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HOME > tansei.net22号 > THE SC [連載第13回]
デベロッパーの最大の使命は不動産の再有効利用

東京建物(株)
常務取締役 名古屋支店担当兼
都市開発事業本部長  猿田 明里
聞き手/ (株)丹青社 営業開発センター副センター長 長谷川吉男

商業施設は「楽しい」とか「快適」ということが
重要な要素です



 東京建物(株)はこのほど、東京都墨田区のJR錦糸町駅北口から徒歩5分に位置する旧精工舎の工場跡地に大型複合施設「olinas」(オリナス)を開設した。オフィス、マンション、商業施設からなる同施設は、『産業・文化・娯楽拠点として発展するまち』として東京都が策定した「錦糸町・亀戸副都心」の核であり、同社のこれまでの都市開発、商業施設開発における実績とノウハウの集大成といえる大型都市開発事業である。

オリナスモール外観 オリナスモールエントランス吹抜 オリナス全体
左●オリナスモール外観
中●オリナスモールエントランス吹抜
右●オリナス全体

 

複合開発だけでなく
RSCやNSCなど
SC単独の開発にも取り組んでいきます

−貴社は、これまでオフィスや住宅を主体にデベロッパー事業を展開されてきましたが、近年は、商業施設開発にも積極的に取り組んでおられますね。商業施設開発についての基本的な考え方についてお聞かせください。

猿田 私どもは小売業ではありませんので、あくまでもデベロッパー事業の中での商業施設開発ということが基本です。デベロッパーの最大の使命は、不動産の最有効利用ということだと思いますが、近年、工場跡地など一定規模の面積を有する敷地を有効利用しようとする場合、複合開発という形が望まれるケースが増え、その場合、「集客」というテーマが出てくるわけです。言葉を換えて言うと、これまではデベロップメントで終わっていたものが、その後のホスピタリティなどにも目が向けられてきているということです。

 都市開発事業と並ぶ当社の柱の一つとして住宅事業がありますが、住宅も大規模になると地域との共生のため商業施設が必要となってきます。住宅の方々や周辺地域の方々へのサービスとして積極的に商業施設を導入する必要も生まれます。つまり、東京建物が行うデベロッパー事業全般において商業施設の開発ということが大きく関わってくるわけです。

 また昨年10月には、商業施設専門のプロパティマネジメント会社「プライムプレイス」を設立し、商業施設がオープンした後も、その運営に携わっていくなど、商業施設の開発・運営にトータルで関わっていきたいと考えております。複合開発だけでなく広域商圏型ショッピングセンター(RSC)や近隣商圏型ショッピングセンター(NSC)の開発にも取り組んでいきたいと思います。

 

「olinas」では
『新たな都市型RSC』の創出を目指し
これまでにないMDの構築に取り組みました

長谷川−東京・錦糸町で進められていた大型複合施設「olinas」が、3月30日に竣工、専門店が集積した「olinasモール」と大型店舗を収容する「olinasコア」からなる商業施設が4月20日にオープンされました。核店舗がGMSではないということが大きな特徴ですが、「olinas」の商業ゾーンにおけるテナントリーシングに関する基本的な考え方をお聞かせください。

猿田 これまでのRSCは、核店舗のGMS(総合スーパー)と専門店モールとで機能と魅力を補完しあうというのがスタンダードな形でした。「olinas」の開発が1997年に「東京リ・デザイン」のプロジェクト名でスタートした当初は、スタンダードな形も含め、さまざまな開発の形態を構想しました。しかし、当時は、GMSが業態の変革を求められている状況でした。

 その一方で、東京建物では神奈川県川崎市の川崎駅北口地区に2003年9月にオープンした大型商業ビル「DICE」を手がけましたが、同施設はシネコンや家電量販店などのパワーテナントを集積することで、高い集客率を維持しています。ですから、その立地に最もマッチしたもの、グレード感のあるものを採り入れれば、GMSを核にしなくても集客を上げることができるという確信もありました。そうしたことから、「コア」の4つのフロアごとに、それぞれ核店舗を導入する形にしました。

 GMSを核店舗とするRSCであれば、GMSの運営は基本的に出店企業に任せ、SCの運営企業はモールを中心に運営すればよいのですが、「olinas」は核店舗を各フロアに入れているので、運営面では全体を見なければならず、運営企業の業務量は非常に大きくなります。それだけリスクもありますが、新しい形のMD構築を進めようと前向きに取り組みました。

−施設全体のコンセプトはどのようなものでしょうか。

猿田 この商業施設を開発するためにさまざまな商業施設を視察しましたが、そこで気がついたのは、東京の都心部にショッピングモールがないということです。最近は郊外の大型ショッピングセンターに出かける人が多い。逆に都心は、日用品で欲しものがあってもなかなか手頃な店がなく、休みの日に気軽に家族で買い物に出かけるところもありません。「olinas」の開発では『新たな都市型RSC』を創りたいと考えました。

 しかも、周辺の錦糸町・亀戸地区にアルカキット錦糸町や丸井、東京楽天地、サンストリート亀戸など多数の商業施設があるほか、日本橋や銀座などの中心繁華街も至近です。そうした立地環境を踏まえ、私どもは都市型百貨店と周辺の商業施設との中間に位置するようなMDコンセプトを立て、テナントミックスを実施しようと考えました。

 また「コア」と「モール」については、MDが互いに連動するように考えました。各階ごとにフロアコンセプトを設定、「コア」には、地階に「東急ストア」、1階に「コムサストア」、2階に「島忠」、3階に「ベビーザらス」と、コンセプトに則った形で、パワーテナントを誘致しました。

−顧客ターゲットは、どのような層を中心に考えていますか。

猿田 親子3世代、つまりオールターゲットです。これはマーケットを分析し、周辺に住まわれる団塊の世代とそのジュニア、そしてお孫さんというファミリーが増えてきていることから設定したものです。

 たとえば3階は、ベビー総合専門店の「ベビーザらス」が核店舗ですが、フロア全体としてはファミリー層をターゲットにレディスからメンズまでオールターゲットのファッションを揃えています。また2階は、家具・インテリアの「島忠」を核にしながらモールにはさまざまな雑貨の専門店を集積、1階はコムサストアを核にカジュアルなテイストでまとめています。

 RSCで4層となると、上層階に誘客するのは、なかなか難しい面があります。それを克服する意味でもフロアのコンセプトをしっかり守っていこうということでリーシングを行いました。
 ショッピングセンターの開発には業態開発が必要です。業態開発が伴わないと、ありきたりの施設になり、すぐに陳腐化してしまいます。

オリナスコア(コムサストア) オリナスコア(フードコート)
左●オリナスコア(コムサストア)
右●オリナスコア(フードコート)

 

商業施設は、住宅やオフィスと同じ大切な社会資本。
より良い社会資本としての
商業施設の開発・維持が私どもの役割です

−建築デザインには米国のRTKLインターナショナルリミテッドを起用されていますが、「olinas」の建築デザインついての考え方をお聞かせください。

猿田 「olinas」は、売り場面積が1万坪を超える商業施設です。また隣接する錦糸公園は広域避難場所となっており、「olinas」も同公園と連携し敷地の一部に防災通路としての機能をもたせるなど地域との共生を目指した公共的な要素を施設全体の環境デザインに盛り込む必要がありました。

 また錦糸町という街は、江戸時代に亀戸天神の門前町として栄え、明治以降は縦横に水路が張りめぐらされた水運の街としての利を活かし、さまざまな基幹産業の工場が建ち並ぶ産業の街として栄えました。また縦横に走る水路の「川面に映る朝日、夕日が錦のように見えた」という言い伝えもあります。「olinas」という施設名も「錦の糸がさまざまな模様を『織り成す』」ということからのネーミングですが、そこには、そうした『土地の記憶』を継承し、そういう場所をもう一度デザインして提案したいという想いが込められています。

 ですから、建築デザインについては、日本の外から見た『和』のテイストを採り入れたいと考え、RTKLインターナショナルリミテッドに依頼しました。
 彼らはデザインする前にコンセプトを決め、それをもとにいろいろなモチーフをつくっていくという進め方をしました。ですから、「olinas」というネーミングのコンセプトと、デザインのコンセプトとの統一が図られています。施設のファサードを貫く金色のキャノピーや自由通路に置かれた糸巻きをイメージしたオブジェなどに、そうしたコンセプトが象徴的に表現されていると思います。

−先ごろ成立した「まちづくり三法」の改正については、どのような意見をお持ちですか。

創業者・安田善次郎氏の像を中心にして 猿田 大型商業施設の出店規制については、さまざまな意見があると思います。今回の「まちづくり三法」の改正については、その改正の内容についてはともかくとして、消費者の視点を反映しない制度は長続きしないというのが私の見方です。これだけ車社会が発展したなかで、中心市街地活性化の方策を立てないままに、郊外への出店を規制したからといって、中心市街地にお客様が戻ってくるかどうかは疑問です。

 確かに各地の中心市街地の現状を見ると、なんらかの活性化策が必要だろうし、そのためのきちんとした議論が必要でしょう。中心市街地に集客の核となる店舗がなくなっているなら、現在のその中心市街地に適した核店舗とはどういうものなのか真剣に考えないといけません。また、既存の施設の再生を図るということも、今後の商業開発の一つの軸になってくるだろうと思います。中心市街地をどう再生できるかということは、私どもも都市開発事業の一環として検討していく必要があると考えています。

−最後に、これからの取り組みについてお聞かせください。

猿田 商業施設は「楽しい」とか「快適」ということが重要な要素です。しかし、その楽しさ、快適さは時代によって変わっていきます。年齢構成が変わればその基準も変わるし、また地域によって住んでいる人の構成が違うので、そこでも基準が違ってきます。それにどれだけフィットしたものをつくれるかが、これからの課題です。商業施設も、マンションやオフィス同様、大切な社会資本です。より良い社会資本としての商業施設を開発し、それを維持して行くというのが、私どもの役割だと思っています。

−本日はお忙しいなか、ありがとうございました。

関連サイト: 東京建物株式会社

猿田氏 猿田 明里 氏
さるた あきさと●昭和50年3月東京大学法学部卒業、同年4月(株)富士銀行入行、平成16年4月同行常務執行役員、平成18年3月東京建物(株)常務取締役名古屋支店長兼都市開発事業本部長


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