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■ Design対談 デザインが生まれる現場から東京大学大学院 情報学環 教授 CGアーティスト 河口 洋一郎 氏 IST(INTERSPACE TIME)代表 牛建 務氏 自己判断ができるのは生き物。 理想的なデザインは生き物化していかなければならない サイエンスの基本事項をベースに
河口 そうですか。僕も小学校時代から4〜5km歩いて通っていましたよ。途中、海岸や野山を眺めながら。 牛建 当時は、大阪でさえも、その情報量は東京の10分の1とか10分の2といわれた時代でしたから、種子島などは、もっと情報過疎地であったと思うのですが、そういう所から河口さんのような方が現れたことに、僕は大変興味を抱いたわけです(笑)。 河口 たしかに種子島には都会的な情報はなかったですね。目の前にあるのは生の自然と生き物たちだけ。ただ種子島が国内の他の島とちがうのは、1543年にポルトガルから鉄砲が伝来していることで、日本の歴史を変えるキーとなった島なんですね。だけど種子島の人たちは南の島のおっとりした人たちなので、歴史がそれによって変わっていくという意識はないから、非常にのんびりしていてチャンスを活かさなかった(笑)。だから鉄砲は堺の商人が買い、それを織田信長に売って歴史は変わっていったわけですよ。 牛建 ここまでお話しを伺っただけでも、河口さんの原点が少しわかってきましたよ。
牛建 僕は河口さんのCGやアートを最初に見せてもらったとき感じたのは、自然の色の華やかさと、それから宇宙というものにものすごく興味を持たれているなあという点でしたが。それは基本的には河口さんの生い立ちから育まれたものだったのですね。 河口 形や色を使って具体的な空間を創る時の場所というのは、やっぱり僕の場合、日常空間というよりも宇宙のどこかの惑星空間の中にあるかも知れないような世界なんですよ。それは単なる幻想ではなくて、子供の時から宇宙に向けてどんどん打ち上げられている宇宙ロケットを見てきた僕にとっては現実なんですね。どこかの惑星に芸術やデザインで育まれた豊かな惑星があるかも知れない。仮設的にあり得るかも知れないものをコンピュータで出して見よう。僕は行きたいからですよ。だから、虚構じゃなくて、ありうる世界を創るということで、物理的なシミュレーションをちゃんと行う。数学的な、あるいは生物的な知識を使って可能性を追求した検証を行っている。 牛建 アートの世界では、普通、そういう数学的な計算や科学的な検証はしませんよね。 河口 そうですね。サイエンスは論理的な思考の世界だから、汎用的な技術を用いて、誰が出しても同じ結果しかでてこない。アートは表現的な創造の世界だから、デザインの場合はちょっと難しいけど、アートの場合は個性を発揮した自由な発想の創造ができる。だけど僕は今、東大で、思考・論理の世界と表現の世界の違いを埋め飛躍化させようという試みを行なっています。これはサイエンスの世界にある基本的な論理をベースにして、そこに飛躍関数なるものを入れて、アートを創造していこうということです。一例を挙げると、ある生き物を表現する場合、実際の生き物以上に超越した生き物っぽい生々しい生き物を創るってことなのです。 牛建 アーティストでありながら、科学的というのは不思議な存在だと思っていたのですが、テクノロジーだけで形を創っていくのではなくて、きちんとした根拠をベースにしたアートを目指すということですね。
自分のやっていることが 河口 僕のアートに対する考え方は、サバイバルというか、それが豊かに次の世代に生きのびることができるかどうかという点に関心がある。だから創って、それでおしまいというものではない。進化と多様性ということが非常に重要だと思っている。多様性というのは、画一化とは逆で、画一化というのは同じルールで同じものを量産することですよね。画一化ということが非常に重要で量産とコストダウンの問題が重視されてきた。けれども僕の場合は、それを乗り越えて1個1個が生き物以上にソフトで艶(なま)めかしい形にするにはどうしたらいいか、ということにすごく興味があって、そういう制作を行ってきた。
河口 僕の考えている理想的なデザインは生き物化していかなければならないから、そうなのかも知れない。生き物というのは、自己判断ができるけれど、どんなに優秀なロボットもインプットされていない情報以外の自己判断はできない。コンピュータについていえば、ツールやソフトが豊になり過ぎたために、別に落下運動や渦の計算式などの何も知らなくても、デザインや絵を描くことができる。僕たちのときはツールがなかったために、自分のプロセスの方法論をつくらなければならなかった。CGクリエーターも自問して悩むことは何もなくなった。それは僕に言わせると、進化ではなく、退化ではないかと思います。 牛建 河口さんは1995年のベネチアのビエンナーレで、大画像のCGアート作品を発表して一躍世界的なCGアーティストとして注目を浴びたわけですよね。 河口 ちょうど第100回の展覧会だったわけですけど、それまでは絵画中心で、せいぜい写真があるぐらいだった。それがなぜか僕の作品が招待出品されて、当時のハイビジョン画像・立体映像の大画面が飛び出してきたので珍しかったのでしょうね。 牛建 たしかに河口さんの大画面のCG作品は迫力満点ですし、非常に感動も与えますよ。ただ1つ心配だなと思うのは、それがイベント化されるような動きのあることですね。 河口 子供の時からアート・デザインの世界がある惑星に行って作品と遊びたいという夢を抱いていたので、あれは夢舞台だった。その後、いろんな国からすごく招待されるようになって、去年も後半だけで十数回、月に1、2回は海外講演を行っているのですが、必ず基調講演をしたあとに5分か10分の舞台パフォーマンスを頼まれる。それで僕は今まで大画面でやっていた技術を使って、その国の土地の踊りとか音楽とCG映像とを合体させた反応する作品をつくり、実演してきた。僕にとっては本業の作品ではなく、片手間のサービスのつもりなのですが、それが変に受けちゃいまして…(笑)。 牛建 河口さんはやっぱり異色の才能のアーティストだから世界中から声がかかってしまうのでしょうね。 河口 最近、僕が悩んでいることは、自分のやっていることが簡単に理解されたら困るなぁ。それは僕にとって堕落なんだと思うから。何なのかよくわからない、と言われる方がうれしい。もっと作品に「毒」の要素を入れないといけないな、と反省しています(笑)。 牛建 CGアーティストの第一人者である河口さんにとって、現在のコンピュータ社会はどのように映っているのでしょうか? 河口 僕にとってコンピユータは、テクノロジー以前の原始の人間の直観力を呼び覚ますための1つの手段であり、道具ですね。だからテクノロジーに乗っかっているとか、そういう意識は全然ない。むしろ僕はテクノロジーを批判する立場に立ちたいと思っている。 牛建 独特なコンピュータ感を持っていますね。でも、今そういう考え方・生き方が、すごく求められていますよ。今後の活躍を期待しています。本日は、お忙しい中、ありがとうございました。
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