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HOME > tansei.net26号 > 海上自衛隊呉資料館 てつのくじら館


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わが国初!
本物の潜水艦を体験できる海上自衛隊ミュージアム
 
 海上自衛隊呉史料館
 てつのくじら館


 1889(明治22)年に旧海軍の呉鎮守府が設置されて以来、軍港として栄えた歴史をもつ広島県呉市に実物の潜水艦を「見て」「触って」「体験できる」海上自衛隊呉史料館「てつのくじら館」が07年4月5日オープンした。

 陸軍第十二師団軍医部長として明治32(1999)年6月から足かけ4年にわたり小倉で過ごした森外が“新しい文化を蒔いた”といわれる北九州は、7人の芥川賞作家と6人の直木賞作家を輩出するなど“文芸土壌豊かな街”。そうした土壌を背景に北九州市では、森外が資料・史実に即して市井の人物の生涯を描いた「史伝もの」を残していることにちなみ「北九州市自分史文学賞」を平成2(1990)年に創設。毎年400篇もの応募がある同賞は、「自分史」というユニークな文芸ジャンルを全国に発信してきたとして高い評価を受けている。


 てつのくじら館は、JR呉線「呉駅」より南に徒歩5分、呉湾に面した宝町地区に立地。周辺には05年4月にオープンした呉市海事歴史科学館「大和ミュージアム」が隣接しており、同館とともに呉市の歴史・文化の発信拠点として、また新しい観光のスポットとして大きな期待が寄せられているところだ。

 同史料館の特徴は、なんといっても史料館建物に寄り添うように配置された退役潜水艦「あきしお」の実物展示だろう。全長76・2mの同艦は、周囲からの視認性も高く同地区の新たなランドマークとなっていることに加えて、入館時には屋外展示されている同艦の下を潜り抜けてエントランスへと向かう動線が敷かれ、“てつのくじら”の名にふさわしい迫力ある巨体は来館者に驚きと、これからはじまる展示の世界への期待を高める効果的な演出となっている。

 館内は、海上自衛隊の歴史にはじまり、わが国が国際社会に貢献するうえで海上自衛隊が大きな役割を担っている掃海活動(機雷の撤去作業等)、潜水艦の性能や艦内での生活などについてわかりやすく解説。写真などのパネル展示、レプリカに加え、実際に使用された実物標本など貴重な資料を展示しており、なかでも実物の潜水艦「あきしお」の艦内を巡るルートは他では体験することのできない貴重なものであることから来館者には特に人気の高い展示となっている。艦内は、来館者の安全性を考慮し、新たに展示用に広めに確保された通路を設けているが、その巨大な躯体からは想像できない狭隘な空間や、所狭しとレイアウトされたさまざまな機器類が、本物のみがもつ重厚な雰囲気を伝えている。

 また、館内随所には海上自衛隊を退役した方々による展示ガイドが配置されており、潜水艦や掃海など海上自衛隊の活動について熟知したガイドから詳しい解説を受けられることも同史料館の魅力だといえるだろう。

 同史料館の開館時間は9時〜17時(入館は16時30分まで)、入館料は無料であるが、オープン後1か月を経過した5月19日には来館者数が10万人を突破するなど好調な滑り出しをみせている。今後、観光客の増加する夏休みシーズンを控えているだけに、さらなる集客増が期待されるところだ。

隣接する大和ミュージアムからの眺め。史料館の建物が隠れてしまうほど巨大な潜水艦「あきしお」は見る者を圧倒する。潜水艦の外装にはメンテナンス維持費を考慮して光触媒の塗装が施されている 1階フロアは、海上自衛隊の歴史について展示
(左)●隣接する大和ミュージアムからの眺め。史料館の建物が隠れてしまうほど巨大な潜水艦「あきしお」は見る者を圧倒する。潜水艦の外装にはメンテナンス維持費を考慮して光触媒の塗装が施されている
(右)●1階フロアは、海上自衛隊の歴史について展示

わが国初となる本物の潜水艦を利用した体験展示が人気。潜望鏡からは呉湾をはじめ周囲を望むことができる わが国初となる本物の潜水艦を利用した体験展示が人気。潜望鏡からは呉湾をはじめ周囲を望むことができる わが国初となる本物の潜水艦を利用した体験展示が人気。潜望鏡からは呉湾をはじめ周囲を望むことができる
わが国初となる本物の潜水艦を利用した体験展示が人気。潜望鏡からは呉湾をはじめ周囲を望むことができる

2階フロアは、わが国が国際貢献を果たすうえで大きな役割を担っている海上自衛隊の掃海活動について紹介 2階フロアは、わが国が国際貢献を果たすうえで大きな役割を担っている海上自衛隊の掃海活動について紹介 2階フロアは、わが国が国際貢献を果たすうえで大きな役割を担っている海上自衛隊の掃海活動について紹介
2階フロアは、わが国が国際貢献を果たすうえで大きな役割を担っている海上自衛隊の掃海活動について紹介

3階フロアは、潜水艦や艦内での暮らしについて紹介。海上自衛隊に関する情報ステーションも設置されている 3階フロアは、潜水艦や艦内での暮らしについて紹介。海上自衛隊に関する情報ステーションも設置されている 3階フロアは、潜水艦や艦内での暮らしについて紹介。海上自衛隊に関する情報ステーションも設置されている
3階フロアは、潜水艦や艦内での暮らしについて紹介。海上自衛隊に関する情報ステーションも設置されている


海上自衛隊
呉地方総監部管理部
呉史料館管理室長 2等海佐
 
中橋 明光

[聞き手] (株)丹青社 クリエイティブデザインセンター
設計2ルーム長 藤井明文

海上自衛隊の活動について
広く知っていただける当館の役割は大きいと考えています

中橋氏
―開発の経緯についておきかせ下さい。

中橋○ これまで水上艦については「海上自衛隊佐世保史料館」が、航空機では「鹿屋航空基地史料館」があり、潜水艦についてもこうした展示施設ができなものかという思いはかねてからありました。
 実は大和ミュージアムを整備する際に、その一環として潜水艦を展示できないかという打診が呉市からあったのですが、その時は諸条件が合わず不調に終わりました。その後、自衛隊内でも史料館の必要性について議論が進み、隊員の基礎教育の場としても、将来自衛官を目指している方や一般の方々に対しても広くアピールできるものとして計画が進められたのです。計画推進にあたっては、自衛隊でははじめての取り組みとなるPFI方式が採用されています。

―潜水艦を展示しようというのは、呉の歴史的な背景もあったということでしょうか。

中橋○そうです。明治の末から日本最大の潜水艦基地が置かれ、わが国の潜水艦発祥の地ともいえる呉市とは歴史的なつながりが深く、この地に潜水艦の展示施設を開設できたことは非常に意義のあることだと感じています。

―開設にあたりご苦労された部分も多かったとお聞きしています。

中橋○潜水艦の陸上展示は、前例のないことで、長さ76m、基準排水量で2,000tを超える巨大な艦ですから、どのように作業をすればよいか慎重に協議しました。陸揚げにあたっては高さ100mを超えるクレーンをもつ日本最大級の起重機船を使い2日間にわたり作業を行ないました。

―両日は陸揚げ作業を一目見ようと地元の方を中心に大勢の方が集まったとか。

中橋○まるでイベントのようでしたね。来られた方々は興味深くご覧になられたようですが、あれだけの重量のあるものですから、艦体が折れてしまうのではないかと、私などはひやひやしながら見ていました(笑)。

―展示については。

中橋○自衛隊ならではのことですが、機密保持の観点からどこまで紹介すべきかという点で苦慮しました。写真ひとつとってみても、雑誌などに載っている大きさであれば許可が出るものでも、展示パネル大になると認められないケースがあります。「あきしお」の艦内についても、機器類のメーターなどは機密の部分が多いものですから、イメージを損なわないよう数値を変更したレプリカを仕込んでいます。
 また、艦内は消防法の関係もあり、来館者が安全に見学できるように新たな通路の確保や、機器類の移設を余儀なくされました。

―機密性の保持や安全性を確保したうえで、いかにオリジナル性を保つかということですね。

中橋○そうです。ただ、来館者からの評価も高く人気のある展示ですので、本物のもつ重厚感や迫力は十分に伝わっているのではと感じています。
 開館後、数多くの方にご来館いただきうれしいかぎりですが、海上自衛隊の活動についてご理解を深めるためにも、今後も当館の果たす役割は大きいと責任を感じています。



[所在地]

広島県呉市宝町5-32

[オープン] 2007年4月5日
[事業主体] 呉エス・アンド・エス(株)
[敷地面積] 3,250m2
[建築面積] 3,580m2
[規模] 地上3階建
[施設内容] 今日の海上自衛隊、海上自衛隊の歴史、掃海のあゆみ、機雷の種類と技術、掃海艇による掃海、ヘリコプターによる掃海、掃海艇の構造と機能、掃海艇の種類と変遷、国際貢献、潜水艦とは?、潜水艦の機能、艦内生活、サブマリナーへの道、潜水艦の変遷、魚雷の変遷、潜水艦にとっての脅威、潜水艦の救難、あきしお体験、海自情報ステーション、ミュージアムショップ、多目的室
[展示用潜水艦あきしお] 基準排水量:2,250t
長さ:76.2m
幅:9.9m
深さ:10.2m
船型:完全複穀式(涙滴型)
主機械:ディーゼル2基1軸、メインモーター1基
馬力:水上3,400PS、水中7,200PS
速力:20ノット(水中)
主要兵装:水中発射管一式、スノーケル装備
乗員:75名
[開館時間] 9:00〜17:00
[休館日] 毎週火曜日(祝日の場合は翌日休館)
[入館料] 無料
[URL] http://www.jmsdf-kure-museum.jp/
 

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