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きちり
平川 昌紀 氏/ (株)きちり
代表取締役 関西の厳しい飲食マーケットにおいて、近年、飛躍的な成長を遂げているのが、大阪・本町に本社を置く(株)きちりである。1997年の創業以来、同社は、成熟市場である外食業界において、「モダンジャパニーズダイニング」「カジュアルダイニング」「トラディショナルダイニング」「スウィーツ」の4つのジャンルで、新感覚の飲食業態を次々に世に送り出し、団塊ジュニア世代以降を中心に高い支持を集めるとともに、真心のこもったホスピタリティの提案・提供によって、外食産業での新たなスタンダードの創造を目指している。 さまざまな企業の
平川 大学受験に失敗し、浪人して大学に入学しましたが、大学で自分はどう生きたらよいのかと人生についていろいろと考えました。その時に出会った本の一つが藤田田さんの『ユダヤの商法』という本でした。その本で受けた感銘が私の深層心理の中にあって、それがモスバーガーのFC店を始めたことにつながっていったのではないかと思います。
平川 その本には、世界の経済を動かしているのはユダヤ人であり、彼らはターゲットを絞り込む独特の商法を持っているから成功するという話が書いてあります。具体的には、ターゲットを「お金」(金融)か「口に入るもの」(薬や飲食)か「女性」(宝飾品)に絞り込むというのです。その話を読んで、金融業はイメージしにくく、口に入るもの、女性を意識したものとして、ぼんやりとですが外食産業に注目しました。 そこで、まず、アルバイトをしてお金を貯めて、レストランに行くことからはじめました。自分に対する投資という気持ちで、着なれないスーツを着て、神戸のホテルにオープンしたばかりの3つ星レストランに行ったこともあります。しかし、大学卒業後は、外食企業には就職せず、ゴルフ会員権の営業マンになりました。
平川 大学時代に読んだ本で、藤田さんの本と並んで感銘を受けたものにナポレオン・ヒルの『思考は現実化する』がありました。その中でナポレオン・ヒルは、さまざまな経営者に会って、その成功哲学について聞いています。その影響を受けて、私も多くの経営者に直接会って話を聞き、自分の経営者像というものを作りたいと考えました。ゴルフ会員権の営業マンであれば、さまざまな企業のトップと直接話をすることができるのではないかと考えたのです。
平川 実際、ゴルフ会員権の営業に行くと必ず社長に応接してもらえましたし、趣味のゴルフの話をきっかけに話が弾んでいき、さまざまな話をお聞きすることができました。自分としては会員権の営業よりも企業のトップからお話を聞くことが目的でしたので、仕事自体、楽しみながらできましたし、それが契約にも結びつきました。入社半年でトップセールスになり、翌年には営業チームのリーダーにとして、新入社員6人を部下に抱えることができました。 その後退職し、父が経営していた不動産開発会社で2年ほど土地の買付けなどを行いました。「売り」と「買い」の両方の仕事に携ることができたことは、貴重なビジネス経験になりました。 そうした経験を経て、1997年11月にフランチャイジーとして大阪府柏原市に「モスバーガー河内国分店」をオープンし、個人事業主としてスタート。それ以来、飲食ビジネス一筋です。
中国の戦国時代を切り拓いた曹操のように
平川 飲食ビジネスの入口としてモスバーガーを選んだわけですが、これは、藤田さんの本のイメージが頭にあったことに加え、モスバーガーは創業者の櫻田慧さんが一代で東証1部上場を果たした企業ということで、そのことに非常に興味があったからです。
平川 そうです。飲食ビジネスを行う以上、自社業態をつくる必要があると思っていましたので、いろいろなお店を見て回っていました。そして柏原にオープンした自社業態第1号店は洋風居酒屋でした。同店の店名であり、社名ともなっている「きちり(吉利)」は、「三国史」の英傑、曹操孟徳の幼名からとったものですが、これは『志』として、中国の戦国時代を強いリーダーシップで切り拓いた曹操のように、激しい生存競争にある外食産業で新しいスタンダードを作ろうという思いが込められています。
平川 ビジネスの捉え方が明確にできているからだと思います。外食企業の経営者というのはビジネスマンかクリエーターのどちらかに分かれると思いますが、私はビジネスマンのウエイトの方が高いと思います。4年ほど前にビジネススクールに1年間通い、そこで体系的な企業経営を学びました。たとえば、創業期に経験したFCビジネスというのは係数管理がすべてで、少しでも原価率・人件費率がぶれると自分の給料が出ない。それくらい外食ビジネスはマネジメントを体系的に理解していないといけないという危機感をもっています。
『大好きがいっぱい」を経営理念に
平川 私は、採用試験の社長面接で、「生き方をいまの時点で選択しなさい」という話をしています。いまの豊かな日本では、それほど努力しなくても、とりあえずは生きていけます。その対極にあるのが精一杯生きるという生き方です。そのどちらかを選択しなさいと言うわけです。緩やかな川の下流を流されていくような人生でいいのならうちは向いていない。うちは急流を遡って成長を目指して行く会社だから、どこまで行けるか試したい人間には良い会社だが、非常にしんどいよ、と。それを前提で入るのであれば、活躍のフィールドは与えるという約束をします。
平川 私どもは「ライフプラン」を作成することを全社員に課しています。将来の人生の目標を達成するためには、半年後、1年後、3年後にどうなっていなければいけないかということを自分で書かせるのです。それを半期に一度、上司が評価します。それによって、自分の進捗状態が思わしくない人には反省と、何が不足しているか考える機会を与え、うまく進んでいる人には、さらにステップアップしてもらうという方法をとっています。 目標と現状の間のギャップが分からないと人間は頑張れません。自分が今どの位置に立っていて、将来どこに行きたいのか、どうなりたいのかというのを明確に示す必要があります。ですから、いまの立ち位置を示してあげるというのが最初の取り組みになります。 また、私が各店舗を回ってスタッフと話をする「店舗ミーティング」ということも続けています。いつも頑張っていただいていることへの感謝の意味を込めて、私がお店のスタッフのためにケーキなどを買っていき、それを食べながらカジュアルに話をするというものです。始めてまだ1年も経っていないので、まだ3ラウンド目ですから、年に6ラウンドくらいは行いたいと思っています。そこでは、私がいま感じていることや人生観について話をしています。
平川 私ども「きちり」の経営理念は『大好きがいっぱい』です。ヒューマンタッチな会社でありつづけることを望んでいますが、そのためにはトップである私が、その具現者でなければなりません。創業当初から、そのように社員に接してきましたので、会社の規模が大きくなっても、この部分は変わらないように最大限の努力をしていきます。
すべての行動において
平川 やはり父は無条件に「商売の先生」です。いつも「従業員を大切にしろ」と言っています。それ以外にも、さまざまなことを教えてもらいました。また、歴史上の人物では、織田信長と曹操孟徳で、彼らに関する本は繰り返し読んでいます。イメージの中でこんなとき信長ならどうするかというようなことをよく考えますね。
平川 そういうことです。どこの地方都市の外食企業も、東京に行きたいという気持ちがあると思います。ただ、ローカルでできることを飛び越えて東京に出ていったら「出稼ぎ」になってしまいます。「出稼ぎ」では長続きしません。ですから、私どもでは、関西での基盤をきちんとつくって、ビジネスを成長させ、その成長の過程として東京というものが必要になったときに出店していくという考え方をもっていました。今まさに、その機が熟したと思っています。お話があったから出店するというのではなく、すべての行動において「目的」と「理由」がなければならないと考えています。
平川 飲食ビジネスというと一般的には「参入障壁が低い」と思われがちですが、企業として継続していくことは非常に大変です。ですから、「目的」と「理由」をきちんともっていないと判断を間違えるという危機感を常に抱いています。「金」と「物」だけでは絶対に動かないことがあり、やはり「人」が最も大切です。その意味で、私は「きちりが成功した」とは、まだ考えていません。「成功」というのは会社が考えているビジョンを達成した時が成功なのだと思います。
平川 新業態としては5業態くらいを考えていて、商標もすでにストックしています。 新しい業態や商標を考えるのは楽しい時間です。ただ、いまは現在あるものをしっかり成長させていく時だと思っています。
会社のビジョンを達成するために
平川 もともと形に対するこだわりが強いし、建築物を見るのも非常に好きなので、気に入った建物があると空間デザイナーと一緒に再度見に行ったりします。そこで同じものを見てどう思うかというところから空間のデザインを考えていきます。
平川 いろいろなものが調和してその空間の雰囲気ができています。ですから、たとえば「あの景色だからこの形が必要だ」とか、「ここの床ならあの形はどうだろうか」というように伝えていきます。
平川 いまはビジネスに特化していますので、正直に言うと「個人の夢」というのはありません。まずは会社としてのビジョンの達成というのが目標ですから、それが達成できたら個人のことも考えていきたいと思っています。 会社としてのビジョンを達成するために、私はいろいろな人と約束をしてきました。個人的な夢を抱く前に、その約束を明確に果たすという責任があります。 会社の理念である『大好きがいっぱい』ということを具現化していくことで、私と関わって良かったと思われるような人間になりたいと考えています。
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