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ハノーバー万博視察記


視察記(1) /橋本 俊朗

 2000年7月4日、フランクフルトより50分ほどのフライトでハノーバーへ到着した。ここで6月1日より10月30日までの153日間、ドイツ初の世界万国博覧会が開催された。
"HUMANKIND-NATURE-TECHNOLOGY"−人間・自然・技術−の統一テーマのもと、160ヘクタールの会場に173の国と国際機関が参加。パビリオン数56、総事業費30億マルク(1500億円)の規模を誇り、視察時点で入場者数4000万人(1日平均26万人)を見込んだ。

 会場は3つのゾーンで構成され、ドイツ・オランダとヨーロッパ諸国が並ぶ"東ゾーン"、テーマパークと既存の建物を利用した"センターゾーン"、日本・韓国などのパビリオンが並ぶ"西ゾーン"に分かれている。会場に入ってまず驚かされるのはその広さである。南隅のYMCA「鯨」館から西北のベネズエラ館まで約3キロ、早足で歩くだけでも45分かかり、160ヘクタールという大きさを実感させられた。

 今回の視察は1日のみであったため、朝8時にはフィッシュバーガー片手に東ゲートをスタート。東ゾーンで最初に目に飛び込んでくるのが、4階建ての3階部分に森がある「オランダ館」である。入館するとまずエレベーターで屋上へ。展示は外観ほど奇抜ではなく、4階が海をテーマに環境と水の保全を訴えるイメージ映像、3階ではオランダの自然(森)を主題にする。いわば"森と湖でできたサンドイッチ"に見えるこのパビリオンは、遠景で眺めているほうが印象的だというのが実感だ。

 隣の「ドイツ館」は、"未来を振り返る"というコンセプトのマルチ映像ショーを上映する。大型マルチスクリーン(400インチ×9面)による映像空間は、通常の客席形式でなく6本の回廊がそのまま見物席となるもので、動線計画も見事なものであった。映像については象徴的すぎる印象を持ったが、スケールの大きさには圧倒される。

 「ドイツ館」を出ると、「スイス館」の木組みの迷路が自然の木の香りを一面に漂わせていた。木組みの間から洩れる、光と影の空間に心も癒されるパビリオンである。向かい側には中庭に白樺林を配置した「フィンランド館」があり、白樺の森を散策しながら永久保存の落書きスクリーンに思い出を残すのも楽しい。

 次に目を引くのは、2つの建築物に20mの高さでキャンバスが張られ、アーチを構成している「ハンガリー館」。木造の雄大な彫刻建築物である。壁に収納されている多くの映像装置により、ハンガリーの自然をアピールしていた。壁の隙間から漂うハンガリー料理の芳香に、我慢しきれず遅い昼食をとる。

 料理を堪能した後はケーブルカーに乗り、一気に東ゾーンから西ゾーンへ向かう。ケーブルカーを降りるといよいよ「日本館」である。館内に入って天井を見上げた時の、障子の内側のような柔らかい光と紙管の交錯には感動を覚える。展示はCO2削減という取組みを前面に出したもので、意気に富んだ格調高い展示だと感じた。また、パビリオン解体後の廃材を最小限にするためリサイクル可能な材料で構造を考えており、環境に優しい建物として評価が高いとのことであった。

 隣は、周囲の"大人しさ"の中でそのにぎやかさが異彩を放つ「韓国館」。水をテーマに人々の関わり合いを展示するが、「韓国の干潟」の映像のほか、メインステージでは「地球の環境を守れ」のメッセージを乗せた大スクリーンのマルチメディアショーを繰り広げる。踊り・太鼓の実演に加えレーザーとスモーク、シャボン玉などかなり騒がしいが、楽しい演出だった。

 西ゾーンには、サークルヴィジョンとCG映像の「メキシコ館」、壁面すべてを水のスクリーンで覆った「アイスランド館」などがあり、展示内容はとてもシンプルだが心が癒される感じがした。

 西ゾーンからセンターゾーンへ移動すると、既存の建物(見本市ホール)を使って11のテーマパビリオンが並ぶ。「移動」「労働」「知識」「エネルギー」「健康」「食品」「基礎的な必需品」「環境」「人類」「この星のヴィジョン」「21世紀」である。その中でも、IBMが協賛している"Planet of Visions"−この星のヴィジョン−は、映像技術を結集して未来社会を展望する、予算が一番かかったパビリオン。内容は宇宙、ロボット、未来生活… などあまりに多彩で、理解するのにとても時間がかかってしまったが・・・。

 夜10時まで明るく白夜のようなハノーバーだが、1日で全体を回るのはやはり不可能である。深夜11時から始まる「フランベショー」(3面ウォータースクリーンに炎・レーザー光線などで展開する一大スぺクタルと前評判が高かった)は残念ながら割愛し、ドイツビールとソーセージで旅の疲れを癒すことになった。

 ハノーバー万博は「人間・自然・技術」(1992年国連環境開発会議、リオ地球サミットでの宣言)を軸に具体化されたもので、全体的におとなしく"癒し系"の博覧会ではあった。だが地球の未来、子供たちの未来、自然との関わり合いの中で人間は何をすべきであるか、など忘れられた大切なものを思い起こさせる"やさしい"万国博覧会であったように思う。

(はしもと としろう/(株)丹青社 関西支店支店長)

視察記(2) /神作 勇・若松 正人

 「環境問題」という全体テーマに「再生紙を使ったリサイクル志向のパビリオン」というコンセプトで応えた日本館は、紙管を主要建材に用いた世界初の大規模建造物である。曲線的な形状と純白の外観が四角いパビリオン群の中でも際立ち、人気館のひとつだった。

 径12センチ、長さ20mの紙管約440本で構成される建物内部は、日本庭園の石庭へ天井の紙幕越しに差し込む日光が紙管と合間って美しい。ゲーム、大型映像、検索装置などを組み合わせ、温暖化防止とCO2削減をテーマに技術訴求やライフスタイル提案が展開される。話題の和紙製自動車もここで見られる。

 解体後のリサイクル活用という意義を含め、やはり紙管という素材で実際に建物を構築したことの効果は大きい。ストレートに主張が伝わって理解しやすく、話題性も十分だった。

 一方、館内展示では「環境」という捉えどころがなく抽象的な主題を表現する難しさを痛感させられる。マルチメディア映像による紹介も、博覧会全体の同一傾向の中では手法的にやや印象が薄く思われた。今後も主流であり続けるだろう「環境」という"堅い"テーマに、イベントの"ハレ"の場でいかに取組むか、引き続き我々の大きな課題でもある。

(かんさく いさむ/(株)丹青社 愛知万博準備室室長+
わかまつ まさと/(株)丹青社 プロモーション統括部第2プロモーション部 課長)

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