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歴史的価値の高い建物とストーリー性を重視した 国立科学博物館 日本館
同博物館では、新館(現・地球館)建設(T期1999年、U期2004年)に引き続き、今回の「日本館」オープンに至るまで、構想から実に14年近い年月を費やしている。 まず、狭い展示スペースと複雑な動線という課題を解決すべく、1993年に一連の博物館整備に関するアドバイザリーグループを設置。翌94年にアドバイザリーグループの提言を受け、「国立科学博物館展示将来計画」が策定された。その計画において、地球館では“生物の系統分類や産業技術”等をテーマにした展示、日本館においては日本の多様な自然と日本人にスポットをあてた展示を行なうことが決定された。 地球館においては新たに建設するものであり、展示標本数や展示方法などについては設計以前にクリアになっている部分があった一方、日本館においては竣工後77年という歴史的価値の高い建物を活かした展示方法が求められるため、設計図面通りにいかないことも少なくなかったようで、施工現場で一つひとつ確認しながらの作業となった。 展示に関して留意した点としては、展示室ごとにストーリーに沿った標本展示をし、かつ国立科学博物館として伝えたいことをメッセージとして発信することで、理解を深めるとともに問題意識を感じてもらうことを目指した。 そのうえで建築意匠との関係を考慮したうえで、効果的な展示手法、照明演出により、重厚で歴史的価値のある建物の雰囲気を損なわず、十分に活かすことが課題となったが、建物のデザインを展示のなかに取り入れることにより展示との調和が図られた。 そのため、什器については新たに設置したにもかかわらず、以前から展示されていたかのように違和感なく、いい意味での古さが活かされた博物館となった。 オープン後1か月間での来館者は17万7344人を数えた。平均滞留時間は2〜3時間であるが、じっくり見るには1日あっても足りないことから、リピーターが多いのもこの科博の特徴であるが、今回の日本館オープンを機に年会費1000円で何度でも入館できる「リピーターズパス」がつくられ、すでに1000人以上が入会している。 企画展についても年間4〜5企画が催されているほか、研究員とラジオ局のアナウンサーによる対話形式による音声ガイド(有料)など、リピーターにも飽きさせない工夫がなされている。歴史的価値のある建物と調和を図り、ストーリー展開を重視した展示手法とともに従来の博物館の枠から脱した注目スポットといえよう。
今回の「日本館」のオープンにより、1993年から取り組んできた博物館の整備計画による展示工事が終了し、名実ともに日本で唯一の国立総合科学系博物館となりました。 ただ、展示工事については、この歴史的価値のある建物の保存という側面と、自由な展示展開という側面を両立させなければならず、一番苦労した点といえます。総論賛成でも各論となるとそう簡単にはいかない。建物を保存すること、いい展示をすることに反対する人はいないわけですが、ではアンカーボルトをどこにでも打っていいのかというと、それはできないとなる。什器の設置ひとつをとっても、表面上はわかりませんが、裏を見ると建物を傷めないためのあらゆる工夫がなされています。照明の付け方についてもそうですが、建物自体のデザインを活かしながら、貴重な標本をいかによい状態で展示していくかということは、施工現場で議論しながら進めていきました。 この日本館は日本の自然史と科学技術史に焦点をあてています。日本は自然が豊かだといわれていますが、この豊かな自然がどのようにして形成されたのか、そして今日の日本人は、この国土でどのようにして形成され、その過程で自然にどのような影響を与えてきたのか、自然からどのような影響を受けたのかを、来館者に理解してもらわなければいけません。そして、この豊かで貴重な日本の自然を次世代に引き継いでいかなければならないことを、この展示により感じ取っていただくという使命もあります。それをわかりやすく説明するには、メッセージを発信しなければなりません。その点、従来の博物館のように、単に標本を展示するのではなく、館としての主張を明確に出しているところが、当館の特徴ともいえます。 当館がメッセージを発信することももちろんですが、たとえばアンモナイト標本ひとつにしても、「私のことを見て、私が生きていたころの環境、自然、こんな生き物がいたんだということに思いを馳せてほしい」というメッセージを発信しております。それを理解していただくための展示方法が求められるのです。効果的な展示方法、照明演出を標本ごとに考えたことで、すばらしい展示空間になったと思います。みなさんにはこのメッセージを受け止めていただき、日本の自然史や科学技術史に興味をもっていただければと思っております。 このほか各展示室にはストーリーがあり、それにしたがった展示の順番というのがあるわけで、時系列を無視した展示ではメッセージを受けていただけない、理解していただけません。また、各展示室で完結するものではなく、次の展示室につなげる工夫も必要です。つまり館全体でわかりやすいストーリーを構成できたからこそ、よい評価をいただけているのだろうと思います。 実は、この日本館の展示計画については、私も現場の責任者として携わりました。現在は広報という立場におり、試行錯誤しながら完成したこのすばらしい展示空間を、自分でPRすることができ、光栄に思っております。館としましては、これで10年以上に及ぶ展示工事が完了したわけですが、常設展示といえども日々進化していかなければなりません。展示を利用した人的活動の充実や、標本の入替えなど、ますます魅力ある展示にしていきたいと思っております。
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