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"海外ボランティア発祥の地"に誕生した
『市民参加による国際協力』の全国拠点

 JICA地球ひろば


 政府開発援助(ODA)の実施機関のひとつである「独立行政法人 国際協力機構」(JICA)では、近年、国際協力への市民参加 促進を重点事項と位置づけ、全国16か所の国内機関などにおいて、さまざまな市民団体等との連携を深めているが、『市民参加による国際協力の拠点』として2006年4月1日、「JICA地球ひろば」を東京・広尾にオープンした。

 1968年の開所以来、多くの海外青年協力隊員を世界各地に送り出してきた”海外ボランティア発祥の地“「広尾青年海外協力隊訓練所」が改修され誕生した「JICA地球ひろば」は、その『全国拠点』となるもので、施設を訪れる市民の「途上国の人々への共感や連帯感を育む場」となり、「国際協力に関わる市民団体の情報発信や交流、研修の拠点として利用される場」となることを目指している。

 東京メトロ日比谷線広尾駅から徒歩1分に建つ地上5階建のビルに展開する同施設の1階には「体験ゾーン」「企画展示スペース」「カフェ・フロンティア」を配置。

 体験ゾーンは、途上国の暮らしの現状や地球が抱える問題、国際協力の実際などについて映像や造形物などで展示。ゾーン中央のスペースには『地球案内人』と呼ばれるスタッフが常駐し、見学に訪れた市民と一緒に、「いま世界が直面している課題」を考え、「何か自分にできることはあるか」を探る。

 企画展示スペースは、国際協力や国際理解等を目的とした活動を行う市民団体に貸し出し、パネル展示等によって、その活動などを紹介できるスペースとして活用。カフェ・フロンティアでは、世界各地の料理を、背景にある文化の紹介とともに提供。「居ながらにして海外体験を楽しめる場」として、国際理解の促進に役立てている。

 また2〜5階には、企画展示スペースとともに「交流ゾーン」として講堂やセミナールームを設けるとともに、「団体オープンスペース」として団体ミーティングルーム、団体作業コーナー、団体掲示板、ロッカー、メールボックス、さらに46人まで利用可能な「宿泊施設」を配し、NPO等の市民団体の活動を支援している。

 交流ゾーンや団体オープンスペースの施設を利用するには、事前に団体登録が必要で、国際協力活動もしくは国際理解教育活動(途上国を対象にしたものに限る)をしている団体、または、これから活動を始めたいと考えている構成員5人以上の団体で、その設立趣旨や活動内容が同施設の設置趣旨に沿っている団体が登録できる。

東京メトロ日比谷線広尾駅A3出口から徒歩1分、“海外ボランティア発祥の地”に誕生した「国際協力への市民参加促進の拠点」 東京メトロ日比谷線広尾駅A3出口から徒歩1分、“海外ボランティア発祥の地”に誕生した「国際協力への市民参加促進の拠点」
東京メトロ日比谷線広尾駅A3出口から徒歩1分、“海外ボランティア発祥の地”に誕生した「国際協力への市民参加促進の拠点」

映像スペース「世界のみんなが幸せを感じるとき」 展示は「地球規模の課題」と「途上国の現状」をわかりやすくやすく表現するように工夫
(左)●映像スペース「世界のみんなが幸せを感じるとき」
(右)●展示は「地球規模の課題」と「途上国の現状」をわかりやすくやすく表現するように工夫

修学旅行や課外学習で訪れた中・高校生のグループを『地球案内人』がガイド 修学旅行や課外学習で訪れた中・高校生のグループを『地球案内人』がガイド
修学旅行や課外学習で訪れた中・高校生のグループを『地球案内人』がガイド

展示更新を定期的に行うため、展示の演出はできるだけ大掛かりなものとはせず、簡単に替えられるものにしている 展示更新を定期的に行うため、展示の演出はできるだけ大掛かりなものとはせず、簡単に替えられるものにしている
展示更新を定期的に行うため、展示の演出はできるだけ大掛かりなものとはせず、簡単に替えられるものにしている

「地球温暖化」や「森林破壊」などの問題も立体造形により視覚的に表現 『地球案内人』は「体験ゾーン」の中央のサークルに常駐
(左)●「地球温暖化」や「森林破壊」などの問題も立体造形により視覚的に表現
(右)●『地球案内人』は「体験ゾーン」の中央のサークルに常駐

日本ではあまり実感が沸かない識字率の問題も体験型展示で理解を深める 世界各地から食材が輸入されている「日本の食卓」の現状をバーコードリーダーとPCによりわかりやすく解説
(左)●日本ではあまり実感が沸かない識字率の問題も体験型展示で理解を深める
(右)●世界各地から食材が輸入されている「日本の食卓」の現状をバーコードリーダーとPCによりわかりやすく解説

メインエントランスの正面に配された「企画展示スペース」は、企画展示など各種イベントのためのスペースとして市民団体などに貸出し 映像展示スペースのほか、世界の民族衣装を試着できるコーナーなども設置 「地球ひろば」のメインエントランス(写真奥
(左)●メインエントランスの正面に配された「企画展示スペース」は、企画展示など各種イベントのためのスペースとして市民団体などに貸出し
(中)●映像展示スペースのほか、世界の民族衣装を試着できるコーナーなども設置
(右)●「地球ひろば」のメインエントランス(写真奥

「味による世界体験」ができる「カフェ・フロンティア」(tel03-3400-5533)はメインエントランスの右側に設置 「味による世界体験」ができる「カフェ・フロンティア」(tel03-3400-5533)はメインエントランスの右側に設置
「味による世界体験」ができる「カフェ・フロンティア」(tel03-3400-5533)はメインエントランスの右側に設置

JICAが横浜・新港地区に2002年10月04日開館した「海外移住資料館」。ここ十数年、かつて日本人が移住した国々から、日系人とその家族が就労や勉学の目的で来日していることから、日本人の海外移住の歴史や移住者とその子孫である日系人について、広く一般の方々に理解を深めてもらうことを目的に開設。展示では、JICAが、戦後、主に中南米への移住事業の一翼を担ったことから、中南米とそれに先行するハワイを含む北米への移住を主な対象としている(撮影:(株)フェイマ 佐藤成範) )

独立行政法人 国際協力機構
広尾センター(JICA地球ひろば)所長

草野 孝久

[聞き手]
(株)丹青社 クリエイティブセンター クリエイティブ1部 ディレクター
安斎聡子

国際協力を日本の文化にしていくための
広く市民に開かれた『ひろば』として、
常に新しい情報の発信に心がけていきたい

草野氏

−まず最初に、「JICA地球ひろば」設置の目的をお聞かせ願います。

草野○JICAでは近年、『国際協力を日本の文化に』ということを提唱し、国内にある16のセンターで市民参加事業を展開しています。この国際協力への市民参加事業の全国拠点として「JICA地球ひろば」が設置されました。市民の間で国際的感覚を高めていくためには「理解して共感をもつこと」、「連帯感をもつこと」が重要です。また、途上国への国際協力や国際理解を目的とした活動を行っている市民団体の活動に対する協力・支援を総合的・一元的に行っていくための拠点が必要だと考えた訳です。さらに、中学生や高校生など次の世代を担う人たちが、地球温暖化や飢餓などの世界規模の問題や、途上国でいま起きていることなどに対し関心を寄せる「広い目」をもっていただくために、JICAがお役に立ちたいと思います。「JICA地球ひろば」は、これらの機能を集約した施設です。国際協力に関する情報や知見を「地球ひろば」に集め、そして全国のJICAセンターを通じて市民に発信し、多くの市民がそれぞれの形で国際協力するのを支援したいと考えています。

−お話の中に「市民」という言葉がございましたが、「地球ひろば」は、これまでのJICAの施設と異なり、「市民」を主役に据えていますね。

草野○日本と途上国との関係は、国家間の協力あるいは援助だけでなく、市民の発意によって市民同士が協力し合い、お互いの地域社会が元気になるようなものが増えていくことが重要だと思います。「国際協力を日本の文化に」するとは、そういうことだと考えています。この「JICA地球ひろば」では、多くの市民の方々が訪れ、途上国のことや国際協力のことを考え、語り合い、発信する場として活用いただければうれしいです。

−打合せスペースやメールボックスの無料貸出しなど、一般市民だけでなくNGOなど市民団体への支援にも力を入れられていますね

草野○NGOや学生サークル、地方自治体や大使館などに、自分たちの活動を発信し互いに交流するスペースを提供することは、冒頭に申し上げた『国際協力を日本の文化に』していくためには、非常に大切なことだと考えています。すでに70団体以上が登録し利用しています。また、JICAでは、草の根レベルでの開発協力プロジェクトや開発教育などの市民団体による活動を、各地にあるJICAセンターを通じて支援しています。「JICA地球ひろば」では、関東圏のNGOなどへの活動支援も行っています。

−国際協力や海外経験の豊かなスタッフを「地球案内人」として配置していますね。スタッフを置くことは、イコール運営費がかかるということで、一般的には敬遠されがちですが、それにもかかわらず、あえてスタッフの充実を図ったのは、どのような理由からでしょうか。

草野○訪れた人たちの意識が活性化され、自分の中で眠っていたものが揺り起こされ、自分にはこれができるかもしれないと気づいて、行動につなげていただくような空間にしたいと考えました。展示で臨場感を出すことはできるのですが、それを記憶の中に残して行動を起こす“くすぐり機能”のようなものをもたせることは、なかなか難しいことだと思います。せっかく「地球ひろば」にお越しいただいたからには、インパクトを強く受けて帰っていただきたい。そのためには、やはり人と人とのインタラクションが最も効果的だと考えました。また、「地球案内人」たちは、訪れた市民一人ひとりに合った国際協力は何かを一緒に考える相談役割や、「交流ゾーン」の利用案内の役割も担っています。

−展示では、途上国が抱える問題を示すだけでなく、途上国がもつ豊かな文化や素晴らしさなども紹介されていますね。

草野○「地球ひろば」で、私たちが狙っているのは、観て、知識を得るということよりも、共感して、そこから行動が引き出されるというプロセスです。「途上国は貧しい」「貧しいから不幸」ではなく、お金や物を持っていなくても幸せな人はたくさんいます。苦しい生活のなかにも、小さな幸せはあります。その幸せを壊さないことへの共感や連帯感を引き起こしていきたいのです。「市民参加」と言っても、一般市民の方々が一気に途上国との協力のために行動を起こすというところまでは、なかなかいきません。途上国やその人々の抱える問題への関心が高まり、理解が深まっていくなかで、態度が変わり、国際協力への行動を起こすというように段階を追って進んでいくものだと思います。途上国の人々に共感し、同じ人間同士の連帯感を感じることが国際協力への第一歩だと思うのです。「体験ゾーン(展示スペース)」はその流れが起こる場にしたいのです。

−年間5〜6回の展示更新を予定され、そのために展示の演出も、できるだけ動かしやすいもの、簡単に替えられるものにされていますが、頻繁に展示替えをしていく狙いはどういったところなのでしょうか。

草野○博物館や美術館のように展示物そのものに高い価値があれば、多くの人が来るのでしょうが、私たちが「地球ひろば」で提示したいものは、「国際協力の必要性」です。その背景にある、私たち日本人と同じように守られなければならない「途上国の人々の暮らし」や、暮らしを危うくする「開発問題」や「地球規模の問題」が展示物です。いつも同じものでは、誰も2度3度とは訪れてくれないと思います。JICAにはリソースがたくさんありますから、それをもとに展示を定期的に入れ替えていくことで、常に新しい情報を発信していき、リピーターを呼び込んでいきたいと考えています。

−これから国際協力に取り組もうという市民の方に伝えたいことはございますか。

草野○国際協力というのは「与える」とか「あげる」ではなく「一緒に行う」ということだと思います。「困っているから助ける」ではなく「一緒に何かできたら楽しい」、「お互いが元気になる」。それは「友達と一緒にするのと同じ」と感じられるように、多くの日本人がなれたらいいですね。



データ 2006年6月
[所在地] 東京都渋谷区広尾4-2-24
[オープン] 2006年4月1日
[事業主体] 独立行政法人 国際協力機構
[敷地面積] 2,743.17m2
[構造・規模] RC造・地上5階建
[延床面積] 6,436.43m2
[施設内容] 体験ゾーン、交流ゾーン(企画展示スペース、セミナールーム、講堂)、団体オープンスペース(団体ミーティングルーム、団体作業コーナー、団体掲示板、ロッカー、メールボックス)、宿泊施設、飲食施設(カフェ・フロンティア)
[開館時間] ○交流ゾーン 9:30〜21:30
○体験ゾーン 火〜金曜日10:00〜20:00 土・日祝日10:00〜18:00
○カフェ・フロンティア 火〜金曜日11:00〜22:00 土・日祝日11:00〜18:00
[休館日] 月曜日
[URL] http://www.jica.go.jp/hiroba/index.html
 

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