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宮沢 勲

社内ベンチャーは何のため?


 「今第3次ベンチャーブームの中で」

 我が国は現在第3次ベンチャーブームの中にあるといわれている。第3次というからには、この前に2回ベンチャーブームなるものがあったのだが、いずれも「ブーム」に終わり、ベンチャーが根づく土壌は育たなかった。第1次ベンチャーブームは石油ショックでしぼみ、第2次ベンチャーブームはプラザ合意でしぼんでしまった。

 第3次ベンチャーブームも結局はしぼんでしまうのであろうか。

今回のベンチャーブームが前2回のベンチャーブームと根本的に異なるのは、前2回のブームが景気拡大のなかで、「自発的」に起こったものであるのに対して、今回のブームがベンチャーの創出を外部から促す形で起こっている点にある。これは米国が良好な創業・経営革新の事業環境のもとで、企業家を育成することによって、1990年代の経済の復活を果たしてきたことに刺激されたものであろう。実際、1999年秋の国会は「中小・ベンチャー国会」といわれ、ベンチャーを支援する施策が多く打ち出された。また何といっても「マザーズ」や「ナスダック・ジャパン」の創設は、ベンチャー企業の資金調達を容易にするという意味においては画期的なことであった。

 ところでベンチャー企業が創業する際に障害となったものは何であろうか。「2000年版中小企業白書」によれば、それは資金と人材であるという。前に挙げた「新事業創出促進法」にしても「マザーズ」や「ナスダック」の創出にしても、創業期の企業の資金面、人材面での障害を取り除くことを目的にしている。しかし、資金や人材の問題が解決されれば、ベンチャー企業は育つのであろうか。

「企業内には資金も人材もあるが・・・」

 資金や人材が最も大きな障害であるとするならば、企業内には、ある程度資金も人材も蓄えがあり、社内ベンチャーが最も成功する可能性があるのではないかと思われる。事実第2次ベンチャーブームの時には、社内ベンチャーが盛んであった。しかし社内ベンチャーからは、大したベンチャー企業も排出されないまま、ブームは終焉した。今またベンチャーブームの中で、社内ベンチャーに会社の復活を託す企業も増加しているようである。しかし、資金や人材をどんなに投入しても、今の我が国では社内ベンチャーは育たないのである。

 というのは第一にベンチャー企業の最も大きな障害は、実は資金でも人材でもなく、ベンチャー経営者の経営に関する知識だからである。ベンチャーとは新商品開発や新市場開拓というレベルのものではなく、企業経営そのものなのである。そして企業経営において最も大切なことは「キャッシュ」をどのように生み出すかであり、これが明確にできない限り、事業としての成立性は皆無であるといっていい。実は社内ベンチャーの最も弱いところはここではないかと思う。企業内にいると、売上には関心はあるが、キャッシュがどうなっているかなど気にもとめないことが多い。これでは企業は経営できない。

第二に本当に企業家精神を持っている人材が少ないということである。企業家精神は新しいパラダイムや価値観を持つとともに、この新しいパラダイムや価値観と既成のパラダイムや価値観との間に生まれる「リスク」をとるという、二面性を持っている。新しいアイデアを出す人材は多いが、リスクテーキングできる社内企業家は多くはない。ここに社内ベンチャーが育たない根本的な原因であるような気がする。

 だからといって社内ベンチャーを完全に否定するものではない。要は、大きなリターンと共にリスクテーキングをさせる「親心」が必要なのだということである。こうすればそうそうアイデアだけで勝負はできないし、仮にアイデアの面白さだけで一か八かにかけるにしても、相当なエネルギーが必要なはずである。このエネルギーが企業に活かされれば、経営革新において相当な助けになるに違いない。

「創造的破壊が企業を救う」

 シュンペーターはイノベーションを行う企業家による絶え間ない変革を「創造的破壊」と呼んだ。この「創造的破壊」を行なえる者だけが生き残る世の中になった。いま急成長している企業の多くが「創造的破壊」を行なっている企業である。そして国際的に見れば、我が国の企業のほとんどがこの「創造的破壊」を行わなければならない状況に立たされている。社内ベンチャーはこの「創造的破壊」を行なう人材発掘の場であり、この人材が何人輩出できるかがその企業のポテンシャルになるだろう。そのときにはBS(貸借対照表)に社内ベンチャー○○人」と載せる価値も出てくるのではないだろうか。私は今回のベンチャーブームが既存企業の経営革新に変化していくことを期待している。

(みやざわ いさお/(株)丹青社 経営計画部企画課 課長)

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