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丹青社のチルドレンミュージアムへの取組み

インタビュー

 

 丹青社ではこれまで、チルドレンミュージアムをはじめとして、さまざまな「こども向け施設」のデザインを手がけてきました。その経験から言えることは、ひと口に「こどもをターゲットにした施設」といっても、その対象とする「こども」の範囲は非常に幅広く、統一した展示手法で、すべての「こども」へ訴求させることは難しいということです。

 チルドレンミュージアムの企画・開発にあたっては、「未就園児」「幼稚園児・小学生」「中学生・高校生」などというように、セグメントごとにエリアを分けることが重要だと思います。

 たとえば、未就園児を対象にするエリアであれば、0〜3歳児を抱える親御さんが、子どもに危険のない安全な場所で、子育てに関するさまざまな活動をすることができる、託児所機能を併せ持った「子育てエリア」のようなものが考えられるでしょう。このエリアは、母親だけでなく父親が気軽に来られるような環境にすることが施設計画する上で大切です。

 幼稚園児・小学生を対象とするエリアは、校外学習などでの利用を踏まえ「地域」に興味をもつ気付きやきっかけとなる「仕掛けづくり」をする機能の整備が考えられます。
 自分が住んでいる「まち」に、どんな職業があり、どんな仕事をして、どのように人が働いているかを体験し、学ぶことができる「まち体験エリア」です。

 こうした機能は、必ずしも装置的投資を行わなくても、ワークショップを開催したり、放課後の遊び場として開放するなどお金をかけないで子どもたちが大人と一緒に何かを作ったり、あるいは、「まち」を観察に行ったりするなど、さまざまな運営による工夫により、実施できると思います。

 中学生・高校生をターゲットにするエリアとしては、一般の人を含めた幅広い市民が、さまざまな目的で集まってくる機能をもった「集いのエリア」としても考えられます。
 このエリアには、たとえば、ダンススタジオのような施設を設け、市民サークルへの貸出や教室の開催などを行う。ダンスといっても、若者が行うストリートダンスから、中高年層に人気が高いフラダンスや社交ダンス、さらには日舞まで、幅広い利用に対応するものとすることが大切です。

 これまでのチルドレンミュージアムは、子どもが遊ぶことに重点が置かれていましたが、子どもがいる環境には、当然大人がいます。その意味からも、これからのチルドレンミュージアムは、ファミリー(家族)がいかに活用できるかという領域に入ってきていると思います。

 ファミリーとともに重視したいのは地域のコミュニティで、地元企業や大学などの教育機関、さらにはNPOなどの市民団体などの「地域」を巻き込み、「地元のみんなで運営している」というムーブメントを起こしていくことです。

 また、建物の建築においても、たとえば塗装など一般の人でもできるものについては、市民が参加できるイベントととして実施するなど施設づくりから参加することで、より親近感も高まりますし、参加した人の手形を残すようにすれば、子どものときに参加した人が、大人になり、結婚して、子どもができたときに、手形があることは、産まれてくる子どもたちへのコミュニケーションにもなります。

 その意味で、チルドレンミュージアムにいま求められているものは「次世代への継承や世代間のコミュニケーションの場」づくりであり、「地域や地元が元気になるための場」づくりであるといえるでしょう。

 私たちミュージアムをデザインする者に求められるものも、いま、変わりつつあります。これまでであれば、お客様のご要望に沿ってデザインし完成につなげていくことがその役割でしたが、近年は、構想の初期の段階から、ワークショップやシンポジウムなどに関わって、エンドユーザーである市民の方が、何を望み、どういう施設を求めているかを把握しなければ、役割を果たすことができなくなっているのです。

こどもたちだけでなく、地域住民の意見を採り入れたチルドレンミュージアムのイメージ
こどもたちだけでなく、地域住民の意見を採り入れたチルドレンミュージアムのイメージ

 丹青社では、人間工学の研究者をはじめ医師や児童心理学者、遊具メーカー、さらには市民が参加する、子どもの事故予防工学連携プロジェクト「安全知識循環型の遊び場」において、わんぱく砦「ヘイ・ヘイ・ホー!」のデザインを行いました。

「ヘイ・ヘイ・ホー!」のデザインを手がけるようになったきっかけですが、プロジェクトに参加している研究者に西田佳史先生がいらっしゃいます。独立行政法人 産業技術研究所 デジタルヒューマン研究センター チーム長で、人間の行動をセンシングして乳幼児や高齢者等の事故予防分野への応用を研究されているのですが、このプロジェクトで、西田先生は、子どもがリスクマネジメントを体験していくことが「安全な遊び場」につながるという研究を行っています。

 プロジェクトには、国内の遊具メーカーも参加していますが、そうしたメーカーは、自社の安全基準に則った者でないと製作できないので、研究の趣旨に沿った一歩踏み出したものを制作することができないでいました。そうしたなか、チルドレンミュージアムなど「子どもの遊び場」のデザインに実績をもつ丹青社に白羽の矢が立ちました。

「ヘイ・ヘイ・ホー!」のデザインにあたり西田先生から「石垣を登らせたい」というオーダーがあり、高さ2mの石垣を組み込みましたが、設計のバックデータとなったのが、横浜市都築区にある「川和保育園」で、西田先生たちが収集した「年齢と登る能力の関係」についてのデータでした。

埼玉県狭山市の「桑の実保育園」に設置されたわんぱく砦「ヘイ・ヘイ・ホー!」
埼玉県狭山市の「桑の実保育園」に設置されたわんぱく砦「ヘイ・ヘイ・ホー!」 埼玉県狭山市の「桑の実保育園」に設置されたわんぱく砦「ヘイ・ヘイ・ホー!」

  川和保育園は園庭全体を「遊び場」とするなど、先進的な遊び場の創造と保育の実践で知られていますが、同プロジェクトのなかで西田先生たちは、川和保育園の園庭にある石垣の上にログハウスが建つ「石崖ログハウス」で、子ども用節電センサーを使って、3〜6歳の50人の子どもの詳細なデータを計測されました。

 そうした研究者の先生方からの専門的な指示をもとに、最低限の安全性を考慮して設計し制作された「ヘイ・ヘイ・ホー!」は、今年2月、埼玉県狭山市の「桑の実保育園」に設置されました。その様子は、2月18日のNHKスペシャルで「ドキドキ・ヒヤリで子どもは育つ〜遊具プロジェクトの挑戦〜」と題して放映されました。
 園児の親のなかには心配される方もいらっしゃいましたが、子どもたちは「さあ、みんな遊べ」と言うと、みんなワーッと駆け寄って、身長の3倍くらいある石垣を登っていきました。なかには怖がって最初は遊ばない子もいましたが、先に上に登った子が登れないこの手を引っ張って引き上げてあげるなど、社会性というか、子ども同士のコミュニケーションの形成にも役立っているようです。

 桑の実保育園への設置は、あくまでも「データ計測のための遊び場」としての設置で、これをこのまま公園遊具として使えるというものではありません。同保育園でも、子どもが遊ぶときは必ず保育士の方がついていますし、遊べる子どもの年齢も4〜6歳に限定しています。このため、周りを囲む塀の高さや入口として設置した土管の傾斜を、それ以下の子どもでは登れないように設計上の工夫をしました。

 今後は、同保育園での計測を進めるとともに、計測結果をもとにハザードとなる部分の除去などを行い、さらにブラッシュアップを図って行きたいと思います。


「アクアマリンふくしま」が開館5周年記念企画として、2005年7月15日〜06年5月22日(好評により開期を延長し現在も継続中)に開催した就学前の子どもを対象とした企画展「キッズアクアリウム 海とあそぶ」のプランニングに携わりました。

 同館は将来計画に、「命の教育」をテーマにした参加体験型展示施設「アクアマリン子ども体験館(仮称)」の新設計画があります。この計画に向けた「実験展示」の一環として、開館5周年を期に開催されたのがこの企画展でした。

 館長や担当者の方からは、「『命の教育』をテーマに、遊びや動物との触れあいなど五感を通して『生命とその多様性』を学ぶ企画展にしたい」という意向を受けました。この企画展への情熱に心を打たれ、幾度もブレストを積み重ね、生物の視点で体験する展示や命の循環を考える展示を計画しました。
 イソギンチャクやチンアナゴなどの海の生き物をモチーフにした遊具では、ただ単に遊具で遊ぶだけでなく、遊びを通して「『海の生き物は、外敵から身を守るために様々な生きる工夫をしている』ことに気づく展示」をコンセプトにしました。

 また、実際に生きた動物に触れ、体温や鼓動を感じることで、生命の大切さや尊さに気づく展示を展開しました。子どもたちに命とは何かを「理解させる」のではなく、子どもたちの気づきを導く印象的な「きっかけ」「ヒント」を与えることが重要なポイントとなりました。

 学習交流課の方たちと一緒に「学習キット開発」にもチャレンジしました。手作りおもちゃの要素を入れて、子どもたちに命の大切さや不思議さに気づく「きっかけ」となるものにしました。この学習キットには、「おもちゃコンサルタント(NPO日本グッドトイ委員会)」の資格取得の際に学んだ知識も活かされています。おもちゃを活用したプログラムは、子どもの可能性を広げるツールだと考えています。

 この企画展では「運営する側」にも配慮したプランニングに心がけました。まずは「館の運営の実際を知りたい」という思いから、3日程度「水族館合宿」を実施しました。
  合宿といっても、打合せの合間にバックヤードツアー、体験プログラムの運営サポート、解説員やボランティアの活動サポートをさせて頂くという職場体験みたいなものだったのですが。館の表舞台・裏舞台だけでなく、館の職員やボランティアが高い意識を持って子どもたちの感動体験をサポートする姿を拝見し、子どもの可能性を広げるには「人」の存在が欠かせないことをつくづく感じました。
(余談ですが、解説員の皆さんと一緒に、朝から大声で発声練習をしたり腹筋をしたのは、合宿の名にふさわしい印象深い体験でした…)。

子どもに命の大切さや不思議さを気づかせるきっかけとなるように館のスタッフと一緒に製作した「学習キット」
子どもに命の大切さや不思議さを気づかせるきっかけとなるように館のスタッフと一緒に製作した「学習キット」 子どもに命の大切さや不思議さを気づかせるきっかけとなるように館のスタッフと一緒に製作した「学習キット」

 この仕事を通じて、子どもたちの可能性を広げる「きっかけづくり」には、子どもの気づきに重点を置いた展示とそれに連動するプログラム、そして子どもの活動をサポートする「人」が大切だということを感じました。また、子どものミュージアムを企画する私たちは、子どもの視点に立った感覚や創造性を持ちつつ、運営側の現状や利用者ニーズに踏み込んだプランニング力が必要なのではないかと思います。


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