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THE SC [連載第12回]

施設の独自性を発揮していくため「アンチリレーション」にも取り組む

(株)相鉄ビルマネジメント
第1営業部 部長 滝澤 秀之
聞き手/ (株)丹青社 営業開発センター副センター長 長谷川吉男

同じような商業施設が全国に乱立している状況で
運営会社が違うだけでは面白くありません



 JR、東急、京急、相鉄、市営地下鉄などが乗り入れる、わが国最大級のターミナルである横浜駅。その横浜駅西口に建つ「相鉄ジョイナス」は、ショッピングセンターとしては、トップクラスの入店客数を誇る。そのジョイナスがいま、横浜駅西口地区における施設ポジションの再構築を図るべく、全館にわたり、リニューアルを進めている。同施設が、計画的にこれだけの規模のリニューアルに取り組むのは、1973年の開業以来、初のことである。

横浜駅西口に建つ「相鉄ジョイナス」。売場は地下2階〜地上4階の6フロアに展開 横浜高島屋との1階の連絡口。高島屋とは各階で連絡している
左●横浜駅西口に建つ「相鉄ジョイナス」。売場は地下2階〜地上4階の6フロアに展開
右●横浜高島屋との1階の連絡口。高島屋とは各階で連絡している

『ジョイナスMD戦略』を 平成 14年に発表し
横浜商圏における ジョイナスの位置づけと
進むべき方向性を示す

−日本有数の売上を誇る「相鉄ジョイナス」ですが、まず、創成期まで溯って、成り立ちについてお聞かせください

滝澤 親会社の相模鉄道(株)は、相模川の砂利を運ぶ貨物輸送線からスタートしました。路線が横浜まで延長されたとき横浜駅近くに砂利置き場として利用されていた2万5000m2の土地を確保し、その用地の一部を使い、昭和31(1956)年に、現「相鉄ジョイナス」の前身となる「横浜駅名品街」が開設されました。その後、第1期工事、第2期工事を経て昭和48(1973)年に新生「相鉄ジョイナス」が誕生しました。おかげさまで、バブル崩壊後の平成3(1991)年まで、売上は対前年比で2桁増を続け、着実に伸ばしてきました。その平成3年の590億円が相鉄ジョイナスの売上のピークとなりました。

 バブル崩壊後は、金融破綻の影響も手伝い、店舗の退店も目立つようになりましたが、新たにテナントを入れようとしても、なかなか思い通りにはいきませんでした。一大ターミナル駅である横浜駅に直結したショッピングビルで、それこそ黙っていてもお客様がお越しになるという施設でしたので、それまでは施設全体としてどういうMDを組むべきかというような戦略は特に必要がなく、極端に言えば、「ミセスのフロアにはミセス向けの店を入れる」というようなテナント配置をするだけで結果もついてきました。

 しかし、バブル崩壊後は状況が変わり、売上が低迷するなかで、テナント誘致のために1000社以上の方にお会いしましたが、「場所はいいけど、リレーションがねえ」というのが“断りの常套句”となりました。そういうことがありまして、テナントの構成は「点」ではダメだということに気がついたのです。「面」の開発をしていかないと、集客力のあるテナントにはお入りいただけないし、お客様を呼び込むこともできません。

 そこで、ジョイナスのテナントの方々で構成する「ジョイナス商店会」の平成14年の新年理事会で『ジョイナスMD戦略』を発表し、横浜商圏におけるジョイナスの位置づけと進むべき方向性を示し、現在進めている改装の“狼煙”を上げました。

−その改装について詳しくお聞かせください

滝澤 まず、『ジョイナスMD戦略』を発表した年の平成14年春に「ライフスタイルカジュアル」のフロアである3階の一部を改装したのを端緒に、地下2階の飲食フロア「グランダイニング」、4階の雑貨・サービスフロア「ヒーリングライフ」、そして2階の「クロスファッション&コンビニエンス」の一部の改装を実施しています。

 駅施設に連絡する2階は、駅の動線が変わる計画もあるため本格的な改装には至っていません。2階につきましては、駅の改良工事に合わせ平成20年以降に本格的に着手する予定ですが、駅に直結するフロアであることから、クロスファッションやコンビニエンスの切り口は変えずに改装していきたいと思っています。

−いまおっしゃられたMD戦略ですが、具体的にはどのように進めていかれるのですか。

滝澤 隣の高島屋さんもそうですが、オープン当時は、全国でも「時代をとらえたトレンディなショップ」として捉えられていましたが、ジョイナスがスタートし、30年余り経過する現在、商業施設としても“高齢化”していることは否めません。

 その一方で、横浜駅東口地区では、ミレニアムグループとなったそごうさんが、MDをファミリーからOL、キャリアへの取組みを強化したことで、隣接する丸井さんやポルタさんなどにも好影響となり、売上が全体的にアップしています。そごうさんは、若者から中高年までお客様に幅広く支持される売場になり、東口地区の他の商業施設も、それとうまくリレーションができています。そごうだけで済ますのではなく、お客様はそごう〜丸井〜ポルタ〜ルミネというように東口地区の商業施設を買い回るようになっており、いわば東口全体のMDの奥行きが広がったわけです。

 これに対し西口地区は、それぞれの店舗が顧客層を限定し、単独で戦っている状況です。高島屋さんは年間約1700億円の売上をあげていますので、現在のMDを大きく変えることはないでしょうが、高島屋さんが中高年層を非常に押えられているので、私どもは、その下の層を取り込んでいかなければなりません。そのためには20〜30歳代、40歳代までの“20歳代の感性をもった”女性を集客できる売場づくりを行っていくことが重要です。

 3、4階の改装は、そうした考えのもとでスタートしました。その結果、既存のテナントさんで残っていただいたテナントは4、5店舗だけで、大半は退店していただきました。

−それほどの入替えとなりますと、相当な労力が必要で、時間もずいぶんかかったのではないですか。

滝澤 はい、時間はかかりましたね。ただ、テナントの方と個別に話してみてわかったのは、みなさん苦しまれていた。かといって、自ら営業を止める勇気もなかったという方々が少なくなかったということです。従来の営業の延長では改装は成功しません。退店していただくテナントさんには、スタッフが手分けして、誠心誠意説得にあたり、ジョイナスを「卒業」していただきました。

1階のインフォメーション。駅に直結しているため全国の商業施設の中でも通行量は群を抜く 3階「ライフスタイルカジュアル」フロアの改装を終えた売場
左●1階のインフォメーション。駅に直結しているため全国の商業施設の中でも通行量は群を抜く
右●3階「ライフスタイルカジュアル」フロアの改装を終えた売場

 

商業施設にとっての“顔”である1階は
今回のリニューアルで「象徴的な売場」にしたい

−目に見えない苦労も多いようですが、改装の成果はいかがでしょう。

滝澤 売上的には、1フロアで平均2〜3億円の増収となっていますが、計画値よりはまだ低めです。これを言うと皆さんに笑われるのですが、ジョイナス全体で年間700億円の売上を狙っています。横浜駅の1日の乗降客が200万人で、乗降人員の半分のお客様のうち15%程度の方に毎日、ジョイナスの平均客単価である1400円の消費をしていいただくという計算を積み重ねると700億円という数字が見えてきます。現在の年間売上は363億円。改装当時からこのことは言い続けてきて、「できっこない」と言われますが、私は実現可能だと考えています。

−20歳から30歳代、40歳代がジョイナスのメインターゲットということですが、これから改装に入る1階については、ターゲットやMDをどのようにお考えですか

滝澤 1階の改装につきましては平成20年秋のリニューアルオープンを考えていますが、1階につきましては“象徴的な売場”にしたいと考えています。上層階、下層階ではすでに改装をほぼ終えていますので、終えた内容をきちっと1階で表現したいということです。売上に固執するのではなく、1階は、あくまでも上層階、下層階に買い回る役割を担わせたいと考えています。

 1階は商業施設にとって“顔”であり、1階が死んでしまいますと、上に上がってみようか、下に下りてみようかという気になりません。そうした点を環境面では強化したいと思います。ジョイナスのテナント構成は、たとえば、飲食ではファミリーユースから接待に利用できるレストランもあります。そうした、さまざまな要素をすべて1階で表現していきたい。

 言葉で表現するのはなかなか難しいのですが、例えば横浜が開港したときは、外国の領事館の隣に農村風景が広がっていたと思います。横浜には、新しいモノと伝統的な日本の暮らしが共存していた時代があった。そうした異質なものを共存させるというのが1階の役割だと考えています。その意味では「アンチリレーション」ということです。そういうチャレンジにも取り組んでいきたい。

 ショッピングセンターのMDにおいて「リレーション」ということは非常に重要ですが、リレーションという視点だけで店舗を配置すると、いろいろなショップがあっても、みな同じものに見えてしまいます。1階だからこそチャレンジできる。ある意味、大手デベロッパーが行っている店づくりとは異なる手法を展開したいと考えています。

長谷川−ジョイナスの1階は、駅からの通路にもなっていて、ショッピングセンターというよりもストリート(商店街)に近いと思います。ストリートと考えれば、極端な話、肉屋さんや八百屋さんの隣にファッションのお店があってもいいわけですが、「アンチリレーション」とはそのような考え方ですか。

滝澤 極端に言うとそうですね。お客様の目線で見たときに、いままでのショッピングセンターのリレーションとは違い、楽しく感じてもらえる。そういう展開も十分考えられるということです。これだけ、同じような施設が乱立している状況で、運営する会社が違うというだけでは面白くありません。

 絵を描くということで考えてみますと、風景画を描くときに空をどうするか。空だから青だとか、夕空はオレンジがかったというだけでは、普通の空でしかない。空を表現するときに、大きな雲を描くかもしれない。空の青を引き立たせるために雲を配置するというように雲は空を表現するために必要なものであり、その絵自体を決めていく要素にもなります。雲がとっても大事。ただ青く塗って空ですよといっても、お客様にとっては空に見えません。雲があったり鳥が飛んでいたりする仕掛けがあって初めて空に見える。その部分を大切にしようというのが、1階の改装です。

地下1階のレディスブティックコーナーは昨年11月、「コンフォータブルウォーク」としてネーミングも装いも新たにリニューアルオープン 改装を控える地下1階の「ピアッツァ」と「イレブンレストランアベニュー」
左●地下1階のレディスブティックコーナーは昨年11月、「コンフォータブルウォーク」としてネーミングも装いも新たにリニューアルオープン
右●改装を控える地下1階の「ピアッツァ」と「イレブンレストランアベニュー」

環境問題への取組みは企業の社会的責任。
そうした問題についてもきちんと取り組んでいく

−早稲田大学の野口智雄ゼミの学生たちが、ジョイナスの改装について研究を行い、先日発表しましたが、その結果については、どのように受け止めていますか。

滝澤 学生さんたちが調査したデータから、改めて、お客様はジョイナスに対し「(古い=)汚い」と感じていることがわかりました。本当に汚いのではないのですが、「ざわざわしている」ことがイコール「汚い」という印象に繋がってしまっている。こうしたイメージを払拭しないといけないと思いました。彼らの提案については、良いも悪いもこれからですが、まず、「汚い」という点を改善していかなくてはならないと思います。その意味では、売場と移動動線とを分離するのも、ひとつの考え方ですね。「汚い」とイメージを変えるには「買物の空間」と「移動の空間」をきちんと分けることが大切だと思います。

−ところで、中心市街地の空洞化を防ぐ目的で「まちづくり三法」の改正が予定されています。「まちづくり三法」が改正されると、基本的に郊外型大型ショッピングセンターの出店が困難になりますが、今回のまちづくり三法の改正については、どう思われていますか。
 

滝澤 まちづくり三法で、中心市街地を再開発するということであれば、居住権と事業を区別するなど、借地借家に関する法律の見直しも合わせて必要です。税制面の優遇はもとより、販売、品揃えなど具体的な支援策も求められると思います。

−緑化、廃棄物問題、地域の温暖化・省エネ対策、景観への配慮、環境活動による社会貢献、社会への情報提供など、環境対策への取組みも商業施設に求められるようになっていますが、相鉄ジョイナスさんとして、どのように取り組まれていますか。

滝澤 ジョイナスの第2期がスタートした昭和48年当時というのは、「人間性回復」が社会的に叫ばれていた時代でした。そうしたなかでジョイナスでは「光と水と緑と風」をテーマとし、屋上に「ジョイナスの森彫刻公園」を設けたりしました。

 現在、最も積極的に取り組んでいるのはエネルギー対策です。第2期から30年が経過し、更新すべき設備もたくさん出てきます。そうした際に、たとえばインバータの機器に変更するなど、多少コストはかかっても、省エネタイプの最新の設備機器を導入しなければならないと考えています。

 環境問題に取り組むことは企業の社会的責任であり、それにきちんと取り組むことは企業のイメージアップにもつながります。逆に、対策が遅れるとデベロッパーの姿勢が問われることになると認識しています。省エネなどは、直接ランニングコスト削減につながり、収益の改善も期待できることですから、これからも前向きに取り組んでいきたいと考えております。

─本日はお忙しいところありがとうございました。

関連サイト: 相鉄ジョイナス

滝澤氏 滝澤 秀之 氏
たきざわ ひでゆき●1984年相模鉄道(株)入社。経営企画室、ビル事業計画部を経験後、1994年さがみ野ショピングプラザ相鉄ライフの営業担当。ビル事業部門のリーシング担当を経験後、1999年ジョイナス営業販促担当課長、2004年第1営業部長※第1営業部は横浜駅周辺にある商業系のSCの運営管理を担当するセクション


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