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■コラム * tannet flash プロモーション・フロントライン 宮下 浩志 時は価値(カネ)なり
腕時計を忘れたまま出勤した。妙に左手が軽い。違和感がある。一日中慌てるだろうなと覚悟した。ところが、意外なことに困らない。デスクの電話には時間表示がついている。パソコンにもオフィスの柱にも。外出しても街の至るところに時計があり、不便は感じない。何よりも、携帯電話の存在が大きい。
インターネットの登場により、消費者が匿名による発言権をもったプライベートメディアを手に入れ、従来「情報を与える側と享受する側」にあった境界線がぼやけてきた。この享受する側のなかに芽生えた感情は、いろいろな形で日常のプロモーション活動に影響を及ぼしてきている。 かつては与えられた情報に対し、まずは歩み寄りと親しみの気持ちから接していた人たちが、今は評論家的視点で冷静に観察することから始めているのだ。 「CMをやっているから、展示会に出ていたから、この製品は間違いない」というような単純な感覚は、もはや過去のものになりつつある。 われわれの業界ではターゲットという言葉をよく使うが、近頃この言葉にはどうも抵抗を感じる。これは、与える側と与えられる側をはっきり線引きした考え方である。特に、前述のマスへの参加権をもつパーソナルメディアを駆使している人たちには、この手の考え方が通用しにくい。腕時計をすることを常識と捉えず、代わりのもので事すめば、それで十分だという柔軟な思考の人たちであり、今後の社会の中心となる世代だ。 私は最近、ターゲットをステークホルダーという発想に切り替えはじめた。 プロモーション活動を行なった際の、すべての利害関係者の捜査からまず考えるのである。プロモーションを仕掛けられた側は、何らかの時間を費やしてそれに付き合うことになる。費やしただけの時間経過に見合って、その人たちの喜怒哀楽がどのように向き合うかを想像し、その「感情価値」を利害という観点から推測してみるのだ。 結局、プロモーション活動とは、いかにその気になってもらうかである。そのために、受け手側の感情の機微に対して私たちはもっと意識的に繊細になる必要がある。 その気になると言えば、外国の方に「なぜ付加価値の高いブランド物に関して日本人は海外モノばかり漁るのか、日本製でもよいものはいっぱいあるではないか。日本製が嫌いなのか」と聞かれることがある。私は「反抗期なのですよ」と答える。「日本という親から与えられた感覚への面映さと歯がゆさなのでしょう」と。 このような反抗期から私たちは目を逸らさず、成長の過程として歓迎し、一刻も早く皆が「いい大人」になれるように、プロモーション術を研鑚していかなければならない。 世の中に時計があふれているのは、その表示が気がかりなためだけではなく、自分のもつ時間の経過を大切にしていきたいという潜在意識の表われであると思いたい。 そして、それにしっかりと応えられる生業でありたく思う。 (みやした ひろし/(株)丹青社 IMC事業部プロモーション室 室長)
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