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HOME > tansei.net25号 > 新世代百貨店 21世紀の提言 連載第13回

2007年、「東京新店」オープンなど
三つのプロジェクト、一斉に開業

大丸東京店
(株)大丸 執行役員
東京店長 兼 グループ本社百貨店事業本部
東京店新店準備室長  小林 泰行

聞き手/ リテールクリエイションセンター専門役 斎藤秀樹

東京新店で“お洒落な百貨店”、
横浜&浦和は“食の専門大店”に挑戦

小林氏

 (株)大丸は、今年、創業290年の節目を迎える。同社のルーツは、享保2(1717)年京都・伏見で呉服専門店をなりわいとしたことに始まる。社是の「先義後利」(お客様に役立つ事を先にすれば、利はおのずと後について来て必ず栄える)はとくに有名な企業理念で、顧客視点に立った経営を今日まで営々と紡ぎ、築いてきた。
 おりから、同社は現在、2004年を初年度とする「大丸グループの再成長プラン(リグロース戦略)」をスタートさせ、業界ナンバーワン企業を目標にした積極政策に入っている。とくに、再成長戦略第二ステージにあたる今期は、東京店を中心とする首都圏を舞台に業容拡大が目覚しく、期中に「東京新店第一期(11月)」オープンを頂点として「ららぽーと横浜(3月)」「浦和パルコ(今秋)」への出店を一斉に果たす。
 その舵取りをするのが、札幌大丸をみごと成功に導いた小林泰行執行役員である。そこで小林店長に三プロジェクトに賭ける想いや小林流ローコスト経営の極意等を聞いてみた。

大丸東京店 大丸東京店 JR東京駅八重洲中央口コンコースから見た東京店1階売場
左・中●大丸東京店
右●JR東京駅八重洲中央口コンコースから見た東京店1階売場

 

今期、創業290周年の 版図拡大へ
「東京新店」の 第一期オープンに加え
“食の専門大店”を 横浜と浦和で挑戦

−大丸東京店は、53年ぶりに今年11月移転・増床を果たしますが、まず、この計画の概要についてお聞かせください。

小林 「東京新店」の拡大計画は、二段階で進められます。
 今秋、「東京駅八重洲口開発計画」の一環として、現在、東京店が入っている鉄道会館ビルの北側隣接地でJR東日本(東日本旅客鉄道(株))、三井不動産(株)と(株)国際観光会館が開発を進めている地上43階地下4階建の超高層タワー「グラントウキョウ ノースタワー」が、竣工します。同タワーの地下1〜地上13階に大丸が第一期分の売場面積約3万4000m2の規模を確保し、出店します。

 さらに、5年後、第一期部分と接続する形で地上13階地下1階建の第二期部分が2012年に完成しますので、そこでさらに増床を行う予定です。

−今秋、第一期オープン分は、売場面積は微増ですが、5年後の規模はかなり大きくなりますね。

小林 そうです。現在の東京店の売場面積が3万1500m2ですから、第一期開業の時点では微増ですが、第二期では約4万6000m2となり、約1.4倍に拡大します。

−「東京新店」が完成すると、大丸が目指してきた北は北海道、南は九州までナショナルチェーン体制が、さらに磐石なものになりますね。

小林 大丸はこれまで、京阪神を中心とした西日本に店舗が集中しており、東日本は手薄でした。しかし今年、東京新店のオープンに加え、横浜市都筑区に今春オープンする「ららぽーと横浜」と、さいたま市浦和区に今秋オープン予定の「浦和パルコ」にそれぞれ食の専門大店を出店します。
「ららぽーと横浜」が3月、「浦和パルコ」が今秋、そして東京新店が11月とオープンしますので大変といえば大変ですが、首都圏には日本一大きいマーケットがあるわけですから、それだけ挑戦のしがいがあります。

−現在、大丸はグループの再成長を目指し、04年から「リグロースプラン」を掲げ、第二ステージに入っています。恐らくこのグループ戦略の成否の鍵を握っているのがこの首都圏の三プロジェクトと思われます。三店が予定通り推移すれば、企業グループとしてさらに大きく成長する契機になりますね。

小林 大丸グループ・リグロースプランのもと、積極的に営業改革を進めているところです。やはり、営業収益を増加させるには、「新規出店」が重要です。そういう意味では、いまは、しっかりした基盤を築きつつあるところで、今回の首都圏における三つのプロジェクトの結果がどのように出るかが大きなターニングポイントになります。特に、首都圏における拠点となる東京新店の成否は、大きな意味をもつものと考えています。

「東京新店」完成予想図(第一期) 「東京新店」完成予想図(第二期) 「東京ステーションシティ」完成予想図
左●「東京新店」完成予想図(第一期)
中●「東京新店」完成予想図(第二期)
右●「東京ステーションシティ」完成予想図

 

「東京新店」は 婦人服・雑貨を強化へ
“東京駅のお洒落な百貨店”の評判と
“高収益店舗”の 実現を目指す!

−小林店長は、東京店就任前の03年には札幌進出に携わり、人件費比率を抑えたローコストオペレーションで“新規出店の成功モデル”をつくられました。「東京新店」にも札幌店方式を活用されるのですか。

小林 札幌店の運営モデルは、まったくの新店だから実施できたもので、既存店に札幌モデルを適合させるには、さまざまな条件を整備しなければなりません。

 確かに札幌店は、従来の百貨店と比べるとみなさんが驚かれるくらい少ない人員で運営しています。が、社員がきちんと対応しなければならないところは重点配置するなど、人員配置には工夫を凝らしています。札幌の店に行かれても、極端に店員が少ない店だとは思われない筈です。

 百貨店は、お客様から「サービスが悪い」と思われたら失敗です。人的サービスを厚くするべきところは厚くし、薄くしてもよいところは思い切って薄くする。東京でも、スリムな体質にするということでは、時間をかけて改革を進めてきましたので、これから急に大改革をやるということではありません。

−わが国で最初にパートタイマーを採用したのも大丸東京店と記憶していますが。コスト改革や新しいことにチャレンジする姿勢は、御社のDNAの中に流れているように感じられますが。

小林 和29(1954)年に東京店開業後、募集したのが「パートタイマー」の始まりです。そのときは「奥様、お嬢様の百貨店、3時間勤務」という広告を出し、話題になりました。常に新しいことに取り組んでいくという姿勢は大事なことだと思います。

─話は戻りますが、「東京新店」の計画内容を見ると、婦人雑貨2フロア、婦人服3フロアの計5フロアを女性ファッション売場に当てることになっているようですね。“レディスファッション強化”にかなり力を注がれる計画ですね。

小林 現在でも力を入れていないわけではありませんが、これまではなかなか、受け入れて頂けなかったという面があります。東京の場合、ファッションに強い百貨店というと、新宿の伊勢丹さんや銀座の松屋さんと世間の評判が決まってしまっています。また老舗として、三越さんや高島屋さんもございます。

 そうしたなかで、大丸東京店は周辺がビジネス街ということもあって紳士服は、それなりの評価を得ています。が、レディスファッションの分野では、あまりアイデンティティがありませんでした。百貨店にとってレディスファッションは、やはり最も重要な分野のひとつですから、新店に生まれ変わるのを機にレディスファッションを強化したいと考えました。時間はかかると思いますが、「東京駅に洒落た百貨店があるよ」と言われるようにしていきたい。

−大丸東京店のメンズの評価は、高いですね。センスのよいネクタイが取り揃えられている点に象徴されています。男の大丸ファンは少なくないですよ。

小林 昭和29(1954)年に東京店を開設するときに、大阪店の紳士服が取引先様そのまま一緒に出店したという経緯がありました。丸の内、八重洲のビジネス街に立地した百貨店として東京駅に隣接しているということもあり、東京店は男性が入りやすい百貨店で、そのことはこれからも大切にしていきたいと思っています。しかし、いくらメンズが強いといっても、お客様の7割は女性です。そこをきちんとつくる必要があります。

 現在の店舗は、横に長いので目的の売場まで辿り着くのに時間がかかったり、分かりにくさがありました。新店はスクエアなフロアですので、分かりにくさは大幅に改善されると思います。

 

レストラン2フロア、 ミュージアムも
随所に“ゆとりある百貨店” 目指す
店舗ブランドのイメージを先行させ
第二期増築内容は 直前に決定

−上層階の12、13階の2フロアをレストランゾーンに使うなど、「飲食」の部分にも大変力が入っていますね。

小林 レストランやミュージアムなどの施設は、最初にしっかりと設備をつくっておく必要があります。東京駅八重洲口周辺は、飲食は店舗の数はたくさんありますが、きちんとしたレストランは意外と少ない。また、のんびりとくつろげるような喫茶店もそれほど多くありません。ですから、そういうものを百貨店の中にしっかりと構築していこうと考えています。新店のレストランフロアはガラス張りで見晴らしも非常にいいので、夜は、お酒を楽しんでいただけるようなレストランを設置する予定です。

−年間売上高は、第一期開業後が初年度600億円、第二期開業後は初年度800億円と堅めの目標設定にされているようにも見えますが。

小林 なるべく早い時期に1000億円を達成したと考えています。東京・丸の内・八重洲は、それくらいのポテンシャルのある街だと思います。大丸東京店は都内百貨店ランキングで、なるべく早くベスト10に入るようにし、お客様からは、「良い店だ」、「良い服がある」と言っていただけるような、アイデンティティを獲得したいと思っています。

−新店第二期開業の増床スペースについては、どのようなカテゴリーの売場にしたいと考えていますか。

小林  いまのところは、まだ決定していません。5年も先のことですので、いまからはとても予測できません。逆に何に使うかを検討するのに5年もあるというのが、プラスと考えています。今後、周辺エリアは、大きく変貌しますからもう一度「東京店」のマーケットを見直し、4万6000m2をどのように使うかを考え、セッティングし直すことができるのは、大きな強みになると思います。

 

横浜と浦和へ出店
両店「食の専門大店」で挑戦
“東京大丸の食の力”を 結集した
ハイレベルな “ライフスタイル提案”へ

−今年3月に「ららぽーと横浜」をオープンし、秋に「浦和パルコ」へ出店しますが、業態開発に挑戦という印象を強く受けます。いままで培ってきた“東京店のデパ地下”の成功例と“高級スーパー・大丸ピーコック”の融合と見られていますが。

小林 ショッピングセンターの中に百貨店が「食のゾーン」だけ出店するというのは、大丸でもこれまでありません。が、東京店の地下食品売場やグループ企業の(株)大丸ピーコックが展開する「大丸ピーコック」など、「食」に関して大丸グループは力があります。ですから、そうした力を有機的に連携して、高いレベルの「食の専門大店」を出店することができるようになりました。

 また、横浜でも浦和でも、その地域特産の「食」があれば、なるべくそれを導入するようにしたい。食の好みは、その土地、その土地で大きく異なります。店舗の運営手法は全国同じですが、食品は微妙に違います。出店する地域ごとに、そこに合った店をつくっていく必要があります。

 また、「ららぽーと」という郊外型ショッピングセンターの食品と、「パルコ」という都市型専門店ビルの食品では、その内容も自ずと異なってくると思います。その分、百貨店としての工夫や挑戦しがいがあるといえます。

−昨年末、インターネットを使った化粧品「マルコレショップ」のWEB通販もスタートしました。これはどういう狙いですか。

小林 大丸として百貨店以外の新規業態にどこまで参入できるかというチャレンジです。これまでの大丸の資産を使いながら拡大できる要素のあるものは、それにチャレンジしていこうということです。
 ただ、通販は競争相手がたくさんいますから、成功するにはまだまだ時間がかかると思います。

−大丸としては、今年は創業290周年の節目を迎える年ですが、記念事業が東京を中心に情報発信されるのは極めて珍しいですね。

小林 東京店は、オープン直前まで全館売り尽くしセールを展開し、京阪神の店舗では、創業290周年のアニヴァーサリーに力が入ります。
 新店舗というのは、気持ちのいい環境でお客様を迎えられるので従業員も気分を一新して働く事が出来るので、待ち望んでいると思っています。

−新店開業と創業290周年が重なり、まさに錦上花を添えるお目出度い年です。ご活躍を期待しております。
 本日はお忙しいところ、誠にありがとうございました。

ららぽーと横浜フードマーケット館内入口 「浦和PARCO」完成予想図 大丸東京店 小林店長とインタビューに同席した(株)T&T代表取締役社長(元当社執行役員) 斉藤幹雄
左●ららぽーと横浜フードマーケット館内入口
中●「浦和PARCO」完成予想図
右●大丸東京店 小林店長とインタビューに同席した(株)T&T代表取締役社長(元当社執行役員) 斉藤幹雄

 

斎藤秀樹の提言


 百貨店業界では、関が原の合戦になぞらえ、東西の雄を“東の三越、西の大丸”と囃し立ててライバル意識を燃やした時代が長らく続きました。時は流れ、バブル崩壊後の今日は、“東の伊勢丹、西の大丸”と主役を差し替えざるを得なくなったようです。

 東の新しい旗頭は、ファッション販売では他社の追随を許さず、破綻した地方の盟友(ADO)を次々に救済する「伊勢丹」です。それに対し西の「大丸」は、2003年札幌進出で大成功を修めた後、ポテンシャルナンバーワンの企業として再度評価されるようになった。

 札幌店は、今なお地域一番の売上げ伸長率を誇っているばかりでなく、企業大丸にとっては収益面での貢献度が著しい店となった──いわば、「百貨店としてのサービスを落さず、ローコスト運営を実現している高収益店舗」で、すっかり、“高収益企業の大丸”のイメージが広く定着する契機となったのです。

 ちなみに、2007年2月期決算〈予想〉をみると、三期連続増収増益を達成した他、営業利益(340億円)は4.0%と業界トップクラス。経常(335億円)、当期利益(170億円)は、ともに過去最高を更新するなど絶好調だ。
 今回、インタビューに登場して頂いた執行役員東京店長の小林泰行氏は、札幌店開業時、上記の“ローコストオペレーションの仕組み”を構築した立役者である。その後、東京店長兼新店準備室長に抜擢され、今期、“首都圏攻略”の指揮を執ることになった。

折から、同社はグループ挙げてリグロース(再成長)戦略を推進中で、今年から第二ステージに入る。同戦略の最終目標は、業界首位を目指すこと(現在、売上高では業界4位)。それだけに今期の首都圏戦略の行方が、そのまま同リグロース戦略の成否にダイレクトに反映することになる。

 それ故、首都圏三プロジェクト開業で「どんな“小林マジック(例えば、最小の経費で最高の効果を上げるミニマックス戦略)”が仕込まれるのか」が、いまから取り沙汰され、かつ熱い視線が注がれている。


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