■コラム * tannet flash
マイブーム通信
安斎 聡子
恐るべし、ボルネオ
今、私のなかの密かなブームはボルネオだ。学生時代からインドネシア通いをしてきたが、その機中からいつも、茶色に濁った大河がヘビのようにクネクネと大地を横切る大きな島を見ていた。いつも、いつかこの島に行こう、そう思っていた。
ボルネオは世界で3番目に大きい島だ。この島をマレーシア、インドネシア、ブルネイがシェアしている。近頃、熱帯雨林の減少などの環境問題を耳にするが、まさにその舞台の一つだ。
■なんといっても自然
環境悪化が話題のボルネオだが、それでもその魅力は自然だ。少し足を伸ばせば簡単に自然に出会えてしまう。スカウがそうだった。
スカウ村は、山崎朋子の『サンダカン八番娼館』の舞台、マレーシアのサバ州、港町サンダカンからスピードボートで、キナバタンガン川を2時間半遡ったところにある。この流域一帯はパームヤシのプランテーションとして開発され、川の両岸にわずかな森がやっと残っている。動物たちはこの奥行きの浅い小さな森に追いやられ、その結果普通ではなかなか見られない動物に相当の確率で遭遇できる場所になってしまった。悲しい森なのだ。しかし出会える動物がすごい。テングザルや、カニクイザルの群れにはじまり、ワニ、サイチョウ、ゾウたちの夜の行進に朝の川渡り。
しかも動物たちとの出会いはリバークルーズで体験できる。手軽すぎる。まるで東京ディズニーランドのジャングルクルーズではないか。 |
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川を渡り向こう岸にたどり着いたゾウ(スカウ) |
■動物に出会えない森
こんなにお手軽でいいの?という思いをもちながら、ダナンバレーへ出かけた。同じくサバ州東部のラハダトゥから車で2時間半、延々砂利道を四駆で走り続けた先にある面積438km2に及ぶ低地熱帯雨林の自然保護区だ。もともと伐採が予定されていたが、その生物の多様性に世界的な注目が集まり、保護されることになった。ここで、早朝のキャノピーウォーク散策からナイトサファリまで、1日5本のトレッキングで3日間、ひたすら歩き回った。

朝もやに煙るダナンバレーの森 |
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それなのに!目にした動物はシカ、ヒゲイノシシ、リス、ムササビ、種類のわからない茶色のサル、サイチョウ、そしてはるか30メートル上空の葉影で何やらゴソゴソ食べているオランウータン1匹だけ。森が深いのだ。森が深いと、動物はわざわざ人間の前に姿をさらす必要がない。そういうことか。スカウとダナンバレーを体験して思った。
しかし、動物だけではない。白い幹の巨木、メンガリスが立ち並ぶ森に朝もやがかかる風景は幻想的だ。夕方スコールがあがった後に決まって聞こえるサイチョウの声。ナイトトレッキングで見た花のように美しい虫たちも忘れられない。 |
その後もボルネオでいろいろなモノに出会った。雨期のサラワクでは大雨のあとでも濁らない川を見た。森が深いと土壌が川に流れ込まないことを理解した。森林開発の結果、移動型狩猟生活を続けられなくなったブナン族にも出会った。スカウの動物たちが小さな森に追い込まれたように、狩猟の民も定住生活に追い込まれたのだと思った。
■魅力は尽きず
ボルネオはあきれるほど広い。日本国内を移動する感覚でいると、せっかくボルネオに行っても移動がほとんど、という目に遭いかねない。要注意だ。
そして僻地だけがボルネオではない。ネイチャー系高級リゾートもあるし、華僑パワーあふれる都市も面白い。自然体験はちょっとでいい、という方にもオススメである。
ボルネオの魅力は尽きない。どうやら海も相当いいらしい。これからも通ってしまうかもしれない。私もボルネオ通の道を邁進?しかし我が社にはもっと上手がいた。ブームを通り越し、ボルネオ通いがもはや日常になっているような人物が。恐るべしボルネオ。
(あんざいあきこ/クリエイティブセザインセンター ディレクター)
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