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HOME > tansei.net24号 > [特集]ユニヴァーサルデザインへの取組み
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丹青社が進める社会交流空間におけるユニヴァーサルデザイン

インタビュー

 丹青社では、約10年近く前から、その空間づくりにおいて、ユニヴァーサルデザインの観点から、安全設計や省エネ設計、経済寸法、健康建材、リユース、リサイクルなどを重視した「環境配慮設計」ということを、お客様にご提案してきましたが、ここ数年、そうしたことに対するお客様の認識が非常に高くなってきているのを感じます。

 私どもの提案も、当初はバリアフリーの視点からユニヴァーサルデザインに入り、ハードのユニヴァーサルデザイン、ソフトのユニヴァーサルデザインという方向に進んできました。そして、今後、丹青社が進めていくべきユニヴァーサルデザインの方向性として辿り着いたのが「心のユニヴァーサルデザイン」です。

 結局、設計者が頭の中だけで考えているだけでは、本当の意味でのユニヴァーサルデザインには到達できません。昨年からスタートした「ユニバーサルイベント協会」の「ユニバーサルキャンプin八丈島」の開催に、丹青社としても協力をしていますが、一緒にキャンプに参加したりするなかで、改めて認識したのが“気づき”の重要性でした。

 たとえば「目の見えない人」といっても、生まれつき見えない人、幼少のころに見えなくなった人、青年期に見えなくなった人、高齢になって見えなくなった人など、さまざまな人がいて、それぞれ、できることとできないことが異なります。

 生まれつき目が見えない人に、「何か不自由なことはありませんか」とお聞きすると、「もともと目が見えないから、不自由を感じたことがない」とおっしゃる人もいます。幼少期に目の見えなくなった人というのは、小さいころ見ていた「絵本の世界」が中心となった画像が頭に残っています。また、青年期を過ぎてから目の見えなくなった人は、それまでにさまざまな経験をされている。
 ですから、公共施設でも商業施設でも、施設に入ったときに、何ができて何ができないかというのが、それぞれ異なってきます。
 そうしたことが「個性」としてあるということに気づくこと、つまり“こころの気づき”をもって空間づくりを計画することが「心のユニヴァーサルデザイン」だと考えています。

 たとえば、ある目の見えない人は電車でも、「席を譲ってもらいたいとは思わないけど、席があいているのなら座りたい」という思いがあるそうです。目の見えない人に「この電車はすいていますよ。あなたの前の席があいていますよ」ということを伝えることも大切なのですが、そういうことにはなかなか気がつきません。

 また、健常者に「足が悪くなって車椅子の生活になるのと、耳が聞こえなくなるのと、目が見えなくなるのと、どれが一番なりたくないか」と聞くと「目が見えなくなること」という人がほとんどなのですが、障がい者の方と話をしたとき、「目が見えないのが最も楽だ」とおっしゃる方がいました。つまり、行動範囲でできないことが最も少ないのが、目が見えないことだというのです。

 ユニバーサルキャンプin八丈島のテーマのひとつに「ダイバーシティ(多様性)・コミュニケーション」があり、キャンプでの体験を通して、お互いの違いを知り、その能力に驚いたり、不便さのありかを知ったりするというものです。
 こういうことは、キャンプでなくてもできると思うので、社内研修などの形で広めていきたいと思っています。

 丹青社が目指す「心のユニヴァーサルデザイン」は、その第一歩を完全に踏み出したと思いますが、これは、どこまでいっても終わりはないと思います。

 これからも、さまざまな形での交流を通じて「心のユニヴァーサルデザイン」の、さらなる深化を図っていきたいと思います。

1階入口の正面にインフォメーションを設置
「日経ビジネス」2006年10月2日号と「日経デザイン」2006年10月号に掲載されたユニヴァーサルデザイン企画広告記事

 1993年にカナダで研修していたのですが、「オンタリオサイエンスセンター」の日本人展示デザイナー関本清志さんから彼が開発した文字表示装置の話を聞きました。高齢で耳が遠くなった人を含めると耳の不自由な人は意外と多いので、展示映像のナレーションが聞こえない人が結構いることになる。そこで既存の映像用に文字表示装置を開発したということでした。僕もそれ以来ナレーション付きの展示映像を計画する場合には必ず文字表示を入れるようにしています。

 2004年11月に開館した「国立科学博物館 新館」の展示は、ユニヴァーサルデザインの手法をとりあげるために、いくつかの改善点が出てきました。同館では、展示コーナーごとにタッチパネル式情報端末を設置しましたが、一つは、映像のナレーションを制限し、文字を入れるようにしました。
 二つ目が外国語による解説で、日本語だけでなく、英語と中国語、ハングルの4か国語の表示と、日本語の子ども向けも用意しました。パンフレットも4か国語版あります。

 それから、解説には必ずひらがなのルビを入れました。文化庁の調査では、ローマ字よりひらがなのほうが、日本語が少しわかる外国人には理解しやすいという結果が出ています。また、日本人でも漢字が苦手な人はいますし、ルビを入れることで大人向けの解説を子どもが読むことができるようになる。文章の内容が多少難しくても、興味ある子どもは熱心に読んでいます。

 これまで博物館の解説に使う漢字は「小学5年生で習う程度まで」といった制限をすることが多かったのですが、ルビを入れることで、そうした制限はやめました。その結果「無顎口上綱(むがくこうじょうこう)」や「齧歯類(げっしるい)」といった学名をすべて漢字で表記できるようになりました。難解な漢字をむやみに使うことはありませんが、科学博物館に来たときに研究者はそういう難しい漢字を使っているということを学習することは意味があると思います。

国立科学博物館の視覚障害者用PDA。コンテンツは一般向けと同じだがボタン部に点字が付き、同行者も聞けるようイヤフォーンは2個に
国立科学博物館の視覚障害者用PDA。コンテンツは一般向けと同じだがボタン部に点字が付き、同行者も聞けるようイヤフォーンは2個に

 また同館では、音声と画面表示ができる展示解説用のPDA(携帯情報端末)を導入しています。当初、一般向けと視覚障がい者向けが計画されていたのですが、視覚障がい者の教育をされている方から「視覚障がいがある方もできるだけみんなと同じように楽しみたいと思っている」ということをお聞きしたので、一般用とは別にするのではなく、同じものを使うようにしました。ニッポン放送のベテランアナウンサー、うえやなぎまさひこ氏が展示の情景を説明しながら担当の研究員に質問をしていく対話形式のものです。ラジオには画面がないので、視覚のハードルは晴眼者も障がい者も同じようにある。これを超えるノウハウはテレビより豊富です。

 また丹青社がお手伝いした「千葉市少年自然の家」には、千葉県立中央博物館の大庭照代先生にご指導していただいてつくった世界初の「ソノリウム」があります。これは、鳥の鳴き声など「音(ソノ)」から自然を学習するという施設です。聞くことから入ることによって、かえって感性が研ぎ澄まされるのです。
 その意味で「音の展示」は大切ですし、見えないことを前提としている「ラジオの力」を、ユニヴァーサルデザインにも、もっと活用していくべきだと考えています。


 グラフィックデザインからのユニヴァーサルデザインへの取組ということでは、2007年4月にリニューアルオープンを予定している「国立科学博物館 本館」において、まず、グラフィックパネルの「視線の高さ」ということを新館同様、重視しています。

グラフィックパネルの「文字の大きさ見本」
グラフィックパネルの「文字の大きさ見本」

 グラフィックパネルの高さというのは、これまで、床から1500mmの高さが基準となっていました。しかし、これは健常者の視線の高さであって、これでは車椅子の方はよく見ることができません。ですから今回は、それをぐっと下げて、床から1350mmの高さを基準にパネルの中心をセットするようにしています。
 また、読みやすい「文字の大きさ」というのがあって、海外の事例では、グラフィックパネルと見る人の距離を200で割った距離。つまり、1mでしたら1000÷200=5で、最低でも文字高5mm以上のものが使用されています。日本語の場合、文字の画数が多いので、180で割った大きさを最低ラインに設定し、それを基準に04年11月にオープンした新館で実施しました。

 本館では、さらに、カラーユニヴァーサルデザインに取り組んでいて、グラフィックに使用する色彩については、デザイン上の美しさを追求するのではなく、色覚障害の方の見え方に配慮した配色に注力しています。

 具体的には「色数を極力少なくして識別しやすくする」「色相を変えるだけでなく明度差もつける」「彩度の低いもの同士や原色同士などのような明度差がない組み合わせはなるべく使わない」「明朝体など細い書体は色文字にしない」「折れ線グラフは線の種類や太さなど形状でも識別できるようにする」「棒線グラフや円グラフは色分けだけでなく地紋やハッチも入れて区別する」「凡例はなるべく使わずネームはエリア内に入れるか引き出し線を用いる」といったことです。

 さまざまな情報を色だけで区別し伝えるのではなく、線、パターン、形など複数のデザイン要素を加えることで、わかりやすさが格段に違ってくるのです。

カラーチャートの見え方(上から健常者、第1色盲、第2色盲、第3色盲)
カラーチャートの見え方(上から健常者、第1色盲、第2色盲、第3色盲)

 カラーユニヴァーサルデザインの研究については、東京大学分子細胞生物研究所 助教授の伊藤啓先生と東京慈恵会医科大学DNA医学研究所 室長の岡部正隆先生が、その第一人者です。二人とも第一色覚異常という障がいをお持ちで、NPO法人「カラーユニバーサルデザイン機構」の会員です。私のカラーユニヴァーサルデザインの取組も伊藤先生と岡部先生の研究がベースとなっています。

 カラーユニヴァーサルデザインは、現在は、博物館などの公共施設で先行していますが、今後は、ショップをはじめとした商業施設においても重要になっていくと思います。


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