tansei.net
季刊誌 tansei.net新施設情報近代建築海外情報感動マーケティング更新履歴

HOME > tansei.net26号 > 島根県立古代出雲 歴史博物館


tansei.net Express

多彩な展示構成とスペクタクルな演出で古代出雲の謎とロマンに迫る
 
 島根県立古代出雲 歴史博物館

「島根県立古代出雲歴史博物館」が2007年3月10日、出雲大社の東側隣接地にオープンした。古代日本史の謎をひもとく貴重な文化遺産を多数展示し、考古学関係者をはじめとする多くの人から高い関心を集めている。

 同博物館は1984年に358本という1か所の出土数では日本一を誇る荒神谷遺跡(島根県斐川町)の銅剣の発掘をきっかけに建設計画が立ち上がリ、構想から23年の歳月を経て開館に至っている。そのコンセプトは、・全国への文化発信、・活発な調査研究、・国際的な視野での活動、・島根県の歴史・文化の継承と発展の拠点、・開かれた親しみのもてる博物館、を掲げている。

 本館の展示室は、中央ロビーには出雲大社境内から発見された宇豆(うづ)柱(ばしら)を展示。そして中央ロビーを中心にして、島根を舞台とした神話や伝承を展示物やシアターでわかりやすく紹介した「神話回廊」、古代から現代に至る島根の人々の生活と交流の姿を紹介した「総合展示室」、出雲大社、出雲国風土記、青銅器の3つのテーマから島根の古代文化を解説した「テーマ別展示室」、多彩な企画展を開催する「特別展示室」が配置されている。

 なかでもテーマ別展示室には、平安時代の出雲大社本殿の模型、荒神谷遺跡出土の銅剣(国宝)や加茂岩倉遺跡出土の銅鐸(重要文化財)などの青銅器、古墳時代の豪族が使用した装飾付大刀などを展示。他の博物館ではけっして体感できない実物のもつ迫力に、見学者は圧倒される。
 また調査研究や情報発信をサポートする施設として、書籍の閲覧やビデオ、webサイトなどが利用できる「情報交流室」、講演会やセミナーを開催する「講義室」が整備されている。
 このほか、屋外には学校の校外活動で勾玉(まがたま)づくりや藍染めなどの体験ができる「体験工房」、古代米を栽培する「体験水田」、敷地西側に広がる広大な庭園「風土記の庭」などを配置している。

テーマ別展示室の青銅器をテーマにしたコーナーには、国宝の銅剣とともに金色に輝く200本以上の銅剣の復元模型を壁一面に展示。加茂岩倉遺跡の銅鐸(重文)も合わせて展示している
テーマ別展示室の青銅器をテーマにしたコーナーには、国宝の銅剣とともに金色に輝く200本以上の銅剣の復元模型を壁一面に展示。加茂岩倉遺跡の銅鐸(重文)も合わせて展示している

 一方、運営面で注目されるのは休館日を毎月第3火曜日とし、初詣客で賑わう正月も営業を行ない、営業時間についても冬期以外は夕方18時まで開館していること。出雲大社の参拝客を取り込むのが主な狙いだが、出雲大社に隣接するメリットを活かした運営体制は、両施設の集客に相乗効果を生むと期待されている。

 同博物館は、展示物を通じて古代出雲の文化に触れると同時に、日本人のアイデンティティとは何かを改めて考え直す契機ともなり、考古学ファンならずとも一度は訪れてみたい博物館といえる。

正面入口へと続くアプローチは桂の並木道で、その全長は古代の出雲大社の階段と同じ110m。左右の赤い壁はたたら製鉄にちなんで、コルテン鋼という表面が錆びた鉄板を使用 背景にある北山の自然と調和した建物外観。全面ガラス張り3層吹抜けのエントランス棟は背景の景色が透けて見えるよう、透明感にこだわっている 神話回廊のエントランス。右が神話シアター(53人収容)、左が神話探検コーナー
(左)●正面入口へと続くアプローチは桂の並木道で、その全長は古代の出雲大社の階段と同じ110m。左右の赤い壁はたたら製鉄にちなんで、コルテン鋼という表面が錆びた鉄板を使用
(中)●背景にある北山の自然と調和した建物外観。全面ガラス張り3層吹抜けのエントランス棟は背景の景色が透けて見えるよう、透明感にこだわっている
(右)●神話回廊のエントランス。右が神話シアター(53人収容)、左が神話探検コーナー

青銅器のコーナーには、6世紀後半の大豪族の装いを復元した馬上の大首長像を展示。ヤマト王権から与えられた冠や大刀を身に着けている テーマ別展示室では、『出雲国風土記』に記載されている朝酌(あさくみのせと)促戸の市の様子を再現。当時の野菜売りや魚介類を扱う店の様子がわかる
(左)●青銅器のコーナーには、6世紀後半の大豪族の装いを復元した馬上の大首長像を展示。ヤマト王権から与えられた冠や大刀を身に着けている
(右)●テーマ別展示室では、『出雲国風土記』に記載されている朝酌(あさくみのせと)促戸の市の様子を再現。当時の野菜売りや魚介類を扱う店の様子がわかる

中央ロビー正面に設置された「宇豆柱」。約80人在籍するボランティアガイドが解説にあたる 見学しやすいよう、各展示室は中央ロビーを囲むようにレイアウトされている
(左)●中央ロビー正面に設置された「宇豆柱」。約80人在籍するボランティアガイドが解説にあたる
(右)●見学しやすいよう、各展示室は中央ロビーを囲むようにレイアウトされている

神話探検コーナーでは、島根を舞台とした神話伝承をわかりやすく紹介する 「神話シアター」では、出雲神話をCGを通して紹介。映像プログラムは「スサノヲとヤマタノヲロチ」「オオクニヌシの国作り」など3本で、30分の入替え制 1927(昭和2)年に建設された北松江駅の改札口を、実際に使用されていた部材をもとに再現。電車は1927年に製造されたもので、1996年まで現役として走っていた
(左)●神話探検コーナーでは、島根を舞台とした神話伝承をわかりやすく紹介する
(中)●「神話シアター」では、出雲神話をCGを通して紹介。映像プログラムは「スサノヲとヤマタノヲロチ」「オオクニヌシの国作り」など3本で、30分の入替え制
(右)●1927(昭和2)年に建設された北松江駅の改札口を、実際に使用されていた部材をもとに再現。電車は1927年に製造されたもので、1996年まで現役として走っていた

開館記念特別展として「神々の至宝」が5月20日まで開催され、15万2,082人が入場した。次回の企画展は「石見銀山展」(7月14日〜9月24日)を予定している 開館記念特別展として「神々の至宝」が5月20日まで開催され、15万2,082人が入場した。次回の企画展は「石見銀山展」(7月14日〜9月24日)を予定している
開館記念特別展として「神々の至宝」が5月20日まで開催され、15万2,082人が入場した。次回の企画展は「石見銀山展」(7月14日〜9月24日)を予定している

「ミュージアムショップ」では博物館オリジナルグッズや、地元特産品、伝統工芸品、歴史関連書籍などを販売する。2階に見えるのはカフェ 3階の「展望テラス」からは、風土記の庭、出雲大社の屋根、北山山系の山並みが望める カフェ「阿礼」では、ドリンク類のほか、古代米・地元食材を使った軽食を提供する
(左)● 「ミュージアムショップ」では博物館オリジナルグッズや、地元特産品、伝統工芸品、歴史関連書籍などを販売する。2階に見えるのはカフェ
(中)●3階の「展望テラス」からは、風土記の庭、出雲大社の屋根、北山山系の山並みが望める
(右)●カフェ「阿礼」では、ドリンク類のほか、古代米・地元食材を使った軽食を提供する

平安時代の出雲大社本殿を復元した1/10スケールの模型。その完成度の高さに、見学者は驚かされる 「情報交流室」では、書籍の閲覧やwebサイトなどが利用できる 1881年から1953年まで出雲大社本殿に使用していた千木と勝男木。千木は長さ8.3m、重さ500kg、勝男木は長さ5.45m、重さ700kg
(左)●平安時代の出雲大社本殿を復元した1/10スケールの模型。その完成度の高さに、見学者は驚かされる
(中)●「情報交流室」では、書籍の閲覧やwebサイトなどが利用できる
(右)●1881年から1953年まで出雲大社本殿に使用していた千木と勝男木。千木は長さ8.3m、重さ500kg、勝男木は長さ5.45m、重さ700kg

「エントランスホール」の受付カウンターでは、チケット販売、施設案内、団体受付を行なう 「体験水田」では5月25日に地元の幼稚園児による古代米の田植えが行なわれた 1927(昭和2)年に建設された北松江駅の改札口を、実際に使用されていた部材をもとに再現。電車は1927年に製造されたもので、1996年まで現役として走っていた
(左)●「エントランスホール」の受付カウンターでは、チケット販売、施設案内、団体受付を行なう
(中)●「体験水田」では5月25日に地元の幼稚園児による古代米の田植えが行なわれた
(右)●土器づくりや玉づくり、藍染めなどの体験学習を行なう「体験工房」

 

島根県立古代出雲歴史博物館
館長
 
金築 孝

本物の銅剣や銅鐸を見ることで
古代出雲のすばらしさを感じ、
楽しんでもらいたいと思います

金築氏

 博物館の建設構想は、1984年に出土した銅剣(荒神谷遺跡)が発端です。もともと出雲地方にはいろいろな神話がありますが、それを証拠立てるものが何もありませんでした。ところが1984年に、358本もの銅剣が出土しました。当時は全国の銅剣をすべて合わせても約300本でしたから、それを上回る数の銅剣が1か所から出てきたのです。この文化遺産を何とか活用していこうと、1989年に「島根古代文化活用委員会」が設置され、1994年に「歴史民俗博物館」の建設計画が県の長期計画に盛り込まれました。

 その後、1996年に雲南市加茂町から1か所としては日本一の39個の銅鐸が出土(加茂岩倉遺跡)し、2000年には出雲大社境内から鎌倉時代の巨大な宇豆柱が発見されました。博物館の計画を進めていくなかで、次々と新たな遺跡が発掘されたのです。これら遺跡の発見は、島根県民にとってたいへんな誇りであり、島根県復権の象徴でもあるのです。

 ですから最初に建物ありきではなく、これらの文化遺産をこのように見てほしいというところからスタートして施設の設計をしてきました。建物のデザインは回遊性を重視し、展示方法にも創意工夫をしておりますので、どなたでも楽しめる博物館となっています。

 出雲大社のすぐ東隣りにつくったのは地域振興という側面があります。地元からよかったといってもらえる施設でないと、博物館開設の趣旨が活かされたことになりません。地元の方々に対しては昨年6月から内覧会を実施しました。県がつくる博物館や美術館は、地元の人にとっては自分たちにあまり関係のない施設と思われがちですが、まずは地元住民に理解してもらう必要があります。県外へのPRでは、旅行代理店にあいさつまわりをしたり、全国紙新聞に紹介記事を掲載してもらうなど、広報活動には力を入れました。

 開館から2か月で約12万8,000人の来館者があり、ゴールデンウィーク期間中には約3万5,000人もの方がお見えになりました。一度来館された方が、友人や知人を連れて再度来られているケースもあるようです。また、年間観覧券の「ミュージアムパスポート」がゴールデンウィーク期間中に1万枚を突破しましたので、リピーターは今後さらに増えるでしょう。

 来館されたお客さまには、本物の銅剣や銅鐸などを実際に見て、古代出雲のすばらしさを体感してほしいです。そして、島根県への理解を深めていただければと思います。



[所在地]

島根県出雲市大社町杵築東99-4

[オープン] 2007年3月10日
[事業主体] 島根県
[運営主体] ミュージアムいちばた(一畑電気鉄道・丹青社・近畿日本ツーリスト共同事業体)
[敷地面積] 57,021m2
[建築面積] 9,445m2
[構造・規模] RC造(一部S造) 2階建て(一部地上3階・一部地下一階)
[延床面積] 11,854m2
[施設内容] ・本館
総合展示室、テーマ別展示室、神話展示室、特別展示室、中央ロビー、講義室、情報交流室、ミュージアムショップ、ギャラリー、カフェ、展望テラス、収蔵庫、特別収蔵庫、写真撮影室、燻蒸室、保存修復室、特別閲覧室、資料整理室、書庫ほか
・その他
風土記の庭、体験水田、体験工房、体験広場
[駐車場] 普通車244台、大型バス15台、障害者用6台
[総事業費] 120億円
[来場者目標] 30万人(2007年度)
[開館時間] 9:00〜18:00(11月〜2月は17:00まで)
[休館日] 毎月第3火曜日(火曜日が祝日の場合は翌日)
[観覧料] 一般:600円(480円) 大学生:400円(320円) 小中高生:200円(160円)
※カッコ内は20名以上の団体料金
※企画展は別料金
※障害者手帳保持者および介護者は無料
《ミュージアムパスポート(年間観覧券)》
一般:1,500円、大学生:1,000円、小中高生:500円
[URL] http://www.izm.ed.jp
 

このページに掲載の内容、写真などの転用をお断りします。
Copyright 2007 TANSEISHA.co.,ltd.
All right reserved.