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日本の“新たなアートの拠点”として誕生した
コレクションを持たない美術館

 国立新美術館


 特定の美術品は所蔵せず、多彩な展覧会の開催や、美術に関する情報や資料の収集・公開・提供、教育普及などにより『日本のアートセンター』としての役割を果たす、新しいタイプの美術館が2007年1月21日、東京・六本木にオープンした。

  01年に駒場に移転した東京大学生産技術研究所の跡地に誕生した「国立新美術館」がそれで、独立行政法人国立美術館の5番目の美術館となる同美術館の開設は、いまから30年ほど前に、美術関係者から国に対して、公募展に必要な機能を備えた新しい美術館の首都・東京への建設の要望が出されたことが契機となった。

 国立新美術館では、国内最大級の展示スペースを活かし、全国的な活動を行っている美術団体などへの展覧会会場の提供をはじめとして、新しい美術の動向に焦点をあてた自主企画展や、新聞社等との共催による展覧会の開催などの事業展開を計画している。

 1月21日の開館は、開館記念展「20世紀美術探検─アーティストたちの三つの冒険物語─」(〜3月19日)と「黒川紀章展─機械の時代から生命の時代へ」(同)、文化庁メディア芸術祭10周年企画展「日本の表現力」(〜2月4日)の3つの展覧会でスタート。さらに2月7日から開催中の「異邦人(エトランジェ)たちのパリ 1900─2005 ポンピドー・センター所蔵作品展」(〜5月7日)など、多彩な展覧会を開催している。

 また国立新美術館では、展覧会事業とともに、情報収集・提供事業、教育普及事業を、事業の柱に位置づけている。
 近現代美術・デザイン・建築などに関する図書や国内外で開催された展覧会カタログ、美術・デザイン・建築等に関する雑誌などを所蔵する「アートライブラリー」を設置するほか、研修室や講堂も配置。展覧会に合わせた講演会やシンポジウムを開催していくとともに、ワークショップやインターンシップなどのプログラムも提供している。

 入館料については、展覧会ごとに観覧料を設定する方式を採用。入館自体は無料で、レストランやミュージアムショップなどの付帯施設も充実。それらの施設の利用を目的とした来館者も少なくないというが、同館では、幅広い層が来館する“開かれた美術館”として訴求していきたい考えである。

東京・六本木の東京大学生産技術研究所跡地に開館。保存要望の声に配慮し、歴史的建造物で二・二六事件ゆかりの旧歩兵第三聯隊兵舎(写真左)を前庭に一部保存 開館記念展として1月21日〜3月19日に開催された「20世紀美術探検─アーティストたちの三つの冒険物語─」 開館記念展として1月21日〜3月19日に開催された「20世紀美術探検─アーティストたちの三つの冒険物語─」
(左)●東京・六本木の東京大学生産技術研究所跡地に開館。保存要望の声に配慮し、歴史的建造物で二・二六事件ゆかりの旧歩兵第三聯隊兵舎(写真左)を前庭に一部保存
(中・右)●開館記念展として1月21日〜3月19日に開催された「20世紀美術探検─アーティストたちの三つの冒険物語─」

「20世紀美術探検」は「第1部20世紀美術におけるものとその表現」「第2部20世紀美術におけるものと人間の生活」「第3部マテリアル・ワールドに生きる」の3部で構成。「第3部マテリアル・ワールドに生きる」では、高柳恵里氏や田中功起氏など、物に囲まれたマテリアル・ワールドとしての現代社会のなかで、生をいかにとらえ編成していくかを重要なテーマに制作を行っている内外の作家6人を選び、新作ないし近作を展示 「20世紀美術探検」は「第1部20世紀美術におけるものとその表現」「第2部20世紀美術におけるものと人間の生活」「第3部マテリアル・ワールドに生きる」の3部で構成。「第3部マテリアル・ワールドに生きる」では、高柳恵里氏や田中功起氏など、物に囲まれたマテリアル・ワールドとしての現代社会のなかで、生をいかにとらえ編成していくかを重要なテーマに制作を行っている内外の作家6人を選び、新作ないし近作を展示
「20世紀美術探検」は「第1部20世紀美術におけるものとその表現」「第2部20世紀美術におけるものと人間の生活」「第3部マテリアル・ワールドに生きる」の3部で構成。「第3部マテリアル・ワールドに生きる」では、高柳恵里氏や田中功起氏など、物に囲まれたマテリアル・ワールドとしての現代社会のなかで、生をいかにとらえ編成していくかを重要なテーマに制作を行っている内外の作家6人を選び、新作ないし近作を展示

展示室は吊壁による可変式 光で傷めることがないようにするため油彩画や版画など作品の種類によって照度を変える
(左)●展示室は吊壁による可変式
(右)●光で傷めることがないようにするため油彩画や版画など作品の種類によって照度を変える

「黒川紀章展──機械の時代から生命の時代へ」では、国立新美術館の設計者である建築家・黒川紀章の主要作を回顧するとともに、現在取り組んでいる世界各国の最新プロジェクトを紹介し、ユニークな模型や映像を使い現代建築・都市の将来を展望
「黒川紀章展──機械の時代から生命の時代へ」では、国立新美術館の設計者である建築家・黒川紀章の主要作を回顧するとともに、現在取り組んでいる世界各国の最新プロジェクトを紹介し、ユニークな模型や映像を使い現代建築・都市の将来を展望

朝日新聞社、テレビ朝日、ポンピドー・センターとの共催展「異邦人(エトランジェ)たちのパリ1900−2005ポンピドー・センター所蔵作品展」は、フランスが誇る近現代美術の殿堂「ポンピドー・センター」の所蔵作品から、近代美術史を彩る著名な芸術家たちのほか、今もなお旺盛な活動を続ける中国や南アメリカ、アフリカ出身の現代芸術家たちの作品約200点を紹介。近現代美術においてパリやそこでの外国人芸術家が果たした役割をふり返る
朝日新聞社、テレビ朝日、ポンピドー・センターとの共催展「異邦人(エトランジェ)たちのパリ1900−2005ポンピドー・センター所蔵作品展」は、フランスが誇る近現代美術の殿堂「ポンピドー・センター」の所蔵作品から、近代美術史を彩る著名な芸術家たちのほか、今もなお旺盛な活動を続ける中国や南アメリカ、アフリカ出身の現代芸術家たちの作品約200点を紹介。近現代美術においてパリやそこでの外国人芸術家が果たした役割をふり返る

地下1階に設けられたミュージアムショップ『スーベニア フロム トーキョー』では、佐藤可士和氏とのコラボレーションによる国立新美術館ブランドによるオリジナルのミュージアムグッズ等を販売するほか、これからの活躍が期待される若手アーティストのためのギャラリースペース「スーベニア フロム トーキョー ギャラリー」を設置 地下1階に設けられたミュージアムショップ『スーベニア フロム トーキョー』では、佐藤可士和氏とのコラボレーションによる国立新美術館ブランドによるオリジナルのミュージアムグッズ等を販売するほか、これからの活躍が期待される若手アーティストのためのギャラリースペース「スーベニア フロム トーキョー ギャラリー」を設置
地下1階に設けられたミュージアムショップ『スーベニア フロム トーキョー』では、佐藤可士和氏とのコラボレーションによる国立新美術館ブランドによるオリジナルのミュージアムグッズ等を販売するほか、これからの活躍が期待される若手アーティストのためのギャラリースペース「スーベニア フロム トーキョー ギャラリー」を設置

さまざまなシーンに合わせて楽しめる4つの食の空間を館内の各フロアに配置 レストランは美術館閉館後も22時(ラストオーダーは21時)まで営業。展示室も毎週金曜日は20時まで開館するなど、多様な都市生活者のライフスタイルに対応。日本の“新たなアートの拠点”として誕生したコレクションを持たない美術館
(左)●さまざまなシーンに合わせて楽しめる4つの食の空間を館内の各フロアに配置
(右)●レストランは美術館閉館後も22時(ラストオーダーは21時)まで営業。展示室も毎週金曜日は20時まで開館するなど、多様な都市生活者のライフスタイルに対応。日本の“新たなアートの拠点”として誕生したコレクションを持たない美術館

 

国立新美術館 館長

林田 英樹

[聞き手] (株)丹青社 ◎執行役員
プロジェクト推進室長〈文化空間担当〉森 俊憲

幅広い層の人が気軽に訪れ
身近にアートを感じられる
「開かれた美術館」を目指しています

林田氏
―国立新美術館は、大阪に国立国際美術館が開設されて以来、30年ぶりに新設された「国立美術館」となりますが、独自の収蔵品を持たないなど、これまでの4つの国立美術館とは性格が異なる美術館だと思います。国立美術館の開設までの経緯からお伺いしたいのですが。

林田○日本の美術界の大きな特徴として、美術団体による公募展の活動が盛んに行われているということがあります。こうした活動が、日本の美術の峰を高め、裾野を広げるという重要な役割を果たしています。そしていまから30年ほど前に、そうした団体の方々から「全国的な公募展を開催できる施設を、首都である東京に国で整備してほしい」という要望が出されたのが、国立新美術館の設立の契機となりました。

 美術館の立地につきましては、美術団体の方々からは「多くの方に気軽にお越しいただけるためにも、できるかぎり便利な場所で」という強いご要望がありました。この場所は東京大学の生産技術研究所があった場所ですが、駒場に移転することが決まったことから、地下鉄の駅からも直結できるなど、交通アクセスが非常にいい、この地に最終決定しました。

―独自の収蔵品を持たないということで、公募展の開催とともに、どのような企画展を開催していくかということが、館の運営にとって非常に重要になってくると思います。企画展に関する基本的なお考えをお聞かせください。

林田○企画展には、館独自で企画する自主企画展と、新聞社などとの共催による企画展があります。自主企画展につきましては、新しい美術の動向に焦点をあてた展覧会を中心に行っていきます。そして、「美術」という概念をできるだけ幅広く捉え、建築やファッションなどのデザインに加えて、メディアアートといわれる部分も含めて、幅広い活動を行っていきたいと考えています。

―1月21日〜2月4日に開催された企画展「日本の表現力」は、まさにそうしたメディアアートをテーマにした展覧会でしたね。

林田○開館記念展の「20世紀美術探検アーティストたちの三つの冒険物語」と「黒川紀章展機械の時代から生命の時代へ」と、それからいまおっしゃられた「日本の表現力」の3つの展覧会で開館したのですが、「20世紀美術探検」は、キュビスム以降の20世紀美術の多様な展開を『もの』と『生活』という視点から見ていただこうというもので、まさしく「新しい動き」をテーマにした展覧会です。また「黒川紀章展」は、当館の設計者でもある黒川紀章先生のこれまでの活動をご紹介するものです。そして「日本の表現力」は、「文化庁メディア芸術祭10周年企画展」として企画されたもので、わが国のメディア芸術を現在、過去、未来の3つの視点で紹介するものでしたが、これら3つの企画展は、当館の開館にふさわしい多彩なジャンルの作品を見ることができる展覧会になったと思います。

―共催展につきましては、どのように取り組まれていくのですか。

林田○2月7日からスタートした「異邦人たちのパリ1900─2005ポンピドー・センター所蔵作品展」が、そのひとつの例になるのですが、内外の人気の高い美術作品を中心にした内容になっていくと思います。

―国立新美術館は、開催される展覧会とともに、その特徴的な外観デザインや充実した付帯機能により、早くも東京の新たなスポットとして注目を集めていますね。

林田○これまでの日本の国立美術館は、確かにレストランやショップなどの付帯機能については、十分な体制が整っていなかった面があったかもしれませんが、ここ数年、国立美術館も博物館も、レストランやショップにも相当な力を入れていて、レベルの高いものをサービスできるようにしてきております。国立新美術館では、“開かれた美術館”として、特にそこのところに力を入れました。黒川先生も、美術館におけるレストランやカフェ、ショップの役割を、展示室と同様な位置づけで考えられ、眺めも雰囲気も非常にいい場所につくっていただきました。

―六本木ヒルズに「森美術館」が開設されているほか、3月30日グランドオープンの東京ミッドタウンに「サントリー美術館」が移転オープンするなど、東京・六本木は、いまや、日本の“新たなアート拠点”となりつつあるように思われますが、そうした周辺のアート施設との連携につきましては、どのように考えられていますか。

林田○国立新美術館と森美術館、サントリー美術館が結ぶ三角形を「六本木アート・トライアングル」と名付け、すでにマップを作って配布しているほか、館長会議を定期的に開催したり、それぞれの行事に訪問しあうなど、連絡は密にとっています。これからも、3館がさまざまな連携を図っていくことで、六本木をアートに親しめる街にしていきたいと考えています。

―東京・六本木から“新しいアートのうねり”が生まれてくることを期待しています。本日はお忙しいところ、誠にありがとうございました。

 

[所在地] 東京都港区六本木7-22-2
[オープン] 2007年1月21日
[事業主体] 独立行政法人国立美術館
[敷地面積] 約30,000m2
[建築面積] 約12,500m2
[規模] 地下1階地上4階建
[延床面積] 約48,000m2
[施設内容] 展示室10室(各1,000m2)、企画展示室2室(各2,000m2)、アートライブラリー、講堂(約300席)、研修室3室、レストラン「ブラッスリー ポール・ボキューズ ミュゼ」(3階・182席)、カフェ3:「サロン・ド・テ ロンド」(2階・82席)、「カフェ コキーユ」(1階・屋内120席・屋外40席)、「カフェテリア カレ」(地下1階・120席)、ミュージアムショップ「スーベニア フロム トーキョー」
[開館時間] 10:00〜18:00(金曜日のみ〜20:00) (レストランは〜22:00)
[休館日] 毎週火曜日(祝日・休日に当たる場合は開館し、翌日休館)、年末年始
[観覧料] 展覧会ごとに異なる
[URL] http://www.nact.jp


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