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同時誕生!2つの文学館
「たけくらべ」の舞台となった竜泉の地に新装オープン

 台東区立 一葉記念館


 台東区が進めていた明治の女流作家、樋口一葉の資料館「台東区立一葉記念館」の建替え工事が終了し、新記念館が2006年11月1日にオープンした。
 「一葉記念館」は、樋口一葉が荒物雑貨・駄菓子店を営み、代表作「たけくらべ」の舞台となった「龍泉寺町」の人々の「一葉の文学業績を後世に遺したい」との熱意に動かされ、昭和36(1961)年に台東区が開設したもので、女流文学者の単独文学館としては、わが国初のものであった。
  しかし、開館から40年余を経て、旧記念館の老朽化が進んだことから、台東区では、同館の改築を決定。05年2月から解体に着手し、その跡地に新館の建設を進めていた。

 RC造・地上3階地下1階建の新記念館は、延床面積約860m2で、1階にギャラリー、ライブラリー、グッズコーナーなど、2階に展示室2室、3階に展示室1室と収蔵庫、地下1階に研修室などを配置。展示スペースは旧記念館の約2倍となった。

40年ぶりに新装なった一葉記念館。周辺環境との調和を図るため建物は地上3階建にとどめた
40年ぶりに新装なった一葉記念館。周辺環境との調和を図るため建物は地上3階建にとどめた

 展示内容も、旧記念館が明治29(1896)年に肺結核で亡くなるまでの24年間の短い生涯を中心としたものであったのに対し、新記念館では、甲斐国山梨郡中萩原村(現・山梨県甲府市)で生まれ、駆け落ち同然に江戸に出てきた「一葉の両親」の時代から現代における一葉作品の評価まで幅を拡大。

 処女作「闇桜」原稿、推敲の跡から一葉の苦悩が忍ばれる「たけくらべ」草稿、小説の師である半井桃水宛の書簡、龍泉寺町で商売を営んだときの「仕入れ帳」等の資料や、一葉が着ていた黄八丈の着物などの遺品、一葉が住んでいたころの龍泉寺町の家並み風景の模型などを展示。

 また、一葉に関する図書コーナーや収蔵品検索システムを導入するなど、一葉の生涯や作品について知ることができる資料の充実を図った。

 さらに台東区では一葉記念館の改築に合わせ、隣接する一葉記念公園のリニューアルを実施。記念館、前面道路と一体的な空間がつくりだされ、「一葉が生きた時代」の下町の路地空間を現代風に再現。園内には一葉にゆかりのある草木を植栽しているほか、旧公園・記念館にあった石碑や人力車を模したベンチなどを配置している。

1階のエントランスギャラリーは“下町の町並み”を再現 2階に設置された「展示室1」と「展示室2」では自筆原稿や遺品等の展示により一葉の24年の生涯をわかりやすく紹介。「父母の時代」から「小説家へのこころざし」までを解説する「展示室1」では、一葉の文机や竹筒の筆入れ、硯箱の複製も展示する 2階に設置された「展示室1」と「展示室2」では自筆原稿や遺品等の展示により一葉の24年の生涯をわかりやすく紹介。「父母の時代」から「小説家へのこころざし」までを解説する「展示室1」では、一葉の文机や竹筒の筆入れ、硯箱の複製も展示する
(左)●1階のエントランスギャラリーは“下町の町並み”を再現
(中・右)●2階に設置された「展示室1」と「展示室2」では自筆原稿や遺品等の展示により一葉の24年の生涯をわかりやすく紹介。「父母の時代」から「小説家へのこころざし」までを解説する「展示室1」では、一葉の文机や竹筒の筆入れ、硯箱の複製も展示する

「展示室2」では、一葉の「下谷龍泉寺町時代」から「終焉」、さらに没後の「顕彰された一葉」までを紹介。明治26〜27年に居を構えた下谷区龍泉寺町大音字通り(現・茶屋町通り)の家並風景をジオラマで再現 「展示室2」では、一葉の「下谷龍泉寺町時代」から「終焉」、さらに没後の「顕彰された一葉」までを紹介。明治26〜27年に居を構えた下谷区龍泉寺町大音字通り(現・茶屋町通り)の家並風景をジオラマで再現
「展示室2」では、一葉の「下谷龍泉寺町時代」から「終焉」、さらに没後の「顕彰された一葉」までを紹介。明治26〜27年に居を構えた下谷区龍泉寺町大音字通り(現・茶屋町通り)の家並風景をジオラマで再現

3階には「展示室3」と「収蔵庫」を設置。「展示室3」では、「たけくらべ」に登場する人物模型やその他の代表作に関連した風俗資料等を展示 3階には「展示室3」と「収蔵庫」を設置。「展示室3」では、「たけくらべ」に登場する人物模型やその他の代表作に関連した風俗資料等を展示
3階には「展示室3」と「収蔵庫」を設置。「展示室3」では、「たけくらべ」に登場する人物模型やその他の代表作に関連した風俗資料等を展示

1階の「ライブラリー」と「ギャラリー」では、一葉に関連する書籍や収蔵品検索システムを配置。記念館が製作した一葉に関する映像も上映している 1階に配された「グッズコーナー」では、「資料目録」「一葉筆和歌(短冊)」「一筆箋」「栞」「絵葉書」「レターセット」などの一葉グッズを販売。バリアフリーに配慮した建物となった新記念館には、車椅子の来館者も多い (財)台東区芸術文化財団では、毎年、11月21日から一葉忌(樋口一葉の命日)の23日までの3日間、一葉記念館と記念館前の「一葉記念公園」を使って「一葉祭」を開催している。記念館は、例年、23日に限り入館料を無料としているが、リニューアルオープン初年の今年は3日間とも入館無料とし、“新装なった記念館”のアピールに努めた
(左)●1階の「ライブラリー」と「ギャラリー」では、一葉に関連する書籍や収蔵品検索システムを配置。記念館が製作した一葉に関する映像も上映している
(中)●1階に配された「グッズコーナー」では、「資料目録」「一葉筆和歌(短冊)」「一筆箋」「栞」「絵葉書」「レターセット」などの一葉グッズを販売。バリアフリーに配慮した建物となった新記念館には、車椅子の来館者も多い
(右)●(財)台東区芸術文化財団では、毎年、11月21日から一葉忌(樋口一葉の命日)の23日までの3日間、一葉記念館と記念館前の「一葉記念公園」を使って「一葉祭」を開催している。記念館は、例年、23日に限り入館料を無料としているが、リニューアルオープン初年の今年は3日間とも入館無料とし、“新装なった記念館”のアピールに努めた

 

台東区立一葉記念館
館長

林 俊和

多くの子どもたちが“少年少女の時代”に
「樋口一葉に触れる機会」を提供していきたい

林氏

 一葉記念館が開館したのは昭和36年5月ですが、もともとは、樋口一葉が龍泉寺町に住んでいたことを知った菊池寛が、一葉の旧居があったことを知らしめるとともに一葉の文学業績を顕彰するため記念碑の建立を提唱、それに地元が呼応して、昭和11年7月に「一葉記念碑」が建てられました。この記念碑は昭和20年3月の東京大空襲で焼失してしまいますが、龍泉寺町の人たちが「一葉協賛会」を結成し、昭和24年3月に記念碑を再建します。

 その後、協賛会は昭和26年に「一葉女史たけくらべ碑」を、昭和35年には「樋口一葉旧居跡碑」を建立。そして、集大成の事業として樋口一葉の記念館の開設を計画。募金を募って用地を買収し、それを台東区に寄附して記念館の建設を要請。区では、そうした地元住民の熱意に応えるべく記念館の建設を決定しました。

 それから40数年が経ち、建物の老朽化が進んだことに加え、収蔵庫の収容量など、施設的にも現在では不足している部分があることから、何年も前から改築の話がありましたが、2002年に一葉が「新五千円札の肖像」に決定したのがきっかけとなって、旧記念館を取り壊し、同じ場所に新記念館を建設することが決まりました。

 旧記念館に比べ新記念館は、展示スペースが約2倍となりましたが、展示点数は旧記念館のときとそれほど変わらず、そのぶんお客様にゆったりとご覧いただけるようにしています。また、旧記念館は階段を上らなければならなかったので、車椅子の方への対応が難しかったのですが、新記念館は当然のことながらバリアフリーとなっています。

“一葉ファン”は高齢の女性の方が圧倒的に多く、一葉記念館の来館者もそうした層が多いのですが、新記念館の開館を機に、もっと子どもたちが来たくなるような館にしていきたいと考えています。いま館にお越しになられている方々は、みな少年少女時代に一葉作品に触れた経験があり、結婚して子どもが産まれ、そしてなんらかのきっかけでまた一葉に触れて、この館のファンになられるというのがほとんどです。

 待っているだけではダメなので、来年を準備期間に再来年からは学芸員による出張授業を、希望する区内の小中学校で行っていこうと考えています。また校外学習などについても、積極的に対応していきたい。これだけでは、まだ十分ではないでしょうが、そうしたことを行っていくだけでも、「たけくらべ」の舞台となった“竜泉の地”に、この館がある意義があると思います。


データ 2006年12月
[所在地] 東京都台東区竜泉3-18-4
[オープン] 2006年11月1日
[事業主体] 台東区
[運営主体] (財)台東区芸術文化財団
[構造・規模] RC造・地上3階地下1階建
[延床面積] 約860m2
[施設構成] 展示室1・2・3、エントランスギャラリー、ギャラリー、ライブラリー、グッズコーナー、研修室、収蔵庫
[開館時間] 9:00〜16:30
[休館日] 月曜日(休日の場合は翌日)、年末年始、特別整理期間
[入館料] 一般300円(200円)、小中学生100円(50円)
※( )は団体(20名以上)
[URL] http://www.taitocity.net/taito/ichiyo
 

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