| HOME > tansei.net24号 > THE SC [連載第15回] |
「進化する鉄道」をコンセプトに"鉄道と街づくりのあり方"を提案
首都圏新都市鉄道(株) 駅前に"街の顔"となる商業施設ができることで 1985年7月に運輸政策審議会答申で「常磐新線」が、「都市交通対策上、喫緊(ルビ:きっきん)の課題」と位置づけられてから20年。2005年8月24日に開通した「つくばエクスプレス(TX)」は、東京都心部の「秋葉原駅」と茨城県つくば市の「つくば駅」を最速45分で結ぶ。この新鉄道路線を運行する首都圏新都市鉄道(株)(MIR)は、『環境・人間・地域と連携し、進化し続ける鉄道』をコンセプトに、新世紀の鉄道と街づくりのあり方を提案し、TXが走る首都圏北東軸の発展の促進に力を注いでいる先進的な鉄道会社として知られている。MIRはTXの整備を通じて、激変する21世紀社会に適応する新たな生活都市空間の創造と沿線地域の活性化を促進する。
鉄道の整備を通じて“安全・安心な暮らし”を
木村 もともとTXのプロジェクトは、鉄道の整備と沿線の街づくりを一体的に進めるもので、各駅前では区画整理が行なわれています。ですから、駅前に街の顔となるような商業施設が形成されれば、沿線に「住みよい街」ができ、それによって私どもの鉄道も一緒に伸びていく、というのが当社の基本的な考え方です。 私どもの活動の場は駅を中心とした高架下が中心で線的な展開にとどまりますが、駅前に開発される商業施設とも連動・連携して、地域全体に貢献していくことが重要だと考えています。 具体的には、高架下などを使って商業施設開発を行うほか、駐車場や駐輪場、あるいはインフォメーションセンターなどを開設していきます。それぞれの駅を中心とする街全体に対して、私どもの施設が呼び水となり、街の顔がつくられ、人の流れができてくればいいと願っています。
木村 鉄道整備と街づくりを同時に進めようというプロジェクトですので、沿線の市区町村や県とともに協議会を設立しています。それぞれの地方公共団体が、その地域に進出する商業デベロッパーの立地を調整していますので、協議会でそういった情報を絶えずいただきながら、開発に関する意見交換を活発に行っています。 区画整理を実施している主体は、主に地方公共団体と都市機構です。特に都市機構とは、プロジェクトの当初から、さまざまな問題について協議してまいりました。たとえば、駅を利用されるお客様が混乱しないために、駅と街のデザインシステムを統一するということです。つまり、案内表示などについて、駅を降りた途端にそこでプツンと途切れるのではなく、シームレスに街の中に入っていけるようにする。あるいは、街から自然に駅の中へ飛び込んでいけるように、デザイン面での連携を進めてきました。
木村 プロジェクトの初期段階では、この鉄道は「常磐新線」という名称で計画されていました。しかし、多くの方から、この鉄道と地域が関心をもたれ、「乗ってみたい」「住んでみたい」と思うようになっていただくには、新しいイメージを創造するような名称が必要だと考え、「つくばエクスプレス」という路線名が誕生したのです。 この鉄道の一極には「つくば」という世界に冠たる科学技術都市があり、その対極にはITタウンとして国際的に知名度の高い「秋葉原」という街があります。これらを含めて、沿線にどんなポテンシャルがあるのか、そして鉄道をご利用されるお客様がどのような点に魅力を感じるかについて議論を重ねました。 現代はIT化がどんどん進んでいく一方で、高齢社会が進み、「落ち着いた暮らし」「安心できる暮らし」というのが求められています。したがって、この地域の街づくりに必要なものは、高齢社会への対応と、地球規模で起こっている環境問題への対応、そして情報化への対応といったものを、「点」ではなく、「線」でもなく、「面」として捉え、トータルに実現していくことです。そのベースにあるのは「安全」「安心」な暮らしができるということです。そういうものを私どもの鉄道も目指しますし、県や都市機構などにもお願いしてきました。
環境を重視しつつ
木村 電車でインパクトのあることをしようということで、デザインにもこだわりました。車体の顔に特色を持たせ、外見はスピード感と先進性を感じさせるとともに、車内は落ち着いて乗っていただける、安全でくつろげる環境を目指しました。 安全面では、踏切が一つもないことと、駅にホームドアがついているということです。これらは鉄道施設の技術水準以前のこととして偶発事故を無くす効果をもっています。システム的には、ATO(自動列車運転装置)やATC(自動列車制御装置)によって、点ではなく全線でスピードを適切にコントロールしながら運行しています。その意味では、現在考えられる最高水準の技術レベルをもって安全対策をとっています。 環境面については、車体はアルミで軽いのですが、リサイクルが可能なものです。また、座席などの素材も、ほとんどは再生可能なものを使っています。さらに、車内環境をよくするため、騒音・振動を非常に少なくしました。
木村 八潮については、八潮市で初めての鉄道駅でしたので、地元の期待も非常に大きいものがありました。しかし、いざ運行を始めたとしても、やはり駅に何もなければ人は集まってきません。そこで、やや先行的ではあるものの「TXアベニュー八潮」を05年8月24日、TXの開業と同時にオープンしました。幸い八潮駅前には、「フレスポ八潮」という大規模な商業施設が今年4月にオープンしましたので、それが相乗効果となって、日増しに人が増えてきています。 一方、守谷という町は、もともと古い町並みがあったところを区画整理で置き換えているもので、いまも成長している都市です。しかも、関東鉄道との乗換駅で、相当数のお客様が見込める駅です。ただ、古い町の中に新しい鉄道が入ってくるということですので、古い町のよさと新しい鉄道のイメージをうまくミックスして調和を図ろうと考えました。 「TXアベニュー守谷」は2階建となっていまして、1階には地元の特産品を売る店、リフォーム店、銀行のアンテナショップなどが入り、2階はフードコートになっています。このフードコートを中心とするアベニューがひとつの契機となり、人の流れが周りに波及していくのではないかと考えています。
木村 流山おおたかの森駅は東武野田線との結節点で、秋葉原駅や北千住駅といった都内のターミナル駅を除けば、乗降客数が沿線で最も多くなると期待しています。
わが国における「鉄道と街づくり」ということを考えると、東急田園都市線や、古くは阪急阪神線といった先進事例がありますが、TXの沿線地域は、それを超えるものにしたいと考えています。単に鉄道と沿線開発をステップ・バイ・ステップでやっていくのではなく、できあがったものがトータルで新しい意味をもつような、そういうモデルケースをつくっていきたいですね。 たとえば、子育てをしながら、あるいはお年寄りを抱えながら、若い人たちも安心して暮らしていける街ということです。そうすると何が必要かというと、託児所とか老人のケア施設とか、手軽に安心して通える病院です。商業施設なら、健康的な食物や安全な食材といった食に対する多様なニーズに応えられる施設です。そういった「安全」「安心」を無意識のうちに感じられるものがうまくミックスしていて、なおかつ利益を上げられるようなものを考えています。
木村 はい。環境を重視して、なおかつ古いだけではなく新しさを持った街をつくるということを、市に対してもお願いしましたし、私どもも一所懸命そのサポートをしたいと思っています。当社が運営する商業施設はスペース的には限られていますが、三井不動産(株)さんが柏の葉駅前に11月22日オープンした「ららぽーと柏の葉」や、東神開発(株)さんが「流山おおたかの森駅」前に来春オープンされる予定のショッピングセンターなど、TXの沿線で開発される大型商業施設とも連携を図っていくことで、街づくりの一助になれたらいいですね。
私どもの商業施設を
木村 中心市街地の活性化や再生は必要なことですし、取り組んでいくべき課題であると思います。ただ、いまは一時的に都心に人口が増えていますが、これから増大が予想されるこの沿線地域のような郊外に住む人の場合、よほど魅力的なものがそこになければ中心市街地には行くことはないでしょう。ゆったりくつろいで買い物をしたいのに、わざわざ雑踏の中に入る人はいないと思います。単に規制をかけるだけでは、中心市街地の再生や活性化は実現しないと思います。 TXのプロジェクトを立ち上げるときに、金融機関を回って説明したのですが、その際、「こんなに採算性の低いプロジェクトはない」と言われました。しかし、都心、都市近郊、郊外など、住む場所によって生活行動は大きく変わってきます。私どもの鉄道は、その選択肢を広げ、多様なメニューを提供する場であると考えます。長期的に持続する街づくりにおいて、私どもの商業施設が街の核となるような“交流の場”になってほしいという想いがあります。
木村 はい。せっかく来たのだから、お茶でも飲んでいこうかとか、そういう要素が商業施設には重要だと思っています。いま鉄道会社が苦しんでいるのは、お客様に電車に乗ってもらえないということです。でも、実際に乗ってみなければ鉄道のよさはわかりません。ですからTXでは、誰でも気軽に乗っていただけるように、初乗り運賃を160円に設定しています。これからも、電車に乗ってもらえる契機となるものをつくっていくことが重要だと考えています。
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