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シェルガーデン
飯田 晴雄 氏/ (株)シェルガーデン
代表取締役社長 『食』を通じて楽しさや喜びを感じ、健康を実現しようとする都市生活者のために“安心安全”“旬のおいしさ”にあくまでもこだわりながら、国内はもとより世界各国からバラエティ溢れる食品、食材をいち早く導入し、きめ細かなサービスとともに生活者に提供することをミッションに掲げる(株)シェルガーデン。 1966年に、ガソリンスタンドに併設する形で、現在の「ザ・ガーデン自由が丘」の原型となる、当時としては斬新な輸入食品中心のスーパーマーケットをスタート。その後、白金台、広尾などの路面店展開、池袋店を皮切りとした西武百貨店やそごうへの出店、駅ビルヘの出店などにより、さまざまな機能・装置を備えたライフスタイル提案型の『高質食品スーパーマーケット』として力強い成長を続けている。 ガソリンスタンドの多角化で併設された
飯田 東京の自由が丘で老舗の油問屋「島商」が、1956年からシェル石油のガソリンスタンドを経営していたのですが、66年に英国から来ていたシェル石油の人が、その立地を見て多角化することをアドバイスしました。ガソリンスタンドに来た人が、お茶を飲んだり、食事をしたり、買物をしたりできるようにしたらいいということで、当時としては斬新な輸入食品中心のスーパーとカフェをガソリンスタンドの隣にシェル石油・島商・国分食品の出資でオープンしたのです。それでシェル石油の「シェル」をとって「シェルガーデン」としたのです。
飯田 「シェルガーデン」は「紀ノ国屋」や「明治屋」などとともにいわゆる高級スーパーマーケットの代名詞となりましたが、その後『流通革命』の時代となって大手スーパーが台頭してくると、経営的に苦しい時代が続きました。 そうしたなか、80年ごろに、当時のセゾングループとシェル石油との間で、共同事業の話が持ち上がり、六本木のシェル石油のガソリンスタンドの跡地にセゾンがメディアショップ「六本木WAVE」を出店するとともに、シェルガーデンに西友が資本参加して、立て直しが図られることになりました。私は83〜88年の5年間、運営の責任者として、西友から派遣されたのです。
飯田 驚きの連続でしたね。それまでは「日本は1億総中流の均一社会」ですから、醤油はキッコーマンを置いておけばよいと思っていましたが、シェルガーデンでは、高いものでもこだわりがあるものが売れていく。精肉の売上げ構成比は通常のスーパーでは約10%ですが、ここでは約30%もある。100g1000円、1枚2000〜3000円のステーキ肉がどんどん売れていくのです。5万円、6万円分をまとめて買うお客様もいて、本当に驚きました。
飯田 西友にはいまでも愛着があるのですが、いろいろな事情があって、身の振り方を考えていたときに、シェルガーデンからお話をいただき、これも縁だと思って社長に就任しました。
スーパーマーケットは
飯田 経営的にどうなのかということは現地の事情がよくわかりませんので言及できませんが、「ホールフーズ」といえば「自然食品」「有機農産物」で確固たる地位を築いていますが、タイムワーナーの店舗は、従来の店舗とは異なるイメージをアピールし、店舗もスケールアップして出店したことで受け入れられたのだと思います。従来の店舗に比べると、品揃えの幅も広くなり、「自然食品」「有機農産物」の特殊な店から一歩抜け出た印象がします。
飯田 スーパーマーケットというのは、「生い立ち」と、「マーケット」と、「経営者の理念」の3つで店舗のスタイルが決まります。したがって、どれが良くてどれが悪いということではありません。たとえば、「シタレラ」は鮮魚からスタートした。そうした生い立ちを持ち、店舗を標準化、多店舗化して事業を拡大していく。そういう企業と、「ディーン&デルーガ」のように個店主義のところとは、自ずと方向性が異なります。 当然、マーケットにも左右されますが、経営者がどういう店にしたいのか、どのような生い立ちなのか、どういうところが得意なのか、というようなところから、それぞれのスタイルができあがってきたのだと思います。 スーパーマーケットをビジネスとして考えると、どうしても方向性が似てきてしまいます。精肉が強いところは、それでは鮮魚も強くしようというように考えます。しかし、そうすると逆にお店の性格があいまいになって、ぼやけてしまいます。お客様から見て「あそこはこうだね」と語られる特徴的なものを持ってないと強くはなれません。そういう意味では、『意図的にアンバランス』にしていくことが必要だと思います。 青果を例にとると、普通なら野菜と果物のバランスを考えますが、あえて果物に特化する。そうすると、果物が豊富で旬な商品が揃い、多少高くても、どれを買っても間違いがないという評価を得ることができます。 従来の流通ビジネスの視点から見ると「野菜が弱い」ということになりますが、そうではなく果物の強いところにフォーカスして評価する。野菜についてもきちんとフォローしますが、それ以上にお客様の果物への期待にすべて応える。そういう意識がないと、平均的な品揃えの「特徴のない店」になってしまいます。 悪いところ、弱いところをなくしていくと、平均値が上がり、買いやすい店になって、経営も安定しますが、他店と違うイメージは打ち出せません。お客様がさまざまなカテゴリーに不満を持たれず、しかも、ある特定の分野においてファンをつくる。不得意なものを得意にしていくのではなく、得意なものを伸ばしていくことで不得意なものも解消される。自分自身に日々言い聞かせて、経営していきたい。経営的には不得意分野をなくしたほうが楽なのですが、それでは差別化はできません。
同じ土俵で闘っては大手スーパーにかなわない
飯田 全国の売れ筋商品を上から順番に揃えていったら、どの店も同じになってしまいます。そうなると、店舗オペレーションの標準化や、効率的な物流によってローコスト化を実現し、圧倒的なバイイングパワーをもつ大手スーパーに勝てるわけがありません。同じ土俵で闘えば負けるに決まっています。 ではどうしたらいいかといいますと、お客様から見て「ザ・ガーデンは、大手スーパーのお店とはここが違う」というものをもつことです。たとえば「ザ・ガーデン」のお店には楽しさがある、提案がある、安心感がある。「ザ・ガーデン」に行ったら、他の店とは異なるものがある、品揃えにはっきりとした考えが感じられて深さがある、そういうものがないと、大手スーパーには勝てません。標準化とスペシャリティの狭間の“ニッチマーケット”を狙っていくことが重要だと考えています。
飯田 売上が縮小していくなかで、全体の売場面積は増えて、競争は厳しくなっています。そうなるとコスト、人件費を減らして利益を出そうとする。人が減って売場にいなくなると、店の賑いもなくなる。 それでは、どうしたらいいのかということですが、現在の人件費構造では、以前のような売場は維持できません。そこで、鮮魚や青果では売場に作業スペースを設けてお客様とふれあう試みも出てきている。米国ではセルフサービスの売場が大半ですが、日本の市場は特殊で、こうしたことが求められています。レジでも、お客様と会話を交わすふれあいが求められています。 いま問われているのは、まさにこうしたことです。大手チェーンでは、そこに消費者のニーズとのミスマッチが生まれているのではないのでしょうか。単なるコスト改善だけではないのだと思います。
飯田 自由が丘店は売場面積が174坪しかありません。このままでは十分ではなく、300〜350坪は必要です。それと駐車場のスペースも現在の1・5倍は必要ですので、なんとか増床したいと思います。売場については、生鮮・デリカ部門を中心に、つくっている人や売っている人の「顔が見える」スタイルに変えていきたいと考えています。セルフセレクションを基本に、お客様と交流ができ、相談にも応じられるような態勢を整えていきたいですね。
負の遺産の処理は完了。
飯田 西友時代に尊敬している上司がおりまして、「あの人ならどう考えるか」ということを判断するときに思いをめぐらすことはあります。
たとえば、自由が丘店ではどうするのか、個々の売場ではどうなるのか、バラ色の戦略でも、お客様のためにならないことは、やってはいけません。 何か方針を決めるときは、一人ひとりが、一つひとつの売場がどう変わるのかを具体的に考える。こういうふうに私はこの言葉を理解しています。 小売業の立て直しに「絶対的に正しい」というやり方はありません。たとえば手術しなければならないところがたくさんあるからといって、手術に耐えられるだけの体力のない人に、一度にさまざまな手術をしたら死んでしまいます。一度に大手術をするのではなく、体力の状況に応じて、いくつかの手術を順番に行っていかねばなりません。 やり方にも順番があるのです。私は、いまでも92年に日本の新聞に掲載されたサム・ウォルトンを紹介した記事を手帳に貼っています。サム・ウォルトンは、本当に素晴らしいと思います。
飯田 社長に就任してから1年半が経ち、ようやく過去の負の遺産も処理できました。ですから今年度の下期からは、新たなチャレンジのフレームづくりに取りかかります。来期からの次に向けたステップに向け、具体的にいま何をしなければならないのかを洗い出し、「人」「施設」「商品」についてのチャレンジをしていきたいと考えています。
関連サイト : ザ・ガーデン自由が丘
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