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■コラム * tannet flash ミュージアム・ナウ 南 夏樹 博物館と独立行政法人
2001年4月1日より、国の一部の機関に「独立行政法人制度」が導入された。独立行政法人制度とは、行政サービスの実施部門を分離し、別の法人格を与えることで、業務の執行にあたっての国の関与を最小限のものとし、現場の改善インセンティヴを引き出し、そのことにより、行政サービスの効率性、有効性の向上をはかろうとするものだ。主な国立の博物館、美術館も独立行政法人に移行することになった。
日本の独立行政法人制度は、イギリスの「エイジェンシー制度」をそのモデルとしている。1988年、サッチャー内閣の効率室(Efficiency Unit)は、公務員の95%が具体的な行政サービスの提供部門に所属しており、これが中央からの画一的なルールに縛られていることが多大な非効率をもたらしているとするレポートを提出した。さらにそれらサービス提供部門を政策立案部門から分離し、大幅な裁量権を与えるエイジェンシー(Executive Agencies)と呼ばれる独立行政機関の設置を提案した。 イギリス、エイジェンシー制度の特徴は以下のとおりである。(1)エイジェンシーのトップ(Chief Executive)への大幅な裁量権の付与。(2)主務大臣とトップの協議によりエイジェンシーの目的、提供するサービス、目標等について定める「フレームワーク・ドキュメント」を作成。(3)エイジェンシーのトップは、三から五年間の「コーポレイト・プラン」及び単年度の「ビジネス・プラン」を作成。(4)単年度ごとに定量的業績指標(Performance Indicators)により目標を設定し、その達成度を測定。(5)年間業績レポート(Annual Report)、財務諸表の作成、公開、など。 特にキーとなるのは、中期計画、年度計画による具体的な目標設定と定量的な指標による業績測定、その公開というプロセスである。エイジェンシーは中央政府から独立し、そのトップには業務の執行に関し大幅な自主裁量権が与えられているため、コントロールのためには目標、業績指標の設定とその測定が厳格に行われる必要がある。これは、それまでの「プロセス」重視から「結果」による統制という、行政管理システムの大きな転換を意味している。また目標、業績指標、測定結果の公開により、国民への「説明責任」(Accountability)の向上がはかられることになる。 日本の独立行政法人制度をイギリスのエイジェンシー制度と比較すると、目標や業績指標の明確化、また母体官庁のそれとの体系づけの点で不十分であると考えられる。定量的な業績測定システムの構築についてもこれからの課題である。 独立行政法人制度の導入が博物館に提起する問題とは何だろうか。まず、業務執行に関する大幅な権限の付与という側面からは、ますます個々の博物館の「経営能力」が問われるようになると言える。P・F・ドラッカーは、既に1990年に『非営利組織の経営』(一九九一年、ダイヤモンド社刊)の重要性について指摘していた。ドラッカーの言うように、博物館も「いかにそれを道具として使うかを学ぶ必要がある」。 結果による統制という観点からは、博物館にとっての「結果」とは何かという問題が提起される。博物館の使命(Mission)、目的(Goals)、目標(Objectives)、そしてそれらの達成を測定するための指標(Indicators)とは何かが問われている。これまで博物館が社会にとって有用なものであり、またこれからも存続すべきものであると私たちが考えるのであれば、私たちはそれらの問いに対する答えを用意しなければならないだろう。 (みなみ なつき/(株)丹青研究所 主席研究員)
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