も少しずつ異なると感じる。ノートの切れ端に描かれたスケッチを展示する場合も多い。「イラストといってもコマーシャルすぎるものは敬遠されるし、また私的で、必ずしも見ている人とのコミュニケーションが取れているとは言えないアーティスティックなイラストも敬遠される。ビジュアルコミュニケーションがしっかり出来ていて、それでいて発想が豊かなものが良しとされる。正直かなり難しい。僕はイラストを描いているけど、この前、人の動き、関節の動きをもっと良く見ろ、とチューターに言われた。イラストでやや抽象的な表現であっても、基礎的な部分はしっかり見ていると思う。また各先生はそれぞれ強い個性と信念があり、先生によって評価は二分されることが度々・・・。一つの生徒の作品を巡って2人の先生で議論になることもある。」


写真8 : 山田タカスケさんと会場に展示された作品

 山田さんが手がけた本、アルファベットの起源の本 "Origin of Alphabet"についても話してくれた。「アルファベットは約3分の1が、エジプトのヒエログリフという象形文字が起源となっている。例えばアルファベット L は ヒエログリフで見られるステッキの形に由来するし、M も同様ヒエログリフで使用された波の形をした文字から来ている。 A は ヒエログリフの牛の頭が起源で A を180°ひっくり返すと A の足の部分が牛の角になって、その変化が解る。ヒエログリフってピクトグラムの様に見た目で何を表しているかわかるから、ヒエログリフと、そこから進化した文字、アルファベットをイラストで表せたら知識にもなるし、面白いと思った。」


写真9 : 山田タカスケさんの作品、アルファベットの起源の本 "Origin of Alphabet" より、Bのページ

写真10 : 山田タカスケさんの作品、アルファベットの起源の本 "Origin of Alphabet" より Lのページ

写真11 : 山田タカスケさんの作品 、アルファベットの起源の本 "Origin of Alphabet" より Rのページ

 将来の展望として山田さんは、イラストレーターとしての活動と同時に、実家の家業である石屋のプロジェクトにより重点をシフトしていく予定だという。石の特徴を生かした洗面台やテーブル、バスタブなどの制作をはじめ、採石場を緑化して彫刻家のスタジオを建てたり、石で出来たステージを作って様々な野外コンサートを開いたり、石や宗教、芸術関連の図書館を建てたりと、山自体を一つの実験場として様々な活動を行っている。かつてイサムノグチ氏も石選びをしに来ていたという山だ。
http://www.ookurayama.com/index.html


 会場で出品者のひとり、ローレケ・ニキさんも作品について話してくれた。「人間誰しもが持っている夢をアニメーションで表現した。夢って繋がりとか脈絡がめちゃくちゃだけど、私の場合、色があって面白い。人それぞれ失いたくないものや、逃れたいものと日々向かい合っていると思う。潜在意識がふとした形で現れるからこそ、もしかしたらすごく正直で、自分が見たくないんだけれど胸の内に持っている意識を垣間見せてくれる。私にとって夢は本当に面白い題材。(写真12) それに対して地球温暖化をテーマにした作品ではあえて色を使わずに表現した。シリアスな内容をどう訴えるかに気を使った。海面上昇のイラストレーションでは、水をどうやって表現するかが難しかった。(写真13)自分のイラストレーションは自己満足の一方的なものでなく、あくまでも人とコミュニケーションするものでありたい 。」


写真12 : ローレケ・ニキさんの作品 common dreams

写真13 : ローレケ・ニキさんの作品 地球温暖化がテーマ

写真14 : 会場内で歓談するニキさん(中央)

 制作者とも気軽に作品について話したり出来るので、ロンドンでエクシビションは敷居が高くなく、すごく生活に浸透している気さえする。肩書きよりも作品そのものを見ようと言う意識があると思う。知らない人にあまり話しかけたりしない日本との文化の違いはもちろんあると思うが、あくまでも人対人の関係が成り立っていると感じる。そして何より楽しもうという姿勢が根底に有ると思う。


 エクシビションの最終日にはRCAの生徒2人によるワークショップと日本からのゲストスピーカーとしてフィルムメーカー/ プロデューサーの高城剛さんのトークショーが催された。高城さんはプロとしての仕事のスピード、アートにおけるビジネスマインド、タイム イズ マネーを強調していた。高城さんはCDリリースに向けて今ロンドンでレコーディング中らしい。村上隆氏と手がけたルイビトンのアニメーション制作の裏側や今取り組んでいるプロジェクト、この先3年の新しいビジネスの展望など、とても気さくにそしてエネルギッシュに色々話してくれた。 http://www.takashiro.com/about/en.html


写真15 : 高城剛さんのトークショー

http://www.csm-illustration.com/


-- ご意見ご感想があれば、お願いします。 眞島 弘樹




このページに掲載の内容、写真などの転用をお断りします。
Copyright 2008 TANSEISHA.co.,ltd.
All right reserved.