コラム * tannet flash
ミュージアム・ナウ
南 夏樹

博物館の評価 その2


 近年博物館評価をめぐる動きが盛んであることを前回述べた。2000年2月に琵琶湖博物館で開催されたシンポジウム「博物館を評価する視点」の報告書に、1950年代以降の博物館評価に関する文献リストが掲載されている。それを見ると、1990年代の後半から博物館評価に関する文献が急増していることがわかる。前回触れた佐々木秀彦や佐々木亨による博物館評価の分類は、そうした博物館評価に関する動きや言説を体系づけようとする試みであった。
 
 一方こうした包括的な体系づけの試みとともに、博物館評価について議論するための手続きとしてまず必要なのは、どのような視点から、どの「博物館評価」を取り上げて考察の対象とすべきかということではないか。そのためには近年の「博物館評価ブーム」を生み出した、日本の博物館の現状について考えてみる必要がある。
 
 1960年に487館であった日本の博物館数は、1999年の文部科学省調査では5109館であり、40年間で約10倍になったことになる。また1980年以降に開館したものがその約6割を占める。1999年までの統計資料を見る限り、日本の博物館は1970年以降その開設が増加し、1980年以降さらに加速して、1999年時点に至っていることになる。
 
 しかしながら私たちは、1990年代の始めにはバブル経済が崩壊し、日本経済は超低成長の時代となり、国や自治体の財政も極めて逼迫した状況であることを知っている。こうした背景は博物館にどのような影響を与えているだろうか。
 丹青研究所の調査によれば、年度毎の博物館開設数は1996年度が347館、1997年度が354館、1998年度が346館、1999年度が274館、2000年度が275館である。博物館の開設数は、1999年度からそれまでの約4分の3と大きく落ち込んでいることがわかる。
 
 このことから博物館の開設については、1999年がバブル崩壊後の転換点であったという仮説が提示できるのではないか。博物館建設は通常その構想から完成・開館まで5年から10年程度かかるものだからである。つまり1990年代初めのバブル経済崩壊の影響が、博物館の開設数においては1999年において顕在化したものと考えられる。
 
博物館予算の推移 一方既存の博物館における状況はどうなのだろうか。2000年度に実施された東京都の博物館・美術館についての事務事業評価資料には、1997年度から2000年度の博物館・美術館に対する都の歳出予算の推移が示されている。
 
 主な博物館・美術館5館への歳出予算の合計では、1997年度が107億6500万円、1998年度が95億1200万円、1999年度が84億3000万円、2000年度が67億3000万円となっている。
 
各年度の予算を対前年比で見ると、1998年度がマイナス12%、1999年度がマイナス11%、2000年度がマイナス20%、である。2000年度の歳出予算は、1997年度の予算の6割でしかない。3年間で4割も予算が削減されてしまったことになる。
 
 1999年度版『博物館白書』では、博物館が抱える問題点に関する調査を実施している。自らの博物館の問題点について、回答した博物館のうち50%以上が「あてはまる」とした項目は以下のものであった。
 
「財政的に恵まれていない」、「施設・建物が手狭である」、「ミュージアムショップやレストラン等付帯設備が不十分」、「職員の数が不足している」、「入館者が減っている」、「高齢者や障害者に対する対応が不十分」、「行政サイドに博物館が理解されない」、「市民のニーズに応えられていない」、「マルチメディアを利用したり新しい展示方法が導入されていない」、「体験的な展示が導入されていない」、「常設展示の更新がなされていない」、「新たな資料を入手しにくくなっている」、「未整理の資料がたくさんある」、「外国の館との交流に欠けている」、「大学や研究機関との連携が不足している」、「学校教育との連携が不足している」。
 
 一言でいえば、日本の博物館は危機的な状況にあるといえるのではないか。(以下次号に続く)
 

(みなみ なつき/(株)丹青研究所 主席研究員)

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