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report 特集
丹青社が進める社会交流空間におけるユニヴァーサルデザイン インタビュー
丹青社では、約10年近く前から、その空間づくりにおいて、ユニヴァーサルデザインの観点から、安全設計や省エネ設計、経済寸法、健康建材、リユース、リサイクルなどを重視した「環境配慮設計」ということを、お客様にご提案してきましたが、ここ数年、そうしたことに対するお客様の認識が非常に高くなってきているのを感じます。 私どもの提案も、当初はバリアフリーの視点からユニヴァーサルデザインに入り、ハードのユニヴァーサルデザイン、ソフトのユニヴァーサルデザインという方向に進んできました。そして、今後、丹青社が進めていくべきユニヴァーサルデザインの方向性として辿り着いたのが「心のユニヴァーサルデザイン」です。 結局、設計者が頭の中だけで考えているだけでは、本当の意味でのユニヴァーサルデザインには到達できません。昨年からスタートした「ユニバーサルイベント協会」の「ユニバーサルキャンプin八丈島」の開催に、丹青社としても協力をしていますが、一緒にキャンプに参加したりするなかで、改めて認識したのが“気づき”の重要性でした。 たとえば「目の見えない人」といっても、生まれつき見えない人、幼少のころに見えなくなった人、青年期に見えなくなった人、高齢になって見えなくなった人など、さまざまな人がいて、それぞれ、できることとできないことが異なります。 生まれつき目が見えない人に、「何か不自由なことはありませんか」とお聞きすると、「もともと目が見えないから、不自由を感じたことがない」とおっしゃる人もいます。幼少期に目の見えなくなった人というのは、小さいころ見ていた「絵本の世界」が中心となった画像が頭に残っています。また、青年期を過ぎてから目の見えなくなった人は、それまでにさまざまな経験をされている。 たとえば、ある目の見えない人は電車でも、「席を譲ってもらいたいとは思わないけど、席があいているのなら座りたい」という思いがあるそうです。目の見えない人に「この電車はすいていますよ。あなたの前の席があいていますよ」ということを伝えることも大切なのですが、そういうことにはなかなか気がつきません。 また、健常者に「足が悪くなって車椅子の生活になるのと、耳が聞こえなくなるのと、目が見えなくなるのと、どれが一番なりたくないか」と聞くと「目が見えなくなること」という人がほとんどなのですが、障がい者の方と話をしたとき、「目が見えないのが最も楽だ」とおっしゃる方がいました。つまり、行動範囲でできないことが最も少ないのが、目が見えないことだというのです。 ユニバーサルキャンプin八丈島のテーマのひとつに「ダイバーシティ(多様性)・コミュニケーション」があり、キャンプでの体験を通して、お互いの違いを知り、その能力に驚いたり、不便さのありかを知ったりするというものです。 丹青社が目指す「心のユニヴァーサルデザイン」は、その第一歩を完全に踏み出したと思いますが、これは、どこまでいっても終わりはないと思います。 これからも、さまざまな形での交流を通じて「心のユニヴァーサルデザイン」の、さらなる深化を図っていきたいと思います。
1993年にカナダで研修していたのですが、「オンタリオサイエンスセンター」の日本人展示デザイナー関本清志さんから彼が開発した文字表示装置の話を聞きました。高齢で耳が遠くなった人を含めると耳の不自由な人は意外と多いので、展示映像のナレーションが聞こえない人が結構いることになる。そこで既存の映像用に文字表示装置を開発したということでした。僕もそれ以来ナレーション付きの展示映像を計画する場合には必ず文字表示を入れるようにしています。 2004年11月に開館した「国立科学博物館 新館」の展示は、ユニヴァーサルデザインの手法をとりあげるために、いくつかの改善点が出てきました。同館では、展示コーナーごとにタッチパネル式情報端末を設置しましたが、一つは、映像のナレーションを制限し、文字を入れるようにしました。 それから、解説には必ずひらがなのルビを入れました。文化庁の調査では、ローマ字よりひらがなのほうが、日本語が少しわかる外国人には理解しやすいという結果が出ています。また、日本人でも漢字が苦手な人はいますし、ルビを入れることで大人向けの解説を子どもが読むことができるようになる。文章の内容が多少難しくても、興味ある子どもは熱心に読んでいます。 これまで博物館の解説に使う漢字は「小学5年生で習う程度まで」といった制限をすることが多かったのですが、ルビを入れることで、そうした制限はやめました。その結果「無顎口上綱(むがくこうじょうこう)」や「齧歯類(げっしるい)」といった学名をすべて漢字で表記できるようになりました。難解な漢字をむやみに使うことはありませんが、科学博物館に来たときに研究者はそういう難しい漢字を使っているということを学習することは意味があると思います。
また丹青社がお手伝いした「千葉市少年自然の家」には、千葉県立中央博物館の大庭照代先生にご指導していただいてつくった世界初の「ソノリウム」があります。これは、鳥の鳴き声など「音(ソノ)」から自然を学習するという施設です。聞くことから入ることによって、かえって感性が研ぎ澄まされるのです。
グラフィックデザインからのユニヴァーサルデザインへの取組ということでは、2007年4月にリニューアルオープンを予定している「国立科学博物館 本館」において、まず、グラフィックパネルの「視線の高さ」ということを新館同様、重視しています。
カラーユニヴァーサルデザインの研究については、東京大学分子細胞生物研究所 助教授の伊藤啓先生と東京慈恵会医科大学DNA医学研究所 室長の岡部正隆先生が、その第一人者です。二人とも第一色覚異常という障がいをお持ちで、NPO法人「カラーユニバーサルデザイン機構」の会員です。私のカラーユニヴァーサルデザインの取組も伊藤先生と岡部先生の研究がベースとなっています。 カラーユニヴァーサルデザインは、現在は、博物館などの公共施設で先行していますが、今後は、ショップをはじめとした商業施設においても重要になっていくと思います。 このページに掲載の内容、写真などの転用をお断りします。 copyright 2006 tanseisha.co.,ltd. all right reserved. |