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産業技術の継承と人材教育を目的とした先駆的施設

 北九州イノベーション ギャラリー


 北九州市は4月21日、北九州市の発展を支えてきた「モノづくり」の産業技術の保存・継承、人材育成、イノベーションの機会創出を目的とした「北九州イノベーションギャラリー(北九州産業技術保存継承センター)」をオープンした。

 同ギャラリーは現在北九州市の重要文化財となっている東田第一高炉史跡に隣接するが、東田地区と呼ばれるこのエリアは1901年に官営八幡製鉄所により日本ではじめて近代製鉄の火が点された場所である。その後北九州地域では、化学、硝子、機械、電機などの産業が生まれ、多くの企業が世界に向けて新技術を発信してきた。同市は東田地区に「いのちのたび博物館(北九州市立自然史・歴史博物館)」「環境ミュージアム」をすでに開設しており、3つの施設が揃うことで国内をはじめ中国や韓国など海外からの集客にも期待を寄せている。 「年表のギャラリー」では、ロンドン万博が開催された1851年から現在に至る約160年間に起きたイノベーションの歴史を、壁と床に写真と資料とともにグラフィカルな年表で紹介する
「年表のギャラリー」では、ロンドン万博が開催された1851年から現在に至る約160年間に起きたイノベーションの歴史を、壁と床に写真と資料とともにグラフィカルな年表で紹介する

 施設内容は、江戸末期から現代の技術革新に関する年表を常設展示する「年表のギャラリー」、イノベーションとデザインをテーマにした企画展を開催する「企画展示ギャラリー」、講演や産業技術映像の上映を行なう「プレゼンテーションスタジオ」、産業技術とデザインに関する書籍や市内企業の社史、書籍、映像を収集・公開する「ライブラリー」、工作機械を設置しワークショップや技術者育成を行なう「工房」などから構成されている。

 現在日本は、韓国や中国の技術的な追上げを受けるなかで、戦後の経済発展を支えてきた日本の高度技術をいかに次の世代に伝えていくかが大きな課題となっている。日本の「モノづくり」が再評価されるいま、地元産業界からの期待も高く、同センターでは民間と協力しながらさまざまなプログラムを実施していくという。

 単なるモノの展示ではなく、イノベーションをテーマに人材育成を図るという自治体の施設は全国にも例がなく、同センターの今後の活動が注目される。

JRスペースワールド駅から徒歩5分の「北九州イノベーションギャラリー」。鉄鋼とガラスを組み合わせたデザインが印象的 イノベーションギャラリー全景。建物右側が「工房」
(左)●JRスペースワールド駅から徒歩5分の「北九州イノベーションギャラリー」。鉄鋼とガラスを組み合わせたデザインが印象的
(右)●イノベーションギャラリー全景。建物右側が「工房」

「企画展示ギャラリー」では開館記念展として、『遊びイノベーション』が8月26日まで開催されている 65インチのプラズマディスプレイには、年表で紹介された出来事のうち500について詳しく解説。画面表示は、英語、韓国語、中国語にも対応
(左)●「企画展示ギャラリー」では開館記念展として、『遊びイノベーション』が8月26日まで開催されている
(右)●65インチのプラズマディスプレイには、年表で紹介された出来事のうち500について詳しく解説。画面表示は、英語、韓国語、中国語にも対応

『遊びイノベーション』では国内外のクリエーターの作品が展示され、創造性豊かな新しい「遊び」の経験を提案する 『遊びイノベーション』では国内外のクリエーターの作品が展示され、創造性豊かな新しい「遊び」の経験を提案する 「プレゼンテーションスタジオ」(座席数136席)では産業技術の映像上映や講義などを定期的に行なう
(左・中)●『遊びイノベーション』では国内外のクリエーターの作品が展示され、創造性豊かな新しい「遊び」の経験を提案する
(右)●「プレゼンテーションスタジオ」(座席数136席)では産業技術の映像上映や講義などを定期的に行なう

「工房」には加工、切削、溶接などの機械や3Dスキャナー、モデリングマシンが設置され、さまざまな製品の設計・製造が可能。市がマイスターとして顕彰した技術者がその熟練の技を伝授する 「工房」には加工、切削、溶接などの機械や3Dスキャナー、モデリングマシンが設置され、さまざまな製品の設計・製造が可能。市がマイスターとして顕彰した技術者がその熟練の技を伝授する
「工房」には加工、切削、溶接などの機械や3Dスキャナー、モデリングマシンが設置され、さまざまな製品の設計・製造が可能。市がマイスターとして顕彰した技術者がその熟練の技を伝授する

「ライブラリー」では、産業技術とイノベーションに関する情報を、書籍(約6,000冊)、映像(350本)、デジタルアーカイブコンテンツにより提供する エントランス横の「ラウンジ」は、読書や打合せ、休憩などに利用 屋外に設けられた「イベントコート」では、イベントや屋外展示を開催する
(左)●「ライブラリー」では、産業技術とイノベーションに関する情報を、書籍(約6,000冊)、映像(350本)、デジタルアーカイブコンテンツにより提供する
(中)●エントランス横の「ラウンジ」は、読書や打合せ、休憩などに利用
(右)●屋外に設けられた「イベントコート」では、イベントや屋外展示を開催する

 

北九州市
企画政策室 主幹

吉森 裕

「人」「モノ」「技術」のネットワーク化で、
若い人材を育成し、
イノベーションを学び考える拠点にしていきます

吉森氏

 北九州市の人口は、1981年の106万人をピークに現在99万人にまで減少し、高齢化率も高くなっています。これまで北九州市は「モノづくりの街」といわれてきましたが、それを受け継ぐ若い人材が減少していることは大きな問題で、強い危機感を感じています。そして、北九州市が今後さらに発展していくには、技術を通して世の中に貢献しようとする人材、新しい価値のものを生み出せる人材、生産性を向上させる人材などがどうしても必要で、それには人材を育てなければならないと考えています。

 10年以上前には、科学系博物館をつくろうという計画もありましたが、科学博物館は全国どこにもありますし、同じものをつくっても仕方ありません。日本の産業発展に大きく貢献してきたという北九州市の歴史を踏まえて、国家的な視点から、日本の近代以降の産業技術の歴史、技術革新に関する情報を収集し、保存・継承する、それを未来のヒントにしながら「イノベーションをリードする人材を育てよう」というのが当ギャラリーのコンセプトです。

 当ギャラリーの前に立つ東田第一高炉(北九州市重要文化財)は、建物が東西の方向に向いてつくられています。なぜかというと、昔の製鉄所の工場配置を見ますと、ほとんどがそのように並んでいます。軸が東西からずれていると生産の段階で製品が磁気を帯びて悪影響が出るという話を新日鉄のOBの方に聞きました。この軸は大切な産業の基軸と捉え、当ギャラリーもこれに合わせて高炉と平行になるよう東西方向に軸を合わせて建設されています。東田高炉は北九州市のモノづくり、いわゆるハードのシンボルとして、また、ここは人材育成というソフトのシンボルにしたいと考えています。

 開館までの5年間、プレイベント(教育普及事業)としてテクノロジーやイノベーションを広く啓発するためのフォーラムや塾、市民カレッジなどを開催し、その内容を映像で記録するなどオープンに先行して活動を重ねてきました。「施設が完成したから、みなさん利用してください」ではなく、このセンターで何をやろうとしているのか、プレ活動を展開しながらPRをしてきました。利用者のメインは工業高校生、大学生、大学院生を想定していますが、子どもや女性にもぜひ利用していただきたいです。

 北九州市には、産業遺産、技術の知、その技術を支えてきた人材の3つの資産が残っています。技術をもちながら退職した方々がまだ元気でいらっしゃいますので、そういう方々に先生になってもらい若い世代にその技術を伝えていきたい。また、県外からも研究者や技術者などをお招きし、いろいろな講座も開催します。隣接地には広場があるので、そこで技術をテーマにしたイベントなども行なっていきます。

 いまの行政に求められているのは、人と人、モノとモノ、技術と技術、これらを有機的につなげることだと思います。新しいことをはじめるには、異分野の方々との交流が絶対に必要です。市内の企業、OB、専門家の協力を得ながら、優秀なイノベーターが輩出できるよう活動していきます。


[所在地] 福岡県北九州市八幡東区東田2-2-11
[オープン] 2007年4月21日
[事業主体] 北九州市
[運営体] 北九州活性化協議会、(株)ビービーディオー・ジェイ・ウエストによる共同事業体
[敷地面積] 23,950m2
[建築面積] 3,157m2
[構造] S造地上2階建て(工房棟平屋建て)
[延床面積] 3,196m2(本体棟2,687m2、工房棟509m2
[施設内容] 年表のギャラリー、企画展示ギャラリー、プレゼンテーションスタジオ、ライブラリー、多目的スペース、イベントコート、オープンスペース、ラウンジ、工房
[入場料] 無料(企画展は有料)
[駐車場] 乗用車300台、バス30台(共同駐車場)
[開館時間] 9:00〜19:00(土・日・祝日17:00まで)
[休館日] 毎週月曜日(月曜日が祝・休日の場合は翌日)
[来場者目標] 初年度 62,000人
2年目以降 55,000人
[URL] http://www.kigs.jp
 

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